決着
「初陣だ!”異能力”:”健脚”ッ!発動!」
そう私が叫ぶとそれに呼応するように心臓の高鳴りを覚える。周囲の音がより鮮明に聞こえる気がする。
集中しているということなんだな!
「ハマは全力で走り回れ!僕は異能力使って攻撃する!」
フブキ先輩が指示を出したと同時に、こちらに向かって触手が大きく振りかぶられた。
今の私なら前のように逃げるだけじゃない!という気持ちがどんどん湧き出てくるが、初戦だし安全に行きたいし…という気持ちが出てしまい結局逃げるように走り出す。足が速いのでこちらに届く前に逃げることはできている。
「ニゲテバカリジャイミナイヨネェ~?ニゲルコトシカデキナイノウナシナノカナァ?」
煽るように喋る芋虫型の”異能”を逃げながら睨みつける。実際逃げているだけだし…ちょっとだけイラっとしたというのもあるけど、蹴っ飛ばしてやろうか?ちょうどこちらに触手が来てるし…な!
「「「え」」」
その声は誰の声か。いや誰の声でもいい。兎にも角にも誰もが驚くような光景が目の前にあったのだ。
私はただ触手を蹴飛ばしただけです。なのになぜか足が当たった瞬間、触手は弾け飛び、触手だったものは宙を舞ったのです。
いや…おかしーでしょ。なんかものすごく吹き飛んだし、足はなんか軽くマラソンを走った感覚があるし。というか、痛い。無茶も何も初めてだから力の使い方に慣れていないのだろうが、すごく痛い。
・・・足は動く。ならば逃げるんだ!とりあえず先輩のもとへ!
「エ?ハ?オマエフザケルナ?」
「驚きすぎて、キレきれてねぇじゃねーか!おい、ハマ!?大丈夫が?」
あんな爆発は普通に走るだけじゃ起きないらしく、フツーに(といってもスピードは速いが)先輩のもとへたどり着いた私は突っ込みを入れる先輩に心配された。
「はい。すっごく走った後みたいな感じで疲れてはいますが大丈夫です。」
「にしても何でああなったんだ。ただ走るばりでないのか?」
「わからないのが現状なんですが、少しイラっとしたので蹴っ飛ばそうと思ったらああなりました。力は込めたと思うんですけど。」
わからない。本当にわからない。そう思い悩む私を置き去りにどこか切り替えたように先輩は
「どちらにせよ無茶はさせれないからあまり使わないでくれ。」
そういいながら手をすりすりしだす先輩。何してるんだろう。そう思う私を狙うように目の前から触手が3本こちらに迫ってきた。
「来ると思っていたぜ!守れ”異能力”:”氷結”!”氷壁表伝達”ッ!」
「ウグゥッ!ユルスユルサンノデハナイノダ、ソコヲドケ!」
「ヤダね!守れるとこはしっかり守らなきゃだめだからね!」
すりすりしていた両手を前に突き出すと、薄い壁のような氷ができ、それに触れたこちらに迫っていた触手が凍り付く。それを見てニヤッとする先輩は左手を下から上にあげると氷がより広がった。凄い!
本体に届く一歩手前で芋虫型の”異能”が自ら触手を触手で切り落とす。
「先ほど私が蹴り飛ばしていたときは嫌がって、自分ではえのかいな。」
「ウルサイ!オマエヲツブスタメナライイノダ!」
そう芋虫型の”異能”は叫びより速く触手をふるう。私は軽々避けれるのだが…先輩!?動いてない?何本か弾くか!軽く力を入れずに足を振りぬく。さっきのようなはじけ飛ぶとまではいかずとも他の触手を巻き込みながら軽く吹き飛ぶ。
「助かる!さっさと終わらしたほうがいいと思ってな。ちょっと大技使う!」
なるほど。だから今動けないと。氷の壁とか張ったらいいのでは?
いや、まあ任してくれたと思うとうれしいけど。触手が多い。ちょっかいをかけて離れて触手をよけて弾いて・・・やることが…多い!!!
「ウットシイゾーーッ!!」
「それはよかった!そのまま凍り付いてくれ!いくぞ”氷山の一角”ッ!!」
怒り狂う芋虫型の”異能”が振り下ろす触手に対し、先輩が氷の塊を手から放つ。
それは触手によって叩き割れると見る見るうちに触手を凍らせ、本体の体の半分ほどを凍らせる。先ほどの比ではないほどに凍結が速いのだ。切り落とせずに半分ほど口まで凍り付く芋虫型の”異能”を先輩はみながら刀を抜いて近づく。
「安心しな。あんまし溜めれなかったから凍るのも半分までだよ。」
「――――ウゥッ!?ウアァア!?ウウウゥウゥッッッ!!!」
口が凍り付いたことでしゃべれなくなった”異能”はまだ凍り付いていないほうの触手を使いこちらをたたきつけようとするが横から断たれる―――苦悶の表情を浮かべる”異能”の隣に現れた人物によって。
「来なくても良かったきがするのだが、まぁいいか。」
触手を切り落とし手に持つナイフで”異能”を刺すその人物を私は見たことがある。というか昨日見た。
我が高校出羽西高校1年3組担任地歴公民担当真角浩人先生だ。
「真角先生!?」
「お前たちか…襲われてたの。やはりあの騒ぎは”異能”関連か。」
「知らずに来たのですか真角せんせー?」
「あのなぁ夏風君。あの上司が言うと思うか?「行ってきて」の一言だけだったよ。まあ一応君たちが行っているというのは聞いていたが。」
その感じだと結構知られているみたいだな・・・おっヒビキ先輩たちが来た。朱音が起きたみたいだ。
ちなみに刺された”異能”は塵のように粉になって消えた。
「鈴森も目覚めたのか。中園も疲れてるだろう。車で向かう。ついてきてくれ。」
そういって踵を返す真角先生を追いかけるように先輩たちがついていく。私も遅れないように急いで歩いていく。
ただ、朱音は何が何だかわかっていないみたいだったけど。
あと数話で序章が終わります




