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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
1邪

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6/71

希望!!


朝。ベッドの横に、座り込んで寝ているケイトの姿。

………。

傍らに、水の入った入れ物と布。

慌てて、服を見たが……そのままだった。

焦った!!

昨日、目が覚めて……私の看病をしたのか?

魔力を使いすぎたし、熱も出ただろうか?夢見が良くなかった。うなされたかな?

心配をかけてしまっただろうか?……気に病むことはないのに……

このまま、記憶を……

「……ん……ビエ……」

目が、覚めたか……。

この時、記憶を消しておけば良かったのかもしれない。後で、後悔するだろか?

「お前!今度、俺に内緒でこんな危ないことしたら赦さないからな!!」

「……あぁ、もうしない。約束する。」と、微笑んでみせる。

「ビエ、俺たちは……。死ぬときは一緒だ!仲間……だろ?」

「あぁ。」

お前との約束は、守らない。


ランスの目も覚め、記憶が欠けていると話してくれた。

王は、私が魔女……美衣だと認識した。

ケイトには、内緒だ。いつボロが出るか分からない。

ランスにも、旅に出てもらわないといけないし……。

「魔王を倒しに、今日出発するぞ!!」

俺たち3人、馬に乗って城門を通る。

この城に、私が帰ることはない。それは、決まった……未来。死ぬのかは未知数……


馬は、気持ちよく走る。風を体に受け、少し高い位置がいい……。

「ビエ、どうして森の中を通るんだ?」

ケイトが不思議そうに訊いた。

「ここに、用事がある。ランスには、紹介しておく必要があるんだ。」

「私ですか?」

ランスは、好青年だった。

話し方や、接し方がきちんと教育されたものだと分かる。

「ランス、本当は……どこの王子だ?」

「まさか……」

訊いたが、はぐらかされた。

いい、問題はない。教育があるなら……いい。

ある大きな古い木の前で止まる。

私は馬から降り、叫んだ。

「小人たちよ、いるか?」

木の上から、3人。根元から4人が顔を出す。

一人の、年長の小人が私の前に来た。

「偉大な魔法使い様。……お待ちしておりました。」

「……あぁ、願いを叶える。その代わり、お願いを聴いてくれ。」

「はい。約束します……願いは……」

「知っている。」

《 ☆☆※ 》呪文を唱える。

大きな木が、二階建ての家に変わった。

「中に入ろう。」と促し……家に、小人7人と人間3人が入る。

「あの、偉大な魔法使い様……この作りは……」

「あぁ。お願いと関係がある。1階のその部屋……これから来る女の子のために、空けておいてくれ。」

もうすぐ、やってくる……

「来たら、親切にしてやってくれ。時が来るまで、一緒に生活してほしい。二階は、7人が住んでも十分広いだろう。家具や必要なものは、すべてそろえてある。頼めるか?」

「はい、もちろんです……。それが、この世界の希望となるなら。」

「あぁ。ランス、時が来たら……ここに足を運べ。従者を一人、忘れずに連れて来いよ?」

「……従者?」

「あぁ……ランス、今は聞き流せ。後で、理解する。疑うな……信じろ。お前の行動が、未来に希望を与えるんだ。」

「はい……」

小人は、快適な住まいに満足して走り回っている。

その内の一人が、私に告げる。

「戦の知らせを聞きました。偉大な魔法使い様……希望はありますか?」

「あぁ。希望をつかむための戦だ。もうじき女の子が到着する………後は頼むぞ。」


私たちは、小人たちに別れを告げて……旅を続ける。

森を抜けて、大きな川が見えた。

「ランス、戦のことを……どう思う?」

「本当に、希望へ繋がるのですか?」

「……信じるか?」

「……希望となるなら……」

ケイトは、ずっと黙っていた。

……何を感じた?何を考えてる?不安になる……。

「ケイト、どうして黙っているんだ?」

ケイトは答えなかった。


時が来た。

川沿いに沿って馬で走る。

日が暮れ始め……肌寒い。魔王の城も近いな……1日の距離ぐらいか。

「ビエ殿、宿を探しますか?」

「あぁ、頼む……。」

ランスは、近くの村に馬で宿を探しに行った。

私は、ケイトと二人……。

「ケイト、どうして……何も言わない?緊張してるのか?」

魔王の城が近いから?それとも……何かを感じている?私の隠し事……

「……ビエ、こいつ……太ってないか?」と、カピを掴んで見せた。

ぶら下がるカピは、プクプクで可愛いカケラもない。

しまった……エネルギーを貯めすぎたか?

いや、有り余るのはいいことだ。元の世界へ帰る力で、通常のカピバラの可愛さに戻るだろう。

「何を食べさせてるんだ?魔王を倒したら、運動をさせような!」

「……約束だぞ?」

「あぁ!」

ケイトは私に、出来ない約束を増やしていく。

私を試しているのかもしれない……。考えすぎだろうか?

ただ、未来を信じ……希望を保っているのかもしれない。

ケイトの未来も、私には見えない……。

「ビエ、俺……ん?馬の走る音……か。ランスが戻ってきたな。」

「ビエ殿、至急……この国の城へ!!生れた子を、救ってください!」

……来たか……。


私たちは、城へ向かう。

未来を担う……子供を護るために。

城の厳重な警備の中、馬を預ける。3人は、城の中の広間に通された。

「偉大な魔法使い様!この子が……この……子……うぅ……」

宴のときに会話した王女。

「状況は知っている。予期していたことだ、落ち着いて。未来を信じてほしい……」

落ち着いた王女は、微笑む。

あの魔物だな!急ぐか……?

「ランス、夜……馬を走らせることが可能か?」

「はい、……シドラは走ってくれます。ただ、この寒さは初めてで……」

シドラ……怪獣のようだが、馬の名前だ。

しかも、メス……ランスを愛する馬。何度か話をしたが……話の分かる奴だった。

「水晶球を届けて欲しい。これが行き先を照らし、導く。寒さも凌げるだろう。シドラに、よろしくな……」

最後だ……

「ビエ殿……?」

「シドラに頑張って欲しいんだ。出来るだけ早く!最近、婚儀をした国は知っているか?」

「はい。ラタバール……ガラスの靴の少女をめとった国ですね?」

「その妃に、この水晶玉を渡してくれ!渡せば分かる。話はしてあるから。ランス、その方が……行き先を告げる。迷わず行ってくれ。未来のために……」

「ビエ殿……」

「頼んだぞ!」

ランスを送り出した後、ケイトが口を開いた。

「ビエ、何が起きてる?何を、一人で背負っているんだ?……俺は……ここにいる意味はあるのか?」

悲しそうな……悔しそうな……微妙な表情だ。

解っている……隠し事が多すぎる。

「ケイト、後ですべてを話す。今は、襲撃に備えてくれ。ここに、魔物の手下が来る。……魔女だ……。」

「分かった。約束だぞ!」


【ガタガタガタ……】窓に風が当たる音。

ガラスが割れ、魔物たちが侵入した!

王女は、子供を護り叫ぶ。

「あなたは、一体誰なの?他国で呼ばなかった方は、沢山います!出産の祝いは、この国で行ったのですから……」

「祝福を与えよう……。100年の眠りを。16の誕生日に……」

「はい、スト~ップ!はぁ……呪いなんて、呪い返せばいい。けど、一番いいのは……攻撃あるのみ!ケイト、雑魚への攻撃!!」

「あぁ!!」

《 “★★”※ 》大物に、室内バージョンの稲妻攻撃!

雑魚にも、逃げられないよう……ケイトが攻撃をしやすいように、援護する。

時間は、そんなにかかっていないが……私たちは力を使った。

「はぁ……は~~」

《 *★ 》魔物たちの死体を森に送り《 ☆# 》窓を元に戻した。

……眠い……

《 ☆ 》ケイトの傷を直す。

無意識だった……。


あと、もう少し……あと……少し……ケイト、あなたをこんな戦いの世界から救う。

普通に、平和に……幸せを……誰かと共に。

それが幸せ?

そうでしょ……。

すべて話す?

いいえ……。

置いて行くの?

置いていく。

どうして……?

傷つけたくないから。

俺のこと、好きなの?

好きよ………

え?……?!!

目を開け、布団の中……夢?!

「……酷いんだな。」

窓際にケイト。夢……じゃない?

「な……にが……?」

とぼけてみる。

「こいつ。俺の言うこと、何でもきいてくれるんだ。」と、カピにキスをする。

すると、女の私に変化。

「ぎやぁあ~~!!」

ベッドから飛び起き、私に変身したカピをシーツで包んだ。

今日身に着けている下着に、スケスケのキャミ?!

口をパクパク……言葉が出ない。

「いい眺め……」と、マジマジ私を見る。

隠しているのに??

視線を自分に向ける。

「ひゃあぁ!!」

カピの姿と同じ?!!

シーツを奪い、カピを元の姿カピバラにする。

で、自分に服を着せた……はず。

魔法が効かない?!!

「な……何……ななに……を……」

後ずさり、距離を取る。が、ベッドにつまずいて上に転がった。

うわぁ~~~ん!!何これ、悪夢?こんなに、パニックになったの初めてなんだけど??

ベッドから下り、床を這うように入り口へ向かう。

「無駄だよ?鍵はここ♪で、カピの魔法で……君は、普通の女の子。さ、どうする?」

意地悪な声がする。悪魔だ……。

魔王より恐ろしい……悪魔って??

カピに、裏切られた……いや、私の精神なら……言い成り??

「くすっ……楽しいな~~。」

楽しくない!!

「さてと、夜は長いし?寒いだろ?温めてやろうか?それとも、熱くなる?」

き、聞こえないわ……。幻聴よ!!

カピめぇ~~。あいつ……あいつぅ~~。こんなことのために、魔力を使うなんて!!

「美衣様。最近、お腹がはち切れそうで……ちょっとずつ消化してたんですよ?ケイト様の回復とかぁ~~。」

カピの奴、私の姿で……ケイトに抱きついている。

服は着た姿になってる、なら……。違う、問題はそこじゃない。

「で、それが……どうして……こうなるの?」

床が、異様に冷たい。これも……

畜生!!

「美衣様、自分で何でも一人でされるから。辛そうなケイト様を慰めようと……」

慰めようと??

「夢で、優しくしてたら……ふふっ。ばらしちゃった!」

NOぉ~~~~~!!

「いつ……の話?」

「でも、最近ですよ?……あ、そろそろ……消えますね?」

え……?消える??

逃げてドアにすがりついた私を、ケイトが抱き上げる。

「冷た!……やりすぎたか。」

「ヤダ、離せ!!ダメだ……触れたら、記憶をけ……んっんんん~~」

唇がふさがれ、ベッドに沈む。

彼の温もりと香りに……唇の熱さに、自分を忘れそう……

「ね、好きだって言ったよね?」

頬に手が当てられ、視線が合う。

見つめる瞳が放さない。

「……言ってない。」

「じゃ、言って。」

……ぐっ……流されそうだ。

まだ、――に……

「ケイト……は……」

泣きそうだ……

「美衣……好きだ。君が、会話の中で“私”って言うたび……女の子に見えた。君が、魔法使いなら……男に見える魔法を使っているんだと思った。」

無意識のうちに、自分の言葉が……魔法の効力を無くしていたのか。

「この気持ちは正常なんだ……。君を護りたいのに、護られて……相談もなく一人でしてしまう。俺は、何のために……この世界で生きてきた?君に逢うため?じゃ、俺の役割は?……美衣……俺は、必要ない?」

必要だ……私の心が狂いそうだ。ケイトがいなければ、この世界は救わない……

「どうして、黙るの?美衣……」

「……必要……欲しい……あなたの心が欲しくて、狂いそうだ。ケイト……蛍兎……」

手を伸ばし、蛍兎に触れる。

この手に、あなたの温もりがある。あなたの心を……手に入れた。

「美衣……キス、してもいい?」

「キスだけでいいの?」

「……ふっ……意地悪だな……」

私を求めるキス……触れる手……幸せな時間……

一時……




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