③戸惑う彼女
俺は、小学6年生。多河 琳翔。
裏の役員で、一緒に働くのが大上 陸。同じ小学6年生。
この間、ボスから任務で高等部へ行くように言われて……女性を襲う高校生を捕らえた。
襲われていたのは、新任の先生……
フェロモン……人から言われたことはあったが、誰かに感じたのは初めてだった。
その瞬間、自由を得たはずの彼女は……俺の獲物に決まったんだ。
乱れた服から見える白い肌……甘い匂いがするようだった。
初めてのキス……重ねた唇は、口紅で変な感触。イメージと違った。
……くくっ……大人と恋愛……そんな甘さが、想いに加わる。
戦利品を奪うかのようなキスをした……
相手は、大人だからか……抵抗がなかった。
【チクッ】小さな痛み……
俺以外の誰かが触れた過去を、勝手に想像する。
俺の始まった恋心には、燃える感情が存在した。
時間を恨むなんて……馬鹿げている?
俺を苦しめるのは、時間……もっと、早く生まれていれば……
年齢の感覚は、男と女で違うのかな?
小学生と高校生の恋を聞かされた。悲しい想いを聞いた……
まさか、自分が経験するなんて……
「ね、先生……教えて?この感情は、間違っているの?俺は、恋をしてはいけない?」
携帯の番号を手に入れて、出ない携帯にメッセージを残す。
返事はない……聞いているのかも、わからない……
ただ、拒否はなく……それだけで、安堵を得ているんだ。
くくく……どうせなら、拒否ればいいのに……期待させた先生が悪いんだよ?
落としてやる。俺は落ちた暗闇で、必死にもがいているんだ。
知らないだろう?俺の苦しみを、君も味わえばいい……手加減はしない。
傷ついた分だけ、何かで補えるものを必ず得てみせる!
俺も、遠いとはいえ……魔女の家系……選んだ相手に、必死になる。
心が欲しくて……
「陸、俺……」
「ん?あぁ!いいよ……行っておいで。こっちの作業は一人で大丈夫だから。」
忙しい裏の任務の合間……やっと、彼女に会いに行ける。
それを理解してくれる友達がいて、俺の支えだと思う。
「琳翔……一応、学園は俺たちに甘い。だけど、今回は相手が先生だから……心配だよ。」
陸は、俺の肩にもたれて呟いた。
その重みを受けながら、明るく返す。
「……年の差は、大丈夫だよね?」
俺の声に応えて、明るい陸の声。
「15歳離れた結婚を知っているからね。」
ただ、相手は女性……結婚を意識する。
「あと、6年以上……待ってくれるかな?」
やはり、弱気になってしまう。
「ふっ……弱気なの?」
今度は、陸が意地悪そうに訊いた。
「初めての恋だぞ?」
俺は、苦笑い。
「そうだね。フェロモンで、余裕なのかと思っていたんだ。」
陸は、どこか……自分に自信がない。
可愛い顔を、気にしているんだ……
「陸、お前は男だよ。俺の大切な友達……自信を持て!」
「ぷっ……ふふ……お前もね!」
俺たちは笑う。
こうやって、誰かを護る強さのために……互いに助け合う。
でも……恋だけは、自分の力で乗り越えないといけない。
陸と別れ、高等部のある一室に忍び込む。
俺たち役員は、授業も学校の行き来も自由に出来る。
成績の維持は求められるが、今は小学生……
彼女の授業のない時間はチェック済み。
怖いけど、試したい……隠れた物陰で、来るのを待つ。
自分のPCを持って、部屋に入るのも挙動不審で……可愛いなぁ♪年上なのに……
口元が、緩んでしまう。自分の鼓動が聞こえるぐらい、ドキドキする。
彼女は、安心したのか電波の入る窓際に座ってPCを起動させる。
俺は、携帯を開き鳴らす。
【携帯の着信音】
「キャッ!!」
【ガタタタッツ!!】
大きな物音……どうやら、椅子から落ちたみたいだ。
「いったあぁあ~~。もう……もぅ~~。どうしたらいいの?」
時間が止まる。今、彼女はどんな顔をしているんだろう?
そっと、陰から顔を出して様子をうかがった。
顔を真っ赤に、泣きそうな顔。
【キュン……】
愛しい……俺に、反応して……
我慢できず、彼女のもとに出ていった。
手を差し伸べ、ニッコリ……
「……あ……い……ど……、な??」
何を言いたいのか、混乱の表情。
「ね、先生?俺の悩みを聞いてくれるよね?」
「き……聞きません!!いい加減にして……これ以上、心を揺らさないで。私は、先生なの……この仕事のために、必死なの!!」
必死の顔……でも、その言葉……まるで、年齢は関係ないみたい。
立場だけを気にした言い訳……
欲しい、欲しくて堪らない。
「俺が嫌い?」
「……嫌い!」
「酷いや。生徒を嫌うなんて、先生失格だよ?どうせ、失格なら……ね?」
「なぁ??何、その色気??目に、見える何だか怪しい雰囲気は何ですかぁあああ~~??」
床を滑るように、後ろに逃げる。
「……あっ」
【ガッ……がんっ!!】
イスと机の脚にぶつかった。
「……っつつ~~。痛いぃ~~。もう、嫌だ……止めて……」
椅子の座る部分に、両手を置いて星来を逃げないように追い詰める。
「触れない。俺の欲求を知って……」
「嫌……はぁ……息が苦しい。違う……求めていない……っ……見ないで。その眼……私は、先生……ダメ。私には、出逢うべき人がいる……」
「何、それ……俺以外の出逢いを願うの?」
「はぁ……そうよ。私は……そのために、ここに来たの。はっ……っ……はぁ……退いて。」
「何もしていないのに、そんなに息を荒げて……俺以外を求めるんだ?」
彼女のフェロモン……俺と、同じ……同族か?
出逢うべき相手……大上家?
嫉妬に、考えるのは手に入れることだけ。
異質な魔女の願い……消えたはずの呪いも、願ってしまう。
「触れたら、この力……増幅するかな?」
頬に手を当てる。
【ビクッ】体の反応……
見つめる眼は、俺を求めている。
【チュッ】
軽く重ね、目を閉じ……今度は強く押し当てる。
欲しい。手に入れたい……俺だけのものにしたい。
この欲望よ、力となって……星来の心を留めているものを、押し流せばいい。
「星来、星来……好き。俺……」
【クラッ】
力を使い果たしたのか、星来の胸元に顔をうずめ……意識が遠のく。
後頭部に触れる優しい手……額や頬に、そして……唇にキスを感じる。
夢じゃない……彼女の、愛しさのこもった力が……俺に注ぎ込まれる。
目が覚めると、保健室で……星来の姿はなかった。
ただ、体に……星来の匂いがする。
分かる……同族だ。魔女の家系……出逢うべき相手のため……
俺じゃないの?俺は、君だと確信している。
抵抗がないのは、君も……本当は……
「琳翔、起きたのか?あの部屋、凄い匂いだったよ?俺でも、クラクラしちゃった♪」
「そう……でも、星来は……俺、どうすればいいのかな?」
「ぷっ……くくくっ……鏡、見てみなよ。自信を持てると、思うけど?」
……?
鏡??保健室の手洗い場に移動し、鏡の前……キスを受けた辺りに口紅が幾つも。
必死で、拭ったような跡……
「ぷはっ……くくく……あははは……はぁ……ふふ。愛しい……逃がさない♪」
「自信を持てたようなので、情報はいかがですか?」
「星来の?」
「ふふ……年の差、あまり気にしてなかったでしょ?」
「うん?どうして……」
「彼女、海外の姉妹校でスキップしてる。化粧で誤魔化しているけど、16歳だよ。君と同族の魔女だから、フェロモンで年齢は上に見えるかもね♪」
「遠慮は、いらないですか?」
「くすっ。俺は、何とも言えないね。手加減は、要るかと思いますが?」
次の日。
俺は、高等部へ向かった。
「え?そんな先生、いたかな??」
……記憶が、消えた?学園の先生の記録も、消えていた。
俺から逃げた……もう、会えない?
君は、先生になりたかったと言った。出逢うべき人のために、ここに来たと……
俺が、邪魔した?幼い我儘に、君の夢や想いを……閉ざした。
俺……が、した……
情けない。情けない……俺は……逃がさない決意も、今……逃げられた現実にも動けない。
弱い自分……涙が零れる。
後悔……何に?自分に?何が間違いだった?
君の愛情は、この体に注がれた……それでも、奪ったものが大きかったのかな?
「星来……星来……っ……ぅっ……」
「少しは、手加減してくれる?」
「……??」
この声??
振り返ると、そこには……制服姿の星来。
「……何、コスプレ??俺の願望?最後の夢を味わっても良いってこと?」
「ちょ、現実!!今、手加減をお願いしたばかりですけど??」
「夢じゃない?」
「うん。PC代が高くてね?理事長に相談したら、学生にならないかって……」
「先生になる夢は?」
「なるよ、学生を楽しんでから。理事長も、それが良いって……ついでに言うとね……」
「ついで??」
「これ以上は、内緒!!……ただ、出逢うべき人に出逢ったから!!普通の恋を願ったのよ……」
「星来!!好き……愛してる。」
「……手加減を、お願いしますぅう~~~~!!!」
END
あれ?終わっちゃった……へへ?先生との、いけない恋……のはず。
おかしいなぁ~~??落ち着いたら、琳翔の高校生と星来の先生バージョンを書こうな?
小学生は、少し……どこまで書いていいのか分からないのです……ふふふ……
次は陸の話です。景彩と海波の子……可愛い顔で、料理も出来る。背は高め……
海波の性格が、どこかに出るはず??




