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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
2ヴァンパイアは何を欲すか

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苺飴


「いい?これは、あなたの御守り。いつも口に入れていなさい。入れられないときは、この眼鏡をかけること。お母さんと約束よ?」

この約束と寝る前のお話は、お母さんとの大切な思い出。

父の記憶は無い。母が事故で亡くなり、祖母に引き取られる。

小さなアパートから、大きな学園の敷地にある家へ移り住む事に。

何故か、そこには苺飴が豊富にあった。

私は、5歳。祖母から別の物語を聞いた。

『苺飴』を捜す旅。

変な話だと思うだろうか?大きくなるにつれ、そう思うことと『まさか』と思うことが半々。

その物語には、『朝顔』に似た模様が入り口として出てくる。

高校一年生。今日、誕生日を迎えた私の足元に『入り口』が現れた。

手には、ポストにあった封筒。『朝顔』の紋章?

祖母は去年亡くなった……






口には、苺味の飴。

目の前に『入り口』……祖母は、時が来るまで踏んではいけませんよ……なんて、笑っていた。

ふふふ……時が来たら、踏んで……どこに行くのかしら??

確か、母の物語と繋がるのよね……。

「李央、おはよう!!」

ドンっと、私の背中に重み。

「あわわわ……」

危うく『入り口』を踏むところだった。

「百。『入り口』が、目の前にある……」

彼女は、安西あんざい 百枝ももえ。私の友達で、遠い親類になる。

物語は聞いたことがあるけど、お互いに記憶が薄い。

「……私には、見えないね。それに、苺飴を口に入れてるのは李央だけよ?くすっ、どうする?異世界への扉が開いたら。」

「……『入り口』があるんだから、『扉』も本当なんじゃない?この学園でも、行方不明の話があるでしょ?」

私たちは、『入り口』を避けて学校へ向かう。

同じ敷地でも、歩いて10分の距離。

「プレゼントを用意したんだ。天気がいいから、屋上に行こう?」

「ありがとう!!百、大好き♪」


時間が早く、校舎には人気が無い。部活の動きが聴こえる程度。

屋上へ続く階段を上ろうとした……

「李央!アメが、降ってきた!!」

アメ?小さな球体が、頭や体に当たる!!

「ごめんなさい!!……大丈夫ですか?」

二人は体を屈め、地面に散りばめられた飴を見つめる。

体に当たったが、普通の飴の大きさより小さかったからか痛くは無かった。

「……大丈夫……です。」

ホッとした。

声のする方に目を向けたが、逆光で顔が見えない。

「よかった……。本当に、ごめんなさい。」

ビックリして、立てない私に手を差し伸べる男の人。

近くまで走り寄ってくれたから、顔が見える。

……あら、まぁ……良い男♪

「大丈夫で……みゅっ?」

心配そうな表情に、安心して欲しい言葉の途中……口が塞がれた。

美系の顔が、目を閉じ……私の目の前。

私の唇に柔らかい……?!!

「むぐっ……んん~~んっ……はっ……」

柔らかく、生暖かい何かが……口の中の飴を取り上げた。

彼の顔が遠退き、口に……

………。

「ぎゃぁ~~~~!!」

叫び声と同時に、平手が飛んだ。

【バシッイィ~~】いい音が響く。

勢いよく方向を変え逃げた。

思考回路が追いつかない!!

何?何が……??

足元の飴は、割れる音がいやに耳についた。

待って、私の……ファーストキス……が?!しかも、ベロチュウ?!!

私の口の中の飴が、彼の口の中にあった??……信じられない!!


行き場がなく、教室に入る。

まだ誰も来ていない。息を切らし、机に両手をついて下を向く。

あ、百を忘れてきた。プレゼント……

現実逃避の限界は早い。

………。

忘れよう。授業まで、時間がある。

鞄の横にぶら下げたポーチから、飴を取り出そうとした。

手には鞄がない。ん

?胸ポケットのところに、降ってきた飴が引っかかっている。

無意識で口に……

飴は苺味。

懐かしい……


そこまでは記憶がある。

その後、多分……気を失った。


懐かしい夢を見る。

何度も何度も聴いた物語。

記憶に薄いのは、どうしてだろうか?幼い頃の話だから?

……けど、おばあちゃんの話は……亡くなる前まで聞いた気がする。

確か、笑える設定の吸血鬼が出てくるの……

ヴァンパイアが欲するのは……苺飴……

血じゃない……と。


意識が戻る中、男の声……二人?

会話が聞こえる。

「これが、ありかを知っていると?」

「あぁ、階段に一族からの招待状があった。」

「……先に、見つけた奴がいるってことか?」

「だから、逃がすなよ。ま、どうせ逃げ道は無い。逃がさないけどね……。くくく……」

「16年、隠してきたのか……時が来ていなかったのか……どちらにしても、我らの希望……」


「……ん……」

重い目がゆっくり開く。

視界がぼやけ、奴がいた。しかも、何か嫌な予感のする爽やかな笑顔。

「李央、目が覚めた?俺、牧戸まきど 王利おうりこれ、流烏るう。宜しくね♪」

これ……?

視線を落とすと、真っ白な犬。……でかい。

「どうも、流烏です。王利の世話役で、……聴いてますか?」

……犬が喋った。

「悪夢……目が覚めない……」

現実逃避……。

百……

「百は?!百は、どこにいるの?……嫌だ……近づかないで!!」

怖い。何故だろうか……嫌な予感がする。

記憶に無い物語が、この人たちに係わるように促す。

私は、何を口にした?

「百?あぁ……隣で寝てるよ。」

視線を隣のベッドに……って!!

「ちょ、何?!その犬……待て!!お座り!!」

流烏が、百のベッドに乗っている。

「私は、犬ではない。」とか言って、犬でしょう?!

【ベロッ】百の顔を舐めた。

「ぎゃ~~。汚い!!百に、何すんのよ!」

不機嫌そうに、私の方に向いて……

「美味しそうなので、味見です。何か?」

だと?!この獣め!!

「あんた、飼い主でしょう?どんな、教育を……って?!」

飼い主まで、盛ってるのか?!

顔が近づいてくる。慌てて押し退け抵抗。

逃げられない?!

【ガラッ】

「誰か、使用中かな~?」

保健室の養護教員が、いいタイミングで入ってきた。

「先生!」

助けを呼んだ私から、奴は素早く距離を取った。

が、「ちっ!!」舌打ちのオマケ。

顔を出した先生に、最高の笑顔を向けた。

………。

犬は、ベッドの下に隠れている。

こいつら……胡散臭すぎる!!

「先生、百を診て!大丈夫かな……」

「……ふぁ~~。ん……??ここ……はへ??」

間抜けな百の声が聞こえ、起き上がる姿は問題なさそうだ。

「先生。2人の意識が戻ったので、俺は教室に戻ります。……李央、招待状は見ても気にしないで。俺が、迎えに来るから……」

奴は、私に微笑んで立ち上がり……保健室から出て行った。

ベッドの下には、犬はいない。窓が開いている……

招待状??

奴の言う招待状……まさか、ポストに入っていた?

ベッドの傍らに、鞄がある。

サイドポケットに封筒。これ??

「李央?何で、二人とも寝てたの??それは……?」

ベッドから下りた百が、私の横に身を乗り出して招待状を見た。

中は『入り口』と同じ『朝顔』の紋章?

『我々、ヴァンパイアの一族に迎えます。』と、一言。

………。

ヴァンパイア?迎える??

「これ、物語の?まぁ~~。『伝説の苺飴を捜せ!!』かしら?ねぇ??」

のん気な百の声が、遠くで聴こえる。

意識はここにあるのに、思考の奥で何かが囁く。

『いい?時が来るまで忘れて……。時が来たら、飴も眼鏡も隠れ蓑にはならない。信頼できる人に付いて行くか、信頼できる人を捜しなさい。苺飴は彼らの希望……私たちの世界の秩序を護るから……。』


目が覚めた私たち二人は、保健室から追い出され教室に戻る。

授業中の教室の傍らを、思考の止まった私と、のん気に鼻歌で通る百。

『迎えに来る……』

奴は信用できない。盛った犬と野獣……。


授業中は、飴を食べれないから眼鏡。度は入っていない。

成長に合わせて作られる眼鏡は、同じデザイン。

おばあちゃんの遺言に、この眼鏡と苺飴の記載があった……。

最近、眼鏡が壊れて……一日していなかった日がある。

その日……視線を感じた。学校の敷地内で、男の人が私を見て会釈した。

知らない人……話すわけでもなく、ただ……私を見ていた。

あの日に、見つかった??

吸血鬼……昔、昔……人を餌としていた一族。

餌に選ばれた人間を愛し、血の代わりを求め……苺飴に辿り着いた。

餌の解放……一族の希望。


教室に戻ったと同時に、終業のチャイムが鳴った。

ドアが開いて、先生が出てくる。

「おぉ、大丈夫か?牧戸から報告は聴いた。次の授業から、大丈夫か?」

「………。」

私は、開いた口が塞がらなかった。

「はぃい!大丈夫であります♪」

元気よく百が返事をしたので、先生は苦笑いで行ってしまった。

このクラスに、奴はいなかった。何、これ……漫画なの??

自分の席に座る。クラスを見渡すと、いなかったはずの奴に居場所がある。

しかも、異常なほど自然だ。

私の視線に、奴が気づき笑顔。

………。

視線を逸らし、外を見た。

………。

校庭が見えるが、一面に入り口の紋様。

あれ?何か、選択の余地はない感じ??

恐る恐る、奴を見る。……まだ、私を見ていたのか……視線が合う。そして、ニヤリと笑った。

覚悟……要りますか?異世界……へ?

ヴァンパイアの一族に……迎える。お迎え……いらっしゃいませ。

……で、さようなら……よね??

いやぁあ~~~~。私が、何をしたの??

二人……いや、野獣二匹の会話……私が、何かを知っていると……。

知らない!!何も、知らないわ。

物語も、記憶に無い。これ以上、私の生活を狂わせないで!!絶対、嫌だ!!

我慢できず、教室を飛び出した。

「李央!!」

奴の叫ぶ声が聞こえる。

当然、無視した。

廊下を走り、階段を駆け上がる。

地上に逃げ場がないなら、屋上に逃げるわ。

現実は、辛い……お母さんを亡くした。おばあちゃんも……。

私の大切な友達……百。彼女を巻き込むわけにいかない。

異世界に行くのは、私だけでいい。

この世界には、私の居場所はない……


「……李央?珍しい……サボりか?」

……聞き覚えのある声に、目を向けた。

「……早助?あなたこそ、サボり??」

幼馴染みの、真面目なひがし 早助さすけ

「……あぁ、何かに呼ばれたんだ。ふふ……運命かな?ね……李央。いつか、選択のとき……俺の手を取ってくれるかな?」

……選択の……時??

「早助?……あなた、何を見たの?」

予感……

「……人が消えるのを見た。昔話の、入り口も……そして、招待状を受け取った。君とは違う……ほら、これ……」

手には、この世界にはない……朝顔の花。

あの、紋章と同じ形。

「……行くの?駄目!行かせないわ!!あなたを失いたくない……行くなら、私も行く!!」

「……李央……そいつは、誰だ?君の何?」

後ろからの低い声に、身が縮まる。

何故……

「近づかないで!あなたたちの目的は何?最近、学園内で行方不明が数名……」

「うん。だから、君を求めてきた。同族の意見の相違が、世界の秩序を狂わしている。……俺の手を取って欲しい。」

また、手を取る……??

何?一体、私が何者だと言うの?

「早助……あたなたは、私の味方?これからも、ずっと……?」

「……うん。多分……」

多分……?何故……

「李央をいじめないで!!」

2人の差し伸べる手を割り、百が私に飛びついた。

勢いで、しりもち。

「百……」

「護るのは、私だもん!!」

………。

おしりの下に、紋章が見えた。

「……百、入り口……踏んじゃった。」

「……うそ……ごめん!!」

物語と同じ……大きな扉が現れた。

「……はぁ……流烏、来い!!帰るぞ。予定外か……それとも……」

奴の声が消える……


扉が開き、眩しい光に包まれ……呑み込まれた。

何て、間抜けな始まりなんだろう……そして、何か嫌な予感がしてしょうがない。

手を差し伸べるのは、二人……私の選択が、世界の秩序を護る?壊す?

……希望……絶望……??

私には、関係ない……よね??

苺飴を捜せ??冒険??

楽しそうな響きが感じられない。

ヴァンパイアが求めるのは……何か……




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