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14話 甘党な兄、甘過ぎな妹

二日も間を開けてしまい、読んでくださっている皆様お詫び申し上げます。              それでわ、本編です。



涼しげなベルの音。

新たな来訪者を告げるソレに誘われる様に、ウェイトレスが目の前を足早に通り過ぎていった。


「どれも美味しそうね」


ぼそりと呟くかなめ。メニューを睨むその様は数十分ほど維持している。真剣に悩んでいる様で、話し掛けづらい。

仕方なくかなめから目を離し、ぐるりと辺りを見渡してみる。真新しいイスとテーブル、足早に動き回るウェイトレスやウェイターの方々。ゆったりとしたBGMが心地よく耳に届き、カウンター席にはコーヒーメーカーが置かれている。

ここは喫茶店である。

何故、この様な場所に俺と妹が居るのかとは聞かれたならば答えなければなるまい。

総ては甘党と自負している自身にある。

新しいデザート、和菓子や洋菓子屋の新店舗が出来れば直ぐ様に駆け付け、食べ歩く。最近では自宅で製作し、母や妹に品評させて貰っている。時折、露骨に嫌がられる時もあるが。

ともかく、今回もそういった理由で学校帰りに寄る事にしたのだ。

ああ〜、イチゴパフェはまだか?


「兄さん、顔が凄い事に」


はたと我に返り、目の前のかなめに意識を戻す。いつもの眠たげな半眼だが、やや眉を潜めて、気怠そうに頬杖をつくその姿からは確かな呆れが感じられた。

仕方ないだろ、好きなんだから。


「ほどほどにね」


どうやら表情が自然と憮然としてたようだ。小さな嘆息と共に告げたかなめは、通りかかったウェイトレスに注文し始めた。

赤いであろう頬をウェイトレスに悟られないように、改めて周りに視線をやる。見える範囲では女性客が主の様で、数少ない男性客は彼女に連れてこられたのが殆どなのだろう。所在無さげに辺りを見渡している一人と目が合ってしまった。なんで、お互い大変だよなって目をするんだよ。


「結構、学生も多いみたいね」


そのかなめの声に注意して見ると、同じく学校帰りなのか制服姿の者が私服の客に混じりちらほら。その中にはクラスメイトも居た。渡辺、彼女いたのか。明日、クラスに伝えておこう。


「お待たせ致しました。イチゴパフェになります」


と、注文の品が届いた様である。さり気なく傍に立っていたウェイターからパフェを受け取る。もの言いたげな視線を残し、その場を立ち去るウェイター。

目付き悪い男が甘党で悪かったな。


「戴きます・・・美味い、そして甘い」


率直な感想を言ったまでだというのに、目の前のかなめはため息を吐く。失礼な奴である。

しかし、本当に美味しい。飾り付けられたイチゴは勿論のこと、生クリームはべたつくような甘さになっておらず、口の中に入れてしまえば、ふわりとした舌触りと共に溶け、残るのは爽やかな甘味。イチゴの甘酸っぱさと絶妙なコラボレーション。思わず、頬が弛んでしまうのも致し方ないのである。

美味いなぁ。


「そんなに美味しいの?」


俺のご満悦な表情につられてか、半眼を少し開き、やや身を乗り出して聞いてくるかなめに思い切り首を縦に振ってやる。当人はその気が無いように振る舞っているようだが、その視線はパフェに釘付けだ。

この美味しさを味わさせてやろう。


「ほれ、あーん」


イチゴとクリームを均等にスプーンに乗せ、かなめに差し出す。

だが、かなめは顔を一瞬で真っ赤に染め、口を開いたり閉じたりするだけで食べる素振りを見せない。怒っている様では無いようだが我が妹ながら不思議な奴だ、クリームが滴れ落ちてしまった。


「ん?」


滴れ落ちたクリームを備え付けのナプキンで拭き取り、乗せたパフェを自分の口に入れ、改めてパフェをすくい乗せて差し出す。

依然として顔は赤いままのかなめだが、口は真っすぐに引き締められ、何やら神妙な顔つきで差し出したスプーンを睨み付けている。


埒があかない。そう判断してスプーンを引っ込めようとした矢先、凄まじいスピードで腕を掴まれた。


「食べる」


ぼそりと呟くその表情は妙に鬼気迫るモノだが、生憎と顔が真っ赤なのでさして恐くは無い。私的にはパフェ一つ味見するのに覚悟が要るかなめが不思議で堪らないが、とやかく言うと怒られそうなので止めておくとしよう。


「あーん」

「あ、あーん・・・」


促すと、ぎゅっと目を閉じ、真っ赤な顔で口を開けてくる。心なしか震えてるような気もしたが、このまま見ていると精神的に辛いので素早く口にスプーンを入れる。

なんか、顔が熱い。


「どうだ?」


問い掛けるも、味わっているのか、スプーンを離さないまま答えないかなめ。

このままでは、せっかくのパフェが食べれなくなってしまう。味わっている処で悪い気もしたがスプーンを引っ込める。


「あっ」


何故か名残惜しそうに声を上げたのが気になったが、パフェを食べる為に来ているので、気にしていられない。少し、時間を置いたのでアイスが溶けているがそのまま口に運ぶ。

うむ、甘い。


「美味しかった、とても」

「だよな」


妙に甘ったるいかなめの声に返事をしつつ、絶品のパフェに舌鼓を打つのであった。



と、言うわけでカフェにてバカップルな二人なお話でした。性格が今だに安定してないなぁ。                  書いている間にエロく感じたり、背中が痒くなった作者でした。                   それでわ、また次回。

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