⑤許容の彼女
太西学園の中等部へ入学。
聖城 白狐。
双子の妹 澪美は、クラスが分かれてしまった。
……大丈夫だろうか?ま、なにかあれば……不本意だけど陸が何とかするだろう。
イチャイチャは赦さない……邪魔してやるんだ!
俺の相手は見つからないまま……澪美は、陸と最近……くっそ!!
妹の幸せを願うなら……しかし、陸のゆるんだ顔が許せない……ブツブツ……
「白狐君、おはよう!」
「おはよう♪」
可愛い女の子たちは好きだ。
けど、相手だと思わないのは……呪いの解放の所為?
呪いの時は、相手以外の顔の基準が分からなかったらしいし?
相手かぁ~……当然、欲しい。
願って焦がれる……義務のように。解放されながらも、望むのは……
席を探す俺の目に、サラサラの……
近づいて、抱きしめる。
「可愛いぃ~~~~♪♪」
毛並に顔を、すり寄せる。
【ふわっ】
良い匂いした。
「ちょっと、私に気安く触んじゃないわよ……」
テンションの低い声。
「何、君は何なの?」
「はぁ~~。見て、分からないの?キツネよ。」
深いため息で、切れ長の美しい目が俺を睨む……。
嘘つきだ!
「きゃはは♪面白いね!君は、俺のモノだよ!!」
俺の中の何かが反応する。多分……相手?
肉球で、俺を押し退けようとする君は、椅子に座った狼。
声は、女の子。匂いも……雰囲気も……
放してやらない。逃がさない……手に入れてやる。
「あなた、血筋よね。知らないの?離れて……モノって……!?」
嘘つきな彼女は、俺の本質を一瞬で見抜いた。
ゾクゾクする……呪いから解かれても、俺たちは異世界の何かを受け継いでいる。
昔、昔の呪いの物語……解放された俺たちが得るものは……何だろう?
俺の抱きしめる腕から、何かを感じ取って逃げた……
【スルリ】
サラサラの毛並の所為?逃げるのが上手いのかな?
俺が下手くそなのか……?
「何よ……見てんじゃないわよ。」
今まで、そんな警戒をしてきたのかな。
「訊いてもいい?」
「テンションの高いのは、お断りよ……」
「それ、裸なんだよね?」
……。
「……っ……~~~~っっつつ!!死ね!!」
狼の姿なのに、表情が分かる……
ふふっ。俺の相手……
「名前を教えてよ。」
「出欠で知ればいいわ。」
「聴きたい。君の声で……」
「……はっ、恥ずかしいセリフを平気で!!?」
恥ずかしい??
顔を背け、周りをうかがう……
その姿は、自分から望んでしているんじゃないんだ……呪いでもない。異世界の……?
「名前を教えてくれないなら、俺が名前を付けちゃうよ?」
家で飼いたい……無神経な言葉が出てしまいそうだ。
君の感情を乱しても、かかわりを多くしたい……
かまって……俺を見て?
「……大賀美 芹奈」
「大上?」
言葉では、理解できなかったが……クラス名簿で大賀美なのだと知る。
結南の理事長と同じ名前……血筋……?
大上家と同じ……解放された呪いの家系。
「ついてこないで。」
振り返らずに、吐き捨てる言葉は小さくて冷たい。
「どうして?芹菜……俺の相手だよね?」
「違うわよ。あなたには、幾らでも可愛い女の子が周りにいる。私を追い詰める気?」
女の子の嫉妬……恐れるのは、何故かな。
男だからかな……?あまり理解できないや。
「俺は、出来れば追い詰めたい。俺の事で、頭がいっぱいになればいい。君の中を独占してるってことだろ?」
「頭、おかしいの?」
「俺も、こんな自分を知らなかったよ。君が狂わせたんだ……ね、どうしたら俺のモノになる?触れても良い?どれだけ、踏み込めばいい?どこまで許してくれる?」
「何も赦さないわ!」
ずっと、歩き続け……視線を合わせずに会話していた俺達。
振り返って、俺を睨む視線は冷たくも鋭くもない。
ただ……悲しみの色を見せる。
試してみたい……自惚れだろうか?
俺は、強引に芹菜を抱きかかえて移動する。
任務で使用されていない空き部屋は、把握している。
「な!?なっ、何するのよ。放しなさいよ!!下ろして!」
抵抗するが、逃がさない。
鋭い爪も、俺に食い込むことはない。
ただ、軽い爪痕が俺に刻まれる。
愛しい……傷つけない……俺だからだと思ってしまいたい。
君がいけないんだよ?他の男に、そんな優しさを示したら……赦さないからね?
一番近い空きの教室へ入り、鍵を閉める。
狼の手(足?)では、鍵は開けられない。逃げ場を封じてやるんだ。
俺は、そっと芹菜を床に下す。
距離をとる芹菜……
「ね、芹菜?一度でいい……君を抱きしめたい。」
「さっき、抱きしめたでしょう?私に、係わらないで!目立ちたくない……私の姿は……呪いじゃない。異世界の本来の能力……あなたの家系とは違う。私に相手は関係ない。あなた達も……」
「呪いから解放されたよ。だから?俺は自分で、君を相手に選んだ……駄目?」
「ダメよ!私は、あなたを受け入れない。私の心は誰にも渡さない。」
「関係ない。俺が求めるんだ。俺が欲しい。君を望む……試したい。抱きしめ、触れる感覚は真実を伝えないだろうか?」
「……良いわ。一度だけ……それ以上、私に触れないと誓って。かかわりを拒否し続ける……それを、覚えておいて。」
「分かった。誓うよ……一度だけ……抱きしめる時間を頂戴。」
俺は近づき、かがんで視線を合わせる。君を見つめ……
芹菜は視線を逸らすように、顔を背けた。
「……抱きにくいから、正面を向いてくれるかな?」
俺の言葉に、芹菜は視線を戻し……戸惑いに目を閉じた。
チャ~ンス♪
【ちゅっ】
呪いの解放は、キスだと定番が決まっている。
試してみる価値はあった……芹菜の体を、淡い青色の光が包んでいく。
「な、今……何を!?」
自分の変化に、気が付かないってことは……これが初めてなのかな?
「良い眺め♪」
長い髪が、胸元を覆っている。
女性の裸……白い肌が眩しい……
芹菜は俺の視線で、自分の体に目を落とす。
「……~~~~っッツ!!?!!??!」
体を両腕で隠し、顔を真っ赤に言葉が出ない感じ。
「ね、俺が相手だからかな?くふふ……これじゃ、諦められないね♪」
制服の上着を着せ、そのまま抱きしめる。
抵抗すれば、肌が見えるだろう。
「卑怯だ。どうして……知っていたの?私も誰も知らない……父は、コントロールが出来た。異世界では、当たり前の人型への変化は……うわぁあわぁ~~~~??違う!相手じゃない!!違うもん!認めない!!」
俺の腕の中、暴れる芹菜の良い匂いがあふれ……俺を包む。
愛しい……何かが満たされる。
「芹菜?俺には、どうでも良いことだよ?だって、俺は君を選んだのだから……逃がさない。このまま奪っても良いかな?」
「何を??これ以上……嫌だ!!うわぁあぁあぁ~~、戻る!狼に!恥ずかしい……この姿の方が、恥ずかしい!!」
必死で、身体を動かし……
【ぽむっ】……変な効果音と共に、狼の姿に戻った。
「……コントロール……出来た?」
「くすくすくす……効き目が切れたのかもよ?」
俺の近づける顔に、肉球。
「や、約束したよね!もう、私に触れないって!!」
「そんなの、嘘に決まってんじゃん♪」
「なぁ??」
「だって、チュウした後抱きしめたけど……逃げなかったよね?」
「……あ、れは……ひ、卑怯者ぉ~~~~!!嫌い!大っ嫌い!!」
「ふふ……俺は好き。俺の相手……俺の対。ね、こんな俺を知っているのは芹菜だけなんだよ?ね……俺を受け入れて?」
「嫌だ!!」
【ガチャっ】
「こぉ~ら、白狐。私用で、組織の情報を使うのは禁止だよ?」
鍵が開いて、聞こえる声は陸……
「ね、その後ろにいるのは澪美……じゃ、ないよね?」
「……え、ちょっ……違う。どうして??」
「陸の休憩に、私もつきあうのです。ね?触れてください……」
「陸ぅ~?サボりだけじゃなく……イチャイチャで……」
俺の隙をついて、素早く走り抜ける風……
「おっ!?」
「狼です……」
にっ……逃げられたぁ~~??
「ふふっ……くすくすくす……澪美、授業に戻りなさい。お兄ちゃんは、陸とお話があるのです。」
「あまり、いじめないでくださいね?」
「ちょ、澪美??俺を置いていくの??イチャイチャ出来るなら……て、今は……うわぁあ~~ん、ごめん~~~~!!」
「許すわけないだろ?人型にならない限り、逃げ道がないようにしてたのに!!俺のお楽しみを……俺の存在を刻んでいたのに……」
チャンスが~~!




