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第19話 実験してみました

 ラップルに無事到着できました。


 私は『ジャイアントベアと遭遇するんじゃないか』って気が気でなかったよ。


 ラップルに入ると、温泉独特の硫黄の匂いが流れ込んできて、否応なしにテンションが上がってきました!


 温泉! 温泉! 早く温泉に浸かって疲れを癒したいよ!

 それなのに


「よーし! 日が出てる内に今日の野宿する場所を探そう!」


 リックくん? 野宿の場所は決まってなかったの?

 皆それらしい荷物を用意してないから、キャンプ場みたいな場所があるのかと思ってたんだけど…… 深く考えていなかったけど、魔物や熊が出るかもしれない場所での野宿って、超危険じゃないですか。安全な場所が有るんですよね?

 そういえば、ディアナさんは2年前に温泉に行ってるんだよね。その時はどうしたんだろ?


「ディアナさんが2年前に温泉に行ったときも、野宿だったんですか?」


「そうだよ。温泉町の宿は高いからね。貴族かお金持ち以外は、たいてい野宿さ」


 やっぱり温泉地の宿は高いんだね。でも野宿の経験者がいると心強い。


「どういう場所で野宿したんですか?」


 経験者の意見を参考にするのが、絶対に間違いないです。


「勿論、町の外だよ! 町の中だと場所を借りるのにお金がいるからね!」


 前言撤回…… 町の外で野宿なんて絶対に危険ですよね。ここはお金を払ってでも安全優先で行くべきです。


「ここはお金を払って、町の中で野宿しましょう!」


 私は強く提案しました。


「マセルは、お金いくら持って来てるんだ?」


 えーっと―― お金を入れた布袋を確認する。


 王立第二学院の生徒は寮暮らしでお金は必要ありません。それでも実家からお金を持ってきていたり、仕送りをしてもらっているのが普通で、私も家を出るときお金をもらっています。

 家の経済事情を考えると心苦しかったけど、都会にいれば買い物もしたくなるし、今回みたいに旅行に行くこともあるから、って銀貨30枚ももらったんだ。


「銀貨2枚と大銅貨2枚と銅貨5枚です」


 レムス王国の貨幣は、銀貨=大銅貨5枚、大銅貨=銅貨10枚なんだけど、私は自分でお金を使ったことが殆どないから、レムス王国の物価が全然分かっていないのです。


 それで私の今回の旅費は、皆に教えてもらった入浴料(銀貨1枚)と食費(1日目の夕食と翌日の朝食と昼の弁当で大銅貨6枚)に少し余裕を見て、銀貨2枚と大銅貨2枚と銅貨5枚を持ってきたんだ。


「そうか。じゃあ町の外で野宿に決まりだ」


「ど、どうしてですか?」


「場所代には、1人あたり大銅貨2枚かかるんだ。お金が足りない。僕も他の2人も余分なお金を殆ど持ってきてないからな」


 そうだった…… 貧乏旅行で、皆最低限のお金しか持ってきてなかったんだ。


 仕方なく、私達は町の外で野宿できる場所を探すことにしました。


   ・・・・・・


 町の外には、テントを張って野宿している人が少なからずいるんだね。ざっと10人くらいは野宿していたよ。


「ここにしようよ!」

「うん! いい場所だね!」

「よし! ここにテントを張るぞ!」


 ラップルでは、雨露をしのげる程度の簡単なテントが、大銅貨2枚で借りられました。

 私達が見つけた場所は、以前に誰かが野宿をしたと思われる跡が残っていました。まだ新しそうだったし、町を囲む壁沿いで、町の門までも近くてまずまずいい所です。

 でも夜になると門は閉められるから、魔物に襲われても逃げ込めないんだよね……


「夜は、交代で見張りをしないといけないね」


「そんなに心配しなくても大丈夫さ。ちゃんと鳴子を用意してあるから、今のうちに仕掛けておこう」


 こういう所は流石に経験者! ディアナさん―― 偉い!


 鳴子をテントの周り3方向に仕掛け終わりました。

 方向によって音の違う鳴子を仕掛けたから、どの方向から音が鳴ったか分かるし、動物なら音に驚いて逃げてくれる可能性が高いです。

 問題は『魔物』だよ。魔物に襲われた時はどうやって逃げようかな? ラップルの町を囲う壁の高さは約5m―― 私の風魔法で皆を浮かせて壁を越えさせるのは、ちょっと無理です。1人ずつでも厳しいかも。皆の協力が必要ですね。


「ディアナさんとエミリさんは、風魔法で人を浮かせますか?」


「風系統の上級基礎魔法に自分を浮かせる魔法があるけど、私は20cmくらいしか無理だわ」

「私はエミリよりは、浮かせることができるよ! 50cmは軽いかな!」


 2人の風魔法を使っても、壁を越えるのは難しそうですね。


「身体を浮かせるって、マセルは何をするつもりなんだ? はっ!? マセル、女風呂を覗く気だろ!?」


 リックくん、何を言い出すんですか!?


「ち、違います! 魔物に襲われた時に、『壁を越えて町に逃げ込めないかな』って考えてただけですよ!」


「そうなのか? じゃあ、試しに風魔法を使ってみたらどうだ?」

 

 そうですね。とりあえずは1度練習しておいて損はないですね。

 私は壁際に移動して、風魔法で上昇気流を起こす。


 ブワッ!


 一気に魔力を込めて身体を浮かせました!

 でも、壁の上に50cm程届かなかったよ……


「やっぱり、ちょっと足りませんでした」


 私が残念がっていると、


「すごいじゃない! あんなに飛べるなんてびっくりしたわ!」

「もう少しで壁の上に届いてたよ!」

「あれなら女風呂を覗けるぞ!」


 リックくん、どさくさに紛れて何を言ってるのかな?


「なあマセル! 次は僕を飛ばしてみてくれよ!」


 そうだね。でもリックくんは私よりも重いから、あんまり持ち上がらないかも?


「よし! ジャンプするからタイミング良く頼むな!」


 そう言うとリックくんは壁に向かって走りだし―― 助走をつけて思いきりジャンプ!

 私はタイミングを合わせて風魔法を使った!


 おお! リックくんは勢い良く上昇し、そして―― 壁の上に手が届いたよ!


 見事に壁の上によじ上ることができたリックくん。


「スゲェ! これなら女風呂でも覗き放題だぞ」


 いいえ…… そんな犯罪行為には協力しませんから!


「今度は私!」


 ディアナさんも、リックくんと同じように壁に向かって走り、そして―― 壁を蹴って大きくジャンプ! 私の風魔法でディアナさんは、軽々と壁の上に乗ることができました!


「じゃあ次は私の番ね!」


 エミリさんも同じように壁に向かって走り、そしてジャンプ! エミリさんも、何とか壁の上によじ上ることができました。


 これなら、魔物に襲われても避難できそうだよ。私以外は……


 私も助走つけてジャンプすれば壁の上に届く筈。そう信じて何度か試したけど…… ギリギリ届かない。

 やっぱりだめだ…… 私のジャンプ力が無さすぎるの!? 私がションボリしていると


「大丈夫よ。魔物なんてそうそう出ないわ」

「そうだよ。魔物なんて出ないよ」

「ああ! 魔物よりも女風呂だ!」


 今度こそ『フラグ』な気がするけど……

 とりあえずは野宿の場所も決まったし、ラップルに戻って温泉に向かった私達。


 嫌な事は全部温泉で洗い流して忘れよう! 私はそう心に決めたのでした。


 ところが!


 この日の夜は、私にとって忘れられない出来事が待っていたのでした……

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