表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/111

第28話 封印の迷宮の秘密

 私は今朝、神官長とベンプス先生、他2名の先生と一緒に、ハムストンの側にあるという【封印の迷宮】にやってきました。


 他2人の先生とは、1人は『マチルダ』という女性の先生で、もう1人は私が第二学院に来たときに最初に会った、『ゴランド』先生でした。2人は魔法戦闘武術科の教官だそうです。


 私達は、ベンプス先生の用意した転移魔法の魔法陣が描かれた紙に乗って、一瞬で迷宮の入口の前に着きました。相変わらず便利すぎます、転移魔法。


 迷宮の周囲の雰囲気は『カーラの森』に似てますね…… また、マッドチワワが出ないか心配になります。


「神官長様。今日の迷宮探索はどういう目的で行うことになったのでございますか?」


 神官長に尋ねたのはマチルダ先生。


「グレシア様。儂も気になっておりましたわ」


 ベンプス先生も理由を知らないようです。


 すると、神官長の顔がとても厳しくなりました。


「今から今日の探索の目的を話します。ですが、今日の事は絶対に他言無用です。よろしいですね」


 ええっ!? そんな大事な話を、一生徒の私が聞いていても大丈夫なんですか!?

 という私の不安を他所に、神官長は話し始めました。


「近頃王都の周辺で魔物の目撃情報が増えていることは、皆存じておりますね?」


 全員が頷きます。


「本来魔物が出現するのは、魔素の溜まりやすい迷宮や森の側くらいで、町の近くに現れることなど滅多にありません。ところが最近は、王都周辺で魔物発見の報せが毎日のようにあります」


「確かに魔物のことは気になりますが―― それと『封印の迷宮』の探索が、どう繋がるのです?」


 ゴランド先生が言う通り、話の繋がりが見えません。


「魔物出現の原因が分かったのです。いいえ―― 正しくは、原因についての手掛かりが見つかったのです」


「手掛かり―― ですか? 神官長様。それで、その手掛かりとは?」


「魔王です!」


 神官長は自信満々に仰いましたが、ベンプス先生とマチルダ先生は、そのワードを聞いて首を傾げています。


「魔王…… とは、お伽噺に出てくる『あの魔王』の事でしょうか?」


 ゴランド先生は、思いがけない言葉に戸惑っているようです。


「そうです。そのお伽噺に出てくる魔王の事です」


   ・・・・・・


 レムス王国には、魔王の出てくる有名なお伽噺がある。


 昔々、まだレムス王国が存在しなかった頃―― 人族は魔王の驚異に晒されていた。

 魔王の軍勢の前では、人族の武力はあまりに無力で、次々と町が滅ぼされていったのだった。


 人々は死を待つだけの絶望の中で、神に祈ることしかできなかった。


 人族の滅亡が目の前まで迫っていたある日―― 人々の祈りは遂に神に届いた!

 神の遣わした5人の勇者が、突如現れたのだ!


 5人の勇者は圧倒的な力で、見事魔王を討ち果たし、魔王の身体は勇者達の手により5つに切り裂かれた。


 5人の勇者は皆国を興し、魔王の切り裂かれた部位は、それぞれの国で封印されたのだった。


 そして人々は平和な暮らしを取り戻したのでした。めでたしめでたし……



 という、よくある英雄物語であった。


   ・・・・・・


「魔王など、お伽噺の中だけの存在ではなかったのですか?」


「私も、つい最近まではそのように思っておりました。しかし、私は3日前に初代神官長様の書き残された文書を見つけたのです」


 初代神官長―― って、あの入学試験の時に私が見た、残留思念のお爺さんのことですよね。


「初代神官長様の文書ですって!? それは大発見ではありませんか! いったいどこで見つけられたのですか!?」


 マチルダ先生…… ちょっと興奮しすぎですよ。


「文書は、そこにいるマセル達が入学試験の日に持ち帰ってきた宝箱の中にありました。宝箱を開けるのに苦労しましたが、そこには変な形のアクセサリ? とその文書が入っていたのです」


 そういえば、あの時持ち帰った宝箱は、神官長に渡したんでした。


「あの、神官長様…… 僕が見た人は、本当に初代神官長様だったんですか?

 あの時は、本物かどうか判断は保留になった筈ですが……」


「ええ。あの時は、真偽を確かめる術がありませんでしたが、見つかった文書を『真実の眼』で鑑定した結果、それが初代神官長様の記された物であることがわかったのです」


 そうだったんですか! ということは、私が見た残留思念は本物の初代神官長だったんですね…… 肖像画とは全然違いましたけど、肖像画は本人よりも『かなり美化して描かれるもの』ということがよくわかりました。


「文書には、魔王の身体の一部が『封印の迷宮』に封印されている―― ということが書かれていました。私は、それを確認するためにここへ来たのです」


『封印の迷宮』という名前からして、何かが封印されているのは察しがつきますが、まさか『魔王の身体の一部』って!? それが頭だったら気持ち悪いですよ。


「ふむ。それが事実だとして、グレシア様はその『魔王の身体の一部』を確認されて、どうなさるおつもりなのですかの?」


 そうですよ。そんな物、態々確認する必要ないですよ。


「魔物が増えた原因は、魔王にあるのです」


「えっ? 魔王が原因なのですか? 魔王は封印されていて、何もできないのではありませんか?」


「文書には『魔王復活の兆しがある時、魔物が活発化する』と書かれていたのです」


「つまりグレシア様は、近頃の魔物の頻繁な目撃情報の裏に、『魔王復活の兆候』を感じられた訳ですのう」


「そうです。文書には、『魔王の封印が全て解かれたとき、魔王は復活する』とも書かれていました」


「しかし、魔王の封印が解かれることなど、本当に有り得るのですか?」


「もしかすると『封印の力が落ちてきている』のかもしれません。或いは『何者かが魔王復活を目論み、封印を解こうとしている』ということも考えられます」


「何と!?」


「どちらにせよ、魔王復活を阻止するためには、封印されているという『魔王の身体の一部』の状況を確認しておく必要があるのです」


 神官長には悪いですが、今すぐ王都に戻った方が良いです。

 ラノベでは、確認そういうことをしようとしたせいで、魔王復活を早めてしまう―― ということがよくあるんです!


 などと思っていても、私にはそんなことを言う度胸はありませんでした。


   ・・・・・・


「そういえば、マセル―― あなたは呪いに掛かっているそうですね。呪いのせいでそのような身体に変化させられたと聞きました。呪いのことに気付いてあげらなくて、ごめんなさいね」


 神官長が憐憫の目で私を見つめています。

 私は完全に『呪いに掛かっていること』になっているようですね…… もう、否定することは難しそうです。


「ですが心配いりませんよ。この迷宮内には、如何なる邪気も浄化するという『聖水』が湧いています。それを飲めばどんな呪いでも、たちどころに解けるでしょう」


 聖水を飲んだ後のことを考えると怖いです。呪いではないこの身体は、聖水を飲んでも変化が起きることはないから、どう思われることか……


 それに、ここまで来て今更なんですが、さっきの魔王の話を聞いたら、絶対に迷宮には入りたくないです。


「あの…… 神官長様。できれば聖水だけ取ってきていただく訳にはいかないでしょうか?」


「マセル、それはできません。聖水は、掬ってから10秒以内に飲まないと効力を失うのです」


 そうですか…… やっぱり、私も行くしかないんですね……


「聖水の湧く部屋は、迷宮のどの辺りにあるんですか?」


 迷宮に入るのは、もう仕方ありません。でも、聖水だけ飲んだらすぐに帰らせてもらおうと思います。


「聖水には『呪いを解く』だけでなく、『邪悪な者を寄せ付けない』という効果も有ります。聖水の湧く場所は迷宮の最奥である『封印の間』の前にあります」


 神官長…… それはつまり、『魔王の身体の一部』が封印されている部屋の前―― ということですよね?

 結局私は、最後まで迷宮探索に付いていかなければいけないようです。


 すごく嫌な予感がします……


「ふふふ。マセル、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。私を含めここにいる4人は、第二学院でも最強クラスのメンバーです」


「そうだとも! 我らがついておれば、魔王でも倒して見せるぞ!」


「そうです。大舟に乗ったつもりでいなさいね」


 ゴランド先生もマチルダ先生も、自信満々ですが…… この世界の人達は、どうしてそんなにフラグを立てたがるのですか!?


「さあ、迷宮に入りますよ。全員気を引き締めてください!」


 迷宮探索が始まります。

 無事に戻れますように……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ