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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
11孫おおかみ達は彼女と戯れる

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①自由な彼女


僕の名前は、大上おおがみ 一瑠いちる。中学一年生。表の風紀!

裏の役員には興味がない。僕は、母さんのように真面目に生きるんだ!!

「……ん……ダメ、いちよ……う。会社に、遅れ……」

階段を下りる僕の目に、ふしだらな親父……いちゃいちゃと……

「父さん!!さっさと、会社に行きなさい。社長がそれでは、示しがつきません!」

睨む僕に、何故か呆れた顔の父……

「なあ、こいつ……誰に似たんだ?」

「え?ふふ……一葉ね、きっと♪私に似てないし……」と、母は僕をちらっと見て……

【ぶっ!!】噴出した……。何故に??

朝から、気分が悪い……僕が父さんに似ている?

あんな風紀の乱れることはしません!!

「お、いちるん♪ご機嫌だね。」

……どこを、どう見たら……そう思えるのかな?

「麦穂、ネクタイが男物だよ。ほら!」

常備している麦穂用の学校指定リボンを手渡した。

「……ふっ……いちるん、私のこと好きなの?」

僕は無視して、歩き始める。

こいつは、いとこの大上おおがみ 麦穂むぎほ

僕の父の弟の子……

自由な彼女は、僕の敵に近い……それなのに、冷たくできない……

「麦穂さん、私を抱いて!!」

……。

朝から、風紀問題です!!

「ふふ……可愛い彼女、私は女だよ?」とか言いながら、ホストのような対応で慣れている。

「二人とも、風紀問題です!!いいですか、僕たち学生の本分は……」

「……いちるん、彼女……行っちゃったよ?」

語り出したばかりだというのに……取り逃がしてしまった。

こいつだけでも、お説教……

「一瑠……最近、私の胸が苦しいんだ……」

苛立ちの中、珍しい穂波の陰のある表情に……心が騒ぐ。

「大丈夫なのか?」

心配で近づき、顔を覗き込む。

「……一瑠……手をかして。」

手を??そんなに、辛いのか?

肩に手を乗せようと、伸ばした……

【ふにに……ん】

……。

僕の手を胸に押し当てる麦穂……

これは、風紀問題?いや、痛みがあるなら……いや、しかし……

「ぷはっ!!くくく……苦しいぃいい~~。」

胸に押し当てたまま笑うから、柔らかい感触が伝わり続ける。

「な……ななあ??」

パニックで、手を胸から離そうとするが……

【むにっ】

ひぃいいい~~??ナゼ、こんなにやわらかいのぉぉおお~~??

「ごめん、いじめすぎた。ふふ……いちるんは子どもだね♪私が、男にしてあげましょうか?」

にやりと笑った麦穂の余裕に、苛立ちと何かが募る。

僕の中で、“俺”は知っていた……父さんと同じ……

愛しさに惹かれて、止まない感情に動かされることを……

「……麦穂!!」

誤魔化すように叫んだ僕に、笑顔を返す。

……心許した笑顔は、少数限定……可愛い……なんて思ってしまうから、たちが悪い……

騒ぎを聞きつければ、必ずいる……


「やだ、いちるんのお怒りよ……」

綺麗な顔の冷たい視線……いつものごとく、私は無関係だと主張する眼の采麗……

親類の大上おおがみ 采麗さいり

分かっているよ……原因は……

「麦穂!!いつも、言ってるだろ?」

僕の我慢も限界だ。

いつもよりトーンの低い声に、麦穂は一瞬動きが止まった。

ほっ……分かってくれたんだ。それも、つかの間……

「一瑠……首元、何の汚れ?風紀委員が、だらしないね♪おいでよ……見てあげるから。」

穏やかに笑って、ハンドタオルにペットボトルの水を垂らす。

首元?頑張って見るが、目の届かない場所??

……風紀を乱してはいけない。

麦穂が、きれいにしてくれると言うのだから……甘えてもいいかな?

「ほら、首……顔を上に向けて……やりづらいから、目を閉じてなよ。」

言われるまま、目を閉じ上に向いた。

【ふみゅ……みゅ……】

……?ほえ??

目を閉じたまま、やわらかい感触が何かを考える。

唇に、重なるやわらかい……温かい……そっと、目を開ける。

目を細め、色っぽい麦穂の顔がドアップ……

【ペロッ】

!!?!!?!

「あぁ~あ、間抜けねぇ。」

采麗の冷静な声に、何が起こったのか確信した。

「ふ……風紀問題だ!!」

僕の顔が真っ赤だと自分でも分かる……

「麦穂、放課後に風紀委員室に来い!逃げるなよ!!」と、僕は言い逃げ……

背中に小さな声……

「逃げない……追いかけるわ、期限まで。」

走り出した僕の足は止まらなかった……。

後悔する……その時、聞き返せていたら……

僕に、それが出来ただろうか?不器用に、腹立ちは募る……


放課後。

麦穂はやってきた……

「一瑠。先に話がある……」

【ドキッ……】

期限のこと?

気になって、緊張で声が出ない……

「私、彼女が出来ちゃった♪」

……へ?

「ふ……ふしだらな!!風紀問題だぁあああ~~」

いつもの調子に戻れると思っていたんだ……

「一瑠……私に、望みはないのかな?」

真剣な、悲しい……眼……

おばさんと同じ癖……伏せ気味に、視線を落とし……

「行くね。」

引き留めることも出来ないなんて……

頭をフル回転で歩きながら……フラフラ……答えは出ない。

「一瑠?どうした……って、また……」

「や……倭ぉおぉおお~~!!」

声をかけてくれたやまとに抱きついた。

「……一瑠、皆が見てる。風紀問題だよ?」

「何で?僕たち、男だろ??ぐすっ……うぅ……くすん……」

ため息で、頭を撫でてくれる倭。

「きゃあぁ~~!撮らなきゃ!!」

周りが騒がしいけど、それどころじゃない……くすん……

「倭、それ……麦穂の所為ね。くすっ……情報は高いわよ?」

采麗は、何か……

「あら?いちるんが反応した♪くすくすくす……ね、倭。お願い、聞いてくれたら情報をあげる……一瑠は、喜ぶわよ?ふふ……待ってるね。」

……??

涙を拭いながら、倭にお願いする。

「……采麗から聞いて……僕も、何か協力するから!!」

苦笑いの倭……??

「分かった。一瑠……麦穂は……いや、俺から言うべきじゃないね。情報は、もらってくる。……大丈夫、お願いは……俺じゃないと出来ないことだから……」

最近、倭の元気がない……もともと、おとなしいけど……

「倭……他に、何か出来るときは何でも言ってね!僕……友達のためなら、何でもするよ!!」

「……うん。俺もだ……一瑠、ありがとう。」

僕が、お礼を言う立場なのに……

僕の頭に乗せた手のひら……優しく【ポンポン……】

「さ、風紀の仕事に戻れ……夕方、家に寄るよ。」

「あぁ!待ってる。」


表の風紀委員会で、仕事は終了。

……裏を知るのは、ごく一部……

「お、一瑠……麦穂を見なかったか?」

……双葉君。麦穂の父で、裏の組織を管理している。

倭が情報をくれるのは、夕方。双葉君は、何かを知っているのかな?

「……ん?ぷっ……お前、くふふ……そうか、そう……なるほどね♪頑張れよ!!」

考え事をしている僕に、勝手に納得をして……笑いながら、機嫌よく歩いていく。

……謎な人だ。父と、性格が違う……やはり、僕は父に近いのかなって思う。

ため息で、窓に近づき……視線を落とすと、麦穂が女生徒と抱き合っている。

?!!?!

あ、朝の??彼女って……朝の、あの『抱いて』??

まさか、麦穂……本気なのか?

ざわざわ……胸騒ぎ……いや、苛立つ。

風紀問題……いや、違う……何だ、何に苛立っているんだ?畜生!!

僕の足は、スピードが上がる。廊下も走っていた……

ただ、何を考えたのか……分からない。無心だった……

麦穂……


さっき見た場所に着いたが、二人の姿はなかった……

『期限』……ふと、頭をよぎったのは……その言葉。

何の期限?胸が苦しいって言ったのは、本当で……何かの病気?

でも、双葉くんは笑っていた……。

役員で、どこかに配属?身近では聞いたことがない……

麦穂の親類に、特務の人がいたけど……そんな話……

いつものように、ふざけているのか?

理解できない感情に、苛立つ……

「一瑠、どうしてここに?」

「倭……お前も、どうして?」

情報をもらったら、僕の家に来るはずだった……

情報で、ここに??

「いや、その……双葉君が、父さんに教えて……それが俺のところに……」

言いにくそうに、視線を逸らす。

まだ、何か……僕に隠している?

「倭……何、教えてよ!!」

「くすっ……何を知りたいのかな?一瑠……私を、信用できない?」

後ろからの声は、低い……麦穂の声。

「……あ……」

風紀だ、規律だと……言い続けたのに、守る基準を無視した僕……

言葉を失う。

「……ふっ……卑怯だね。一葉君と同じ……その環境に甘えて、何も見ない……」

「父さんを悪く言うな!!父さんは……」

「……同じだよ……一瑠の心は知っているのに……見ようとしない。逃げているんだ……自分を守るために……一葉君より酷いね。」

「麦穂……気持ちは、分かるけど……言い過ぎだぞ。」

倭も、麦穂の味方なの?麦穂の気持ちがわかる?

……オレハ……

「一瑠、チャンスを……一度だけあげるね?それ以上は、待たないから……」

また、伏せ気味の眼……

後姿を見送る。心に、風が吹くような……何かが足りない。

「……心は、知っている?本当に?ないよ……理解できない何か……自分を守っている?何から?」

「一瑠……俺が出来るのは、情報を与えることだけだよ……感情は、踏み込んでは手が出せない……」

「……頂戴……何でもいい。この状態は、嫌だ……倭、僕……」

「うん。分かった……期限は、“彼女”が転校するまでの期間だ。麻生学園に、多額の援助をしている企業の娘……望みは、麦穂……」

「そんな!!お金のために、麦穂が!?」

「……決定は、本人の意思に委ねられている。返事は、空港で……それまで保留らしい。学園は、どちらの返事にも対応する準備が整っている。」

そんな……麦穂が、遠くへ?

……返事……チャンスって?“僕”が、何を……

混乱に、心が追い付かない!!

「転校は、明日だよ……空港へ一緒に行くらしい。返事をするまでに、チャンスは……」

「倭、ありがとう!!“俺”、麦穂に会ってくる!」

行かせない!!ただ、その想い……

麦穂の家に向かう。


家に着くと、穂波さん……麦穂のお母さんが出迎えてくれた。

「あ……麦穂、予定が早くなったって……大きな荷物を持って、空港に向かったわよ。」

……空港……?大きな荷物……

行く気なんだ。遠くへ……

俺は、お礼も言わずに走りだした。大きな道でタクシーを拾う。

頭がぐちゃぐちゃだ……何を優先で考えればいい?

間に合うだろうか……

「お客さん、あと5分ほどの距離なんだけどね……」

車が止まり、渋滞に巻き込まれたのだと知る。

「走るから!!」

お金を渡して、おつりも受け取らずに走る。

息が苦しい……胸は、その痛みなのかな?

走る前から……いつからだっただろう?痛い……苦しい……麦穂……!!


空港に着いて、闇雲に走る。

何に導かれるのか、麦穂を見つけたんだ。俺は、麦穂の手を掴んだ。

「……わぁ??一瑠……どうして……思った以上に、早かったね♪」

俺が来ることを、分かっていたみたいなセリフ……

「行くな!!」

汗が、目に……霞む視界を必死で睨む。

「……どうして?」

「お金のために、行くなんて馬鹿だ!!」

……。

俺のセリフに、麦穂は伏せ気味の眼……

【ズキッ……】何故か、心が痛んだ。

「……残念、聞きたい答えじゃない……お別れだね。」

「麦穂、お前が求めているのは何だ?言ってくれ、何でもするから!!」

「……しなくていい……求めているものを、一瑠は持っていないことが分かったんだ。忘れて……私たちは、いとこ……また、会えるよ……」

「駄目だ!!行くな……行かないで……違う。いて欲しい……さみしい。……き……好きなんだ!!誰にも、渡したくない……お願い、麦穂……」

必死の俺に、麦穂は抱きついた。

「ふふ……勝った♪ぷくく……私のもぉ~のぉ~~!!」

……。

へ??勝った……って、言った??私のもの??

「一瑠、大好き♪」

理解できない俺に、微笑んで優しくキスをした。

抱きしめたまま、後ろに振り返り嬉しそうに言う。

「ふふ……ごめんね、彼女……私の勝ちだ。その荷物はあげるよ……元気でね♪」

必死だった俺は、女の子の存在に気付かなかった。

【ペロッ】

麦穂は、俺が掴んでいる手を口に近づけ舐めた。

「な……何を??」

やっと、働き出した頭は周りの声に反応した。

「……周りなんて、気にしないで……私だけを見てよ♪」

ようやっと、“また騙された”のだと気付く。

いつもと同じだと思うなよ?もう、前までの僕ではない……君が、俺を目覚めさせたんだから。

覚悟は、当然……あるよね♪キスを、君からするぐらいだもの……ね?

くすくすくす……ふふふ……

「……あれ……?一瑠……怒ったの??……にしては……いつもと、違……うっ?!?」

掴んだままの手を引いて、空港に隣接するホテルに入る。

エレベータは、都合よく止まっていて……麦穂と一緒に入った。

俺は慣れた手で、ある階にボタンを押す。

「……あの、一瑠……どこに行くのかな??」

「部屋だよ♪せっかく、麦穂が誘ってくれたから……俺も、真剣に応えるね?」

「あの、いつから俺に??てか、あの……ホテル??あはは……ちょっと、用事を思い出したかも?」

「そう、部屋でゆっくり聞いてあげるね?俺の目的が済んでから♪」

「……目的?」

「ふふ……くすくすくす……」

エレベータが止まり、真正面の部屋のドアは、指紋認識で簡単に開く。

そのままベッドまで進み、麦穂の腕をベッドの方へ引いた。

【ボスっ】

顔から倒れたのに、運動神経がいいね♪

すぐに、体勢を変え逃げようとする。当然、逃がしませんよ。

「どこに行くの?」

「……いやぁ~~、あははははは……」

「ふふふ……」

「い、一瑠……私たちは中学生!風紀問題が……んっ?んんん~~~~」

逃げる口実は聞きません。時間の無駄です。

「はぁ……麦穂、いいかな?」

「駄目です!!あの、その……心の準備が……その……」

「ふふ♪大丈夫、優しくするよ……多分……」

初めてだし、本能に任せると良いのかな?

「Noooooooo~~~~!!」




END

①終わり♪一葉の子です。

真面目なところから……目覚めると、“化ける”おおかみ。奴の暴走は、②にも登場します。

一瑠……あまり、暴走しないでくれるかな??意外と激しい……

麦穂は、双葉と同様……腹黒。しかし一瑠に勝てません♪そんなものです(笑)

ホテル設定……一瑠は、真面目な頭のいい何か?を執筆していまして。

その缶詰用……売れているようです。でも将来は、遠矢の会社を一葉から継ぎます。

こんな感じで、短編を次々に書いていきますので……楽しんでください♪

次は、倭と采麗です!!


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