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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
10闇色のおおかみ

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最期の時

泉麗side。


カケラ二つが入ったガラス球を手に、中を見つめる。

あの公園で、あのサクラ……この『緑』のあった場所に立つ。

ガラス球が輝き、光を放った。魔方陣が広がって、違う魔方陣と重なる。

「……来たのね。劾の言っていた未来のカケラ。私の最後の魔力……流烏るう、そこで待っていてね。あなたを守れないかもしれないから。」

俺に近づくのは年の近い女の子と、白い大きな……狼。

「はじめまして。私は……『継続の魔女』の一人かな?いや、彼女がそうだから私は何だ??ま、いいか♪えと、何の話だっけ??あぁ、名前!安西あんざい 百枝ももえ、麻生学園 高等部1年生です!!最近、『入り口』を閉じたのは私。えと、他に何を話せばいいのかな??」

何だか、不思議な人だ。

「あなたの魔力の限り、見えるだけの必要なものを俺に教えて欲しい。」

魔方陣が青色に輝く。

「いいわ。この『入り口』を閉じた時のこと……試される時が来るギリギリ。後悔はない?」

「いっぱいだよ。俺は、彼女の名を呼んだこともない。姿も……見ていないのだから。」

「頭のいい子は、悲しいわ。李央りおを思い出す。……泣かないで……幸せは、必ず来る。諦めないで……人の想いは尊くて、力が在るから。望むのは答え……」




百枝side。


「泉麗……『スピニロブ』は、秩序を保っている。あなたには、どうでもいいかしら?でも、知って欲しい。『継続の魔女』も、試され……その世界を守ったのだから。」

「もしかして改は、あなたたちにも係わったの?」

「えぇ、『継続の魔女』を試した。手を取るようにと……彼はヴァンパイアの雑種として育ち、過去のおおかみが経験しなかったようなことを……」

私の魔力は、どれくらい残っているのかしら。

それは決まった時間まで?それとも、本当に必要な情報なのかしら?

私にはわからない。ただ……流烏るう……あなたとの出逢いも、秩序だとは思いたくない。

選んだ……あなたを、相手に選んだの。

『最初の魔女』、あなたの悲しみ……

きっと、すべての魔女達は選んだだろう……あなたと同じ選択を。

だから終わらない……

「泉麗、その右手の『緑』……李央りおの願い。『最後』の希望……」

ただ……願う。この『緑』がすべてを解放することを。

ほんの少し前……この世界で私がした事を見て欲しい。

あの世界と切り離した……

李央……幸せになって。もう、会うことはない……この世界の秩序が守られても……

ヴァンパイアは、魔女の心を手に入れたのだから。あと少し……




泉麗Side


百枝さんの想いを巡る。

魔方陣が暗闇を生じさせた。いや、この公園の夜の出来事?

地面に魔方陣だろうか……闇色の円に朝顔の花に似た花が咲いた紋章。

そこから百枝さんと白い狼が現れた。

声が聴こえる。

『……お願い、閉じて……ここに木を植えるわ。この世界の秩序を守るように……。そして、未来のそこにはない『緑』が……希望となるように。』

「えぇ。『入り口』は、私が閉じる。李央……あなたの魔力はその木で尽きる。私の魔法は、この出来事を知らせて尽きる。時間が違う……世界も……李央、さようなら……」

『さようなら……』


「……泉麗……すべてが終わったら、会えるかしら?これ以上の接触は出来ないわ……時間の流れを感じて。あなたの『緑』。過去の出来事を未来が変えるパラレルワー……」


声が途切れ、魔方陣が消える。

あの朝顔に似た花、この手の『緑』が咲いたもの?

あんな闇はない……この手にあるのはガラス球……それに、時間の流れって……。

閉じられた『入り口』、その場所にサクラの木はあった。

過去の呪いが解かれていない未来より先に、過去の異世界の秩序が保たれた。

『最初の魔女』の計画のまま……物事は順調?

未来はあるのだろか……

『入り口』のあった場所に歩く。

そこを踏んだからなのか……俺の前に、大きな扉が開かれた。

巡る……時を巡る……

これは、改の想い?

『おとうさん……おかあさん……ぼくは、どれだけ がんばればいい?どうして……』

5歳の男の子。

「改……行きなさい。『時の犠牲』を試すのです。時を巡り……異世界にも行くだろう。その手に、何が入るのか……」

この声は、劾さん?

場面は目まぐるしく変化し、俺の前には高校生の改が現れる。

その隣に居るのは……都さん。

「あなたの本当の名は……改。早助として生きた時間は二度目の5歳……。私の息子……私も、苦しんだ。お願い……願うわ。その心にいるスイが消えること。あの子は、消してくれるかしら……自分の持った役目をどれだけ憎んだだろう?時役使として生まれ、魔女の血も引いた……あの人が呼ぶのは、私の名ではない。」

これは、一体……


「泉麗、ここまで来たのね。もう時が迫っているわ。私の正体は、双葉が知る。……私も時を巡った……未来へ。『最初の魔女』の答えを提出するのは彼女……あなたが逢うのはギリギリ。想いは試される。失った秩序は、同じ状況で……違う選択をしたときのみ解放となる。」

「都さん……いや、『最後の魔女』はアナタだったんだね。俺は、未来を見るならいいよ……。」




双葉side。


屋上。

「双葉、麒麟……あなたたちは過去の任務を覚えているでしょうか?苺愛さんが言った、過去の出来事。」

恵の情報……これも、ギリギリだった。

そして俺の役目が来る。

本当にギリギリだ……俺の意味はあったのかな?

過去、病院で話をした苺愛さんのお腹には二人目の子がいた。

麒麟が青ざめる。

「未来のカケラ……待て、瑠璃が見たのは……5人。もう一人……いる?」

「もう時間でしょうか?さぁ、行きなさい……泉麗が草樹のところから出て、役目に行きました。草樹を支え、未来を望み……彼らを見守るのです。私の役目はここまで。」

「……景彩、海波たちを呼んで。緊急事態に備える……集合場所は公園だ!」

景彩が、麒麟の指示に動く。

麒麟、景彩……俺達は、何も出来なかったね。

弊害を乗り越えるのがやっとだった。

そして最後を見る……

俺は医務室に行き、中に入った。

「劾……泉麗は行ったよ。次に見るのがサイゴ……時が来た。」

「草樹、都がいない。こんな時に、どこへ……」

麒麟と俺が部屋に入った時、二人は会話の途中だった。

「私はここよ?」

窓に座り……俺たちを見ている都さん。

その雰囲気が、いつもと違う……目が……緑色に輝く。

「都、訊いてもいい?君は『最後の魔女』なの?」

俺の質問に、笑顔で答える。

「いいえ。違うわ……」

「……都……俺は、心が読める。君の悲しみが痛い。こんな役目のために、俺を選んだの?言ってよ……自分で。こんな話を、俺が言うべきじゃない……言えない。君の名も、君の役目も……犠牲にした物も……」

「役目よ?双葉……肝心なことは、言わなくていい。言ってくれる人が来た。」


【ガラッ】

「ここにいるのか?!」

「閑、落ち着け!」

勢いよく開いたドアから、閑さんと嵐君が入ってきた。

「……き……すず?器鈴……その姿……娘?いや年が……」

閑さんが言ってしまった。

その名に、劾さんが反応する。

「……器鈴きすず?」

「ふふ……くすくすくす……劾、驚いた?……私の悲しみ。『最後の魔女』として多くを犠牲にした。未来を……改を守りたくて……そう、私が『最後の魔女』。双葉、心が読めるあなたには最後の役目がある。行きなさい……彼女を、連れてきて!間に合わないかもしれない!!」

「麒麟、泉麗を頼む!!」

俺は走る……あの病院へ。

サイゴのカケラなのか、中心なのか……彼女が未来を握る。

間に合って欲しい……そのための役目だ。

16年……ちょうどこの日に生れた。何故、疑問に思わなかった?




器鈴(都)side。


「閑、久しぶりね……。劾、あなたの心に私がいたことはない。それが私の犠牲。ごめんね、閑……子どもを失うのは同じ……ただ、一つの未来と希望を願って見守るの。あなたの娘の命を奪った私の息子……閑、あなたは私の相手の心を奪った。私の相手、劾。私は、あなたの記憶から消えた器鈴。あなたは私を都として夢見、想いを抱き……愛した。この悲しみ……」

「……器鈴、君は異世界から来たのではなく、過去から?」

「そう、それも『最初の魔女』の魔法。秩序の均衡の一つ。時役使の役目よ……。気がつかない?あなたと、都として出逢った時には……時巡様は亡くなっていた。いつ、役目を受け継ぐの?……あなたの心に、私はいたのかしら?劾……悲しい……改の受け継いだ『水』は、あなたの役目以上に残酷。」

「……器鈴……」

「近づかないで!!……この話をするのは今じゃない。時間だ。行きましょう……カケラたちのサイゴ。解放か、秩序の崩壊か……『最初の魔女』の求められた答え。私の魔力は、これで尽きる。残らない……必要ないものは消えるのよ。あの狭間のように……」


魔方陣が部屋全体を包み、場所を移動した。

あの公園……この世界の秩序の試練の場へ。





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