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第35話 気絶中の出来事

 私が意識を無くしていたとき、『封印の間』では事件が起きていたようです。



   ◇ ◇ ◇



 マセルが気を失った、ほぼ同時に――


 ドロドロドロ……


『封印の間』の壁が高熱で溶かされて穴が開き、中から2人の人が現れた!


 1人は、真っ赤な腰まである長い髪の美しい女性。

 もう1人は、赤髪の女性に手を引かれた、青髪の幼い女の子。


 赤髪の女性は、入り口の方に目をやると


「あら! 珍しいわね。この部屋に人がいるなんて……」


 うつ伏せに倒れているマセルを見つけ、近付いていく。


 1人でここまで来れた、ということは、この倒れている男性は、かなりの強さのようだけど、ここで力尽きちゃったのかしら?

 この部屋には戦った後がないし、ゴーレムもまだ動き出したばかりのようだから、死んではいないようね。


 赤髪の女性が、倒れているマセルを冷静に観察していると


「ママ、マシェルお兄ちゃん!」


 幼女が倒れている男性を指差して、そう言いだした。


「マリン。マセルお兄ちゃんは、こんなに大きくないわよ。それに、お兄ちゃんは遠くに行ってるから、こんな所に来ることもないのよ」


 赤髪の女性=エルサは、幼女=マリンに諭すように話したが、それでもマリンは首を横に振って


「ママ、マシェルお兄ちゃん!」


 再びそう言った。


 マリンはマセルに会いたいのかな?

 マセルはマリンの面倒をよく見てくれてたから、マセルがいなくて寂しいのね。

 でも、こんなに大きな男性とマセルを見間違るなんて…… きっとマリンはマセルの姿を忘れちゃったのね。マセル、可哀想……


 エルサがマセルのことを不憫に思っていると、


 ズン! ズン! ズン!


「ママ、ゴレムたん来た!」


 そうだったわ。ゴーレムが動いてたのよね。


「マリン、すぐ片付けるわね」


 そう言うと、エルサは右手を頭上に突き上げる。

 右掌の上に火の玉が現れ―― それは、見る見るうちに巨大な炎の塊となった!


「ファイヤークラッシュ!」


 炎の塊が6つに分かれ、6体のゴーレムに降り注ぐ。

 ゴーレムは、まるで炎の塊に押し潰されたかのように、頭から溶けながら崩れていったのだった。


「あー、スッキリした! たまにはこうやって魔法を打っ放さないと、ストレス溜まるもんね!」


『封印の間』には特殊な結界が張ってあるため、どんなに部屋の中が壊されても、2時間後には修復する。

 また、迷宮のゴーレムが壊れた場合、2時間後に消滅し、10時間後に再生されて新たなゴーレムが生まれるようになっていた。


 エルサは時々、『封印の間』まで来ては、ゴーレム相手に強力な魔法を放って、ストレス解消していたのだ。


「さーて、この部屋の湧き水を持って帰るわよ。ここの水で料理を作ると、凄く美味しいのよ!」


 エルサは、ストレス解消が終わると、『湧き水=聖水』を桶に入れて持って帰るのだった。


「さあ、マリン。帰りもこの抜け道を通って帰るわよ。良いわねマリン―― この道のことは、絶対に誰にも言っちゃダメよ」


「うん! マリンとママのひみちゅ!」


 エルサは、元々はこの『封印の間』まで来るために、迷宮の入口から入っていたのだが、毎回内部構造の変わる迷宮を行くのが面倒くさくなってきた。

 そのため、唯一場所の変更のない『封印の間』まで、直通で行ける道を作ろうと考えた。

『封印の間』の壁は、何度壊しても修復されるため、毎回穴を開ける必要があるが、壁の手前まで通じる『秘密の抜け道』を作り上げたのだ。


「急いで帰るわよ、マリン」


 この男性が目を覚まして、私達のことを見られたら不味いわ―― そう思ったエルサは、さっさと帰ることにした。


「バイバイ、マシェルお兄ちゃん!」


 マリンはマセルに腕を振りながら、エルサと一緒に、秘密の抜け道に消えていった。


   ・・・・・・


 エルサ達が出ていってから約1時間後――


『封印の間』の中に、新たな人影が現れた。


 紫色の髪の男―― 髪の毛が不自然にズレている。その足元には小犬が1匹。


「まさか、こんな所に通じていようとはな…… よくあの穴を見つけた、レイジングプードルよ!」


 男は小犬の頭を撫でた。小犬は、フワフワした尻尾をブンブン振って喜んでいる。


「あの棺の中に、魔王様のお身体の一部があるのか……」


 男は、警戒しながら祭壇に向かっていく。


「厄介な番人がいる、と聞いていたが…… 私に恐れをなして、逃げよったか!? ハッハッハッ!」


 男は、棺の中から『腕』のような物を取り出すと、大事そうに持ってきた箱に納めた。


「もう、ここに用はない。帰るぞ、レイジングプードル!」


 アン!


   ・・・・・・


 私は朦朧とする意識の中で、紫色の物体が動いているのを見ました。


 犬の鳴き声が聞こえたような気がする……


 こんな所に犬がいるはずないから、これはきっと夢……


 夢を見てるということは―― 私、まだ生きてるの?


 ゴーレムはどうなったんだろう?


 そのまま、私の意識は再び遠のきました……


   ・・・・・・


「マセル、しっかりなさい!」

「マセルくん、目を覚ますのじゃ!」


 誰かの呼ぶ声が聞こえる……


 ううう……


 まだ頭がボーッとするけど、必死に目を開けようとしました。


「気がつきましたか? マセル」

「マセルくん、儂らが分かるかの?」


 私の目に、2人の顔が映ります。


「神官長様…… ベンプス先生…… 無事だったんですね」


 私の目に涙が滲んできました。


「全員無事ですよ。ゴランド先生とマチルダ先生には、外で待ってもらっています」


 良かった! 無事にゴーレムを倒せたんですね! って、ゴーレムで思い出しました!


「あ、あの…… この部屋にいたゴーレムは?」


 そうです。ここにも、ゴーレムがいた筈です。


「この部屋の中には、ゴーレムは見当たりませんよ」


 あれっ? 確かに、部屋の中にゴーレムはいませんね?

 どこかへ行ったのかしら?


「それよりもマセル、あなたはどうやってこの部屋に入ったのですか?」


 神官長に尋ねられました。

 私は落とし穴に落とされたこと、そこから階段を上ったら、この部屋に通じていたことを説明しました。


「そうですか…… では、祭壇に近付きましたか?」


「いいえ。この部屋に入ってすぐに気を失ったので、祭壇には近付いてません」


「やはり…… それでは、あの棺を開けた者が『他にいる』ということですね」


 えっ!? 棺が開いていた!?

 そ、それじゃあ……


「グレシア様の心配が、現実の物となったようですの……」


「ええ…… 封印されていた『魔王の身体の一部』が、何者かに持ち去られたようです」


 ええっ!? それって一大事じゃないですか!?

 このままじゃあ、初代神官長の予言通り『魔王』が復活してしまいますよ!


「どうやらグレシア様が怖れていた、最悪の事態が起きているようですの。これから、どうなさるおつもりですかの?」


 これはすぐに王様に報告すべきですよ!

 今すぐ王都に戻りましょう!

 それから―― これ以上私を巻き込むのだけは許してください!


「この後の行先は既に決めています。『封印の迷宮』を出た後は―― 南の森を抜けて『ジャガル帝国領』へ向かいます」


「ジャガル帝国領へ!? それでは『あそこ』へ向かうのですかの?」


「ええ、そうです。ジャガル帝国領にある【洗礼の迷宮】へ向かいます!」


 ちょっと待ってください! 確かレムス王国とジャガル帝国は、20年前に戦争をして、未だ冷戦状態だって聞きましたよ!?


「そうなると、命懸けですのう」


「ええ…… ジャガル帝国の者に見つかれば、只では済まないでしょうね」


「そんな危険な所に行く必要があるんですか!?」


 私は、思わず声を荒げてしまいました。


「初めから行く予定だったのですよ。『洗礼の迷宮』にも『魔王の身体の一部』が封印されているのですから」


 神官長は静かに答えました。


「そうじゃと思ってましたわ。『封印の迷宮』の探索だけなら1日で終わるのに、5日も予定を取ってましたからの」


 ジャガル帝国にある『洗礼の迷宮』へ行くことは、決定事項のようです。

 だったら、せめて私だけは王都へ帰らせてください!


「それでは、迷宮を出たら、マセルくんを王都に送っていきましょうかの」


 本当ですか!? 良かった! 皆さんの事は心配ですけど、私がいても足手まといですからね。


 私がホッと胸を撫でおろしながら立ち上がると、神官長が私をジーッと見つめています。

 まさか…… また、嫌な予感がしてきましたよ……

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