1話 怠い日曜日の朝
その日は日曜日。
日本全国の学生たちが怠惰なそれでいて楽しい時間を過ごせる曜日である。
俺こと間宮 要も例外なく布団の中で芋虫のごとく無駄な時間を過ごさせてもらっている。
ビバ、日曜。素晴らしい。
「良い。せっかくの日曜なのに友達と遊びに行かず、かといって家事をするわけでもなく、まどろんでいられる朝。良い朝だわ」
具体的に人の心情を述べてくれてありがとう。
だが、ここはツッコムべきなのだろう。間違いなく。
取りあえず、目の前で眠そうにこちらを見ている奴の頬を摘む。柔らかいな。
「どうして、ここに居る?」
言いつつ、頬を左右に伸ばす。なんだろ、少し楽しくなってきたぞ。
頬を摘まれている目の前の顔はしきりに唸っているが、さして気にしてはいない様だ。
証拠に半眼だった瞳がゆっくりと閉じ始めだして、
「えひゃう」
少し強めに伸ばしてやると不思議な返事。痛かったのか眠いのか、おそらく後者だろう、少し涙目になっている。
「にいひゃん」
間抜け響きだな。言われているのは俺なんだけど。
上手く喋れないのにもかかわらず、目の前の顔は喋りだした。
「ひゃくはん、ひゃむひゃっひゃてひょ?」
「さっぱりだ」
即答。ちょっとだけ眉を寄せられる。喋りにくくしてるのは俺なのだが、抵抗してこないのが悪い。
無言のまま数分、俺たちは見つめ合う形となる。
と、摘んでいる頬がうっすらと赤く染まってきた。そろそろ離した方が良いかな?
「ひゃのひぃ?」
「まぁな」
「ひょう」
そして無言。
いや、離してって言わないのかよ。
なぜか半眼をちょっと楽しそうに細められる。それどころか、布団の奥から手が伸びてきて俺の頬を摘む。
一体、何がしたいんだ。
「ひゃのひぃひゃ?」
「ひゃのひぃ」
「ひょうひゃ」
このままじゃ収拾がつかない。寝呆けた頭で必死に考えている間にも、摘まれた頬が左右に伸ばされる。
痛くはないけどイラッとくるな。
「ふふ」
楽しそうに俺の頬で遊んでいる我が妹には悪いが、このグダグダした展開を断ち切らなければ。
そう結論づけ、今だに妹の頬を摘んでいた手を離す。ついでに妹の腕を離させる。あ、残念そうな顔。
「さて、地味に頬がヒリヒリするのは置いておくとしてだ」
ちょっと眉を寄せてこちらを見る妹。よく分からない罪悪感を押し込み質問するとしよう。
「どうしてここに居る?」
「寒かったから」
単純すぎる。というか『寒い』だけで人の布団、しかも兄であろうが生物学的には男の横に潜り込むのか。
答えは『無い』だろう。
勿論、恋人同士とか、仲が良い家族ならば実行するのかも知れないが。その辺りは置いておく事にして。
「あのな。よく考えて見ろ。寒いなら上着を着るとか、掛け布団をもう一枚とかな。あるだろ?」
妹の瞳を真っすぐ見て、少し強めに言ってみる。
「兄さん、人の体温って安心するわね」
この期に及んでへ理屈ですか。
だらだらしていますが、ご容赦を。一日1話。更新・・・できれば。