第67話 2回生に昇級しました
マチョリカ公国へ旅行に行ってから、もうすぐ5ヶ月が経ちます。
今日も、いつものメンバーと昼食中――
「やったよ! 私も昨日昇級試験に合格して、今日から2回生よ!」
「エミリ、おめでとう!」
「これで、残りはマセルだけだな。で、マセルはいつ昇級試験を受けるんだ?」
リックくんとディアナさんは、一足早く昇級試験に合格していて、既に2回生になっています。エミリさんも合格したから、1回生は私だけになりました。
「それが、まだいつ昇級試験を受けるのか、決まってないんだ……」
私も昨日で、入科後6ヶ月経ったけど、まだベンプス先生から試験のことを言われてません。もしかして、ベンプス先生、忘れてるのかも?
「決まってない? 何言ってんだよ? 昇級試験は、自分から申請するだけだぞ」
えっ? 自分から申請するの!?
私、てっきり先生から試験を勧められるのかと思ってたよ……
「まあ、マセルは選択科を卒業しなくても、就職先は大丈夫だから、そんなことも知らない程余裕なんだよな」
「そうだったわね。こないだの『基礎教養の試験』の計算テストで、また記録更新してたもんね」
「そっちも凄いけど、私が驚いたのは『体力テスト』の方だよ」
計算テストは自分でも自信あったけど、体力テストの結果は、正直驚きでした。
前回のワースト8位から、いきなり『学院トップ』になったんです。特にリフト系の項目で、軒並み過去最高記録を更新してしまいました。
「重量挙げ200kgって、完全にバケモンだよ。魔法戦闘武術科の3回生の最高でも150kgだったのに」
今では、私の学院内での渾名は『計算魔人』から、『計算筋肉魔人』に格上げされているようです。
・・・・・・
今日は、ベンプス先生に昇級試験の相談をしよう!
期待でワクワクしながら、授業が始まるのを待っていました。
「ベンプス先生! 僕、昇級試験を受けたいのですが」
「ホッホッホッ。それじゃあマセルくん、キミは明日から2回生じゃ」
ベンプス先生から、いきなり昇級を告げられました。
「えっ? 僕、まだ昇級試験を受けていませんけど?」
「マセルくんが、十分に試験に合格できる実力があることは、儂も良くわかっておるからの。試験なしで昇級決定じゃよ」
まさか無試験で昇級させてもらえるなんて!
でも、昇級は素直に嬉しいですけど、そんなことで良いんですか?
贔屓されたみたいで他の人に悪い気がする……
「どうせ合格するのに、試験の準備をするだけ時間の無駄よ」
シンディさんは怒っていないみたい。因みにシンディさんは、先月3回生の昇級試験に合格しています。
「マセルくん、無試験で昇級なんて凄いね。よーし! 僕もすぐに昇級試験を受けて、3回生に上がるぞ!」
ボルツくんも、全然気にしてないみたいで良かったよ。
「ボルツは、まだ昇級試験を受けない方が良いわ。新しい攻撃魔法をしっかり身に付けてからでないと、今のままでは絶対に合格は無理よ」
「そ、そうかな…… じゃあ、止めておくよ……」
シンディさんにハッキリと否定されて、ボルツくんは涙目になりながら肩を落としてしまいました。
「マセルさん、昇級おめでとうございます。でも、これで1回生は私だけになったので、ちょっと寂しいです」
クラネス姫も祝福してくれました。後は――
「ベンプス先生!」
突然立ち上がったポリィさん! やっぱり、ポリィさんからクレームが入る……
「私、昇級試験を受けようと思います!」
そういえば、ポリィさんも2回生に上がってから6ヵ月以上経っているから、昇級試験を受けることができましたね。
「ホッホッホッ。ポリィくん、それではいつ昇級試験を受けるかね?」
「3日後に受けるので、よろしくお願いします!」
「ポリィ、大丈夫なの? ポリィも僕と一緒で、まだ無詠唱で1つも中級攻撃魔法を使えなかったよね?」
ボルツくんが、心配するのは当然です。
3回生の昇級試験は、迷宮ではなくて『草原』での魔物討伐です。
広い場所での戦闘では、素早く正確に魔法を撃てないと、魔物に命中させることは難しい。しかも、魔物の危険度も2回生の昇級試験より大きく上がります。
「シンディ。あんた、3回生になって困ってるでしょ?」
シンディさんが困ってる? どういうことですか?
私はボルツくんに尋ねました。
「ボルツさん、どういうことかわかりますか?」
「3回生になると『遠征』に行くことが許されるんだけど、流石にシンディ1人だけじゃ、遠征に行けないんだよ」
そうか…… 戦闘魔法技能科は、数が少ない上に3回生がシンディさんだけだから、パーティを組むことができない。1人だけでは危険だから、遠征には行けないのか……
「私のことは心配いらないわ。私は『魔法戦闘武術科』の人とパーティを組むから」
「嘘よ!『魔法戦闘武術科』の連中なんて、『戦闘魔法技能科』のことを見下してる奴ばかりよ。パーティを組めるわけないことくらい、私にはわかるわ!」
まさかポリィさんは、シンディさんのために昇級試験を受けるんですか?
ポリィさんが、こんなに『友達思い』だったなんて!? 私は、ポリィさんのことを誤解していたよ。
「か、勘違いしないでよ! 別に、シンディのために試験を受けるわけじゃないからね!」
ポリィさんはツンデレだったんだね。
「ポリィさん、やさしいんですね」
「マセル! あんたと同じ学年なんて、私のプライドが許せないわ。すぐに昇級して思い知らせてあげるから、覚悟してなさいよ!」
照れ隠しでそんなことを言うポリィさん―― 可愛いよ。
◇ ◇ ◇
そして、ポリィさんの昇級試験の日――
「ポリィくん、残念だったのお。ここで時間切れじゃ」
「残り8匹だったのに……」
ポリィさんは、地面に両手をついてガックリと項垂れています。
『2時間以内に10匹の魔物を討伐する』という試験でしたが、無情にも2時間が過ぎてしまいました。
「だから、無詠唱で中級攻撃魔法が使えないと難しい、って忠告したのに……」
ボルツくんの言う通り、ポリィさんの攻撃魔法の詠唱中に、魔物に逃げられていましたね。
「それに『索敵魔法』も使えないと、効率が悪すぎるわ。魔物を見つけるのに、時間が掛かりすぎよ」
シンディさんの言う通り、2時間で見つけた魔物は8匹でした。全部倒せても不合格でしたね。
これでシンディさんの遠征も、当分先になりそうです。
「マセル。5日後に遠征に行くから、あなたも付いてきて」
シンディさんにいきなり言われたけど――
5日後に遠征? 私も付いていく? って、どういうこと?
「言ってたでしょ?『戦闘魔法技能科』の人とパーティ組むって。
マセルには『サポーター』として参加してもらうことになったの。神官長の許可ももらってるわ」
『戦闘魔法技能科』の人とパーティを組む――
あのとき、シンディさんが言ってたことは、本当だったんですね。
つまり、ポリィさんの行動は、全くの『勇み足』でしたか……
ポリィさん、ドンマイだよ。次回頑張りましょう。




