3話
近場で大きなショッピングモール。衣料品や雑貨、家具屋も入ってるかなり大きい場所。人が多いからと自然と繋がれた手が熱い。元婚約者とも手を繋ぐ事はあったけど、こんなにドキドキしなかった。
「まずは衣類だよな。俺詳しくないから気になるお店あったら言って」
「あ、はい」
それから服や化粧品、雑貨に家具全てを見て回った。途中でモール内でご飯を食べ、クレープまで頂いてしまった。支払いはほぼ朝比奈さん。申し訳無いと思いつつ貯金もほとんど無いのでありがたい。
「何から何までありがとうございます」
「いーえ。俺物欲そんなに無いから使える機会があってよかったよ。
冬月さんの好みも知れて一石二鳥」
そう楽しそうに笑う彼は私に対してのこの言動はただの元同僚に向けての事なのかと疑問に思った。
帰宅の途中で近場のスーパーに寄り晩ご飯は何にしようかと話しながら買い物をした。なんとなく気恥ずかしい様な、むず痒いものを感じる。元婚約者よりも彼との方がドン底にならなかったんだろうなって思う。
「じゃあ今日買ったもの片付けてて、その間に晩ご飯作っておくから」
「えっご飯は私作りま……」
「今日連れ回しちゃったから俺がやります」
きっぱりと言われてしまえば何も返せない。じゃあ明日は自分が作りますとだけ言い衣類や化粧品を纏めて仕舞い、私用にと買った食器類はキッチンへ、その他雑貨は必要に応じて片付ける。しばらく充電されていなかったスマホも充電器へ挿ししばらく置いておく。
「冬月さんご飯出来たよ」
そう声掛けられたので返事をしてリビングへ行く。豪華な訳じゃないけれど凄く食欲を刺激される美味しそうな料理。むしろこれがいいと言いたくなるもので嬉しくなった。
「ありがとうございます。頂きます」
お粥も美味しかったけれど料理は得意なんだろうか。どんどんお箸が進んでいく。
「お口に合ったようで何より」
ずっと優しい表情をしている彼を見ていて、勝手にこのままこの日常が続いてもいいなって思う。でも迷惑になるだろうから……。
「凄く……美味しいです……」
「こう言う日常もいいな」
「私も思いました……落ち着く……」
晩ご飯も食べ終わり二人でお茶を飲みながら話す時間。元婚約者が浮気なんてしなければあの人とこんな穏やかな時間があったのだろうか。今ではそんな想像も出来ない。何が原因だった何が悪かった。終わった事は仕方ない。今は目の前の彼だけを見ていよう。
「一応、なんですけど……、もし朝比奈さんも何か私にして欲しいことあったら遠慮なく言ってください。何でもするので」
「っ!!」
ゴホゴホと急に咳き込む朝比奈さん。
「私何か変な事言いましたか!?」
「いや、大丈夫。お茶が変な所入って噎せただけだから」
その後数度コホコホと小さく咳き込んで落ち着いたのか大きく息を吐いた。大丈夫だろうかとオロオロしてしまったが何もなくて良かった。
「冬月さん気持ちはありがたいんだけど、何でもするはあまり色んな人に言っちゃ駄目だからね?」
「えっ?あ、大丈夫です。初めて言いましたし今後言う予定は無いので」
今度は息が詰まったみたいなングッと言う声が出た。本当に大丈夫なんだろうか。
「言う予定が無いのは良かった。いや、良くない……俺が駄目……」
段々と声が小さくなっていったので後半は何を言ってるかは聞き取れなかった。それでもさっき言った事が問題なのは理解した。今後は気を付けよう。
「とりあえず今は無いから大丈夫だよ」
「あ、はい。分かりました」
その後は順番にお風呂に入ってまた少し話して、明日は朝比奈さんが仕事なので寝ようと言う事でベッドにまた寝させて頂いた。来客用のお布団で良いとは言ったものの押し切られてまた拝借させて貰った。一応注文したので来週中には新しいベッドが届くのでそれまでは私がこちらで寝る形になった。申し訳ないけれど凄く寝心地が良いのでその誘惑にも負けてしまった。




