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第29話 話が違いますよ

『封印の迷宮』は、私が思っていた以上に広いみたい。


 この迷宮は、ラノベやゲームなんかによく出てくる階層構造の迷宮で、地下1階から始まって最深部は地下8階だそうです。

 しかも深さは地下8階で変わらないけど、『ローグライクRPG』みたいに、入る度に階層の構造が変化するらしく、マップを作ることができないそうなのです。


 普通なら迷子になりそうですが、ベンプス先生の遠視魔法のおかげで、私達は迷うことなく進むことができていて、迷宮に潜って約3時間―― 現在、地下3階に到達しています。


 ここまでの隊列は、先頭から、ゴランド先生・マチルダ先生・神官長・私・ベンプス先生の順に縦一列に並んで歩いてきました。


 迷宮内は明かりがないので当然真っ暗ですが、神官長の『ライト』の魔法によって、まるで前世のリビングの照明のように明るく照らしています。

 私は、こんな明るかったら魔物に見つかってやばいんじゃあ…… とか思ってましたけど、その心配は全くの杞憂でした。


 ゴランド先生―― 只の嫌みな先生だと思っていたけど、滅茶苦茶強いです。

 そして、マチルダ先生も、ゴランド先生に負けず劣らずの強さです。


 ゴランド先生は槍使いで、マチルダ先生は鞭使い。

 たった今も、狼か大型犬のような魔物4匹と遭遇しましたが、ゴランド先生の槍が2匹を串刺しにし、マチルダ先生の両腕に持った鞭が、残りの2匹を切り裂きました!

 もう瞬殺ですよ! 魔物の影が見えた瞬間には、2人共動いていましたもん!


 流石は神官長が『第二学院最強クラスのパーティー』と言うだけのことが有り、ここまで危なげなく来れています。


「この辺りで、昼食にしましょうか」


 神官長の言葉で、先生方が食事の準備を始めました。

 ベンプス先生が土魔法で簡単な土鍋を造り、神官長がその中に水魔法で水を満たしました。ゴランド先生が薪に火を点け、マチルダ先生が風で火を起こしました。

 でも、肝心の食材はどこですか?


 もしかして『収納魔法』でしまってあって、異空間から取り出すの!?

 ラノベでよくある光景が見られるかも―― って、期待いっぱいで待っていると、神官長が懐から包丁サイズの小型の刀を取り出して、今倒した大型犬のような魔物を捌き出しましたよ!?


 まさか食材って…… その魔物ですか!?


「それでは私が【ダンジョンウルフ】の煮込み料理を作りましょう」


 神官長…… 見た目はおしとやかな淑女なのに、その包丁捌きは豪快です。

 魔物ダンジョンウルフの首から上を切り落とし、腹を割いて内臓を取りだしていきます。


 はっきり言って、グロいですよ……

 私は見てるだけで気分が悪くなり、食欲がなくなってしまいました。


 神官長が、捌いた肉と何かの粉(調味料?)を土鍋に入れてグツグツ煮込んでいる姿は、まるで魔女が怪しい薬を調合しているみたいです……


「さあ、できましたよ!」


「神官長様の手料理が頂けるなんて! ゴランド、感激の極みです!」

「ああ、いい香りですね!」

「ホッホッホッ。ダンジョンウルフの肉はクセが強いから、食べ過ぎには注意ですぞ」


 皆さん、美味しそうに食べていますが、どう見てもそれ―― 怪し気なゲテモノ料理ですよ…… 


 私は「お腹が空いてませんから」と言って、料理に手を付けませんでした。


   ・・・・・・


「うぐぐぐぐ…… 済まんがマセルくん。先頭を頼む……」


「ご、ごめんなさいね…… マセルくん、先頭は任せます」


「マセルくん、後ろは儂が見るから心配せんでも大丈夫じゃよ」


「ゴランド先生もマチルダ先生も、あの程度の肉でお腹を壊すなんて……」


「神官長様、面目ございません……」


 ゴランド先生とマチルダ先生は、あの料理を食べた後お腹の調子を崩したみたいで、隊列を変更することになりました。


 先頭から、私・神官長・マチルダ先生・ゴランド先生・ベンプス先生。

 まさか、私が先頭を歩く嵌めになってしまうなんて…… って、話が違いませんか? 私は、付いていけばいいだけじゃ、なかったんですか?

 正直、さっきの魔物ダンジョンウルフと遭遇しても、勝つ自信ありません。


 ビクビクしながら先頭を歩く私に


「マセルくん。その突き当たりを右に曲がると、地下4階への階段じゃよ」


 ベンプス先生が教えてくれました。


 良かった! 敵と遭遇しないで地下に下りられそうですよ。


「じゃが、左側から魔物が近づいて来とるから、気を付けるんじゃぞ」


 へ!? 私、もう曲がり角の手前ですけど……


 と、その瞬間――


 グルルルル!


 出たああぁぁぁ!?

 心の準備もできないまま、魔物ダンジョンウルフと遭遇!

 数は―― 5匹もいるよ!?


「マッスルブースト3倍!」


 考えている余裕もなく身体強化を発動して、魔物の攻撃に備える私。


 そして―― 飛び掛かってきた魔物ダンジョンウルフに、無我夢中で右ストレートを叩き込みました!


 ドゴン!


 手応え十分!

 だったのに…… 魔物ダンジョンウルフは、よろめきながらも倒れません。

 動きはジャドーダックスに比べて遅いけど、身体が大きいだけあって耐久力は桁違いのようです。


 後ろにいた魔物ダンジョンウルフが2匹、ゆっくりと近付いてきますよ。

 ちょっと待って!? 今度は3匹同時に飛び掛かってきそうな、そんなやばそうな雰囲気が……


 ガーッ!!


 うわーっ!? やっぱり来たああぁぁ!?


 と、そのとき―― 私の目の前の地面から土の壁が生えてきました。

 そして、ほぼ同時に天井からも土の塊のような物が落ちてきて


 ギャオーン!?


 魔物ダンジョンウルフの悲鳴が私の耳に響きました。


「ホッホッホッ。マセルくん、危なかったのう!」


 どうやらベンプス先生が援護してくれたみたいです。


 私の目の前の土壁が勝手に崩れ、そこにはペシャンコに潰れた魔物ダンジョンウルフ3匹の死体が残っていました。

 内臓が飛び散っていてグロいです……


 後の2匹は逃げ去ったようですね。


   ・・・・・・


 地下4階に下りた私達。


「ここから先は、今までよりも魔物が一段と強力になります。マセル、慎重に進みなさいね」


 神官長! 私、さっきの魔物ダンジョンウルフも倒せないんですよ!

 それなのに、まだ先頭を歩かないとダメなんですか?


 私は、思いきって神官長に

「もう今日はここで諦めて、一度学院に戻りましょうよ!」

って、進言しようと思ったのに、


「マセルの呪いを一刻も早く解くために、皆頑張りましょう」

「私も体調が悪いなどと言っておれません! 彼のために急ぎましょう!」

「そうですね。私も這ってでも先へ進みます」

「ホッホッホッ。マセルくんのためにも、次の階へ急ぎましょうかの」


『私のために』って…… そんな風に言われたら、「戻りましょう」って言いにくいじゃないですか!?


「そ、そうですね…… じゃあ、僕も頑張ります……」


 思わず、心にもないことを口にしてしまいました。


   ・・・・・・


 4階に下りてから、通路がそれまでと比べて随分と広くなっています。


 前がよく見えて進みやすく感じる反面、これって、魔物の大きさに合わせているんじゃないですよね? 不安も大きくなってきます。


 そんなことを思っているとすぐに、前方に動く影を発見!

 向こうも私達に気付いているようで、近付いてきます…… そりゃ、ライトで眩しいくらい光ってますから、目立ちますよね。


 見えてきたのは―― 良かった! 大きくない、ネコのような魔物。


「これは厄介な相手に出会いました。マセル、気をつけなさい」


 こいつ、見た目は小さいけど、きっと動きが素早くて攻撃が当てにくいのかな?

 とか思ってると、


 ブシュウウウ!


 ネコの身体から煙みたいな物が出たかと思うと、みるみる身体が変化して――


 ト、トラですか!? やばいくらい大きくなりました。


「ベ、ベンプス先生!」


 私はベンプス先生に助けを求めました。ところが―― 後方からもトラの魔物が近付いてきてますよ…… ベンプス先生は、そっちの対応をする様子。

 ってことは…… こっちは私が相手するしかないんですか!?


 無理! 私じゃ絶対に勝てませんって!

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