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第53話 クラネス姫の入学試験

 クラネス姫の入学許可をいただくために、すぐにベンプス先生は神官長のいる神殿に行きました。


 そして、暫くして戻ってきたベンプス先生が告げた言葉は


「明日の朝から、クラネスさんの入学試験が行われることに決まりましたぞ」


 クラネス姫達ての希望なら、あっさりと入学許可が下りる、と思っていたのに、神官長は、「入学試験を受けていただきます」と言ったそうです。


 しかもその入学試験は、私が受けた誰でも合格する『神殿の地下から宝箱を持ち帰る試練』ではなく、『カーラの森の迷宮の最下層まで行く試練』ということでした。


 私は、ボルツくんの昇級試験の時に『カーラの森の迷宮』に入りましたが、第1階層しか見ていないので、第2階層以降にどんな魔物が出るのかも各階層の構造も知りません。

『カーラの森の迷宮』は第二学院管理で昇級試験に利用されるくらいだから、強い魔物はいないとは思いますが、それでも初心者には危険過ぎると思うんです。


 これって、暗にクラネス姫の入学を拒否してるんじゃあ……


 一般家庭の子供しかいない学院に、天上人のような身分の、しかも他国の皇族が入学すれば、トラブルが起こるのは必至―― 学院側からすれば、入学させたくないのも当然と言えます。それで無理難題ともいえる試験を出して、クラネス姫に入学を諦めさせようとしたのかもしれませんね。


「ベンプス先生。試練は私1人で受けるのでしょうか?」


「ホッホッホッ。流石に1人ではきつすぎるからの、3人まで同行者を連れても構わんことになっておるよ」


 結局、クラネス姫の同行者を探すために、今日の授業は終了となりました。



 同行者3人ですか……

 クラネス姫1人だけで迷宮に挑むのは無茶ですから、同行者3人というのは妥当ですが、それでも明日までに3人集めるのは結構大変だと思いますよ。

 クラネス姫はどうするんだろ?


「困りましたね、マセルさん。今日中に後2人の同行者を見つけないといけませんね」


 後2人? クラネス姫は、いつの間にか1人目の同行者を見つけていたようです。

 きっと、姫様の従者が付いていくのかな? 


「マセルさん、後2人の方に心当たりはございませんか?」


 うーん…… 迷宮に潜るには、それなりの準備が必要です。飲み水確保のためにも、水魔法を使える人が欲しいですよね。


「クラネス様か同行者の方は、水魔法が使えますか?」


「マセルさんは水魔法を使えませんよね?」


「ええ。僕は使えませんが?」


 私のことは関係ないのに、どうして質問を返されたんだろう?


「では、使える人はいませんね」


 そうなると、私の知り合いで水魔法を使えるのは、エミリさんかポリィさんですが、迷宮探索となると攻撃魔法を使えるポリィさんに頼むのが良さそうです。


「水魔法の使い手には、1人心当たりがあります。それから、パーティには攻撃役とクラネス姫を守る壁役も1人ずついりますね」


「マセルさんは、攻撃と防御のどちらがお得意ですか?」


 またクラネス姫は、関係ない私に質問してきました。


「僕は、どちらかというと防御の方が向いている気がしますけど……」


「では、最後の1人は攻撃役がいいですね」


 攻撃役となると、魔法剣を使えるディアナさんか、攻撃魔法が得意なシンディさん。或いは、迷宮内で有効な土魔法の使い手であるボルツくんもいいですね。


 うーん、誰を紹介しようかな…… 

 私が悩んでいると


 ガラガラガラ……


 シンディさん・ポリィさん・ボルツくんの3人が、教室に入ってきました。


 これはグッドタイミングです! 早速、クラネス姫を紹介しなきゃ!


「皆さん、こちら今日見学に来られたクラネス様です」


「初めまして。私はクラネスといいます。明日この学院の入学試験を受けますので、これからよろしくお願いします」


 クラネス姫が3人に挨拶しましたが、3人は疲れ切っていて、心ここにあらずといった様子です。


「皆さん、どうかされたんですか?」


「マセル、聞いてくれるかしら。さっきまで私達、自習で『カーラの森の迷宮』に行ってたの」


 シンディさん達、『カーラの森の迷宮』に行ってたんですか!

 それなら、明日の試験対策を教えてもらえそうですね。

 クラネス姫、ツイてますね! って言おうとしたら、皆の様子が少し変です。


「そしたら出たのよ…… 迷宮の第3階層に『あいつ』が出たのよ……」


 ポリィさんが真っ青な顔で震えています。


「ポリィさん、『あいつ』って誰ですか?』


 ポリィさんがそこまで怖がるなんて、もしかして『あいつ』って―― ジョディさんのこと?


「決まってるでしょ!【幽霊】よ!」


「幽霊!? 迷宮に幽霊が出るんですか?」


「そうなんだよ…… 昔から噂はあったんだけど、まさか本当に出るなんて……」


 ボルツくんも、今にも泣きだしそうな恐怖の表情を浮かべています。


「あの…… 明日、クラネス様が『カーラの森の迷宮の最下層まで行く』という試練を受けられるのですが、クラネス様のパーティに参加していただけませんか?」


「『カーラの森の迷宮』へ行くですって!? 幽霊が出る所なんて絶対に御免だし、悪いことは言わないから試験をやめるべきよ」


「僕もポリィと同意見だよ…… 僕も試験はやめた方がいいと思うよ」


 ポリィさんとボルツくんには、参加してもらえそうにないですね。


「悪いけど、私も参加したくないし、試験もやめた方がいいと思うわ」


 シンディさんまで、そんなことを言うなんて…… 完全に目論見が外れました。


「クラネス様…… これは、試験は諦めた方がよろしいのではないですか?」


「いいえ。たとえマセルさんと2人きりでも、私は試験を絶対に受けます!」


 私の反対をよそに、クラネス姫は力強く『試験を受ける』と宣言なさいました…… って、今『私と2人きりでも』って言いませんでしたか!?


 もしかして―― 私はパーティメンバーに決定なんですか!?


 これはもう行くしかないの? 何かクラネス姫に諦めてもらう策はないの?


「クラネス様。今回の入学のことは、エリック様はご存知なのですか?」


 そうです。よくよく考えたら、入学はクラネス姫が急に言い出したことで、エリック皇子は知らない筈です。きっとエリック皇子は、クラネス姫が第二学院に入学されることに反対される筈。


「大丈夫です。エリック兄様は、私の希望に反対することはないです」


 言い切られました。


「そう…… どうしても試験を受けるつもりなら、1人紹介するわ」


 シンディさんが、誰か紹介してくれるようです。

 今更私が『嫌』だとは言い出せないし、こうなったら1人でもメンバーは多い方がいいです。


「ジョディなら幽霊も恐れないし、暇つぶしに参加してくれると思うわ」


 まさかの『ジョディさん』ですか!?

 確かに、あの人なら怖い物なんてなさそうだし、寧ろ幽霊が出ると知ったら喜んでついてきそうな気はします。



 そして予想通り――


「いいわよ。もしクラネスさんの試験がなくなっても、私とマセルくんで迷宮に潜って、幽霊の正体を暴いてみせるわ」


 ジョディさんは、あっさりと参加を承諾してくれましたが…… ジョディさんは、目的が違うみたいなのが心配です。

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