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第42話 ネメアの力

 魔王軍六将軍の1人『ネメア』は、今から1月程前に『洗礼の迷宮』に入った。彼女の目的は、『洗礼の間』の棺に納められた『魔王の身体の一部の奪還』であった。


 しかし、『洗礼の間』の扉には特殊な封印魔法が掛けられていて、ネメアの力を以てしても扉を開けることができなかった。


 ネメアは扉の封印を解くために、情報を集めることにした。その結果、『ジャガル帝国の一部の皇族だけが、封印を解除する方法を知っている』ということが分かった(この事は、ジャガル帝国内では、誰もが知る公然の事実だった)。


 そこでネメアは、ジャガル帝国第一王女『フローナ』を標的に決めた。

 フローナは、丁度学院を卒業して帝都に戻ってきたばかりで、身の回りの世話をする侍女の募集をしていた。そこで、ネメアは侍女としてフローナに近付き、封印解除の方法を聞き出そうと考えたのだった。

 当然、フローナの侍女には、身分のしっかりした者にしかなれないのだが、そんなことはネメアにとっては何の問題もなかった。魔法で身分を誤魔化し、簡単に侍女になることに成功したのだった。


 所詮15歳の小娘―― 簡単に懐柔して、封印解除の方法を聞き出せるだろう。


 しかし、そのネメアの予想は裏切られた。

 フローナは危機意識が思いの外高く、親しくなっても、皇族に纏わる事に関しては決して話さなかった。


 こうなったら、力尽くで聞き出すしかない!

 ネメアがそう考えていた矢先、フローナの所に妹の『クラネス』が遊びに来たのだった。


 コイツはチョロい!

 ネメアがクラネスと親しくなるフリをすると、クラネスは簡単に心を許し、ネメアの質問に何でも答えてくれる。

 そしてネメアは『洗礼の間』に関する情報を聞き出すことに成功―― ネメアは、どうやってクラネスに『洗礼の間の扉を開かせるか』を考えることにした。


 そんなとき、ネメアと同じ『魔王軍六将軍』のズラーマンが『魔王様の身体の一部の奪還に成功した』という報せが届いた。


 ズラーマンに先を越された!?

 焦ったネメアは、すぐに行動に移すことにした。


 皇帝の従弟がクーデターを起こしたので、『急いで洗礼の間の神器を確保しないといけない』という嘘の報せをクラネスに届けることにしたのだ。


 ネメアは【超速飛行魔法】を使ってクラネスの元へ行き、転移魔法で送られてきたかのように見せかけた。フローナからの手紙というのも勿論ネメアによる偽造であったが、クラネスはそれに気付かず、ネメアの演技にまんまと騙されたのだった。



   ◇ ◇ ◇



「1人ずつ殺すのは止めだ。全員まとめて地獄に送ってやる!」


 ネメアの突き出した右腕に魔力が集まっています。


 これって、ヤバいやつだ…… ネメアから凄まじい魔力が感じられます。


「むっ!?」


 ネメアの足元から岩の槍が突き出しました! ベンプス先生の攻撃魔法です!


「小賢しい……」


 しかし、ネメアは翼を出して空中にエスケープ―― ベンプス先生の攻撃は不発に終わりました。


 これで万事休す!? と思われましたが


「何!?」


 空中に逃れたネメアに向かって跳ぶ一陣の風―― 神官長が一瞬で間合いを詰めていました!


「人間ごときが…… 舐めるなあぁぁ!」


 ドゴゴオオオォォォン!!


 ネメアは右手に溜めた魔力を、神官長に向けて撃ちました!

 そのお陰で、魔法は私達から大きく反れましたが、魔法によって発生した爆風が私達を襲います!

 ベンプス先生が、土壁を出して皆を守ろうとしましたが、爆風の威力が凄まじく土壁は殆ど破壊され、防ぎきれません。

 身が焦げるような熱風から、私は全身で気絶しているクラネス姫を庇いました。



 暫くして爆風が治まると、立っている人影が見えました。


「チッ、殺し損ねたか……」


 立っていたのはネメアでした。

 しかし、ネメアの左肩から下は、刀で斬り裂かれたのか、今にも千切れそうにブラブラしていました。神官長の攻撃が命中していたようです。


 ですが、肝心の神官長は!? 神官長の姿が見えません。


 まさか、神官長がやられた!?

 至近距離で、ネメアの魔法を食らったのでは、いくら神官長でも只では済まない……


 私達が絶望感に打ちひしがれる中、ネメアは祭壇に向かって歩きだしました。


 ネメアは、祭壇の上の棺から『何か』を取り出すと、それを別の箱に移しています。


 目の前で『魔王の身体の一部』が持ち去られようとしていますが、私達は動くことができず、黙って見ているだけでした。


 再びネメアが私達の方に近付いてきました。


 このままじゃ、全員殺される!?


 ところが、ネメアは私達を素通りして『洗礼の間』を出ていきました。


 私はネメアと目が合いましたが、憎悪の籠った目で睨まれただけでした……


   ・・・・・・


 ネメアは、余裕をもって立っていたわけではなかった。


 ネメアの全魔力を回復に充てないといけないほど、神官長の一刀により受けたダメージは深刻なものだった。


 その為ネメアは、マセル達を殺すことよりも、『魔王の身体の一部』の回収を優先することにした。


 マセル達が殺されずに済んだのは、正に神官長が与えた傷のお陰であった。


   ・・・・・・


「神官長様! しっかりなさってください!」


 神官長を瓦礫の下から見つけましたが、見るからに危険な状態です。魔法の直撃を受けて、大火傷を負っていました。


 私は、ボロボロになった神官長の姿に、呆然として動けませんでした。


「早くこの『霊水』を飲ませるのじゃ!」


 ベンプス先生が、汲んできた霊水を神官長の口に注ぐと、奇跡が起こりました!

 神官長が目を開けたのです!


 それにしても、『霊水』って病気だけじゃなくて、怪我にも効果抜群なんですね!


 火傷の部分に『霊水』をかけると、神官長の身体は見る見る修復され、すぐに元通りになりました。『霊水』は、ゲームやラノベでいう『エリクサー』のような物なのかも知れません。

 私達も『霊水』の力で怪我を治しました。



「そうでしたか…… ネメアに『魔王の身体の一部』を奪われたのですね」


「儂らがいながら、どうすることもできませんでしたわ……」


「仕方ありません。命が助かっただけでも幸運でした」


 本当にその通りです。それにしても


「どうしてネメアは、私達を見逃したんでしょうか?」


 あの状態では、私達は動くこともできなかったから簡単に殺せたはずです。

 私は完全に死を覚悟しましたよ。


「きっと、グレシア様の与えた傷のダメージが大きくて、魔力を治療に集中させたのでしょうな」


 ネメアが『霊水』で怪我を治さなかったのが不思議でしたが、魔族にとって『霊水』は猛毒のような物なのだそうです。


「それなら、急いでネメアの後を追いましょう」 


 私達は『霊水』の力で怪我は治りましたが、体力までは回復していません。

『霊水』なしでネメアと戦ったら、今度こそ死ぬ可能性が高いですが、ネメアは神官長から受けたダメージの残っている状態だから、今がネメアを倒す大チャンスといえます!


 ということで、私達はすぐにネメアの後を追うことにしました。

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