表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/111

第95話 地球の転生者

 俺は嘗て、地球こことは別の世界で『魔王』と呼ばれていた……


 俺が、この身体に転生する以前の記憶を取り戻したのは、今から約3年前のこと。


 その時俺は、地球に転生する前に、2度生命を落としたことがあったことを思い出した。


   ・・・・・・


 1度目の死の記憶──


 俺は『その世界』に魔族として生まれ、退屈な毎日を過ごしていた。


 そんなある日、俺の前に『ムセル』と名乗る人族の男が現れた。


 ムセルは、俺に会うために魔族の領域にやってきたと言う。


 ムセルの話を聞いている内に、人族に対して興味を抱くようになった俺は、退屈な日々から抜け出すために、ムセルと共に人族の領域へと旅に出ることにしたのだった。


 特に目的のない旅だったが、ある日ムセルが「迷宮を作ろう」と、俺に提案してきた。


 何のために迷宮を作るのか?

 ムセルの考えはわからなかったが、俺はその提案を受け入れた。


 ムセルの設計図を基に、俺の魔力で洞窟を迷宮に変えていく── そうやって、俺達は世界中を旅しながら、次々と迷宮を作っていったのだった。


 そして20年が過ぎたある日のこと──


 俺がムセルの真の目的を知ったのは、500個目の迷宮を作り上げた後だった……


 その迷宮は100階層にも及ぶ巨大迷宮で、俺はその制作に魔力の殆どを使いきり、立つこともできなくなってしまった。


 疲れきって寝転がる俺の横では、ムセルが大声を上げて笑っていたのだ!?


 そこで初めて、俺はムセルに騙されていたことに気付いたが、もう手遅れだった。


 弱りきった俺は、ムセルの呪いを受けて、迷宮の中で生命を落としたのだった……


   ・・・・・・


 俺は、いつの間にか、見覚えのない部屋の中にいた。


 そこには『魂の管理人』とかいう怪しげな者がいた。


「この世界に『ムセリット』という名前を付けてくれたお礼に、お前を今すぐ転生させてやろう」


 ソイツは俺に、そう言ってきた。


 俺は、ムセルに復讐できる喜びに打ち震えたのだった。



 ムセリットで新たな生を得た俺は、12歳になったとき、ムセルに復讐するために人族の領域へと向かった。


 前世で、ムセルの生まれ故郷の話を聞いていた俺は、その地を訪れたが、既にムセルは亡くなっていた。


 復讐を果たせなくなった俺は、失意のまま魔族領へと戻ったが、俺の怒りは全く収まらなかった。

 そして、この怒りを全ての人族に向けることにし、その手始めとして、魔族の統一を果たすことを決意した。


 魔族統一を果たした俺は、自らを『魔王』と名乗り、魔王軍を結成した。


「人族を滅ぼせ!」を合言葉に、魔王軍は人族の領域へと攻め込んだのだった。


 すぐに人族を根絶やしにできると思っていたが、人族共の激しい抵抗に合い、とうとう俺自ら戦場へ出ることにした。



 人族共は大軍団を率い、俺の率いる部隊に最後の戦いを挑んできた。


 人族の中でも精鋭が集まっていたために、それなりに苦戦させられたが、所詮俺の敵ではない。


 俺はこの戦に終止符を打つべく、最強魔法【メテオ・ストライク】を使うことにした。


 極限まで魔力を高め、魔法を撃とうとしたその瞬間!


 俺は、突然寿命が尽きるのを感じたのだった……


   ・・・・・・


 俺は2度目の死を迎えた。


 だが、俺の魂はまだ滅んではいなかった。


 不慮の事態への備え── もしも自分に死が訪れた時のために、魂を復活させる手段を用意しておいたのだ。


 俺は死を感じた瞬間、咄嗟に【ある魔法】を使用したのだ。


 反魂魔法── それは、あの憎きムセルが残した魔法だった。


 初めてその魔法のことを聞いたときは、俺は魂の存在など信じていなかった。


 しかし、転生後、魂の存在を知った俺は、ムセルの残した記録を調べ上げた。


 ムセルは元々ムセリットの人間ではなかったが、反魂魔法を使ってムセリットへ転生してきたようだ。


 本来のムセルの目的は、元の世界の自分自身の身体に魂を戻すことだったが、それは失敗に終わったようだ。


 失敗した原因について、ムセルはいろいろと推察していたが、その内の1つの仮説を有力視し、成功させるための手順を考案していたのだった。


 俺はその手順を元に、反魂魔法を使うときのための準備をした。


 必要なものは、魂を移す身体。

 俺の魂を移すのに最も相応しい身体は、あの『巨大迷宮』の中にあった。


 俺は1度目の死の間際、最後の力を振り絞って、自分の身体を氷漬けにしたのだ。

 それは、己の遺体を醜く腐らせたくなかったためであるが、それが役に立つことになった。


 再び巨大迷宮を訪れた俺は、『来るべき時』に備えて、前世の俺の遺体を迷宮の最下層へと移動させ、保管したのだった。


 次に必要なのは、保管した身体へ俺の魂を移すことのできる協力者だった。

 俺は、自分の腹心の魔将軍達にだけ、復活に必要な手順を記した記録書の存在を教えておいたのだ。


   ・・・・・・


 前世の記憶を取り戻したとき、俺は予定通りの復活を遂げたものだとばかり思っていた。


 ところが、そこはムセリットではなかった……


 俺は別人に生まれ変わっていた。何故か、転生していたのだ── こともあろうに『人族』に……


 しかも、この身体は魔法を使うのに必要な『MP』を、全くといっていいほど生み出せないのだ。


 俺の反魂魔法は失敗に終わったのか?


 初めはその事実に落ち込んだが、俺の地球で過ごした記憶が、俺の心を癒してくれた。


 この世界は、ムセリットとは比較にならないほど平穏で優しさに満ちている。


 俺は、次第に人族に対する憎しみが失せていくのを感じていた。


 このまま、地球ここで朽ちていくのも悪くない── いつの間にか、そう思うようになっていた。



 ところが、状況が一変した!?


 今、俺の身体の周りには、いくつもの魔法陣が現れている。


 これは、まさか!?


 それが、魂を呼び寄せるための魔法陣であることに気付いた。


 俺の魂が身体から離れるのを感じた後、俺は身体を残して魔法陣に吸い込まれるような奇妙な感覚を覚えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ