【ツイン】
タイトル『ご希望に』
Side:一葉・登場人物:瑠璃
放課後……
「瑠璃、図書室に行く?」
「……図書館に行きたいけど、ダメ?」
可愛い お願いの素振り……それが続くと、勘ぐってしまう。
「最近、図書室に寄らないよね?」
俺の疑問に、泳ぐ視線。
本音を隠している様子。
「瑠璃?俺の目を見てくれるかな♪」
指をあごに滑らせ、顔を自分の方に向かせ……視線を合わせるように顔を近づける。
視線があった途端に、涙目……
俺が悪い事をしているようで、罪悪感と……
自分の奥深くに眠る、まだ理解できていない感情をくすぐる。
苛立ちとは違う、急かすようなムズムズ……
口を閉ざした瑠璃の唇に軽くキスを落としてみる。
満ちる様で……不足を感じる。
「一葉、学校では……あまり、イチャイチャするのは……」
真面目な委員長……彼女の服の下は、俺だけが知っている。優越感と何か……
拒絶じゃないにしても、否定的な言葉に苛立ちを感じるのは、大人げない事だろうか?
「どうして?」
俺の尋ねた意図とは違う返事。
「学校は嫌なの!見つかったら恥ずかしい。」
見られて恥ずかしい恋などしていない。
瑠璃の言いたいことも分かる。誰にも見せたくないのは確かだ……
矛盾した考えが、自分の余裕の無さだという現実が痛い。
誤魔化すように振る舞うのも、幼さ故……
「俺とイチャイチャしたくないの?」
「学校では、イヤ……」
思考と理解を超えた限界……
「優しくするよ?」
「嘘だ!」
え……?
信じられない否定の言葉に、突き落されたかのようなショック。
「どう、“ウソ”なの?」
込み上げる怒り……
我慢しながら、口もとの引きつった笑顔で尋ねた俺。
俺の感情も伝わらず、俺が悪いかのように睨んで強い口調。
「こ、この間……メチャクチャにしたじゃない!!」
プチリ。激カワなセリフに理性など吹き飛ぶ。
「ご希望に応えるね♪」
タイトル『曖昧』
Side:穂波・登場人物:双葉・海波・モブ女生徒。
「穂波、最近……奴は調子に乗ってるんじゃないか?絞めてやってもいい……いや、死刑執行だ。」
姉さんは過激だな。
しかし、そんな風に見えるような事に心当たりがない。
「ふふ。そんなことをしたら、景彩先輩に怒られますよ?」
私の答えに、口を尖らせて拗ねた様な表情。
そこへ女の子が近づいて、私たちに話しかける。
「海波先輩、お話をしたいのですが!」
顔を真っ赤に、告白でもするのだろうか……勇気のある女の子は嫌いじゃない。
「じゃ、姉さん……あまり匂いのつくようなことは控えてくださいね。」
もう私の声など聞こえていない様子に苦笑。
廊下を歩き、静けさに違和感。
普段なら奴の気配がしても、おかしくないはず。
足を止め、周りを見渡すがいない。役員の仕事だとは聞いていない……
いや、付き合っていないのだから行動を知らなくて当然。
双葉の強引さに振り回され、落ち着かないよりはマシだ。
そう思うのに、珍しい平穏に寒気が襲う。
何だ、コレ……
原因を追究するため、しょうがなく双葉を探す。
「ね、双葉を見ていない?」
通りがかった女の子に尋ねてみた。
「さっき、3年棟の校舎裏で女生徒と一緒なのを見た子がいるみたいですけど。あの、誤解しないでください!人違いかも……」
「ありがとう。」
今日は、双葉の姿を見ていない。
姉さんの言った事と関係するのかな?
いや、双葉が誰と一緒でも私には関係ない。付き合っていないのだから……
自分に言い訳を何度も繰り返しながら、心はざわめきに押し潰されそうだ。
校舎裏へと足を向け、双葉の姿と女生徒の制服が見えたところで歩行停止。
視線を逸らし、顔を背けて方向を変える。
失うかもしれない……
双葉は私以外を選べる。私も同じ……
思考がスッキリしない。
弓道場に向かい、部員に声をかけて参加させてもらう。
父から学んだ弓道は落ち着ける時間だった。
目を閉じて息を吐き、開けた目を的に向けて視線を真っ直ぐ保ちながら弓を引く。
自分専用の弓と違って、少し軽いような気がした。
矢は的の中心から大きく逸れて、自分の心が如実に表れた結果。
矢が突き刺さった的を見つめ、心の痛みに苦笑した。
誰と一緒に居たのか確認することも、何を話していたのか知ろうとせず……
素直さとはかけ離れた臆病さ。
先ほど姉さんに話しかけた女の子の事を思い出す。
想い人がいても、同性であっても、自分の気持ちを伝えようとする姿。
そうだよね、私でも可愛いと心惹かれる……
「穂波ぃ~~!」
え?
叫び声が近づいたと思った瞬間に、背中に掛かる重み。
「ふ。くすくすくす……つ・か・ま・え・た♪」
捕まってしまったあぁ!
さっきまでのテンションを覆すように、双葉の腕を振りほどこうと抵抗する。
「くくっ……ね、油断した?したっしょ?でなきゃ、こんな無防備……千載一遇のチャンス到来!」
嫌な汗が出た手は、双葉の腕を引きはがそうとするが上手くいかない。
双葉の手が自分の体を這うように、私の抵抗も気にせず上着やスカートの中へと滑る。
「やめろ、触るな!離れろって。」
さっきまで、誰と居たんだ?
私以外の誰かと、同じような……もしかするとそれ以上の事も……
私は抵抗を止め、目から溢れる涙を零す。
「……穂波?どうした、抵抗しろよ……なぁ?」
【ガゴンッ】
不安そうな双葉の声と同時で、大きな音と振動を感知した。
「オイオイ、双葉くぅ~ん?さっき、てめぇに私が言ったことを忘れたとか……言わねぇ~よな?」
双葉が私から離れ、頭を両手で押さえて涙目。
間に入ったのは、姉の姿……
「もう一回、校舎裏に来い♪」
校舎裏?
「酷いよ、景彩に言いつけてやる!」
「けっ!!もう、機嫌を損ねた後だから痛くもかゆくもねぇ~よ!」
「分かった、八つ当たりだな?俺を、穂波が呼んでるなんて誘い出して……イジメ、良くない!」
「バァ~カ!穂波が、お前なんかを呼び出すと思ってる時点で終わってんだよ!」
二人の様子に思わず笑みがもれた。
「笑った……海南先輩、見ましたよね?もう俺達……結婚します!」
「ざっけんな!穂波、コイツを義弟には認めないぞ?」
息の合ったいつものケンカ風景に、曇った心は晴れていく。
「うん、絶対に結婚しない。だって、私たちは付き合っていないのだから。」
そう、この想いは不確かで甘いから。
双葉に依存するの……
注意書き:ちょっと危険度の多い描写のイチャloveですかね。
Side:瑠璃登場人物: 一葉
図書室にいる回数が多いけれど、本が好きというわけでもない。
一葉は、この静かな雰囲気が好きだと言うけれど……
いつ読んでいるのか、本に詳しいのがカッコイイとか思ってしまう。言わないけど……
「瑠璃、委員じゃないのに……何故、そこに座っているの?」
図書室入り口付近で、貸出管理を手伝う私に一葉が尋ねた。
「……図書室の利用が多いと、暇に見えるのかな?代わりを頼まれたのよ。」
ふ~んと、適当な返事で周りを確認する一葉。
利用者はいないので、この部屋には一葉と二人きり。
一葉は視線を私に向け、笑顔。嫌な予感がする。
でも、区切られた空間が……
【バッ】
!?
作業机を軽く飛び越え、着地した一葉は流し目で私を確認。
【ドキッ】
じゃ、ない!まずい……こんな入り口近くで、迫られた日には……
身構える私の様子を見て、一葉は逃げ道を塞ぐ。
私は、一葉みたいに机を飛び越えるほどの運動神経など持ち合わせていない。
「何?ふふっ……期待しているの?さ、作業を続けて……心配しなくても、近くで見てるだけ……何もしないよ?……望むなら別だけど。」
一言一言、言葉が増えるにつれて危険を感じる一葉の色気は、気のせいだよね。
視界には、机に寄り掛かって私を見つめる一葉の姿。
距離を保った状態で警戒しながら、貸出票の確認。
集中していると、足元に違和感。
視界には一葉の姿がない……
!?
右の足首から上へと触れる感覚。
「ちょっ……ヤダ!」
イスを引いて足元を確認すると、鋭い瞳の輝き……
まるで野生の狼にターゲットにされたようだ。
「駄目、一葉……もうすぐ終わるから、待っていて。」
必死で訴える。
「くすす……もう、無理……かな。」
一葉は手を床について、じりじりと距離を縮め、私の足を捕える。
「一葉……お願い、嫌……恥ずかしいから。」
顔が熱くなるのが分かり、両手で隠して身を逸らした。
「もう……誰も来ない時間だよ。それに、鍵も閉まっている。」
用意周到というか、いつの間に……
「だけど、廊下に聞こえると……」
「くくっ……声、我慢して。」
我慢しなきゃいけない程、何をする気なの?
違う……期待していない。今まで、この部屋で何度も一葉と……
恥辱に耐えられず、涙が溢れてくる。
「瑠璃、顔を見せて……声が我慢できないなら、塞いであげるよ。」
甘い声に熱を感じ、そっと腕の合間から様子をうかがう。
「ふっ。泣いてるの?ね、何を思い出したのか教えて。瑠璃……」
太ももの位置まで上った手がスカート下で、ゆっくりと撫でるように動き……
自分の肌が馴染んでいるように感じる。
もう片方の手は制服の上から胸を包み、一葉は顔を近づけて私の表情を観察しているかのようだ。
「感情が追い付かない。一葉、どうしたらいい?」
戸惑う私に満足そうな笑みを浮かべ……
「身を委ねて……」
身を……?
自分の顔を覆っていた両腕の力が抜ける。
手を一葉の頬に当てた。
一葉は近づく私の手のひらに頬を寄せ、キスを落とす。
「瑠璃、好きだ。偽りはない。もう二度と揺れない不動の心を知って欲しい……疑わないで、受け入れて。」
優しく触れる手、重なる体。
熱を受けて呼吸を感じ……
「一生、貴方と……」
『待ち合わせ』視点:穂波
双葉と待ち合わせ。
本当は、双葉と出かけるのを楽しみにしている自分がいる。
任務が長引いたのか、遅い?
母さんは、お父さんが遅れたら待たなかったらしい。
……ふふ。母さんに似たのかな……可愛げないや。
ガードレールに腰を掛け、自販機で買ったコーヒーをすする。
視線……??女の子が二人、こっちを見て何かを言っている。
可愛い……ニッコリ。自然に微笑んだ。
「きゃぁ~~。」
何かが、嬉しかったようだ。
自分に陰がかかり、視線を移す。
「ね、君……女の子だよね?綺麗系なのに……可愛い。良かったら……」
男の人は、急に視線を逸らして方向転換。
……??
【ガバッ】
「ひゃぁ??」
首と腰に腕が回り、抱き寄せられた。
「……ね、嫉妬させて楽しい?俺、場所……気にしないよ?」
【ペロッ】
首元に、舌の感触……?!!?!
「はっ、放せ!見てる!!見られる!!」
「見せてるんだよ。俺のだと!」
……こんな強引なのに……何故か、嫌いになれない。
まさか、結婚まで強引だとは思わなかったけど……
(結婚式を本人が知らないって短編が、どこかに掲載済みです♪)




