交差する運命~絆を繋ぐ物語 外伝 『魔族達の聖戦(ジハード)』予告編
さて、嘘予告編でございます。リレー小説のif ストーリーなので、色々おかしいかもしれません。まぁ、ごゆるりとどうぞ。
感想、ご指摘あると嬉しいです。
「……番組の途中ですが、臨時ニュースをお伝えします。今日未明、アメリカのホワイトハウスを武装グループが襲撃。大統領以下数百名に銃撃により重軽傷を負わせ、忽然と姿を消すという事件が発生しました。大統領以下数百名の人々は重軽傷を負ってはいるものの命に別状はなく、死者はない、とのことです。繰り返し、お伝え……」
ピッ。そんな音をたて、少女がテレビを消す。ここは魔界の王宮。魔族の王が住まう場所……そんな第一級禁踏区域に、一人の少年と一人の少女がいた。どちらか一人は王なのかもしれない。まあ取り合えずはこの二人の所在や素性はどうでもいい。大事なのは、彼らが話している内容だった。
「ご苦労様、姫よ。これでアメリカも懲りただろう……素晴らしい活躍だった」
「このぐらいちょろい物だよ、王」
もう名前を言っても良いだろう……少女は、剣坂杏子……鈴音学園の生徒であるはずの、彼女だった。
少し聞いただけでは、聞いた人間はいつも通りの彼女だと思うだろう。しかし、彼女に親しい人間なら気づいたはずだ……彼女は、怒っている。それも、並じゃない程に。殺気だけでは普通人は殺せない……当然だ。だがしかし、彼女は今、殺気で人を殺せそうであった。……いや、実際に、殺せるだろう。そう断言出来るほど、彼女は怒っていた。
「それにしても……容赦がないね、姫。人間界にあれほどいたんだ。情があるかと思っていたが……」
「……笑わせるなよ、チビジャリ」
王に言う言葉ではない。だが、魔族の姫であるからこそ、言える言葉であった。
「これは聖戦なんだよ。正しい戦争だ。魔族と人間は結局相容れなかった訳だ。魔族が人間界で認められて久しい……だが……やはり世界は人間に優しすぎる。そうなら……」
杏子……いや、もうその名では呼べまい。魔族『悪魔卿』……エル・ディアブロが、その姿を現す。
「『私』はためらいなく、人間を殲滅する……次は日本だったな?」
「ああ……また最終目標は政府……そしてその前に、少し色々壊滅してもらいたい。政府に少し……『恐怖』を植え付けるのも良いだろう?」
王が書類を弾き、杏子……いや、エルに手渡す。エルはそれに目を通し……一瞬、眉をひそめた。勘がいい人でなければ気づかなかっただろう。しかし、王は当然、勘がいい。
「どうかしたかい、姫?」
「……いや、何でもない……では、行ってくる」
エルは出ていく。その手には書類。それには当然、襲撃する施設が書いてある。……そう。
……鈴音学園の文字が。
「……よう、実月」
「あれ? 杏子先輩? どうしたんですかこんな場所で」
「ああ……悪いが……死んでくれや、実月」
「……へ?」
……発端は一つの事件。
「実月が撃たれた!? いつ!? どこで!? 誰にッ!?」
「お、落ち着いてください、渉君!!」
「止めないで下さい吹雪先輩!!」
佐倉実月、襲撃さる。
「……佐倉が撃たれた弾は『ダムダム弾』でした。19世紀末、ハーグ平和会議で使用が禁止されてる弾ですよ……そんな弾持ってるのはあなたしかいないですよね……剣坂先輩?」
「……クッ、アハッ、アハハッ、アッハッハハッ!! 流石だな針谷!! あぁ……そうだよその通り!! 実月は『私』が撃った!! よく推理したな、誉めてやる!! だが……ここで捕まる気はさらさらねぇよ!!」
犯人は……剣坂杏子……。いったい何が!?
「その曲がった根性……叩き直してやるよ、剣坂ァ!!」
「やってみろよ……十波先生様よぉ!!」
十波悠真、宣戦布告。
「……なんのつもりなんだい、杏子ちゃん?」
「……別に。『俺』はこの学園の生徒である前に、魔族の姫だった……それだけの話さ」
「……そう、かい」
「なぁ僕。『俺』からの最初で最後のお願いだ……キスして、くんねえかな」
報われぬ、本当に、報われぬ愛……。
「久寿米木……なんでお前はそっちについた? ……あのチビジャリがいたからか? はっ、呆れるねェ?」
「ッ!! ……その減らず口を閉じろッ!!」
「あいつを撃てばお前がどうなるか……試してやろうか?」
卑劣……!!
「実月を撃ったのは……あなただそうですね」
「……後輩に対する裏切り行為……とでも言うつもりかな? 彼氏君?」
「あなたは……俺を嘗めたッ!!」
暴虐……!!
「距離をとっていいのか、瞬刀?」
「何……?」
「私は……常に十キロ先のお前の妹を撃てるんだぜ?」
「ッ!! 逃げろ佐奈ァァァ!!」
「遅ェ……」
悪辣……!!
「お、おい、こいつは……」
「う、そ……」
「こんなのって……」
「し、信じられないでござる……」
「こ、固有、結界……」
「悪いなァ西京、折原妹、奏音、アル、流奈……5対1は流石にキツくてね……このぐらいはさせてもらおう……固有結界『射手の巣窟』……見物料代わりに、死体を置いていけ!!」
悪逆……!!
しかし、この争いにも、終わりは来る……。
「リングさん、私を連れて行って下さい!!」
佐倉実月……。
「その話、乗ったよ。杏子ちゃんを止めるのは、僕の役目さ……」
幸咲僕……。
「クレス先生、龍賀さん……次はあんたらか。あんたらには特に大量の兵を送ったつもりなんだがな……」
「剣坂、悪いが……」
「引導を渡させてもらおう……」
「待ってッ!!」
「少し待ってよ、先生達」
……戦場へ。
「先輩、あなたは……泣いていたじゃないですか、あの時。そして……今も」
「……だからなんだよ。『私』は言葉遊びじゃ止まらねーぞ」
――止まれない。そうかもしれない。だけど――
「分かってるさ……だから……僕が、止める。君が愛した僕が、僕が愛した君を、止めるんだ」
「あぁ……『俺』を止めてみろよ。幸咲僕(俺の愛する人)」
――止める。――
劇場版
交錯する運命~絆を繋ぐ物語
『魔族達の聖戦』
近日公開。
「……なぁ、もう一個、お願いしていいか?」
「ダメ。あれが最後だったんだからね。今度は僕のお願いを聞いてよ」
「……あぁ。パンツはなしだぜ?」
「(ち……)愛してるって、いってほしい」
「う……わ、わかった……愛してる!」
「うん、ありがと」
「ちっ……こっぱずかしい……じゃあ、お別れだな」
「……うん」
「……浮気すんなよ? したらお前を殺して俺も死んでやる」
「しないよ……絶対に」
「……ありがとうな、僕。んで……」
――さようなら。――
いかがでしたでしょうか? もしかしたら浪人終わったら書くかも……ですね。
主人公は僕、なのかなあ……杏子がメインヒロイン兼ラスボスなのは変わらないですが。
感想、ご指摘あると嬉しいです。