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2話 怠い日曜の昼の朝食



目の前には踊るウインナー。訂正、フライパンで炒められているウインナーだ。


隣のコンロには弱火で温めている味噌汁。傍には先程できた目玉焼きが盛り付けられた皿が二枚。


間違いなく朝食の風景だ。

起き抜けに眺めた時計が十一時を指していた事は無かった事にしよう。


「兄さん、お腹が空いたわ」


背後から切羽詰まった声。ついでに朝食を作り始めてから数えると五回目である。先に食べてろ、とも言ってみたのだが頑なに拒まれ、出た言葉が、兄さんと一緒に食べたい、だそうだ。


不覚にも可愛いなコイツとか思った俺はシスコンなのでしょうか?


「ほら、出来たぞ」

「見事なまでに当たり障りのない朝食ね」


作り手に、失礼な事をさらりと言ってくれる我が妹に少しだけ殺意が湧く。

先程の感情は気のせいだった様だ。


「何の面白みも無くて悪うごさんしたね」

「大丈夫よ、兄さん。私は気にしてないわ」


ニコリと妹。俺の心に生まれた殺意は順調に育ち始めた。

と言うより、作ってるの見てたんだから今更なのは分かってるだろ。まぁ、本人があえて言ったのは分かってるんだが。


どちらともなく、手を合わせ食事が始まる。

我が家、もっとも俺と妹の二人きりの食事の時だけだが。終始、食事中は無言である。

とは言っても、仲が悪い訳ではなく、その場に険悪な雰囲気が漂う事はまず無いだろう。


では、何故か。

中学生の時だったか。偶然、両親が不在の日があった。その頃から料理を一つの趣味としていた俺は、腕を振る舞う事にしたのだ。

何を作ったまでは覚えてないが、程なく料理は完成し食事となった。

その時である。学校の事や友達の事、話し掛けても淋しい返事しか返さない妹に聞いてみた。


どうして、何も喋らないんだ?


少しの不安を抱えて聞いた。すぐに杞憂だと思い知ったのだが。


話し掛けなくても兄さんはそこに居るから


体よく、はぐらかされたのか、それとも本心だったのか。未だに分からない時もあるが、納得してしまったのは仕方ないだろう。

見惚れるぐらい微笑まれたら何も言えないしな。


その日から、二言三言、言葉を交わすぐらいで、二人きりの時には静かな食事をするようになった。

不思議な事に、思ったより辛くは無いんだよな。


「兄さん?」


思わず、握っていたコップを落としそうになる。時すでに遅く少しばかり中身を零してしまったが。


と、目の前に布巾。妹が差し出したソレを受け取り、礼を言おうとそちらに目を向けると空になった食器がに入った。


「食べ終わったなら、流し台に置いといていいぞ。後で洗うから」


言いつつ、改めて妹の顔に目をやる。何時もの涼しげな無表情かと思えば、目を細めてニコリと笑い顔。

なんで笑ってるんだよ。


「兄さん、頭の中はこんな感じかしら?」


そう言い、空になったご飯茶碗を指差してくる。

中身は空ってか、コラ。

確かに、ぼーっとしていた俺が悪いがストレートに言え、質が悪い。


「大変、兄さん。中身が出てるわ」

「味噌汁を指差すな」

            目を大きく開き、口に手を当てる姿はムカつくほどに白々しい。

かと思えば、こちらを哀れむ視線で一言。


「兄さん、信じてるから」

「殴るぞ」


間違いなく、シスコンじゃないと断言しよう。殺意のメーターが振り切ったし。


きついツッコミに、一層笑みを強めた妹に気付かれないように、俺はため息で殺意を押し出したのだった。



評価、メッセージ、共に有難うございます。緩い展開ですが、楽しんでいただけたら幸いです。

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