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捨てようとした命を彼に救われた話  作者:


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5/6

5話

 一ヶ月経って働いても大丈夫だと思えるくらいに回復したから、仕事を見つけて慣れ始めた頃。本当に朝比奈さんとの日常は楽しい。地獄の様な日々から救われた。名前の通り朝の優しい陽射しに包まれてる様な温かさを感じる。だからこそ終わりが近付いている事に寂しさを覚える。

 今の私の気持ちを伝えたら貴方は困ってしまうかな?時々戯れに唇が触れた所から心地良い熱が広がっていた。好きな人にそんな風に触れられてしまうと勘違いしてしまう。貴方も私の事を好きなんだと……。


「どう?仕事の方は」

「だいぶ慣れてきました」

「そっか、良かった……」

 なんだか元気が無いように見える。

「朝比奈さん?何かありましたか?」

「えっ?何で?」

「元気が無いように見えたので……」

 何でもないよと笑顔を向けてくれるけど、やっぱりいつもみたいな元気は無い気がする。

「こんな事言うと困らせると思うんだけどさ……。

いや、ごめん。何でもない……」

 何を言おうとしたんだろう。私に言い辛い事なのはわかる。もしかしたら早く出て行って欲しいとかかな。だとしたら言い辛いのも納得する。出来るだけ早く見つけないと。

「じゃあ俺先に仕事行くね」

「分かりました、言ってらっしゃい」

 見送る背中はやっぱり元気がなさそう。これまで沢山お世話になったのだから出て行く前に何かお礼をしたい。料理は今では早く帰ってきた方が作るしお礼としては弱い。何か欲しい物はあるだろうかと考えたけれどそんな話は聞かない。

 私もそろそろ仕事に行かないといけない。後は帰ってから考えよう。



 マズったかもしれない。仕事に慣れてきたって事は多分そろそろ出て行く事を考えてるだろう。行かないでほしいって言いそうになった。いや、言わないと伝わらないなら言えばよかったかもしれない。

「だとしてもなー……」

「朝比奈どうした?」

「あー、三浦か……」

 同僚である三浦は勿論冬月さんとも同僚の男。俺が冬月さんを好きだった事を知ってる。

「冬月さんって居ただろ?」

「あぁ、先月辞めたあの人?その人がどうした?」

 婚約者いたし寿退社だと思ってたと言う。やっぱり誰もそう思うよな。

「今俺の住んでる部屋に居るんだけどさ……」

「はぁ!?お前なんっ……」

「ばっか声がデケェ!」

 休憩時間に詳細話すと言って今の話は終わらせた。


「で?なんで婚約者がいた彼女がお前んとこに?」

 その休憩時間。三浦は早く話せと前のめりになってる。

「一ヶ月と少し前なんだけど、彼女が一人で痩せ細ってボロボロになりながら歩いてたんだよ」

「なんでそんな事……」

 婚約破棄や元婚約者の借金の連帯保証人になっていた事。そして会社を辞めたのは彼女の意思では無かった事。俺が知ってる範囲だけではあるが全て話した。彼女に許可を得てはいないから罪悪感はある。

「ほんでお前と一緒だと……。まあお前冬月さんの事好きだったし結果は悪くないんじゃねーの?」

「それなんだけど弱みに付け込んだみたいで言えてないんだよな……」

「あーね……。お前冬月さんの前だけは人が違うもんな」

 悪いかよ。好きな人の前では優しい人でありたいから。

「でも少なからず冬月さんはお前に感謝はしてると思うし、出て行って欲しくないなら素直に言うしか無いんじゃない?」

「でもな〜……。拒否されたら立ち直れる気がしねぇ……」

 真っ向から拒否されるとは思ってない。けど自殺を考える程苦しかった時に手を差し伸べられたから今だけは……と言うのも考えられる。後からやっぱり違いましたとか言われたら結構キツい。

「でも多分言わないと向こうも分からなそうだろ」

 それもそう。そもそも感情は言葉にしないと伝わらない。冬月さんも本当はどう思ってるか俺にも分からない。拒否された事が無いから自惚れて居るだけ。

「冬月さんって元々が結構大人しい人だろ?多分そう言う人って言わなくても内心卑屈になって他人の好意に気付けないと思う。なら余計にアピールするんじゃなくて言葉にしないとと思うけどな」

「玉砕したら責任取れよ……」

「飲むんならいくらでも付き合うし、相手が欲しくなったら紹介するわ」

 少し勇気が出た。今日言いかけた事を彼女に伝えないと。

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