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第93話 ズラーマン、石碑を読む

「ズラーマン、ここがそうなのか?」


「そうです、バール将軍。この中に我らの求める石碑がある筈です」


 バール将軍達は第41階層を探索し、部屋を発見した。


「ところで、ズラーマン。この部屋の扉―― どうやって開けるのだ?」


 しかし、部屋の扉は固く閉ざされており、押しても引いてもビクとも動かない。


「おかしいですね…… 扉を開ける仕掛けがどこにも見当たりません……」


 ボス部屋の扉の横には開閉用の仕掛けがあるが、この扉の横には何もない。


 ズラーマンは扉を隅々まで調べたが、仕掛けらしい物を見つけられずにいた。


 何か特別なアイテムが必要なのか? だが『魔王記』にはそのようなことは書かれていなかった筈だが……


「バール将軍!」


 その時、バール将軍の元に部下の1人が駆け寄ってきた。


「今取り込み中だ! 後にしろ!」


「す、すみません…… ですが、先程の冒険者が、将軍と話をさせろとうるさいのです」


 第40階層のボス部屋の毒スライムを倒した冒険者── コイツらは危険だ!


 そう判断したバール将軍は、隙を見て始末するつもりであったが、この先にも毒スライムのような銃火器で倒せない魔物がいるかもしれない、という可能性を考え、2人を同行させることにしたのだった。


「えーい、この忙しい時に…… お前が相手しておけ!」


「私では無理です…… 特に女の方が、早く下の階へ向かって子供の救出を手伝ってほしい、とずっと騒いで今にも暴れそうなのです」


「冒険者ごときを黙らせることもできんとは、情けない!」


 バール将軍が部下を叱責していると、仮面の冒険者2人がやって来るのが見えた。


 面倒な奴らだ…… もう、ここで始末してしまうか?


 と考えたその時


 ゴゴゴ……


 後ろで扉が開く音が聞こえた。


「ズラーマン、扉の仕掛けが解けたのか!?」


「いいえ、私が解いたわけではありません。恐らく、あの女の冒険者の魔力量に反応したのだと思われます」


「女の魔力量に?」


「どうやらこの扉には、一定以上のMPに反応する仕掛けが施されていたようです」


 ズラーマンは、扉が開く時に一瞬現れた魔法陣に気付いた。


 成る程…… この扉には、魔族でもかなり魔法に長けた者しか入れないように、特殊な魔法陣が組み込まれていたようだ。

 やはり、この部屋の中には、魔王様復活の鍵となる場所へ通じるヒントがあるに違いない!


 ズラーマンは確信した。


「バール将軍。我らの目的を果たすには、あの冒険者の力が必要かもしれません。今は2人に協力するふりをしておいてください」


「そうか…… 仕方有るまい」


 仮面の冒険者の女が、バール将軍の前まで詰め寄ってきて


「隊長さん! ボス部屋の魔物を倒したら、子供の捜索に協力すると約束したのに、どうしてこんな所で時間を潰しているのですか!? 早く下の階層へ向かってください!」


 バール将軍をどやしつけた。


 女の髪の毛が、魔力を帯びて逆立っている―― 今にも爆発しそうなその魔力の圧力に、バール将軍がたじろいでいると


「いやいや、我々は別に油を売っているわけではないのですよ。この部屋の中に、その子供が飛ばされた場所の手掛かりがあるのです。部屋の中をご覧なさい」


 ズラーマンに促され、女は部屋の中を覗き込む。


「あっ!? あれは石碑!」


「そうです。この部屋にも、転移の仕掛けがあると思いまして、ここに来たのです」


 ズラーマンは石碑に近付き、青白く光っている文字を見た。


 この石碑の文字は【魔族文字】だ!

 やはり、魔王様がこれを残されたに違いない!


 41── この階層のことだな。

 その下の魔法陣は、転移紋を発動させる仕掛けか……


 この魔法陣に火系の魔法を当てると第81階層へ飛ぶ。水系なら第72階層、それ以外なら第9階層へ飛ぶ、と書かれている。

 一見すると、一番深い第81階層へ飛ぶのが正解のように思えるが、それは間違いだ。第69階層に石碑があることを考えると、正解は『第72階層』だ!


「バール将軍。水魔法の使い手はおりませんか?」


「水魔法を使える者、こっちへ来るのだ!」


 バール将軍が大声で呼ぶと、1人の男がやって来た。


「ズラーマン、コイツが水魔法を使えるそうだ」


「それではこちらへ来て、あの石碑の魔法陣に水魔法を当ててください」


 ズラーマンにそう言われて、部下は困惑する。


「いえ…… 私は基礎魔法しか使えませんので、あそこに魔法を当てることは無理です」


「それは困りましたな…… それでは、あなた方は水魔法を使えませんか?」


 部屋の中で見守っていた2人の冒険者に尋ねると、男の方が首を横に振った。


「私達は水魔法を使えません。彼女は火と風の攻撃魔法を使えますが、私は土系の基礎魔法が使えるだけです。ですが、彼女の風魔法でその人を浮かせて、直接魔法陣に触れて魔力を流してみては如何でしょう?」


 仮面の男の提案にズラーマンは頷いた。


「では、その方法を試してみましょうか」



 しかし──


「何も反応しませんね……」


 魔法陣に直接触れて魔力を流したが、魔法陣は何の反応も見せなかった。


 まさか故障? いやいや、魔王様が造られた仕掛けが壊れることなど考えられない。ということは『基礎魔法』では発動しないということか?


「13階層では、同じような魔法陣に火球ファイヤーボールを当てたら、魔法陣が発動しましたよ」


 仮面の男がそう言うと、ズラーマンは納得する。


 魔族にとって『魔法』とは『攻撃魔法』のことだからな…… 水系の攻撃魔法を使えないことには、目的の第72階層へ飛ぶことはできない。何か方法はないのか?


 ズラーマンは石碑の文字を読み進めていく。そして『転移紋の移動条件は、転移紋が発動する度に変更される』という文章を見つけた。


 そういうことか! ならば、試してみる価値がある。


 ズラーマンが不気味な笑みを浮かべていると


「ズラーマン、何かわかったのか!?」


 バール将軍は、ズラーマンの様子に少し苛つき、大きな声を出した。


「ええ、いい手が見つかりました」


 そして、ズラーマンはバール将軍に説明した。


   ・・・・・・


「お前達の行き先は第9階層だ! 転移後は速やかに迷宮を脱出するように!」


 バール将軍は、第25階層のボス部屋で負傷した5名を含めた計9名を集め、彼らを転移させることにした。第9階層なら負傷者がいても問題ないだろう、と判断したのだった。


 仮面の女の風魔法【風刃ウインドカッター】が魔法陣に吸い込まれると、石碑が青白い光を放ち、石碑に触れていた9人は光の中に消えていった。


 ズラーマンは、すぐに石碑の文字を確認する。


 思った通りだ! 文章が変化したぞ!


 この魔法陣に風系の魔法を当てると第85階層へ飛ぶ。土系なら第72階層、それ以外なら第18階層へ飛ぶ…… 今度は『土系』だとおぉぉ!?


 再びバール将軍の部下を転移させることになった。

 第18階層となると魔物もそれなりの強さで、しかも第10階層のボス部屋を通ることにもなるため少人数では危険―― ということで選ばれたのは10名。

 バール将軍の部下は残り8名となった。


 再び転移が終了し、ズラーマンは石碑を確認する。


 よし! 今度こそ火系で第72階層へ飛べるぞ!



 仮面の女の撃った火球ファイヤーボールが魔法陣に吸い込まれる。


 ビカビカビカ!


 部屋の中に残っていた12名は、金色に輝く石碑に触れ、第72階層へと転移したのだった。

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