【微笑】⑤悪魔が苦笑して(オオヂカ)
『オオヂカ』や『小悪魔』の続き(関連)です。
『悪魔は苦笑して……』side連歌
休日に、一人で買い物に出かけた。
任務用の服も、買い替え時……ふらりと入った衣料品売り場で声をかけられる。
「おや?連歌くん……」
小鹿の父……仰近さんです。
「こんにちは。」
「小鹿は、一緒じゃないのかい?今日、出かけると聞いていたけど。」
「はい。友人と出かけたので、俺は仲間はずれですよ。里鹿さんは、どちらに?」
一緒にいるイメージがあって、尋ねてみた。
「あぁ、プレゼントを買いに来たから、別なんだよ。」
仲の良い夫婦ですね……
ふと、里鹿さんの仕上がりに疑問が頭を過る。
「ん?くすくす……聞きたいことがあるのかな?」
……本当に、小鹿は誰に似たのでしょう??
「ふ。連歌くんは、まだまだ……だね♪」
思わず苦笑。
場所を移動して、喫茶店に入る。
「知りたいのかな?」
仰近さんの意味深な笑顔……
「仕上がり前を、聞きたいのですが。」
「ふ。手を出したら泣かれたよ?」
……あの、里鹿さんが!?
「ぷくくっ。物凄く、意外そうな顔だね♪」
最高の笑顔の後、俺にニヤニヤ……
「連歌くんは……小鹿に言わせるだけで、満足しちゃうのかな?」
……何を、でしょう……小鹿の両親は、俺を身構えさせる。
小鹿と時間を過ごしますが、俺の愛情では成長しないのでしょうか?
いえ、成長を……出来れば願いたくはないのですが。
「『愛している』と、言ってほしい……とか♪」
体が硬直する。確かに……言わせて、満足しますよ?
普段、言ってくれない言葉を、強引に言わせて……
ニヤニヤと、うなずく仰近さん……運ばれてきたコーヒーに口をつけた。
ちょっと、恥ずかしいようなセリフも求めます……が。
これは、鬼畜の話でしょうか??
ヒツジなら、理解できるのでしょうか……あいつに負けたことになる?!
俺の理解できない趣向……余裕がなくなっていく。
「調教話……聞いて行く?」
携帯が鳴り、表示を確認した。
「仰近さん、小鹿です。」
「あぁ、出て。」
どうしたのでしょう……少し、安心した自分がいますよ。
「はい……え?な……??」
電話に出た途端、小鹿の鼻声……泣いている??
耳を傾けると、今すぐに来て欲しいと言う。
あ、小鹿が泣いているというのに(逃げる意味ではなく)嬉しい自分がいる。
「何かあったみたいです。すみませんが……」
「いいよ。また、今度……ゆっくり話そう♪」
仰近さんの笑顔に苦笑しか返せない自分。
落ち込みながら……手を伸ばしたが伝票を奪われ、コーヒー代も拒否られた。
大人って、難しい……そう思った一日でした……
おまけ
小鹿のもとに駆けつけると、いきなりの平手。
もちろん、手で受け止めますが……
「ふふ。小鹿……俺をこれ以上イジメる気ですか?」
「うぅ~……何のことよ?私、怒ってるんだからぁ~!!」
泣いているのが可愛くて、暴れる手を捕らえてキスを落とす。
これでも、甘いのでしょうか……
「キライ!もう、もう!もうぅ~~!!」
「小鹿、もっと……泣いてください。可愛い……俺には、これで十分です。」
涙目で睨んで、抵抗をする。
「普通は、慰めるとか……理由を聞くとか!!」
「くすす。慰めて欲しいのですか?良いですよ……俺の部屋、行きますか?」
俺の微笑みに、視線を逸らす。
「……ヤダ、遅くなったら何て言えばいいか困る……」
おや?可愛い事を言いますね……
「大丈夫です。さっきまで、仰近さんと一緒でしたから♪」
顔を真っ赤に、抵抗が強くなる。
「嫌だぁ~~。絶対に、帰る!!恥ずかしくて、死ぬぅ~~!!!!」
小鹿を捕まえ、肩に乗せ……俺の部屋に持ち帰る。
「ね?小鹿……俺の愛情に答えて下さい……もっと、もっと……俺に振り回されればいい。」
俺が振り回された以上に……
小鹿にとって、俺はどう映るのでしょう?
「小鹿、俺のことを好きだと言ってください。俺は、優しい方だと知ったのです。ね?小鹿……」
「嘘よ……悪魔が微笑んで……」
【オオヂカが苦笑して】side仰近
お菓子に入ったブランデーに酔って、里鹿が言った。
「どうして、強引にしてくれないの?」
……本音だと、信じても良いのかな?
墨は、その様子をすべて見ていて……ニヤニヤ。
「どう思う?」
尋ねた俺に、笑いをこらえる。
イラッ!!
「うるさい、黙れ……言うな!訊いた俺が、馬鹿だった」
背を向けた俺の肩に、手を置いて重みをかける。
「重い。」
「ふ。だから、押せって言ったろ?くく……お前のは、強引じゃなく……急かされただけの狼。女の子は、怖がって当然だろ?」
……意味が分からない。どう違うんだ??
「ぷぅ~~!!マジで、そんな顔しちゃうんだ?クールな奴が……ぷぷっ……くふふ。我慢できない!」
さっきから我慢せず、笑い続けているくせに……
「墨、教えてくれるんだろ?」
すねたように吐き出した、とんでもない言葉。
墨は妖しく笑う。
「……いいぜ?教えてやるよ……手取り、足取り……」
目が本気?これが、強引??なのか!?
距離を、とろうとした俺の腰に腕を回し後ろから抱きしめる。何て力だ……
「あの、墨……やっぱり……ぎゃ!?」
抵抗する俺の首元に唇を寄せた。
「やめろって!そんな教え方は……っ!!」
どんだけ慣れてんだ?
力で押さえられているはずなのに、痛みはなく……ただ、逃げられない。
捕らえた腕以外の自由な手が、俺の身体を撫でていく。……っ!!
「キモいんだよ!いい加減にしろ!!」
俺に本気で殴られた腹と頬を押さえながら、墨は笑っている。
「くくっ……ごちっ♪」
喰われてねえぇ!!
怒りで声も出ない。冷たい視線で見下ろす俺に、墨は苦笑する。
「不器用だね……焦りは禁物だよ?優しく、少しずつ侵食すればいい……お前色に染めるんだ。」
エロイ……大人って、何だか卑怯な気がする。
参考にならない墨を後に、里鹿との待ち合わせ場所に向かう。
「あの……記憶が無いんだけど……」
【ギクッ】
いきなり、あの時の話題から??
「里鹿……調子が悪かったのかな?」
「……私、何か言った?」
卑怯かと思ったけど……自分のしたことには触れず。
「うん……どうして強引に、してくれないのかって。」
顔を真っ赤に、俺から視線を逸らした。
……だよね?これが、里鹿……だよね。
泣きそうだよ……どうすればいいかなんて、恋愛の素人には分からない。
ただ……俺色に染めるには、どうすればいいのかな……
強引を間違えなければ、里鹿の受け入れ態勢はあるはずなんだ……ごくりっ……
「里鹿……抱きしめても良い?」
優しく触れるなら、大丈夫だよね?
ちょっとずつ……俺の望みを押し付けてみよう。
里鹿は、俺に一瞬……視線を向けて、逸らす。
がぁ~~……落ち込む前に、里鹿のうなずく行為。
【キュキュキュゥ~~ン!!】
かわいい……カワイイ……可愛いぃ~~
嬉しさのあまり、急かされるような衝動。
衝動……これを抑えて、俺の願いを叶えるんだ!!ゆっくり……
そっと、手を伸ばす。身構える里鹿……
触れた瞬間……過剰な反応!?……落ち着け、ここで怯んだら駄目だ……
抱き寄せ、囁く。
「里鹿……良い匂いがする。好きだよ……」
その声に、視線を俺に向けて……涙目の笑顔。
不味い……笑顔を返すけど、自然なのか??
心の中では、今の行為とはかけ離れた欲望……願望が急かす……
心音が響き、思考も曖昧……強引だけど、理性を……理性……
何の、拷問だ!?畜生……頭がグルグル回る。
ちょっとだけ……良い雰囲気。甘い空気が流れている……と、思う。
大丈夫……まだ、大丈夫……
「ね、キス……してもいい?」
ドキドキドキ……
俺の胸に、頬をすり寄せ……甘えるだけ。
返事は無い……駄目、か……?
髪をすいて、頭を撫でる。愛しさに、そっと額にキスを落とした。
不味い……返事も待たずに、キスしちゃったぞ??内心ビクビクの俺……
「ふふ。くすぐったい……」
ほっと、安心する。
ドクドク……血が流れるような感覚を味わいながら……
撫でる手を、頬や額に滑らせる。
里鹿は、頬を紅葉させ……じっと俺の行為を受け入れる。
「……気持ちいいの?」
そっと耳元に囁き、首元にキスを落とす。
いい雰囲気……行けるところまで、行ってみよう。
「ん。気持ちいい……」
はぁ……息苦しいや。呼吸も、普通に出来なくなるなんて……愛しさに狂う。
「里鹿……強引に、どこまで許してくれる?」
言葉が出た後、後悔する。
素直に出たのは、自分の貪欲な欲望の塊。
「あの、里鹿……」
言葉を繕おうと、一生懸命に探す。
「……分からないわ……優しく、して……」
くっはぁあ~~何て、殺し文句。俺、平常ではいられないよ!?
くっそ……俺色に染まる前に、里鹿に染まっていく……
「優しく……したい、けど。その……先に謝る。ごめん……」
優しく……触れたい。触れたい……もっと、感じたい……
俺のだと、俺だけに想いを向ける……俺の……
「里鹿……里鹿、好き……俺の事、好き?」
俺の視線に、真っ直ぐ……笑顔を向ける。
「好きよ……仰近く……ん。……仰近……」
里鹿は目を閉じた。受け入れ態勢……
潤んだ唇が俺を誘う。触れても良いと……俺を呼んでいる。
目を閉じ気味に、ギリギリまで迫って……そっと触れた。
柔らかさと温もりと……里鹿の甘い匂い。
キスも……甘い気持ち。満足するように、味わうように……目を閉じた。
そっと目を開けると、里鹿の流し目……苦しそうな表情。
ゆっくり、唇を解放した。
恥ずかしくて……もっと、望んだ何かも忘れる。
触れた感覚を逃したくなくて……確かめるように自分の指を当てた。
全然違う……感覚……里鹿も恥ずかしそうに、俺に微妙な笑顔。
「ふふ。」
「へへっ」
俺は、里鹿の手を握り微笑んだ。
「帰ろう?送っていくよ……里鹿、また……」
続く言葉を呑み込んだ俺に、里鹿は身を寄せ……微笑む。
腕に、胸があたって……里鹿は無意識なのかな??
無自覚の小悪魔に翻弄されて……ただ、苦笑。
甘い……甘い時間……もっと、求めても良いだろうか……
「里鹿、明日……デートしない?」
「どこに行くの?」
「……映画とか?」
「ふふ。無計画?」
そんな時間から始まる……
あともう少し、連歌と仰近の会話など続きます。
【微笑】自体が人気あったのですが、仰近さんファンも多かったイメージ。
調子にのって書いてます←感想とか希望とかあれば、ご期待に応えるかと思います。




