【微笑】⑦新婚編
タイトル『おかえりなさい』
Side:小鹿・登場人物:連歌
結婚式の後、急に入った学園内のトラブルに、連歌は数日の留守。
今日、帰って来ると連絡があった。
新婚生活のスタート。
落ち着かず、何度も同じところを掃除して、お風呂や食事の準備を整える。
帰宅すると連絡があった時間が近づき、ドキドキと緊張。
恥ずかしさと、寂しさの伴った複雑な感情に急かされる。
【ピンポーン】
インターホンの音に、心臓が跳ねた。
慌てて玄関に走り、鍵と扉を開ける。
嬉しくて涙が出そうになるのが分かるのに……
「小鹿?相手も確認もせず、簡単に鍵を開けてはいけませんよ。」
本気の怖い顔。
「……だって、連歌……」
悲しみの感情が、涙と共に溢れた。
そっと、連歌は抱き寄せる。
「あぁ~……すみません、悪いのは……俺ですね。泣き止んでください。」
連歌は私の頭を撫で、額や目元に口づけしながら謝る。
愛しい人……この人と、これからの生活が始まるんだ。
「……おかえりなさい。」
「ただいま。」
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タイトル『新婚と言えば』Side連歌・登場人物:小鹿
前日、俺の機嫌を損ねた小鹿が『何でもする』と約束をした。
くくっ……もちろん、楽しみは味わいますよ。
仕事場でも機嫌が良いので周りからは怪訝な顔をされたが……
車の運転中も、顔が緩んでいるのが分かる。
帰宅し、インターホンを鳴らす。
鍵が開いて、小鹿の真っ赤な顔。うん、これは合格ですよ。
期待の言葉を待つ。
「お、かえり……なさい。あ。なた?お風呂、だよね?いつも、お風呂が先だし!ご飯の用意も、出来てるんだけどね?ど~……する??」
何ですか、この中途半端にも満たない……
「小鹿、失格です。さ、もう一度。」
玄関のドアを片手で押さえ、入り口にもたれながら見下ろす。
そんな俺に、下から睨んで涙目。
ぐっ……我慢です。
煽られますが、欲しい言葉を言わせないと、こんなチャンスはないでしょうからね。
「……お風呂、食事……そ、れとも……それ……ぐすっ。」
何故、そんなに嫌がるのか理解できません。
「それとも、何ですか?ほら、最後まで言わないと……許しませんよ?」
顔を下に向け、涙が零れている。
「嫌い……意地悪なの、ヤダ……」
あまりに追い詰められ、自分が何を言っているのか分かっていないのでしょうか、普段は絶対に言わないような甘えた声。
【プチッン】
タイトル『二人』
Side:小鹿・登場人物:連歌
新しい服を購入したので、連歌に見せようとウキウキ。
それなのに……帰宅した連歌は、眉間にシワで不機嫌。仕事、大変なのかな?
「連歌、疲れたでしょう?先に、お風呂に入って。」
連歌を風呂場に誘導し、私は服を着替える。
ふふっ……お店の人が、絶対に男性は喜ぶって言っていた。
連歌に見せたいから、なんて素直に言えないけど。
最近……二人の時間も少なかったから、ちょっとだけ頑張ってみる。
誘惑とかじゃない……胸元が強調されて、腕や足の露出が多いけど……
外に着て行かなければ良いよね。
「それが例の……ね。」
急に背後から声がして、両腕を背に回され、手首を掴まれた。
「な、何!?」
痛みがするほどの強い力が加わり、連歌の低い声。
「誰に選ばせたのを着ているのですか?答えろ、小鹿。」
連歌の表情も分からず、怒りの伝わる声と力。
「……っ……」
痛みに涙が零れ、言葉が出ない。理解できなくて怖い……
ベッドに突き飛ばされ、弾む体。
被さる連歌は、私の両胸を押さえ付けた。
手のひらを下から上に移動させ、服を掴む。
【ビッィー】
え?
布の裂かれる音に、思考停止。
見開いた目に映るのは、前髪で表情が隠れた連歌。
【ポタ…タ】
胸元に落ちる温かい液体。
「……くそ。俺のだ、俺の……。いっそ、閉じ込めてしまえれば……」
泣いている……?
連歌の悲しみが伝わって、私の心が共鳴しているようだ。
愛しい……欠けたような埋まらない感情を求め、私は連歌の髪をかき分けるように手を伸ばす。
戸惑いなのか、拒絶なのか……連歌の体が硬くなるように身を揺らした。
「連歌、抱いて……愛情を頂戴。足りないの……ね、愛しているのはあなただけ。」
連歌は私の手に頬をすり寄せ、顔を上げて安堵の微笑みを向けた。
私にキスを落とし、愛を囁く……
連歌の愛情に、思考が曖昧になるほど身を委ね……熱と息を交わらせ……
朝、連歌の裸が見えないように布団を出る。
落ちた下着を拾い集め、破れた服に手を伸ばした。
広げて眺めていると、腰に腕が回り、背中に舌が這う。
「ちょ、仕事に遅れちゃうわよ?昨日……食べずに寝たから、きちんと朝ごはんを食べないと……」
連歌を引き離そうと抵抗。
「くくっ。さ、小鹿?俺の朝食になってください。」
すっかり、いつもの調子で意地悪な微笑みを見せる。
「ふぅ。連歌、この服の説明くらいしてくれるよね?」
連歌に、甘えるように体重をあずける。
連歌は不満な表情で私を抱き寄せて、視線を逸らした。
「昨日、服を買った店の責任者から、謝罪の連絡があったのです。」
謝罪??
首を傾げた私に、口もとが引きつる連歌。
「はぁ~。本当に、家に監禁しましょうか。」
ため息を吐きながら、諦めたような苦笑。
どうやら、新人の男性社員の態度が、私に対して度が過ぎていたとの謝罪だったらしい。
自分では分からない、連歌が怒るような事があったのだろう。
嫉妬するにしても、もっとこう……
「小鹿、俺だけだと誓ってください。」
真剣な眼。
夫婦で、それ以上の誓いが必要なほど、不安にさせたのかな。
誤解は生じる……それを上回るほどの時間を過ごし、愛を確かめてきたはずなのに。
夫婦の絆は不変だと、確証する方法を手さぐりで歩み続ける。
「嫌よ。昨日、怖い思いをして本音を吐き出したもの。しばらくは、我慢すればいいわ。」
二人、キスを交わし微笑んで……




