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第31話 罠に掛かったようです

 階段に向かって、音を立てないように慎重に歩いていく私達。


 先頭の神官長が、階段まで後20mという所で


 クション!

 やっぱりくしゃみが出てしまった私……

 ヤバい!? と思ったけど、ゴーレムに動く気配はありません。


 ホントにこのまま通過できるとしたら、このゴーレム達―― 無能すぎるよ!

 と思ったけど、やっぱりそんなうまい話はなかったです……


 神官長が、階段まで後15mに迫ったその時!


「皆、下がりなさい!」


 神官長が叫ぶと同時に、すぐさま全員後ろに飛び退きました。


 ドゴーン!!


 凄まじい音がした後、地面がグラグラと揺れています。


「結界が張られておったようですの」


「ええ。それにこの結界は、単なる検知機能センサーではなくて、物理的な障壁にもなっているようです」


 どうやら、階段から15m以内に侵入する者があると発動する結界が張られており、しかも、バリアのような不可視の壁になっているみたいです。


 1体のゴーレムが動いています。さっきの音は、そいつが攻撃した音でした。


 地面を揺らすほどのパンチ力―― 食らったら一溜まりもないですよ……


「神官長様。どうやって結界を突破するおつもりですか?」


「まずはゴーレムを片付けてから、ゆっくりと結界を解くのが良いでしょう」


「分かりました。それでは!」


 ゴランド先生がゴーレムの横に素早く回り込み、ゴーレムの身体に突きを放ちます!


 ガキン!


 しかし、鈍い音がして槍が弾かれました。


「ぐっ!? なんて固さだ…… 腕が痺れたぞ」


「気を付けるのですぞ! ゴーレムは魔法耐性だけでなく物理耐性も高いからのう」


 ビシ! ビシ!


 マチルダ先生も鞭の攻撃を試みましたが


「駄目です…… 私の鞭もダメージを与えられません」


「ストーンジャベリン!」


 続いて、ベンプス先生の魔法攻撃! 無数の石の槍が、ゴーレムに向かって飛んでいきます!


 ドンドンドンドン!


 石槍は全弾ゴーレムの身体に命中! した筈なのに……


「ホッホッホッ。これは参ったのう…… 儂の魔法もダメージを与えられんようですのう」


 こうなると、もう神官長の攻撃だけが頼りです。


「今のゴーレムの動きで分かりました。ゴーレムの弱点は頭部です」


 流石は神官長。もうゴーレムの弱点を見抜いたんですね! 確かにゴーレムは、ベンプス先生の魔法に対して、頭部だけは腕で防御していました!

 とはいえ、ゴーレムは優に3mはあるから、頭へ攻撃するのは難しそうです。


 それでも神官長ならやってくれる筈!


 シュオン!


 出ました! 神官長の神速の抜刀術! ところが――


「やはり防がれましたか……」


 まさか…… 神官長の抜刀術まで防がれたんですか!?


「【風刃ふうじん】では、ゴーレムに傷をつけることは無理のようです」


「風刃? クション!」


「風刃とは、抜刀によって起こした真空波を飛ばして、敵を切り裂く技じゃよ」


 ベンプス先生が解説してくれましたけど、神官長―― そんなマンガみたいな技を使っていたんですね! 凄いです!


「やはりゴーレムを倒すには、やいばを直接叩き込むしかなさそうです」


 これは見逃せませんよ。今正に、『戦慄の剣姫』とゴーレムの人知を超えた戦いが始まろうとしているんです!


 私がドキドキワクワクしていると


 ビシッ!?


 いきなりマチルダ先生に鞭で打たれました! 訳も分からず吹っ飛ばされた私……

 何? 何で私が鞭で打たれたんですか? マチルダ先生に抗議しようと思ったら


 ドゴーン!!


 私がさっきまで立っていた場所に、ゴーレムのパンチが!?

 わすれていました…… ゴーレムは他にも3体いたんでした……


「ありが クション! ございま クション!」


 マチルダ先生が突き飛ばしてくれなかったら、絶対に私は死んでましたね……


 いつの間にか、ゴーレムは4体全て動き出しています。


 1体でも手強いゴーレムが4体も!?

 これって、大ピンチですよ!


「ゴーレムに囲まれないように、一ヶ所に留まらず展開するように!」


 神官長の指示が飛びます。

 ですが私―― クション!

 くしゃみが出る度に、動きが止まってしまうんです……


「ベンプス先生! マセルを先に行かせましょう! 協力してください!」


「分かりましたぞ」


 私は2人が何をするつもりなのか分からないですが、神官長が私だけ下の階に逃がしてくれるようです。


「マセルくん。儂と神官長の同時攻撃で結界に亀裂をいれるから、儂の合図で階段に向かって走るのじゃよ」


「マセル。結界の効果を無効化できるのは、ほんの3~4秒です。躊躇なく走り抜けなさい」


 それなら、他の皆さんも一緒に逃げましょうよ。


「私達はゴーレムを全部片付けてから下へ向かいます。マセル、あなたは私達のことは気にする必要はありません」


「ホッホッホッ。その通りじゃよ。それに、どうせ帰りもこの部屋を通るからのう。後で倒すのも今倒すのも同じことじゃよ」


 フラグじゃないかと心配になりますが、ここは大人しく従った方が良さそうです。

 私は頷きました。


「ベンプス先生。行きますよ!」


「いつでもどうぞ!」


 神官長とベンプス先生が結界に向かって攻撃する間、ゴランド先生とマチルダ先生がゴーレム達の注意を引き付けています。


「はっ!」

「ストーンジャベリン!」


 ドーン!!


 2人の攻撃が結界に当たった瞬間――


「今じゃ!」


 私は全力で走りだしました!


   ・・・・・・


 階段を下りると、そこは――


 美しい泉が広がっています。泉の中央には石の橋が架かっていて、向こう岸にある扉の前に続いています。


 きっとこの泉の水が聖水で、あの扉の向こうが『封印の間』なんですね。


 クション!


 そうだった。すぐに聖水を飲まなくっちゃ!


 私は泉の水を手に掬って飲みました。


 !?

 身体の中の邪気が祓われたような、浄化されたような清々しい気分になりましたよ!


 そして10秒経過――

 くしゃみは出ません! シンディさんが私に掛けた呪いが、解けたようです!

 勿論、私の身体に変化はありませんでしたけどね。


 皆さん、大丈夫かしら? 早く下りてきてください。


 本当なら、呪いが解けたことを喜びたいところですが、上で戦っている神官長達が心配で、それどころではないです。


 私が階段の方を不安気に見つめていると


 バタン……


 えっ? 今後ろから、扉の閉まるような音が聞こえたよ?


 振り返って泉の方を向いたけど―― 特に変わった様子は無さそう……


 空耳だったのかな?

 そう思いながらも、気になって仕方がないです。

 結局私は、扉に近付いていきました。


 あれっ? 何か光ってるよ?

 扉から、薄っすらと青白い光が見えました。近付いてよく見ると、光っているのは文字のようです。


「この文を読むべからず?」


 思わず声を出して読んでしまった私……


 その瞬間! 足元に穴が!?


 うわあああぁぁぁ!?


 このトラップ―― 酷すぎるよ!?


   ・・・・・・


 ドスン!


 痛ああぁぁぁ!

 尻餅をついてしまった私……


 下が芝生だったお陰で、大したダメージではなかったけど


 ここはどこ?


『封印の迷宮』は地下8階の筈なのに―― まさかの『地下9階』ですか!?


 周囲には、火の点いた松明が何本も飾られていますが、それでも結構な暗さです。


 広さは―― 20m四方といったところでしょうか。私が周囲を確かめていると


 ガガガガ!


 何かが起動したような音が聞こえました。


 嫌な予感しかしませんよ……


 音のした方向で、影が立ち上がったのが見えました。


 ああ、間違いないです……

 あの3m程もある人型のシルエット……


 誰ですか!? こんな所にゴーレムを仕掛けたドSな人は!?

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