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第10話 いきなり押し付けられました

 いったいこの迷宮に入ってから、何時間経ったんだろう?


 私は勿論、他の3人も疲れきっています。

 厳しい試練とは聞いていたけど、想像以上だよ……


「あっ! あそこ、光ってるぞ! あそこが目的地じゃないか!?」


 確かに、ぼんやりと光が漏れている。でも安心はできないよ。また、罠かもしれないし……

 恐る恐る光に近付いていく私達。

 そして今度こそ―― 間違いなく部屋だ!


 部屋の中には祭壇が有って、そこには青白い光を放つ箱が置いてあります!


 流石に、あの箱が目的の宝箱だよね?

 祭壇の前まで慎重に歩いていく私達。そして、宝箱の前まで来ると、全員で顔を見合わせました。


「それじゃ、取るぞ! 覚悟はいいな?」


 リックくんの言葉に、私とエミリさんとディアナさんは、同時に頷きました。


「それっ!」


 リックくんが宝箱を持ち上げました!


 良かった…… 何も起こらなかったよ。


 と、ホッとした途端――


 ガラガラガラ……


 嘘っ!? 足元の床が―― 崩れてる!?


   ・・・・・・


 床の崩落に巻き込まれて、落下する私達。


 でも、私は慌てない!

 風魔法を発動させて、全員を懸命に浮かそうとしました。流石に4人同時に浮かせるのは無理だったけど、何とか落下速度を殺して、ゆっくりと着地することができたよ。


「いったい、どうなったんだ?」

「私、生きてるの?」

「助かったのか?」


 これで一安心―― とか考えたら、それは絶対にフラグです。私達が落ちた所は


「まだ、安心しちゃダメだよ。ここは『毒鼠ポイズンラットの巣』みたいです……」


 私達の前には、数十匹の毒鼠の目が不気味に光っていました。


「こんな所で死にたくないよ!」

「嫌よ! 助けて!」

「この数じゃ、魔法剣じゃ防げないよ!」


 今にも泣き出しそうな3人。


 毒鼠が、私達に向かって飛びかかってきた!


 うわーっ!?

 きゃーっ!?

 いやーっ!?


 悲鳴を上げる3人。


 でも、大丈夫!

 毒鼠の小さい体なら、私の風魔法でも簡単に止められるから。そして、今の私が使える最強の魔法――


「炎よ、嵐となりて眼前の敵を焼き払え!」


 ファイヤーストーム!


 炎の嵐が、毒鼠の巣全体を焼き払う。巣の中にいた毒鼠は、一匹残らず炎に包まれ、断末魔の悲鳴を残して黒焦げとなったのでした。


   ・・・・・・


 毒鼠の巣の奥には、通路がありました。

 今度こそ、出口へ続く道であってよね……


 しかし、その希望は、またしても通じませんでした。道の先に有ったのは―― お墓?


 墓標が1つ立っています。


 正直がっくりときたけど、他の3人を不安にさせないために、私は強がって見せることにしました。


「きっと、このお墓が最後の仕掛けだよ」


 そう言って、私は墓標に近付くと、墓標にはぎっしりと文字が書かれていました。


 私がそこに書かれている文字を読もうとしたとき、突然頭に猛烈な痛みが!?

 そして、割れそうに痛い頭の中に、人の姿が浮かんできたのでした……



《よくぞここまで辿り着いた》


 私の頭の中に呼び掛けてきたのは、汚ならしい格好をした貧相なお爺さん。


《誰が貧相なジジィだ!? 汚ならしい格好で悪かったのお!》


 えっ!? このお爺さん、幻じゃないの?


《驚いたか? 冗談だ。儂はもうずいぶん前に亡くなっており、今は只の残留思念にすぎん。きっと儂の映像を見た者は、そんな事を考えると思っただけのことよ》


 見事な読みでしたよ。私、しっかり驚かされました。


《儂は、王立第二学院の初代神官長【グリーマン】。儂は聖暦214年に、この場所で亡くなったのだ》


 聖暦214年ということは、今から782年も前に亡くなっているんですね。でも、神官長って学院で一番偉い人なのに、何故こんな迷宮なんかにお墓を作ったの?


《何故儂の墓がこんな所にあるのか、ということに疑問を抱くと思うが、それは、この場所が王都の中心部に当たるからだ。儂は、何でも真ん中が好きだったのよ》


 はあ? 何か意味があるのかと思ったら、くだらない理由……


《儂は生前は【大予言者】と呼ばれておっての、儂の予言で幾度となく王国の危機を救うてきた。もうな、儂の予言は百発百中でのお、そのご褒美として、平民出身の儂がこんな立派な学院の初代神官長にまで選ばれたのだ!》


 済みませんが、私は年寄りの自慢話を聞いていたくないのです。手短にお願いできませんか?


《年寄りの話は退屈か? すぐに本題に入るから、もう少しだけ我慢するのだ。兎に角儂は優秀な予言者でな、生前だけでなく、儂の死後に起こるであろう予言も、いろいろと残しておいたのだ!》


 分かりましたから、早く本題に入ってくださいよ。


《儂の死期が近付いておったある日―― 儂は、それまでで一番恐ろしい予言を残した!

 それは―― 恐ろしすぎて口に出せん》


 おい! 一番肝心な所を話さないでどうするのよ!


《その予言を知れば、大混乱が生ずる―― そう思った儂は、この学院の地下迷宮から、更に隠し通路を造り、『迷宮の謎を解き明かして儂の墓に到達できた、知恵と勇気ある者』に、予言を託すことに決めたのだ!》


 なんて身勝手な…… もし誰も来なかったら、どうするつもりだったのよ!?


《儂は大予言者。その予言が起こるよりも前に、誰かがここに来ることは分かっておった。それがお主なのだ!》


 本当ですか? 誰が来ても『お主』で済ませるつもりじゃなかったんですか?


《うるさいわ! お主は黙って、儂の話を最後まで聞いておるのだ!》


 ちゃんと会話が成立してるよ。本当にこのお爺さん―― 残留思念なのか怪しい。


《今から『恐るべし予言』の内容を、お主に伝える。覚悟を決めて、心して聞くがよい》


 恐るべし予言―― まさか『魔王が復活する』とかいう、ラノベのテンプレじゃないでしょうね?


《魔王が復活するのだ!》


 そのまんまかい!


《魔王は、儂の死後800年前後に復活する。そして魔王は魔物を従えて、人間の住む世界を滅ぼそうとする! お主はそれを阻止するために働かねばならぬのだ!》


 死後800年前後って、随分アバウトですね。

 具体的に、私は何をすれば良いんですか?


《儂には見えた! 魔物の群れに立ちはだかる『美しき魔道師』と、その者を守る『逞しき戦士』の姿が! お主は、その者達を探しだし、魔王との戦いに備えるのだ! 任せたぞ!》


 全部私に丸投げなの? あんたが王様に予言を伝えておけば、王様が普通にその2人を探しだしてくれたんじゃないですか?

 何のコネもない私では、その2人を探し出すのは、かなり難しいと思いますよ? 雲を掴むような話で、私じゃ絶対無理ですよ!


《忘れておったわ! 最後にもう1つ。祭壇の宝箱には、戦士の為の魔道具を入れておいた。絶対に役に立つから、必ず戦士に渡してくれよ! では、健闘を祈る。さらば!》


 そして、お爺さんは私の頭の中から消えていきました……


 よくよく考えると、この試練の元凶は、お爺さん! あなただったんですね!?


 消えられる前に、文句言っておくんだった!


   ・・・・・・


 マセル! マセル! マセル!


 私を呼ぶ声が聞こえる。


「ううう……」


 目を開けると、心配そうに見つめる3人の顔が!


「マセル、大丈夫か? 墓の前で急に倒れたから、驚いたぞ」

「大丈夫? 身体は何ともない?」

「マセル、無理するなよ。キミの調子が戻るまで休んでおくんだ」


 ありがとう。でも、こんな所で寝ていられないよ。

 早く試練を終わらさないと、全員不合格になってしまう。ここまで皆で頑張ったんだもの―― もう間に合わないかもしれないけど、最後まで諦めないよ!


 ゴゴゴゴゴ……


 そのとき、墓の後ろに階段が現れました。


《忘れておった。その階段から、第二学院の迷宮内にある礼拝堂へ行けるぞ。気をつけて戻るのだ。

 では、今度こそ本当に、さらばだ!》


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