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第65話 どうして私なんですか?

 今私達がいるのは、マチョリーノの北西40kmの場所にある『古代迷宮』の入り口前。

 この迷宮には特に名前が付いていませんが、小国にある迷宮は、数も少なく名前が付いていることの方が珍しいそうです。


 神官長は、この『古代迷宮』の探索も、今回の目的の1つだったようです。


「『バス』という乗り物のお陰で、ここまで予定よりも随分早く来れました。これなら、帰りは走っても夜までには都まで戻れそうです」


 古代迷宮は観光地になっているようで、都と迷宮間の定期便のバスが走っていました。そのお陰で、1時間でここまで来れたのです。


「あの…… 帰りはバスを使わないのですか?」


 都行きのバスも走っていますけど?


「当り前です。バスの料金に1人『大銅貨2枚』掛かりました。これ以上の出費は、できるだけ抑えないといけません」


 まあ、そうですね。昼食も凄く豪華で、結構な出費でしたもんね。



 私達は駅前のレストランで昼食を取りました。


 そこで食べたのは『魚料理』です。魚はすぐに傷むから、普通は漁港でしか食べられないものです。

 それが、漁港から200kmも離れているマチョリーノで、当たり前のように『タイのソテー』が食べられたんです。


 馬車なら5~6日は掛かる200kmという道のりも、汽車なら3時間―― 獲れたての新鮮な魚が、漁港から都に毎日運ばれて来るそうです。

 しかも、都には発電所があって、都の重要区画である駅前は勿論電気が通っていて、レストランには冷蔵庫まであるんですよ。


 そして、美味しい魚料理の後には、デザートまで。


 デザートは、何と―― アイスクリーム!

 冷たくて舌の上で溶けた後に広がる、まったりとした甘さ―― 最高でした!


 当然、それなりに高価な値段だったと思います。



 昼食の後は、2組に別れて行動することになりました。


『迷宮探索組』と『都見物組』


 都見物組は、ジョディさん・シンディさん・クラネス姫と謎の男性の4人で、神官長とベンプス先生と私が迷宮探索組―― 私、都に残って楽しく都見物したかったんですけど、最初から迷宮探索組に決められていました。


 しかも、何故か私だけ大きなリュックを背負っているんですけど…… それに、このリュック、30kgくらいありますよ。


 皆さんお忘れのようですが、私まだ8歳でこの中の最年少なんですよ。これ、完全に児童虐待ですから! と思っていたら


「マセル、あなたにはしっかり働いてもらって、昼食代分を返してもらいます」


 まさか、あの昼食代が私の『借金』なんですか!?



   ◇ ◇ ◇



「それにしても、古代迷宮が観光地になっているとは、驚きですの」


「そうですね。ここに『魔王の身体の一部』が封印されていることを、誰も知らないのでしょうか?」


「えっ? この迷宮にも『魔王の身体の一部』があるんですか!?」


 ということは、またネメアみたいな『魔王軍の将軍』がやってくる可能性もあるわけですよね…… そんな危険な場所に、どうして私を連れてくるんですか?


「そうです。しかしこの迷宮は、大国にある古代迷宮に比べて小さくて、第6階層までしかないのです。それに、ここにはゴーレムも配置されていなかった筈です」


 不用心なんですね。とすると、『魔王の身体の一部』は、すでに魔王軍の手に落ちているかもしれませんね。

 いいえ…… もしかすると、逆に『魔王の身体の一部』はここにはなくて、別の場所に保管している―― ということがありそうです。その方が、ここに置いておくよりは安心な気がしますよ。


 私が、そのように言うと


「ホッホッホッ。マセルくん、たとえ身体の一部とはいえ元は『魔王』。長時間その瘴気にさらされると、人間には毒になるんじゃ。だから、誰も近付けないように、迷宮の奥に封印してあるんじゃよ」


 それじゃあ、ここから他の場所に移すことはできないのか。


   ・・・・・・


 早っ!


 迷宮に潜って僅か2時間足らず―― それで、もう第6階層への階段に到着です。


『封印の迷宮』のニャンガーや『洗礼の迷宮』の砂サソリのような、強い魔物がいなかったとはいえ、神官長とベンプス先生の魔物を討伐する速さは異常です。


 正直、私必要ですか? この大きなリュックが邪魔で仕方ないんですけど。


 光魔法を使える神官長がいるから灯りは必要ないし、神官長は水魔法も使えるから飲料水も不要―― 一体このリュックには、何が入ってるんですか?


「この下が『最奥の間』の扉の前です。以前は特に仕掛けはありませんでしたが、今のマチョリカ公国の変わりようを見ると、何か仕掛けがあっても不思議ではありません」


 確かにそうですね。いきなり銃撃なんかされたら、一溜りもないです。


「それで、どうするんですか?」


「そこで、マセルくんの背負っておる荷物の出番じゃよ」


 リュックの中に入っていたのは


「これ、人形ですか?」


「そうじゃよ。これは、儂の魔法で作った『土人形』じゃよ」


 土人形―― それは、魔道人形のように人の姿をした土製の人形です。大きさは8歳の子供くらいで…… 動きませんけど? 壊れてるんじゃないですよね?


「それじゃあ始めようかの。今から、この土人形にマセルくんの意識を移すから、マセルくんはここに座って動かんようにの」


 よくわからないけど、私はベンプス先生に言われた通りに、目を閉じて床に座りました。

 

 ベンプス先生の呪文が聞こえてきました―― そして暫くすると


「マセルくん、目を開けてみなさい」


 私が目を開けると


 あれ? 何か目線が変だよ? いつもより低いような?


「マセルくん、動いてみなさい」


 クルッ!

 と1回転して辺りを見回すと、神官長とベンプス先生―― それに『私』の姿が見えますよ?


 ということは―― 私、土人形になってるの!?


   ・・・・・・


 土人形になった私は、一人で第6階層へ下りていきました。


 変な感じですが、思ったよりもスムーズに身体が動きます。


 目の前に扉がありますが、他には特に変わった物は見当たりませんね。

 そのまま、扉の前まで移動したけど、罠はないみたいですよ。


 全然何も起きないから、思い切って扉の横にあったボタンを押してみたら


 ゴゴゴゴゴゴ!


 普通に、扉が真ん中から左右に開いたよ。


 セキュリティ緩すぎ―― これじゃあ、誰でも『最奥の間』に入り放題だけど、大丈夫なの?


 部屋の奥には、お馴染みの『祭壇』がありますね。

 このまま祭壇に近付いてみましょうか!


 一応警戒しつつ、ゆっくりと進んで行きます。


 部屋の真ん中くらいまで来ると、祭壇の様子がよく見えますよ。


 あっ!? 祭壇の上にある『棺』の蓋が開いている!

 背が低いから、棺の中までは見えないけど、『蓋が開いている』ということは……


 私が、走って祭壇に近付こうとしたとき


 ガン!!


 という音が聞こえかと思ったら、いきなり目の前がブラックアウト……



 マセル!

 マセルくん!


 誰かの声が聞こえてきました。


「ううう……」


 頭がクラクラする……


「マセル、気が付きましたか?」


「神官長……」


「どうやら、土人形は破壊されたようですの」


 やっぱり、部屋の中には仕掛けがあったみたいですね。何をされたか全くわからないけど、土人形は一瞬で破壊されたみたい。私もダメージを受けたみたいで、まだ頭がクラクラして吐き気がする……


「『最奥の間』の中の様子はわかりましたか?」


 私は、祭壇の上の棺のことを話しました。


「すでに、ここの『魔王の身体の一部』は、魔族の手に渡ってしまったようですね……」


「それではグレシア様、急いでここから出るとしましょうかの」


「ところで、どうして土人形に僕の意識を移したんですか? 神官長なら、もしかすると壊されずに済んだかもしれませんよ?」


「土人形から意識を元に戻すには、必ず土人形を壊すんじゃよ。するとな―― 絶対に気分が悪くなるんじゃよ」


 つまり、この『気分の悪さ』は、避けられなかったのか……

 だから、私に魔法を掛けたんですね!

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