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第99話 ズラーマン、王の間を調べる

 ゴゴゴゴゴ……


「ここだ! この部屋に、魔王様復活の鍵があるのだ!」


 ズラーマンは、ヅラが大きくズレていることも気にせず、ゆっくりと開く扉を見つめながら、興奮に打ち震えていた。



   ◆ ◆ ◆



 すぐに、バール将軍達は追い掛けてくる筈だ。

 ズラーマンは、そう思いながら第100階層へ下りていった。


 ズラーマンの予想通り、バール将軍・マンソル・エルサの3人が、すぐにズラーマン達を追い掛けたが、明かりの役に立たない暗闇と、濃い妖気の影響もあって、バール将軍達の足取りは想像以上に重たかった。


 それに比べて、ズラーマン達魔族は、暗闇でも見通せる目を持ち、妖気の影響も全く受けない。足を止めることなく、順調に進んでいった。


 第100階層には、いくつもの仕掛けが施されていたが、壁に書かれた『魔族文字(神聖文字)』を読めば、簡単に解けるものだった。


 先を行く自分達が仕掛けを壊せば、後からくるバール将軍達は、労せずして先へ進むことができる。


 そのことを苦々しく思うズラーマンだったが、仕掛けは30分後には自動修復されるようになっていたため、後から来たバール将軍達は、ズラーマン達を見失い、同じ場所を歩き続けることになっていたのだった。



   ◆ ◆ ◆



 王の間の扉にも、魔力量に反応する仕掛けが施されているかもしれない。


 ズラーマンは、その事に一抹の不安を抱いていたが、扉にはスイッチが存在しており、あっさりと扉を開けることができた。


 ゴゴン……


「やったぞ!」


 扉が開いたことに、興奮したズラーマンだったが、王の間の入り口は、氷の壁で塞がれていた。


「ガイターよ! この氷を破壊しろ!」


 ズラーマンの命令に従い、ガイターは氷に向かってパンチを放つ。


 バリン!


 ガイターの強烈な一撃により、氷の壁はあっさりと粉砕された。


 ところが!? すぐに新たな氷の壁が、入り口を塞いでしまった。


「やはり、簡単には部屋に入れんか…… まずは、この入り口の仕掛けを解除しなくては」


 この氷の壁は、魔力によって作り出されているようだ。となると、何処かにアレがある筈だ。


 ズラーマンは、入り口を念入りに調べる。


 やはりあったか! アレが魔力の供給源だな!


 ズラーマンの目は、隠蔽魔法で隠された魔法陣を発見した。そして、入り口の上部に小さく描かれた、その魔法陣に向かって、


「フン!」


 気合を込めて魔力を放った!


「……」


 ズラーマンは暫く沈黙した後、何事もなかったかのように


「ガイター、あそこを攻撃しろ!」


 ガイターに、魔法陣の描かれた場所を攻撃させたのだった。


   ・・・・・・


 王の間の中に入ったズラーマンとガイター。


 扉の大きさに比べ、部屋の中は想像以上の広さ── 50m四方の床に、天井まで15mもあった。


 ズラーマンの視界に飛び込んできたのは、部屋の中央の巨大な氷の柱と、その前にある石碑だった。


 ズラーマンは石碑に近付いていく。


 この石碑には、魔王様の復活に必要な、重大なヒントが書かれているに違いない。


 ズラーマンは確信していた。



『魔王記』には、魔王復活に関する記述が、いくつか記されている。


 第1の記述は、復活の時期について。

 魔王城の玉座が光を放つとき、魔王の魂が現世に戻ったことを意味する、ということが書かれていた。


 しかし、魔王の死後既に2千年という歳月が流れており、その伝承は魔族の間でも夢物語のように思われていた。


 ところが、3年前のある日──


 玉座から、微かに青白い光が放たれていることが確認された。


 魔王様が復活される!


 その日から、魔族達は、魔王復活に向けての行動を起こすこととなった。



 魔王復活に関する第2の記述── どのように復活するのか? ということについて。


 魔王の魂は、魔王自らの身体に甦る、と書かれていた。


 復活には『魔王様の身体』が必要だ!


 六将軍達はそう理解した。

 人族によって封印された魔王の身体を取り戻すため、魔族達は暗躍することとなった。


 そして、魔王の切断された身体の部分を、迷宮から回収していったのだった。



 魔王復活に関する最後の記述── 復活の儀式を行う場所について。


 世界で最も深い迷宮の再奥で【復活の儀式】を行う必要がある、と書かれていた。


 儀式の内容については、魔王記には記されていなかったが、『その場所』へ行けば、手掛かりが得られるに違いない!


 そう考えたズラーマンは、他の将軍達を出し抜くために、1人だけでそこへ行くことにした。


 世界最大の迷宮の場所は、すぐに見つけることができたが、1人では迷宮の再奥に到達するのは難しいことを理解していたズラーマンは、マチョリカ公国のジード王子の力を借りることにしたのだった。



 今、ズラーマンの眼前には、儀式について書かれた石碑があった。


 ズラーマンは、はやる気持ちを抑えきれず、石碑に書かれた文字を読む。


『棺に魔力を捧げろ』


 棺だと?


 ズラーマンは部屋中を見渡したが、それらしいものは見当たらない。


 まさか、この氷の中にあるというのか?


 優に直径20mはある巨大な氷の柱を前に、ズラーマンは困惑しながら、続きの文字を読んだ。


『魔力満ちるとき、魂は召還される』


 魔力満ちるとき── つまり、魔王様復活には、多大な魔力が必要だということか。


 ズラーマンは、魔力量に反応する扉の仕掛けを思い起こす。


 アレを反応させるだけの魔力量が必要なのだとすると、ガイターの魔力を搾り尽くしたとしても、到底足りないだろう。


 くそっ! ここまで来ながら、魔王様復活は叶わぬとは……


 もう1度ここまで来るためには、他の六将軍達の力が必要なことを悟ったズラーマンは、今回は部屋の調査と復活の儀式の内容を、詳しく調べることにした。


 気になるのは『棺』の存在だ。やはり、この氷の中にあるとしか思えない。


 しかし、氷の柱には特殊な魔力が働いているのか、ガイターの攻撃をもってしても、ヒビ1つ入れることができなかった。


 魔力の供給源である魔法陣を見つけて、破壊するしかないようだ。


 ズラーマンは部屋の隅々まで調べまわったが、どこにも魔法陣を見つけることができなかった。


 どこだ!? どこに魔法陣が隠されているのだ!?


 時間だけが過ぎ、焦りと疲れを感じていたズラーマンの背後から、


 ゴゴゴゴゴゴ……


 閉じられていた王の間の扉が開く音が聞こえてきた。


 忘れていた! バール将軍達が、とうとうここまで来たか!?


 ゴゴン……


 扉が開いたが、バール将軍達は部屋に入ってこない。

 壊された魔法陣が復活し、氷の壁が入り口を塞いでいた。


 大丈夫だ。魔法陣の場所がわからなければ、ここまで入ってこれまい。


 ズラーマンは安堵したが


「こんな氷くらい、吹っ飛ばしてやるわ!」


 声と同時に、大きな火球ファイヤーボールが氷を突き破り飛んできた。


 うおっ!?


 ズラーマンは、何とかその火球ファイヤーボールを避けたが、それは氷の柱に命中―― そして、氷の柱に吸い込まれた。


 何だ? 今一瞬、魔法陣が浮かんだ?


「鬱陶しい氷ね! これでも食らいなさい!」


 連続して飛んできた火球ファイヤーボールが、全て氷の柱に吸い込まれる。

 正確には、氷の柱に浮かんだ魔法陣に吸い込まれていった。


「もう怒ったわ…… 上級魔法で、壁ごと消し飛ばすわよ!」

「よせ、早まるな!?」


 ドゴーン!


 入り口の壁が大きく破壊され、火球ファイヤーボールとは桁違いの魔力の塊―― 火系上級攻撃魔法【メガフレア】が飛んできた!


 メガフレアが、氷の柱に浮かんだ魔法陣に吸い込まれたその時――

 氷の柱全体を囲むように、無数の魔法陣が浮かび上がった!


 何だ!? 何が起きるのだ!?


 ズラーマンは、その異様な光景を呆然と眺めていた。

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