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第79話 調査隊の足跡?

 現在私達は、第2階層にある湧き水の出る小部屋の前に来ています。


 その部屋の前には、足を広げると2m近くもある大きな蜘蛛の魔物【スパイーダー】が立ち塞がっていました。


 ズバッ!

 グサッ!


 ギシャアアアァァァ……


 断末魔の悲鳴を上げて動かなくなったスパイーダー。


「リーダー。ここらで、ちょっと休憩にしないか?」

「賛成! 水もあるし、ここで休憩しようよ」

「僕も疲れたから、休憩したいな」


 戦闘担当の3人は、今の戦闘で結構疲れたようで、休憩を申し出てきました。

 でも、ディアナさんのリーダーはまだ有効だったんですね。


「そうだね。じゃあ、食材も手に入ったし、ここで昼食にしよう」


「ディアナさん。『食材』ってもしかして……」


「勿論、その『スパイーダー』のことだよ。スパイーダーの足は、焼いて食べるとなかなかイケるよ。それに、今食べておかないと、いつ食べられるかわからないから」


 それはそうですけど、スパイーダーの足って、私の足くらいの太さがあって全体を細かい毛が覆っていて気味が悪いです。これを食べるのは結構勇気がいりますよ。


「シンディさんは、どうします?」


「食べるわ…… 大芋虫よりは千倍マシだしね」


 そうですね。他に食べる物もないし、私も無理してでも食べます。


「サポーター。俺の『大芋虫』を出してくれ。鍋に入れて煮て食べるから、火も用意してくれよ」


 そうでした。シベルスターさんは、アレを食べるんでしたね…… アレを見ると、私の食欲がなくなりそうですが仕方ないです。

 私はリュックを開けて、大芋虫の細切れの入ったビニール袋を取り出しました。


「あれっ?」


「どうした?」


 袋の中が空っぽですよ?


「袋の中身がなくなってます……」


「何だと!? まさかお前…… 勝手に食べたんじゃないだろうな!?」


 いや、私アレを食べる勇気なんてありませんから!


「シベルスター。大芋虫を倒してから、もう5時間くらい経つわ」


「はっ! そ、そうだった…… 俺としたことが、忘れていた……」


「シンディさん? どういうことですか?」


「迷宮で倒した魔物の死体は、倒してから4~5時間で消えるのよ」


 そういえば、迷宮の帰りには、倒した筈の魔物の死体が消えていることがあったけど、そういう理由だったのか。


「シンディさん、それってどういう原理なんですか?」


「知らないわ。でも、人の死体は残っているから、迷宮の魔力で産み出された魔物だけが、迷宮に取り込まれてまた産み出される、って言われてるのよ」


 迷宮が魔物のリサイクルをしている、ってことですか? じゃあ、食べた魔物はどうなるんだろ?


 考えると不思議なことだらけだけど、前世じゃ考えられない物がムセリットじゃ当たり前に存在してるわけだし、『そういうもの』と深く考えないでおこう。



 因みに、焼いたスパイーダーの足は『パサついた鶏肉』のような食感だけど、シンディさんの持ってきていた『味噌ダレ』を付けて食べると、なかなかグッドでした。


   ・・・・・・


「おかしいな……」

「そうね」

「確かに変だね」


 休憩を取ってから2時間後――

 現在私達は、第3階層へ下りる通路の前に来ています。


 前を行くシベルスターさん・セレーヌさん・セシルさんが、立ち止まって何か話し合っているようです。


「どうしたんだろ? 前の3人が止まってるけど、トラブルがあったのかな?」


 私がディアナさんに尋ねると


「マセルは変だと思わないかい? この通路で、一度も魔物と遭遇しなかったよね」


 ディアナさんの言う通り、確かにおかしいです。普通なら次の階層へ通じる道には、たいてい魔物がいる筈なのに、全く遭遇しないままここまで来ました。


「2人共、地面をよく見るといいわ」


「シンディさん、地面に何かあるんですか?」


「足跡がいっぱい残ってるのが見えないかしら?」


 本当だ。かなりの数の足跡と、荷車の轍が残っています。しかも、まだ新しい物みたいですね。


 途中の通路では、足下をじっくり見ることがなかったから気付かなかったけど、よく見ると足跡がずっと続いています。


「もしかして、僕達以外にも遠征に来ている人達がいるんですか?」


「それはないわ。遠征の日程は、重ならないように調整されているのよ」


 じゃあ、この足跡は誰の物なんだろ?


「おーい! 早くこっちに来てくれ!」


 シベルスターさんに呼ばれました。


「シンディ。お前はこの足跡をどう思う?」


「私は、国の調査隊の物だと思うんだけど」


「でも、姉さん。調査があるなら、前もって知らされる筈だよ?」


「セシルの言う通りね。調査のことなんて、私も聞いてないわ」


「シンディも聞いてないとなると、何か緊急調査があった―― ということかもしれないな」


 緊急調査!?

 ということは、今この迷宮では調査が必要な『何か』が起きている── ってことですか?


「ど、どうするんです? そんな緊急事態が起きてるなら、僕達は引き上げた方がいいんじゃ……」


「マセル、あなたはバカなの? これは絶好の機会チャンスよ。この足跡を追えば、次の階層までの道がわかるのよ」


 シンディさん。それって『ズル』じゃないですか?


「シンディの言う通り、これは好機だな。道がわかるだけでなく、魔物も調査隊が倒してくれているだろうから、俺達は楽して下へ行けるぞ」


「そうね。そうすると、私達は地図作りに集中できるわね」


「そうそう。探索の時間を大幅に短縮できるよ」


 それでいいのかな…… って思わなくもないけど、調査隊が先に魔物を倒してくれていれば、危険が減って有り難いですね。


 ということで、私達はそのまま第3階層へ進むことにしました。


   ・・・・・・


 成績優秀のパーティは、迷宮探索の1日目は第4階層まで、2日目で第7階層まで、3日目に第9階層まで、4日目は10階層の探索が終わったら帰還開始、そして5日目に迷宮の入り口まで戻ってくるそうです。


 ところが私達は、もう第7階層に下りる通路のある部屋まで来ています。


「思った通り上手くいったな」


「そうね。1日目で第6階層の探索まで終われたわ」


「明日は第7階層の探索からね」


「この調子なら、明日には第10階層まで行けるよ」


 私達は地図作りをする必要があるので、調査隊の足跡をずっと追い掛けるわけにはいかないけど、それでも随分と時間を短縮できました。


 魔物は次の階層へ通じる主道メインストリートを巡回する性質があるから、主道を進んでいると何度も魔物と遭遇する筈が、既に倒された後なので、ほとんど戦闘せずに済みました。


 とはいえ油断は禁物! これから朝まで野宿―― 交代で見張りをすることになります。


「じゃあ、見張りは2人ずつで2時間半で交代だよ。最初はセレーヌさんとセシルさん。次はシンディさんと私。最後はシベルスターさんとマセルで」


 ディアナさんの仕切りで見張りが決まりました。


 現在、午後10時。私の交代時間は午前3時ですね。



「マセル、起きなさい。交代の時間よ」


 んんん…… もうそんな時間ですか?

 今の時間は―― 午前1時か…… って、交代までまだ2時間もありますよ!?


「マセル。悪いけど、私達限界だから交代してね」


 えっ? 限界って、シンディさん達は午前0時半からだから、30分しか経ってませんよ?


「セレーヌとセシルが、11時に交代を頼んできたのよ。私達は2時間頑張ったわ」


 明日の起床は5時半ですよ。つまり、私達は4時間半も見張りするんですか?


「マセル、シベルスターは起こさない方がいいわ。アイツは睡眠の邪魔をされるのが1番嫌いだと言ってたから、今起こしたら殺されるわよ」


 じゃあ、2時間も私1人だけですか……



「シベルスターさん、起きてください。見張りの時間ですよ」


 ダメだ、全然起きてくれない…… もっと強く起こさないと。


「シベルスターさん!」


 ビュン!


 ひっ!?


 今、私の目の前を長剣の刃が通り過ぎた!?

 危うく殺されるところだったよ……



 結局、朝まで私1人で見張りをすることになりました。

 このままじゃあ、明日も同じ目に合いそうだよ。

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