第59話 会える日が楽しみです
ムセリットには、私以外にも地球からの転生者がいるに違いありません。
それを、マッチョ爺さんに確認したいと思います。
「お前以外の転生者? そりゃ、おるだろうな」
随分と素っ気ない返事ですね。私としては、転生者についての詳しい情報が欲しいんですけど。
「儂が転生先を把握しておるのは、お前のように『儂が特典を与えた者』だけだ。他の者は、完全ランダムに転生するから、転生先を把握することは不可能だ」
でも、ムセリットには、絶対に転生特典をもらって転生した方がいますよね!
「確かに、お前が転生した1年後くらいに、転生特典を与えてムセリットへ転生した男が1人おる」
やっぱりいましたか! それも私の1年後に。
「その人は、どんな能力をもらったんですか?」
私の予想では、『地球の物を再現できる』というような、チート級の能力です。
「ソイツが望んだ能力は、『生前の記憶保持』と『男に生まれること』の2つだ」
「それだけ?」
予想に反する少なさだよ? それじゃあ、転生ポイントは余りまくりじゃないですか。勿体ない……
「ソイツが使った転生ポイントは『101』だぞ」
嘘でしょ!? まさか『男に生まれる』だけで96ポイントも必要だなんて……
「勘違いするな。『性別の決定』に必要なポイントは1ポイントだ」
あれ? 計算が合いませんよ?
確か、『記憶保持』は5ポイントだった筈ですよ?
「それはお前の場合だ。お前の『前世の記憶』など、殆ど転生後の世界に影響を与えんし、無害だから5ポイントで済んだのだ。だが、ソイツの記憶は余りにも影響力が大きすぎて危険だから、100ポイントなのだ」
記憶保持のポイントって、人によって違ったんですか!?
私は、安く済んで良かったと喜ぶべきなのか、バカにされてるみたいで悲しむべきなのか…… 複雑。
「100ポイントというのは『記憶保持』にかかる最大値で、もし他人が『ソイツの知識』を欲した場合は1万ポイント必要になる。因みに『お前の知識』なら6ポイントで済む。尤も、お前の知識など誰も欲しがらんだろうがな」
どうせ私の知識なんて、何の役にも立ちませんよ……
それにしても、『1万ポイント必要』ということは、『その人の知識』は完全に『チート級』ってことですよね。
「その人は、どんな人に転生したんですか?」
「確か、どこかの小国の王子に転生した筈だ」
そんなチート級の知識を持っておいて、更に権力者に生れたんですか!?
どれだけ人生イージーモードなのよ。
それに比べて私なんて、『オープンザマッソー』などという『しょうもない』能力を押し付けられて、こんな身体にされたんですよ…… その人が羨ましすぎて、涙が出そうだよ。
「何が『しょうもない能力』だ!? お前はその能力のお陰で、何度もピンチを脱しているだろ! もっと感謝しろ!」
そうかもしれないけど、どうせなら、もっと『イージーライフが送れそうな能力』が欲しかったよ。
でも、私と同じ地球からの転生者がいるのは嬉しくなります。
もしその人に会えたら、前世の話ができたりして!
そのまま仲良くなったら、『おいしい思い』ができるかも! 会える日が楽しみだよ。
とりあえず、今回はこれ以上ここに用もないし、すぐに帰らせてもらおうかな。
「待て! 前に言った筈だ。ここに来るときは、トレーニング漬けになることを覚悟しろ、と」
ええっ? 風呂に入れるのは嬉しいけど、また朝から晩まで筋トレして、これ以上身体が成長したら、またジョディさんに調べまわされることに成り兼ねないです。そんなことは御免ですよ。
私とマッチョ爺さんが睨み合っていると、
「あらあら、マセルくんが来てたのね」
あっ! その声は理沙絵師匠!
前回のお礼を伝えておかないと。
「理沙絵師匠、ご無沙汰しています。師匠のお陰で、何とか生き延びられました」
「マセルくんは、よく頑張りましたからね。私も嬉しく思うわ」
「ところで、理沙絵師匠はいつ頃転生なさる予定ですか?」
「私は転生しないことになったのよ」
「えっ!? 転生しない―― って、どうしてですか?」
理沙絵師匠に限って、ドラゴンさんみたいに『地獄行き』ってことはないでしょうし、何か理由があるのかな?
「私は今、『魂の管理人』になるための研修を受けているのよ」
『魂の管理人』になるための研修?
それはいったい?
「生前に一定以上の徳を積んだ者は、死後『魂の管理人』になる資格を得ることになっておるのだ」
マッチョ爺さんが説明してくれました。
「そんな仕組みがあったんですか! それじゃあ、『地球の魂の管理人』が理沙絵師匠に代わるんですね!」
「違うわ! 理沙絵の赴任先は研修が終わった後で決まるが、『地球の管理人』は当分儂が務めるわい」
ということは、マッチョ爺さんも生前に徳を積んでるんですか? どうも信じられませんね。理沙絵師匠を騙してるんじゃあないでしょうね?
「お前、無礼千万なことを考えておるな」
「じゃあ、生前どんなことをしたんですか?」
「覚えておらん。『魂の管理人』になる前に、前世のプライベートな情報は、全て消す決まりになっていて、儂の前世がどこで何をしておったのかは不明だ」
じゃあ、理沙絵師匠も『魂の管理人』になったら、ここでの記憶もなくなるわけですか…… 寂しいですね。
「仕方あるまい。前世の記憶が残っておれば、知り合いの魂が来たときに、公平な判断ができんかもしれんからな」
成る程。その辺はしっかり考えられているんですね。
「理沙絵師匠は、どんな研修を受けてきたんですか?」
「今は『世界の成り立ち』を学んでいるのよ」
世界の成り立ち? いきなり難しそうですね。
「基本、人間の棲む世界は、どこも環境がそっくりなの。それは、創造神様が人間の棲む世界を『コピー&ペースト』で創っておられるからなのだそうよ」
コピー&ペースト!? 何か思ってたより雑な創り方なんですね……
でも、1つの世界を創るのに、数億年分のエネルギーが必要なんだとか。
「じゃあ、どうして『魔法のある世界』と『ない世界』があるんですか?」
「それはね、世界の創造した場所の『魔素』の量のせいなの」
魔素の多い場所に創られた世界では、魔法が使える―― それだけの理由なんですか。ロマンも何もないですね。
「そこまでだ。これ以上は、『魂の管理人』になる者だけにしか教えられない『企業秘密』だ。知りたかったら、お前も徳を積んで『魂の管理人』になる資格を得ることだ」
マッチョ爺さんがなれたくらいだから、私もなれそうな気がするけど、面倒くさそうなんで私は遠慮します。
「心配せんでも、お前ごときではなれはせんわ。それよりも、トレーニングを始めるぞ」
結局、30日間みっちりと筋トレさせられました…… 今回理沙絵師匠には、研修の合間に寝技と間接技を教わりました。




