プロローグ 〜闇夜の中〜
初投稿です。
これから頑張っていくので、この物語共々よろしくお願いします。
深夜二時。
重苦しく冷たい空気を感じ、目をさました。
身体は闇に押さえつけられているように重く、指先すら動かすことができない。
意識を失う前、何があったかすら思い出すことができない。
俺は状況を確認するために目だけで辺りを見回す。
その部屋は使いなれたリビングだった。
しかし、家具や置いていた物は壊されたり、倒されていたりで、まるで何かと争ったあとのようだ。
俺は倒されたソファの上に仰向けに倒れていた。
目を凝らせば、白い壁紙や床には紅い血が飛び散ったあとが見えた。
飛び散った血の先には、金属の装甲のようなものをまとった犬が数匹ころがっている。
それを目にして、気づく。
...そうだ、こいつらに襲われて...
...美里は...美里はどうした!?
改めて周りを見渡して気づく。
犬の息づかい。ころがっているものからではなく、
生きている犬の、何かに食らいつくような。
動物的な本能を剥き出しにした息づかいに。
気づかなかった。自分の目の前にあるその惨状に。
「......美......里......?」
犬たちが食らいついていたのは、妹の、美里の体だった。
喉ぶえは噛みちぎられ、四肢は骨ごと噛み砕かれ、臓器はえぐられ、見開かれた目には光が無い。
俺は、もう無駄だと知りつつも、美里の方に手を伸ばした。......いや、伸ばそうとした。手を伸ばそうとする意思に腕が反応しない。闇の重さに抗うことができず、体がいうことを聞かない。
......くっそ!なんで動かねぇんだよ!?
叫ぼうとするが声も出ない。
ほどなくして。美里の体は食いつくされ、犬たちは俺の方に頭を向ける。
その目は、赤黒い光を持ち、その口元には同じように赤黒い血が滴っている。
そして......。
俺の意識は再び闇に沈んだ......。
「......っぐ、あ。......はぁ、はぁ、はぁ」
俺は、夢の中と違い自室の布団の上にいた。
真夏の夜。蒸し暑い熱帯夜だ。
「......また、あの夢かよ......」
俺は、額に当てた手のひらを握り締め、まとわりつくものを振り払うように壁に拳をぶつけた。
そして、ベットの脇に置いてあった鋏を手にして、首筋に刃を当て、手に力を込め...
頚動脈を切り裂いた
血が勢いよく吹き出て、意識が遠いた。
しばらくして、俺はまた目を覚ました。
傷はもう塞がっていて、吹き出た血も何事もなかったかのように消えていた。
そして、絶望した。
あの日、俺は守りたかった唯一のものを、欠けがえのないものを失った。
絶望に暮れた俺は、自ら命を絶とうとした。
何度も、何度も、何度も
だけど......、死ぬことは出来なかった。
死ぬぐらいの傷を負っても、致死量の毒を飲んでもしばらく経てば何事もなかったように元に戻っている。
残るのは、体中に飛び散った痛みだけだった。
この痛みは呪いだ。
俺の大切なものは根こそぎ奪って言ったくせに、神は俺に死ぬことが出来なくなる呪いをかけた。
だから俺は、一人暗い部屋で願いをつぶやく。
「なあ、誰か......。誰か、俺を......」
「殺して《タスケテ》くれよ......」
いかがだったでしょうか。
どんな感想でもお待ちしていますのでよろしくお願いします。