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第73話 3回生の実力は?

 ジャイアントベアから逃げ切った私達――


 私としてはすぐにでも遠征を中止して学院に戻りたかったんだけど、誰も「遠征を中止しよう」とは言いませんでした。


 その理由は、遠征に失敗すると半年間も次の遠征に行けなくなるから。


 魔法コースの生徒には、冒険者や護衛士などを目指す人が多くいる。

 そんな生徒達にとって、遠征を成功させたという実績は、卒業後の進路に影響する重要事項なので、余程のことが起きないと撤退しないみたい…… って、ジャイアントベアが出たことは、十分に『余程のこと』だと思うんだけどね。

 あの状況で逃げ切れたのは奇跡に近いと思う。今度出くわしたら…… って、想像するのも恐ろしいくらいだよ。



 漸く私達は、第1休憩地点の滝に到着しました。


「ここまで来れば安心だ」

「やっと着いた」

「もうお腹ペコペコよ」

「やっと水が飲める」

「歩きっぱなしで疲れたわ」


 ここまで誰も一言も発せずに黙々と歩き続けていたけど、漸く安心したのか、皆声を出せるようになったみたいです。


「それじゃあ、今から昼食にするぞ。予定より2時間も遅れてるから、食べ終わったらすぐにここを出発するぞ!」


 当初の予定では、昼食は第2休憩地点で取ることになっていたけど、既に正午を大きく過ぎています。


「シベルスター。あなた、リーダーじゃないのに仕切ろうとしないでもらえるかしら?」


「そうよ、シベルスターが勝手に決めないでよね」


「そうだよ。ここはリーダーの意見を聞くべきだよ」


 相変わらずシベルスターさんの意見は、シンディさん達に反対されています。

 入学試験のときに、よっぽど嫌われるようなことをしたんだろうな。


「私はここで無理するよりも、しっかり休んで疲れをとった方がいいと思うけど、皆はどうです?」


 ディアナさんは、シベルスターさんと真逆の意見でした。


「私はリーダーに賛成! ここで、しっかり休憩しましょ!」


「僕もそれに賛成!」


「私もリーダーに従うわ」


 予想通り、全員ディアナさんに賛成です。


「ここで時間を取れば、日が落ちる前に第3休憩地点に着けなくなるぞ!? ジャイアントベアのことも気になるし、少しでも早く先に進むべきだ!」


 シベルスターさんは反発したけど、結局多数決でしっかり休憩を取ることに決定です。


 因みに、私は意見を求められなかったよ。


   ・・・・・・


「暗くなってきたな」


 日没が近付いていて、辺りは急激に暗くなってきました。


 私達は遅れを取り戻すために、第2休憩地点には寄らずに直接第3休憩地点へと向かっています。


「第1休憩地点をすぐに出発していたら、今頃着いていた筈なのに……」


「ごめん…… 私の判断ミスだったかな?」


 愚痴を溢したシベルスターさんに、ディアナさんが責任を感じて謝りました。


「過ぎたことは仕方ない。それよりも、地図が見えないから松明を用意してくれ」


 何だかんだ言いながら、シベルスターさんの道案内は安心です。

 シベルスターさんが先頭を歩くようになってからは、道に迷うことも魔物と遭遇することもなく順調です。


「リーダーの判断は間違っていなかったわ。疲れていたら、今よりも移動速度が落ちて、もっと遅れていた筈よ」


「そうよ。シベルスターの言う通りにしてたら、きっと途中で動けなくなっていたから、寧ろ良い判断だったわよ」


「そうだよ。シベルスターよりリーダーの判断の方が正しかったさ」


 ディアナさんをフォローして、シベルスターさんを否定する3回生の皆さん。

 それに対して、シベルスターさんはちょっと苛々してるみたい。


「そんなことはどうでもいい! 地図が見えないから、松明を用意してくれと言ってるだろ!」


 先頭を歩いて頑張っているシベルスターさんが、皆から邪険にされているのは少し可哀そうな気もする。

 その命令口調を止めて、もう少し謙虚な態度を取ったら、良いリーダーになれそうなのにね。もったいない。


「シンディさん、松明は用意してありますか?」


「マセル。あなたの荷物の中に『携帯トーチ』が入っているわ」


 私は急いでリュックから『携帯トーチ=懐中電灯』を取り出して、明かりを点けてシンディさんに渡しました。


「シンディ、何だその光が出る筒は!?」


「これはマチョリカ公国製の魔道具よ。これがあれば暗闇でも安心よ」


「凄いな! マチョリカ公国製の道具は!」


「シベルスター、それで地図も見えるでしょ? さっさと行きなさいよ」


「ああ、わかった! 皆遅れずに付いて来いよ!」


 シンディさんから懐中電灯を受け取ったシベルスターさんは、上機嫌になったみたい。懐中電灯を振り回して、光の動きを楽しんでいます。


 大人びていても、やっぱり子供だね。


   ・・・・・・


 ウオーン……


 さっきから、遠吠えが聞こえてくる。


 ウオーン…… ウオーン…… ウオーン……


 それも、かなりの数がいるみたい。


「あの遠吠え、ウォルフの群れかな?」


 ウォルフは、この森林地帯に棲息する狼の魔物―― 大型犬くらいの大きさで、群れで行動する夜行性の魔物です。


「そうだな…… 結構近いぞ。皆、油断するなよ」


「わかってるわ」


 これは戦闘になりそうです。見通しの悪い森の中じゃ、どこから襲われるかわからないから、一瞬たりとも気が抜けないよ!


「リーダーとマセルは、戦闘に参加しなくていいから。リーダーは自分の身を守っていてね。マセルは荷物をしっかりと守りなさいよ」


 シンディさん…… 私の扱いが酷いですね。


「シンディさん、森の中で戦うんですか?」


 火系統の魔法は、草木が邪魔で使いにくいと思います。


「心配ないわ。すぐに森を抜けて草原に出るわ」


 シンディさんの言う通り、すぐに私達は草原地帯に出ました。

 ここでウォルフを迎え撃つようです。


 ウオオーン!


 遠吠えが大きくなった!


「すぐに来るわよ! 皆、気を付けなさい!」

「数は約20だ! 気を抜くな!」

「楽勝ね!」

「姉さん、油断しちゃダメだよ!」


 前衛中央にセレーヌさん。

 セレーヌさんの右にセシルさん、左にシベルスターさん。そして、後方にシンディさんが控える、という布陣です。


 私とディアナさんは、少し離れた場所で応援…… 私達も戦闘に参加した方がいいんじゃないですか? 魔物の数が多いですよ?


 セレーヌさんとセシルさんの武器は槍で、シベルスターさんの武器は長剣。

 全員右手に武器を持って、左手には透明の盾を装備。戦闘準備万端です。


 森の方を見ると、暗闇に多くの真っ赤な小さな光が見える―― ウォルフの不気味な目が、私達を捉えているようです。


 ウオオオオ!


 一際大きな遠吠えの後、ウォルフの群れが一斉に襲ってきました!


 ゴオオオォォォ!


 セレーヌさんの前方20mの地点に、突然炎が上がった!


 シンディさんの炎の嵐(ファイヤーストーム)に、2~3匹の魔物が巻き込まれました。


 虚をつかれた魔物の群れは、左右に別れて攻撃してきました。


 右側から来る魔物に対しては、セレーヌさんとセシルさんの2人で迎撃。

 セシルさんが魔物の攻撃を防ぎ、セレーヌさんが攻撃するというスタイル―― 双子の姉弟は見事な連係です。


 左側から来る魔物は、シベルスターさんが対応。

 盾で魔物の攻撃を防ぐと同時に長剣を振り下ろす―― 一太刀で魔物が斬り裂かれました。凄いパワー!


 後方からは、左右両方に対して、シンディさんが火球ファイヤーボールで援護。

 魔物に命中しなくても、しっかりと牽制になっていて、味方をフォローしています。


「皆さん、強いですね!」


「当然だよ、マセル。あの3人は、武術科の中でもトップクラスの実力なんだよ」


 そうだったんだ。これなら、私達が手を貸す必要もないですね。


 ウオオオォォン!


 その遠吠えが聞こえた途端、半数まで減っていた魔物が下がっていきます。


「ディアナさん。魔物が撤退するみたいですね」


「違うよマセル…… ここからが本番だよ」


 その時、森の中から1匹のウォルフが出てきました。


 いいえ、あれはウォルフじゃないよ!?

 大きさが全然違う…… 虎くらいもある巨大な狼……


「デカルフだね。きっと、この群れのボスだよ」


「滅茶苦茶強そうですけど、大丈夫なんですか?」


「さあ? でも魔獣じゃないし、きっと何とかなるよ」


 ディアナさん、よくそんなに落ち着いていられますね。

 これは、私も戦闘に参加する準備をしとかないと!

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