希望!!
朝。ベッドの横に、座り込んで寝ているケイトの姿。
………。
傍らに、水の入った入れ物と布。
慌てて、服を見たが……そのままだった。
焦った!!
昨日、目が覚めて……私の看病をしたのか?
魔力を使いすぎたし、熱も出ただろうか?夢見が良くなかった。うなされたかな?
心配をかけてしまっただろうか?……気に病むことはないのに……
このまま、記憶を……
「……ん……ビエ……」
目が、覚めたか……。
この時、記憶を消しておけば良かったのかもしれない。後で、後悔するだろか?
「お前!今度、俺に内緒でこんな危ないことしたら赦さないからな!!」
「……あぁ、もうしない。約束する。」と、微笑んでみせる。
「ビエ、俺たちは……。死ぬときは一緒だ!仲間……だろ?」
「あぁ。」
お前との約束は、守らない。
ランスの目も覚め、記憶が欠けていると話してくれた。
王は、私が魔女……美衣だと認識した。
ケイトには、内緒だ。いつボロが出るか分からない。
ランスにも、旅に出てもらわないといけないし……。
「魔王を倒しに、今日出発するぞ!!」
俺たち3人、馬に乗って城門を通る。
この城に、私が帰ることはない。それは、決まった……未来。死ぬのかは未知数……
馬は、気持ちよく走る。風を体に受け、少し高い位置がいい……。
「ビエ、どうして森の中を通るんだ?」
ケイトが不思議そうに訊いた。
「ここに、用事がある。ランスには、紹介しておく必要があるんだ。」
「私ですか?」
ランスは、好青年だった。
話し方や、接し方がきちんと教育されたものだと分かる。
「ランス、本当は……どこの王子だ?」
「まさか……」
訊いたが、はぐらかされた。
いい、問題はない。教育があるなら……いい。
ある大きな古い木の前で止まる。
私は馬から降り、叫んだ。
「小人たちよ、いるか?」
木の上から、3人。根元から4人が顔を出す。
一人の、年長の小人が私の前に来た。
「偉大な魔法使い様。……お待ちしておりました。」
「……あぁ、願いを叶える。その代わり、お願いを聴いてくれ。」
「はい。約束します……願いは……」
「知っている。」
《 ☆☆※ 》呪文を唱える。
大きな木が、二階建ての家に変わった。
「中に入ろう。」と促し……家に、小人7人と人間3人が入る。
「あの、偉大な魔法使い様……この作りは……」
「あぁ。お願いと関係がある。1階のその部屋……これから来る女の子のために、空けておいてくれ。」
もうすぐ、やってくる……
「来たら、親切にしてやってくれ。時が来るまで、一緒に生活してほしい。二階は、7人が住んでも十分広いだろう。家具や必要なものは、すべてそろえてある。頼めるか?」
「はい、もちろんです……。それが、この世界の希望となるなら。」
「あぁ。ランス、時が来たら……ここに足を運べ。従者を一人、忘れずに連れて来いよ?」
「……従者?」
「あぁ……ランス、今は聞き流せ。後で、理解する。疑うな……信じろ。お前の行動が、未来に希望を与えるんだ。」
「はい……」
小人は、快適な住まいに満足して走り回っている。
その内の一人が、私に告げる。
「戦の知らせを聞きました。偉大な魔法使い様……希望はありますか?」
「あぁ。希望をつかむための戦だ。もうじき女の子が到着する………後は頼むぞ。」
私たちは、小人たちに別れを告げて……旅を続ける。
森を抜けて、大きな川が見えた。
「ランス、戦のことを……どう思う?」
「本当に、希望へ繋がるのですか?」
「……信じるか?」
「……希望となるなら……」
ケイトは、ずっと黙っていた。
……何を感じた?何を考えてる?不安になる……。
「ケイト、どうして黙っているんだ?」
ケイトは答えなかった。
時が来た。
川沿いに沿って馬で走る。
日が暮れ始め……肌寒い。魔王の城も近いな……1日の距離ぐらいか。
「ビエ殿、宿を探しますか?」
「あぁ、頼む……。」
ランスは、近くの村に馬で宿を探しに行った。
私は、ケイトと二人……。
「ケイト、どうして……何も言わない?緊張してるのか?」
魔王の城が近いから?それとも……何かを感じている?私の隠し事……
「……ビエ、こいつ……太ってないか?」と、カピを掴んで見せた。
ぶら下がるカピは、プクプクで可愛いカケラもない。
しまった……エネルギーを貯めすぎたか?
いや、有り余るのはいいことだ。元の世界へ帰る力で、通常のカピバラの可愛さに戻るだろう。
「何を食べさせてるんだ?魔王を倒したら、運動をさせような!」
「……約束だぞ?」
「あぁ!」
ケイトは私に、出来ない約束を増やしていく。
私を試しているのかもしれない……。考えすぎだろうか?
ただ、未来を信じ……希望を保っているのかもしれない。
ケイトの未来も、私には見えない……。
「ビエ、俺……ん?馬の走る音……か。ランスが戻ってきたな。」
「ビエ殿、至急……この国の城へ!!生れた子を、救ってください!」
……来たか……。
私たちは、城へ向かう。
未来を担う……子供を護るために。
城の厳重な警備の中、馬を預ける。3人は、城の中の広間に通された。
「偉大な魔法使い様!この子が……この……子……うぅ……」
宴のときに会話した王女。
「状況は知っている。予期していたことだ、落ち着いて。未来を信じてほしい……」
落ち着いた王女は、微笑む。
あの魔物だな!急ぐか……?
「ランス、夜……馬を走らせることが可能か?」
「はい、……シドラは走ってくれます。ただ、この寒さは初めてで……」
シドラ……怪獣のようだが、馬の名前だ。
しかも、メス……ランスを愛する馬。何度か話をしたが……話の分かる奴だった。
「水晶球を届けて欲しい。これが行き先を照らし、導く。寒さも凌げるだろう。シドラに、よろしくな……」
最後だ……
「ビエ殿……?」
「シドラに頑張って欲しいんだ。出来るだけ早く!最近、婚儀をした国は知っているか?」
「はい。ラタバール……ガラスの靴の少女をめとった国ですね?」
「その妃に、この水晶玉を渡してくれ!渡せば分かる。話はしてあるから。ランス、その方が……行き先を告げる。迷わず行ってくれ。未来のために……」
「ビエ殿……」
「頼んだぞ!」
ランスを送り出した後、ケイトが口を開いた。
「ビエ、何が起きてる?何を、一人で背負っているんだ?……俺は……ここにいる意味はあるのか?」
悲しそうな……悔しそうな……微妙な表情だ。
解っている……隠し事が多すぎる。
「ケイト、後ですべてを話す。今は、襲撃に備えてくれ。ここに、魔物の手下が来る。……魔女だ……。」
「分かった。約束だぞ!」
【ガタガタガタ……】窓に風が当たる音。
ガラスが割れ、魔物たちが侵入した!
王女は、子供を護り叫ぶ。
「あなたは、一体誰なの?他国で呼ばなかった方は、沢山います!出産の祝いは、この国で行ったのですから……」
「祝福を与えよう……。100年の眠りを。16の誕生日に……」
「はい、スト~ップ!はぁ……呪いなんて、呪い返せばいい。けど、一番いいのは……攻撃あるのみ!ケイト、雑魚への攻撃!!」
「あぁ!!」
《 “★★”※ 》大物に、室内バージョンの稲妻攻撃!
雑魚にも、逃げられないよう……ケイトが攻撃をしやすいように、援護する。
時間は、そんなにかかっていないが……私たちは力を使った。
「はぁ……は~~」
《 *★ 》魔物たちの死体を森に送り《 ☆# 》窓を元に戻した。
……眠い……
《 ☆ 》ケイトの傷を直す。
無意識だった……。
あと、もう少し……あと……少し……ケイト、あなたをこんな戦いの世界から救う。
普通に、平和に……幸せを……誰かと共に。
それが幸せ?
そうでしょ……。
すべて話す?
いいえ……。
置いて行くの?
置いていく。
どうして……?
傷つけたくないから。
俺のこと、好きなの?
好きよ………
え?……?!!
目を開け、布団の中……夢?!
「……酷いんだな。」
窓際にケイト。夢……じゃない?
「な……にが……?」
とぼけてみる。
「こいつ。俺の言うこと、何でもきいてくれるんだ。」と、カピにキスをする。
すると、女の私に変化。
「ぎやぁあ~~!!」
ベッドから飛び起き、私に変身したカピをシーツで包んだ。
今日身に着けている下着に、スケスケのキャミ?!
口をパクパク……言葉が出ない。
「いい眺め……」と、マジマジ私を見る。
隠しているのに??
視線を自分に向ける。
「ひゃあぁ!!」
カピの姿と同じ?!!
シーツを奪い、カピを元の姿カピバラにする。
で、自分に服を着せた……はず。
魔法が効かない?!!
「な……何……ななに……を……」
後ずさり、距離を取る。が、ベッドにつまずいて上に転がった。
うわぁ~~~ん!!何これ、悪夢?こんなに、パニックになったの初めてなんだけど??
ベッドから下り、床を這うように入り口へ向かう。
「無駄だよ?鍵はここ♪で、カピの魔法で……君は、普通の女の子。さ、どうする?」
意地悪な声がする。悪魔だ……。
魔王より恐ろしい……悪魔って??
カピに、裏切られた……いや、私の精神なら……言い成り??
「くすっ……楽しいな~~。」
楽しくない!!
「さてと、夜は長いし?寒いだろ?温めてやろうか?それとも、熱くなる?」
き、聞こえないわ……。幻聴よ!!
カピめぇ~~。あいつ……あいつぅ~~。こんなことのために、魔力を使うなんて!!
「美衣様。最近、お腹がはち切れそうで……ちょっとずつ消化してたんですよ?ケイト様の回復とかぁ~~。」
カピの奴、私の姿で……ケイトに抱きついている。
服は着た姿になってる、なら……。違う、問題はそこじゃない。
「で、それが……どうして……こうなるの?」
床が、異様に冷たい。これも……
畜生!!
「美衣様、自分で何でも一人でされるから。辛そうなケイト様を慰めようと……」
慰めようと??
「夢で、優しくしてたら……ふふっ。ばらしちゃった!」
NOぉ~~~~~!!
「いつ……の話?」
「でも、最近ですよ?……あ、そろそろ……消えますね?」
え……?消える??
逃げてドアにすがりついた私を、ケイトが抱き上げる。
「冷た!……やりすぎたか。」
「ヤダ、離せ!!ダメだ……触れたら、記憶をけ……んっんんん~~」
唇がふさがれ、ベッドに沈む。
彼の温もりと香りに……唇の熱さに、自分を忘れそう……
「ね、好きだって言ったよね?」
頬に手が当てられ、視線が合う。
見つめる瞳が放さない。
「……言ってない。」
「じゃ、言って。」
……ぐっ……流されそうだ。
まだ、――に……
「ケイト……は……」
泣きそうだ……
「美衣……好きだ。君が、会話の中で“私”って言うたび……女の子に見えた。君が、魔法使いなら……男に見える魔法を使っているんだと思った。」
無意識のうちに、自分の言葉が……魔法の効力を無くしていたのか。
「この気持ちは正常なんだ……。君を護りたいのに、護られて……相談もなく一人でしてしまう。俺は、何のために……この世界で生きてきた?君に逢うため?じゃ、俺の役割は?……美衣……俺は、必要ない?」
必要だ……私の心が狂いそうだ。ケイトがいなければ、この世界は救わない……
「どうして、黙るの?美衣……」
「……必要……欲しい……あなたの心が欲しくて、狂いそうだ。ケイト……蛍兎……」
手を伸ばし、蛍兎に触れる。
この手に、あなたの温もりがある。あなたの心を……手に入れた。
「美衣……キス、してもいい?」
「キスだけでいいの?」
「……ふっ……意地悪だな……」
私を求めるキス……触れる手……幸せな時間……
一時……




