第69話 ああ、そういう理由だったんだ
いきなり剣を抜いたシベルスターさん。
何をするのかと思ったら、そのまま剣先を地面に当て、線を引き出しました。
シベルスターさんが4本の直線を引き終わると、今度はセレーヌさんとセシルさんが槍を出して、4本の直線の間に何本もの横線を入れています。
どうやら『アミダくじ』でリーダーを決めるみたい…… いやいや、線が見えてるから、どれが当たりかバレバレですよね!?
シベルスターさんが、線の端に1から4の数字を書きました。
「よし。お前ら線を選べ!」
「この線を選んだ後、どうやってリーダーを決めるのか、説明してくれないかしら?」
シンディさんの疑問はもっともです。私にも、どうやってリーダーを決めるつもりなのか、検討つかないよ?
「フフフ。皆が線を決めたら、コイツを振るんだ!」
シベルスターさんが取り出したのは
「サイコロ?」
「そうだ! サイコロの出た目と同じ数字を選んだ奴がリーダーだ!」
シベルスターさん、ドヤ顔のところ済みませんが、サイコロの数字が5か6のときは、どうなるんですか?
「シベルスター。5と6のときはどうするつもり?」
「5と6のときは、もう1度サイコロの振り直しだ!」
「振り直しなんて面倒よ。ここにはちょうど6人いるんだから、線を6本に増やしてリーダーを決めればいいわ」
それって、私とディアナさんもリーダー決めに参加する、ということなの!?
シンディさん、流石に無茶苦茶ですよ?
私とディアナさんは、まだ2回生だよ?
「シンディ、バカなことを言うな! この2人はサポーターだぞ!?」
「サポーターがリーダーになれない、なんてルールはないわ」
「おい! セレーヌもセシルも、黙ってないでシンディに言ってやれ!」
「私達もシンディの提案通りでいいわよ」
「決まりね。じゃあ線を増やすわ」
シンディさんが線を2本付け加えて、セレーヌさんとセシルさんが横線を入れていきました。
・・・・・・
「シンディさん…… 本当にこれで良かったんですか?」
「問題ないわ。シベルスターさえリーダーにならなかったら良かったんだから」
シンディさんは、シベルスターさんがリーダーになる確率を減らすために、私とディアナさんまで巻き込んだようです。
「おい、リーダー! 本当にこのルートで迷宮まで辿り着けるんだろうな!?」
シベルスターさんは、リーダーになれなくて機嫌が悪そう。
「多分大丈夫だよ。地図によると、この方向に真っ直ぐ森を突っ切るのが最短コースになってるよ」
結局リーダーに選ばれたのは、ディアナさんでした。
はっきり言って、私はディアナさんのリーダーには結構不安を感じる。
『入学試験』のときは、周りを気にしないでドンドン進んで行ってたし……
「気を付けろよ! この先に魔物がいるぞ!」
「シベルスター、そんなことわかっているわ。リーダーじゃないんだから、あなたが一々指示しないでくれるかしら」
シベルスターさんの注意喚起は、結構大事だと思いますよ?
私はまだ『索敵』を覚えてないから、助かりますけど、他の皆さんはわかってるから不要なのかな?
「この先に魔物がいるんだね! じゃあ、急いで討伐するよ!」
ディアナさんが走り出したよ!? どんな魔物かも確認しないで、いきなり近付くのは危険だよ!
「よーし! ディアナに続くわよ!」
セレーヌさんとセシルさん、シンディさんまで走り出したよ!?
「おい待て! どんな魔物かも確認しないでいきなり近付くな!」
シベルスターさんが皆を止めようとしたけど、誰も止まりません。
「くそっ!」
シベルスターさんも、皆を追い掛けて行きました。
シベルスターさん、見掛けに依らず慎重派なんだね……
あんなにシンディさんが、シベルスターさんのリーダーを嫌がるから、シベルスターさんって『横暴で、何でも適当に決める、いい加減な人』だと思い込んでたけど、普通に慎重に行動する『リーダー向き』な人みたい。
それなのに、どうしてシンディさん達はシベルスターさんを嫌がったのかな?
私も遅れて後を追い掛けました。
私が追い付いたときは、もう魔物との戦闘中。
猿の魔物が2匹―― 2mくらいある凶暴な顔付きの魔物で、かなり強そう……
「マセル、遅いよ。コイツは【デビルエイプ】。力が強くて素早いから気を付けて」
ディアナさん? あなたは離れた所で見物ですか?
1匹は、セレーヌさんとセシルさんが対峙していて、もう1匹にはシベルスターさん。
シベルスターさんの少し後方にシンディさんがいます。
「ディアナさんは加勢しないの?」
「私達はサポーターだよ。戦闘には、基本不参加だろ?」
そうなんだ…… じゃあ、どうして先頭で走っていったんですか?
ドドドドドーン!
シンディさんが火球の連弾をデビルエイプに命中させました!
でも……
「あら? あんまり効いてないわ」
「当たり前だ! デビルエイプは火耐性が高いんだぞ! 魔法で攻撃するなら土系か水系だ!」
シベルスターさんが魔物の弱点を教えてくれたけど
「そう、残念ね。私、どっちも使えないから、後は任せるわ」
シンディさんは、アッサリと戦線離脱?
流石にそれはダメでしょ!?
「こらっ! シンディ、倒せなくても援護くらいしろ!」
「仕方ないわね。とりあえず、炎の嵐を試してみるわ」
シンディさんは、無詠唱で炎の嵐が使えます。
凄い! 一瞬でデビルエイプが炎に飲まれたよ!
グオーン……
炎の中から、魔物の悲鳴がしました。
ちょっと可哀想だけど、これで仕留めた?
炎が止むと、魔物がいない……
嘘? 火耐性の高い魔物を、跡形もなく焼き付くすなんて無理だよ?
「逃げられたな…… 炎を突っ切って、後ろから逃走したんだ」
セレーヌさん達の戦っていた魔物も、同時に退散したようです。
「考えなしに魔物に近付くから、逃げられたんだぞ! もっと慎重に作戦を考えてから行動したらどうだ!?」
「追い払えたんだから良かったじゃないか。シベルスターは、一々細かすぎるんだよ」
「セシル、分かってるのか!? デビルエイプは頭が良いから、次に遭遇したらもっと危険な目に遭うぞ!」
「シベルスター、うるさいわ。リーダーじゃないんだから、黙ってなさいよ」
「セレーヌ! 俺は、皆の安全のために忠告してるんだぞ!?」
うーん…… どう考えても、シベルスターさんの言うことは正しいと思うんだけど、他の方々はそういう慎重な行動が苦手みたい。
どうやら、そのせいでシベルスターさんにリーダーをさせたくなかったようだね。
シベルスターさんが12歳で、他は皆10歳以下。
命令口調で細かい指示をされたらうんざりするし、反発する気持ちもわかるよ。
でも私は、シベルスターさんにリーダーをしてもらうのが、1番良いと思うんだ。
この調子じゃ、先が思いやられる。
無事に遠征から帰ってこれるのかな?
心配だよ……




