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第49話 絶対に協力しません

 ジョディさんに拉致された翌日――


 昼食を終えて教室へ行くと


「あらっ、マセルくん!」


 ひえっ!? どうしてジョディさんがいるんですか!?

 私は驚いて、入り口のところで立ち止まりました。


「マセル、ジョディと知り合いだったのか?」


 ジョディさんの隣にはシンディさんがいました。


 あっ! 2人並んでいると気付きましたよ。この2人―― ちょっと雰囲気が似ています。まさか……


「ジョディは私の姉よ。マセルのことを、ジョディに調べてもらおうと思って、来てもらったの」


 やっぱり、この2人は『姉妹』でしたか!

(因みに、シンディさんは9歳で、ジョディさんは13歳だそうです)


 知らない内に呪いを掛ける妹と、拉致って拘束する姉―― 思えば超危ない姉妹だよ。


「シンディに、『変わった子がいるから調べてほしい』って頼まれたのよ。それがマセルくんだったなんて、正に『運命』ね!」


 絶対に『悪い運命』なんで、ここで断ち切らせてもらいます。


「いいえ、只の偶然です。それに昨日散々調べられたので、もう結構です」


「ジョディ、もうマセルのことを調べたのか?」


「ええ、昨日検査したのよ。見た目は異常なのに、身体には異常なかったわ。

 でも、1つだけ思い当たる節があるから、また研究に付き合ってもらおうと思ってたのよ」


 また『付き合え』ですって!? 滅相もございません!

 後退る私……


「マセル、入り口に立ってると邪魔よ!」


 ポリィさんが、私を押し退けて教室に入っていきます。


「げっ!? 何でジョディがここにいるのよ!?」


 教室に入ってきたポリィさんが驚いています。


「あらっ? あなたは確か『応用一般魔法科』の生徒だったと思ったけど?」


「うっさいわね! 今は『戦闘魔法技能科』なのよ! それよりも、あんた…… もしかして、また私を調べるつもりじゃ……」


 あのポリィさんが、怖がっている?

 ジョディさんとは、これ以上は絶対に関わってはいけない。全力で追い払わないと!


「もうすぐ授業が始まるので、ジョディさんは『医術研究科』に戻った方がいいですよ?」


「問題ないわ。私は既に『医術研究科』の卒業資格を持ってるから、授業に出る必要はないのよ」


 卒業資格を持ってる? って、どういうことです?


「ジョディは学生でありながら、教授資格を取ってるから、来年から第二学院で医者として働くことが決まってるの」


「そうよ。私―― 天才なので!」


 天才かどうかは兎も角、人格的に医者にしてはいけない人だと思いますよ……



 結局、ジョディさんを教室から追い出せないまま、授業が始まりました。


   ・・・・・・


「はい、質問!」


「ホッホッホッ。ジョディくん、何を質問するのかの?」


 ジョディさんは『戦闘魔法技能科』の生徒でないのに、何故か私と一緒に授業を受けて、ベンプス先生に平気で質問までします。


「先生は、魔法を使うためのエネルギー―― 俗に言う『MP』とは、どういう物だとお考えですか?」


 そういえば、『MP』ってなんだろう? 考えたことなかったです。

 前世では、身体を動かすのに必要なエネルギーは、カロリーで表されました。何分間歩くと何kcal消費する―― とか。

 魔法の場合も、火球ファイヤーボール1発で何MP消費―― みたいな感じなのかな?


 そういえば、魔法を多く使うとお腹が空くのが早い気がする―― ということは、魔法を使うとカロリーが消費されるのかな? つまり、『MP=カロリー』ってこと?


「ホッホッホッ、なかなか難しい質問をしますのお」


 ベンプス先生は黒板に絵を描き出しました。


「儂は、魔法に必要なエネルギーも、身体を動かすのに必要なエネルギーも、元は同じ物だと思うんじゃよ。そのエネルギーの内で、魔法に使える物を『MPマジックパワー』と呼んでおるのではないかの」


「はい。私の研究でも、空腹時では睡眠を取ってもMPはほとんど回復しない、という結果が出ているので、MPも食事が元で作り出される、と考えられますね」


 MPのエネルギー源も『食事』ということは、やっぱり『MP=カロリー』ってことかしら?


「そうすると、食事を多く取る身体の大きい人ほど『MPの総量が多い』ということになりそうなのに、身体が小さくてもMPが飛び抜けて多い人もいるのは何故でしょうか?」


「そうじゃのう…… 身体の大きい者はMPの貯蔵庫も大きいかもしれんが、重要なのはMPの『質』なんじゃよ。貯蔵庫が小さくとも、高密度で質の高いMPを作れる者ほど総量が多くなる、と儂は思うておるの」


 なるほど! 財布が大きくても銅貨ばかりより、小さい財布でも金貨ばかりの方がお金持ち―― みたいなものですね…… あんまり良い例えが思いつきませんでしたよ。


「ベンプス先生。それでは、その『質の差』はどうして生まれるんですか?」


 私も質問してみました。


「それはやはり『才能の違い』かのう…… 訓練によって、ある程度は質を上げられるけれど、どうしても『越えられん壁』はあるからのお」


 すると、ジョディさんが突然立ち上がりましたよ!?


「私も、確かに『才能の差』はあると思います…… ですが、私は『研究者』として、絶対に『質の差の秘密』を暴いてみせます! そして、皆が質の高いMPを持てるようにしてみせます!」


 ちょっとジョディさんがカッコ良く見えますけど、それって医者の仕事ですか?


「『医術研究科』って、病気や怪我を治すことが目的じゃないんですか? 魔法の研究もしてるんですか?」


「勿論、『医術研究科』の主な目的は、病気や怪我の治療のための研究だよ。治癒術師だけじゃ、全ての病人に手が回らないし高額だから、庶民の生活を守るために医術を研究してるのよ」


 ですよね。じゃあ、魔法の研究は何のためにするんでしょう?


「そして、病気の中には魔力が原因で発症するものもあるんだよ。キミは『魔力暴走』って聞いたことがないかな?」


 魔力暴走?

 わからないので首を捻る私。


「『魔力暴走』とは、溜まりに溜まって行き場のなくなった魔力が暴走して、身体の内部から溢れ出した魔力によって肉体が膨張し、最後には破裂する、という恐ろしい病気なんだ。そして私は、キミの急激な肉体の変化は、その『魔力暴走』が関係している、と睨んでいるのよ!」


 そ、そんな恐ろしい病気があるんですか!? っていっても、私とは無関係な病気ですが、ちょっと気になります。


「ベンプス先生、ホントにそんな病気があるんですか?」


「滅多に起こらん現象じゃから、儂も今まで5例しか聞いたことがないのお。原因もまだ分かっておらん筈じゃよ」


「マセルくん。そういう訳だから、キミには絶対に協力してもらう必要があるんだよ。私は、キミの身体を調べ上げて『魔力暴走』の原因を絶対に突き止めてみせるよ! そして、私の名声を王国中に轟かせるわ!」 


 思いっ切り『私欲』のためですね…… MPの質の話はどこへ行ったんですか?


「キミだって『魔力暴走』で死にたくないよね? だから、キミには『実験体モルモット』として、私の研究の役に立ってもらうからね!」


実験体モルモット』って…… 絶対に協力しませんよ!


 でも、また拉致られそうな気がする……

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