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四月上旬の少し肌寒い空気に、俺は少し息をついてみる。
白く凍った息が、視界を霧のようにぼかして、数秒の後に消えていった。
「・・・っくしょいっっ!」
くしゃみを一発かまして、やや疲れ気味の体を奮い立たせ、バス停までの十数メートルを歩く。
だるい。何はともあれだるい。
黒いボサついた髪を掻き、また溜息をついた。
バスの車内で吊り革に掴まり、少しドジ系の普遍的少年は携帯電話を眺めていた。
《鱈水沢高等学校》の文字が画面に出ている。
ハルトの通う高校の名前だ。
やはり、彼みたいなヤツでも、未知の領域に足を突っ込むともなると緊張するのだろうか。
さっきから脚がガクガク震えている。
正直言って、ダサい。
武者震いなんて言葉を使っても、このダサさをカバー出来ないだろう。
少しクスリとして、「私」は携帯を見る。
フフフ、路木ハルト君。せいぜい頑張れよ。
と思いながら、「私」は《止まります》のボタンを押した。
「?」
今、誰かに笑われた・・・?
気のせいか。まぁいいや、いよいよ高校が見えてきた。
よし、高校生活謳歌しようじゃないか!
跳ねる心を抑えつける様に、自然と口元が綻んでくる。
俺はバスを降りた。
何組になるんだろう。
クラスに友達になれそうなヤツいるかな?
・・・なんていうガキの如き発想が渦巻く。