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第88話 マセル捜索(グレシアチーム)

「ベンプス先生、迷宮の地図はどこまで頭に入っていますか?」


「ここの調査の済んでおる48階層までは、記憶しておりますぞ」


「マセルの飛ばされた階層が48階層までならよいのですが…… とにかく、マセルが転移させられたという13階層の部屋を目指します」


 グレシアとベンプスが迷宮へ入っていこうとする後ろから


「神官長様。本当に3人だけで捜索を行うのですか? 私は戦闘は専門ではありませんし、もっと人数を集めた方が……」


 ロイルは『歴史学研究科』の教師で、調査のために何度も迷宮に入っている。

 しかし、調査隊は少なくとも20人以上で編成されるため、常に戦闘には参加することなくサポーターに徹してきた。

 だが、今は3人だけ…… 戦闘に不安のあるロイルは、迷宮に入るのに後込みする。


「心配無用です。ロイル先生は戦闘に参加する必要はありません。私とベンプス先生がいれば、戦闘能力は100人規模の調査隊にも引けを取りませんから」


 ロイルは2人の強さはわかっているが、戦闘中に自分を守ってもらえるのか不安だった。特にこの迷宮は、探索系の魔法が殆ど役に立たないため、突然魔物に襲われる危険性が高い。

 しかも、今回は何階層まで行くかも決まっていないのだから、不安は高まるばかり。


「急ぎましょう。マセルが救助を待っています」


「わ、わかりました……」


 ロイルは覚悟を決めて、迷宮に足を踏み入れた。


   ・・・・・・


 シュオン!


 風切り音と同時に、数匹のジガーが同時に真っ二つになる。

『戦慄の剣姫』グレシアの剣の前では、第13階層のジガーレベルの魔物は一瞬で骸となる。


 魔物を片付けたグレシア達は、目の前の扉の開いた部屋の中に入っていった。


「ここが、マセルくんが罠に掛かった部屋ですかの」


「そのようです。この部屋には20年以上前に1度来ましたが、その時は石碑があのように光っていませんでした」


「こ、これは! 石碑の文字が光を放つなんて…… 初めて見ました!」


 ここまでグレシアとベンプスの後を必死に付いてきて、身も心も疲れ果てていた筈のロイルだったが、石碑の発光現象に興奮し、石碑へと駆け寄ろうとした。

 彼は過去にもいくつか迷宮内の石碑を見ているが、このように光を放った状態の石碑を見るのは初めてだったため、研究者の血が騒いだのだ。


「ロイル先生、気を付けてくだされ。罠が発動するやもしれませんぞ」


 ベンプスの言葉に、石碑に触れる寸前だったロイルは、驚いて尻餅を付いた。


「そ、そうでした…… 興奮して我を忘れてしまいました」


 しかし、グレシアは石碑に近付くと躊躇なく石碑に触れる。


「触れただけでは何も起こりませんね。報告では、あの魔法陣が発動したために、マセルが飛ばされたそうです」


 石碑に刻まれた魔法陣を指差すグレシア。


「グレシア様、どうすればあの魔法陣が発動するのですかの?」


「報告では、魔法陣に向かって火球ファイヤーボールを撃った、ということです。私達も、あの魔法陣に攻撃魔法を撃ってみてはどうでしょう」


「そうですな。うまく魔法陣が発動すれば、マセルくんの飛ばされた階層へ行けるかもしれませんの」


「そうです。ベンプス先生、魔法をお願いします」


「わかりました。それでは!」


 攻撃魔法を撃とうとするベンプスを、ロイルは慌てて制止する。


「ベンプス先生、ちょっと待ってください! 石碑に向かって攻撃魔法を撃つなど、なりません! もしそれで石碑が壊れたら、折角の研究材料がパーになります!」


 大事な石碑に傷を付けるような行為など、研究者であるロイルには許し難いことであった。


「ロイル先生、お気持ちはわかりますが、今はマセルくんの救出が最優先ですぞ。それに、あの魔法陣の発動条件が魔法による攻撃だとしたら、いくら研究しても時間の無駄ですからの」


 ロイルは、ベンプスの言葉にハッとする。


 確かに、これまでも魔法陣の描かれた石碑はいくつも発見されているが、未だに発動させることができていないのは、研究者達の間に、石碑に向かって攻撃魔法を撃つ、という発想がなかったからかもしれない……


「済みませんでした。ベンプス先生、魔法を撃ってください」


「それでは、今度こそ行きますぞ!」


 ストーンジャベリン!


 石の槍が魔法陣に当たると思われた瞬間、それは魔法陣に吸い込まれる。そして──


 魔法陣は眩いばかりの光を放った!


「この石碑に触れるのです!」


 グレシアの叫びに、ベンプスとロイルも応え、3人が石碑に触れると!?


 3人同時に部屋から姿を消したのだった……


   ・・・・・・


「ここは!?」

「先ほどとは違う場所のようですの」

「あああ…… 本当に転移するなんて……」


 3人は、先ほどとは違う部屋の中にいた。


「マセルは、ここに飛ばされたのでしょうか?」


「うーむ…… そうとは言えませんの。この部屋には儂ら以外の足跡が……」


 迷宮には不思議な力が働いていて、いつの間にか魔物の死体が消えたり、迷宮の壊れた箇所が修復されたりする。当然足跡も消えるのだが、それでも完全に消えるまでには7日はかかる。


 マセルが飛ばされて、まだ2日目。

 マセルがこの部屋にいたのなら、まだ足跡が残っている筈であるが、見当たらなかった。


「どういうことでしょう?」


「ハッ!? 神官長様、魔法陣の発動条件が違っていたのですよ!」


「ロイル先生、発動条件とはどういうことですか?」


「仮説ですが、攻撃魔法の系統によって転移先が変わるのではないでしょうか?」


「あり得ますの…… 儂が使ったのは土系の魔法じゃから、マセルくんとは違う場所に転移したのかもしれませんの」


「それでは、ここはマセルの飛ばされた階層ではない、ということですか……」


「その可能性は高いですね。しかし、飛ばされる先が部屋の中だと仮定すると、迷宮内に部屋になっている場所は限られます」


「ベンプス先生、ここが何階層目かわかりませんか?」


 ベンプスは、既に部屋の中を隅々まで調べ終えていた。


「おそらく、45階層の南部屋じゃと思うんですがの…… 部屋の外も見てみんと、はっきりとは言えませんの」


「そうですね。では、部屋から出て調査しましょう」


   ・・・・・・


 ズバッ!


 体長3m以上もある魔物の首が、あっさりと飛んだ。


 チン……


「やはり、ここにはそれなりに手強い魔物が出ますね。少なくとも、昔私が潜ったことのある第35階層よりも深い階層なのは、間違いなさそうです」


 グレシアが倒したのは【魔獣級】に相当する魔物──【キラーウルフ】。

 ジャイアントベア程ではないが、通常では1匹でも20人規模の討伐隊を要する魔物に対しても、グレシアは瞬殺するのであった。


「ホッホッホッ、さすがはグレシア様ですの。ここが45階層じゃとすれば、そこを曲がった先に下への通路がある筈ですぞ」


 そして、ベンプスの予想通り、下への通路が見えた。


「45階層で間違いないですの」


 第48階層までの地図を全て記憶しているベンプスは、ここが第45階層だと結論付けた。


「それでは、ここから私達は更に下を目指します」


「神官長様。もし、マセルくんが上の階層にいたらどうなさるのですか?」


「その時はその時です。それに、今この迷宮には調査隊が入っているようですから、マセルが上の階層にいるなら、きっと調査隊に保護されるでしょう」


 ここには、まだ調査隊の足跡がなかったことから、調査隊がまだ上の階層にいるのは間違いない。


「そうですの。それに、部屋のある階層でここから1番近いのは41階層じゃが、魔獣級の魔物が出るのは42階層からじゃから、マセルくんなら1人でも何とかするやもしれんしの」


「ええ。あの子の秘めた能力は、かなりの物です。逃げ延びるだけなら、魔獣級の魔物でなければ、十分可能でしょう」


 グレシアとベンプスのマセルに対する評価は、思いの外高かった。


「確か、第40階層にはボス部屋があったと記憶していますが、まさかそこには……」


「ホッホッホッ。ロイル先生、さすがにボス部屋は、グレシア様以外は1人で突破するのは無理ですの。じゃが、いくら罠でもボス部屋には飛ばされんでしょう」


「そうですよ。さあ、急いで下へ行きますよ」


 グレシア達が第46階層へと向かった頃、第40階層のボス部屋では、戦いが始まっていたのだった。

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