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トネリコの繋ぐ宙―奈落篇―  作者: あーもんどツリー
5 掌から零れ往く・・・。
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冬が来る

いつの間にか夏が終わり。

忙しいままに秋をまたいで。

気が付けば、冬が来る。

「これが・・・」

ロキはそんな、感嘆の声を漏らしてそれを見ていた。

それというのは、例の《巨人》である。


「コイツは、自らを《霜内夜(しもうちよ) (つむぎ)》と名乗っておりました」


ほう、とロキは思い、そしてこう命じた。

「そのような名は、巨人に持たせてはならぬ。こやつの名とて例外でない。この者の名を、直ちに変更するのだ」


「ですが、その権限もウートガルザ卿にあります故、ご自身の意思で、お好きなように」


「解った」

そうか、とロキは頭を捻る。

というのも、彼には何かに名前を付けるなどということには、経験が全くの皆無だったのだ。

彼の人生上、最長の思考時間を費やし、そうしてようやく、どうにかひねり出した名前は。


「その者の名を、《ヨトゥン》と変更する」


その名前に、反論を示す者は誰一人としていなかった。

「早速だがヨトゥン。お前に仕事を与えよう」


「何なりとお申し付け下さい」

ヨトゥンはがらがら声で、そう応えた。

思ったより従順だな、と少し興味が削がれる。


「今我々は、《ジークフリード》という反乱勢力の鎮圧に奮闘している。

そこで、お前にはその戦場の第一線に立って貰いたい」


「御意」

え、そんなすんなりと受け付けていい話ではないと思うのだが。

そう思った瞬間にはもう後の祭りである。


「よし、皆の者!!」

ゼノフスが叫ぶ。

「我々の安寧を取り戻す為に、剣を取れッ!!」


「オオオオッッ!!!!」


こうして後の戦場の第一線に、人族の者たちが本来触れ合うことのない者たちが立ち塞がり、剣を交えることとなった。

晩秋、山麓の赤が眼に鮮やかな月のことである。





「そうか・・・」

雨浦の市街地、とあるカフェテリアにて。

フードを被った一人の男が、見るからに甘ったるい、生クリームをふんだんに載せたカフェモカをすすり、そうつぶやいた。


「何度でも同じ道を辿るのだね、運命は・・・」

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