表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/111

第74話 私も戦います!

 ウオオオーン!


 月明りの中、天に向かって威嚇の遠吠えを上げたデカルフ―― かなりの威圧感。

 そして、デカルフが走り出しました。


 それを待ち構える4人―― 後ろで見ている私にも4人の緊張が伝わってくる。


 デカルフが、先頭で盾を構えるシベルスターさんの15m前まで近付いたとき、突然炎が上がった!

 勿論、シンディさんの炎の嵐(ファイヤーストーム)です。


 でも、その攻撃は読まれていたのか、炎が上がった瞬間、デカルフは地面を蹴ってジャンプ! 一瞬でシベルスターさんとの間合いが詰まります。


「任せろ!」


 シベルスターさんが、デカルフの体当たりを盾で受け止めた! と思ったけど


「ぐわあっ!?」


 あっさりと弾き飛ばされました。



「シベルスター先輩、大丈夫?」


 30mも離れて戦況を見守っていた私達のすぐ側まで転がってきたシベルスターさんに、ディアナさんが声を掛けました。


「だ、大丈夫だ…… 大したことは…… ない……」


 そう言いながら、必死に身体を起こそうとするシベルスターさん。

 全然大丈夫ではなさそうですよ。


 デカルフは200kg以上の体重がありそうです。その巨体の勢いを真正面から受け止めたら、一溜まりもないよね。


「シベルスター! 生きてるなら、休んでないで戦闘に戻りなさいよ!」

 

 シンディさんの容赦のない声が聞こえてきました。


「わかっている…… 今すぐ戻る……」


 シベルスターさんは立ち上がったけど、まだフラフラしていてマトモに戦えるとは思えないよ。


「シベルスターさん、無理しない方がいいですよ」


「そうは言ってられない。俺が行かねば、皆がやられる」


 セレーヌさんとセシルさんが、デカルフの左右から連係で攻撃を加え、シンディさんが火球ファイヤーボールで援護しているけど、デカルフには殆どダメージがなさそうです。


 このままじゃジリ貧で、体力が尽きるのを待つだけ。


「ディアナさん。僕達も参戦しましょう!」


「でも、頼まれてもないのにしゃしゃり出たら、きっと怒られると思うよ。ここはもう少し様子を見よう」


 様子を見てる間にやられてしまわないか心配だけど、確かに勝手に行動したらシンディさんに怒られる可能性は高いかも。


「待ってろ! 俺がすぐに戻……」


 戦線に復帰しようと走り出したシベルスターさんだったけど、3歩も走った所で足がもつれて転倒!? 想像以上に大きなダメージを受けてるみたいです。


「僕が代わりに戦います。盾を借ります!」


 私はシベルスターさんの盾を奪い取ると、走りました。


   ・・・・・・


 ドカッ!


「えっ!?」


 デカルフの爪を盾で受け止めたセレーヌだったが、威力に負けて盾が弾かれた。


 デカルフは、態勢を崩したセレーヌに牙を伸ばす。


「させるか!」


 横からセシルが、身体ごとデカルフに突っ込んで、牙がセレーヌに届くのを辛うじて阻止。しかし――


 ドゴン!


 デカルフは、セシルの盾に思いきり頭突きを食らわした。


「うわっ!?」「きゃっ!?」


 セシルとセレーヌの2人は、もつれるように地面に転んでしまった。


 デカルフが2人に襲い掛かろうとする前に


 ドン! ドン!


 援護の火球ファイヤーボールがデカルフに命中!


 しかし、その攻撃は一瞬デカルフを怯ませただけで、デカルフはすぐさま目の前の2人に視線を戻すと、牙を剥いて飛び掛かっていった!


 今度こそ、絶体絶命の2人…… だったが!?


 ドゴーン!


 ゴワアアッ!?


 突然、200kg以上あるデカルフの身体が、弾かれたように横にふっ飛ばされた。


   ・・・・・・


 良かった…… 何とか間に合ったよ!


 身体強化マッスルブースト3倍を使って全力ダッシュしながら、デカルフの横っ面に思い切り右ストレートを叩き込みました!


 かなりの手応えだったけど、あれだけの大きさの魔物をパンチ1発で仕留めるのは、私では無理です。


「お二人共、大丈夫ですか?」


「だ、大丈夫よ……」

「僕も、大丈夫……」


 2人は盾を拾うと、すぐに立ち上がりました。ダメージは少なそうです。


「僕がシベルスターさんの代わりを務めます。防御は僕に任せて、2人は攻撃に専念してください」


「キミ1人で、アイツの攻撃を防ぐつもりなの?」


「姉さん、彼は学院一の力持ちだし任せてみようよ」


「そうだったわね。じゃあ、盾役はキミに任せるわよ」



 グルルルル……


 デカルフは私の攻撃を警戒しているのか、距離を取って様子見しています。


 ゴオオオォォォ!


 動きの止まっているデカルフに、シンディさんが炎の嵐(ファイヤーストーム)で攻撃。


 でも、デカルフは地面を蹴ってそれを躱すと、そのまま私の方に突っ込んできました。


 ガシッ!


 私はその体当たりを全力でガード。


「ぐぐぐ……」


 凄い衝撃だったけど、何とか受け止めました。


 すかさず、セレーヌさんとセシルさんが左右から槍で攻撃!


 ザシュ! ザシュ!


 ヒットしたけど、効いてない?


 怯むことなく再び飛び掛かってきそうなデカルフに、私は盾で体当たりして後退させました。


「だめだ。デカルフにダメージを与えるには、僕らの魔力じゃ弱いみたいだ」


 2人は魔力で武器を強化して戦っているけど、魔力が弱くてデカルフには通用していないようです。


 困った…… デカルフを倒す手段がないよ……



 ウオオオーン!


 デカルフが再び私に向かって突進!


 私は盾を構えて衝撃に備えます。


 ところが、デカルフは私の目の前でジャンプして、私の頭を飛び越えて、後ろの2人を狙った!?


 デカルフは、セレーヌさんとセシルさんの後方に着地すると、振り向かずにそのまま走りました。


 しまった!

 デカルフの狙いは、シンディさんだ!


「シンディさん! 逃げてえぇぇぇ!」


 私はデカルフを追い掛けようとしたけど、間に合わない……


 ボスッ


 シンディさんがデカルフに『何か』を投げつけた?


 その『何か』がデカルフの顔に命中したけど、それで倒せるわけがない…… 筈が?


 ギャン!?


 えっ? デカルフがいきなり倒れて、のたうち回っているよ?


 デカルフは狂ったように鳴き喚きながら、森の方へ走って行きます。


 急いでシンディさんに駆け寄ると


「く、臭~い!?」


 凄まじい刺激臭が漂ってきました。


「デカルフ対策に、臭気袋を用意しておいて良かったわ。アイツの鼻は人間の十万倍は利くから、この臭いは堪らない筈よ」


 確かに、トンでもなく効果あったみたい。

 まだ、のたうち回ってるのが見えています。


「皆、大丈夫か?」

「皆、無事で良かったよ」


 シベルスターさんとディアナさんも近付いてきます。


「シベルスター、あなたも大丈夫かしら?」


「ああ、済まない。もう大丈夫だ」


「だったら、今の内に第3休憩地点まで逃げるわよ」


 あの調子じゃ、デカルフはもう追ってこないと思います。


 皆、ホッとしたその時でした!


 グオオオガアアア!!


 聞き覚えのある『咆哮』が!?


「急いで逃げるわよ!」


 ドーン! ドーン! ドーン!

 バキバキバキ……


 私達は、慌てて音のする反対方向に走り出しました!



 クオーン!


 デカルフの断末魔のような悲鳴が、草原に響き渡った。


 振り返ると、ジャイアントベアがデカルフを頭からかじりつくシルエットが見えました……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ