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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
10闇色のおおかみ

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時の犠牲

泉麗side。


「暢~~~~!!」


俺の腕に、真っ赤な血に染まった進と暢。

ガラス球が、俺の上着から転がり落ちる。

光を放ち、二人を暖かな光が包んだ。

俺の手から二人が消え、そのガラス球の中に聖花と同じ花びらの形をしたカケラが二つ。

それは赤い色ではなく、闇のように黒い。

【カッ……カラン】

小さな音が響く。

「……泉麗。このまま、勝負をする?」

こんな状況で、試練は始まったのに。まだ時じゃない。

まだ、改の想いを知らない。俺達の想いが試される時ではない。

「改、烏鏡に会っていないだろ。いいのか?お前の相手か、確認する時間が必要だろう?改、君は犠牲のままこのカケラになる?」

「俺に勝てる自信があるのか。彼女が、君の手を取ると?」

「教えないよ。試されるのは、それぞれの想いだから……」


「泉麗!!」

遠くからの叫び声……麒麟くんだ。

「ふぅ~ん。確かに時ではないみたいだな。ねぇ、君は何を観ているの?」

「……未来だ。彼女との……繋がるか……手以外に触れる日を……改、間違えないで。君が出会うのは、俺の相手だ……君の相手であって、そうじゃない。」

「相手は、一人だ……」

「あぁ、一人……間違えるな。君の相手が」


「……泉麗、何を……」

近づいた麒麟くんが青ざめる。

地面と俺の服の血に……

改は、水で地面の血を流す……まるで、何も無かったように……

「改、君は……」

「烏鏡……か、可愛い名だ。俺の手に入る……聖花……セイカ……」

俺の声なんか聞こえない……

改は、ドアに向かって歩いていく。

「泉麗?その血は、まさか……」

俺は涙が溢れ、麒麟くんに抱きついた。

「泉麗……そうか。とうとう始まったのか……俺には、何が出来る?」

「麒麟くん、蓮美さんの魔力は助けになったよ。まだ、巡れそうだ……改は、烏鏡を好きになるかな?……怖い。ずっと、恐ろしくて怖くて……眠れない日が続く……父さん達に笑い、普通に振舞った。俺、俺は……」

「あぁ、大丈夫だ。お前の強さが、みんなの支えだった。泣いてもいい……」

「進……暢……俺、何も出来なかった。」


「……進は?!」

入り口から双葉くんが走ってきた。

俺達の雰囲気に、双葉くんは心を読んだのだろう……

「何て事だ……。見守ることも出来ないなんて……路を変えたのが行けなかったか!!」

「……双葉、どこに行っていた?」

「麒麟、お前の家だ。蓮美に、魔力が残っていないかと……」

蓮美さんと聞いた途端に、麒麟くんの雰囲気が変わる。

「麒麟、俺の意見なんだ。」

入り口に景彩くん。

双葉くんが麒麟くんに問う。

「蓮美や海波・美衣さん・苺愛さんも魔力が残っていない。おかしいと思わないか?」

確かに……この試練は魔女が関係する。

『最後の魔女』……彼女の魔力があるかも分からないのに、身近な魔力が尽きた。

「……そう言えば、おかしいな。」

【パンッ】

手を鳴らす音に、全員が驚いた。

「危機感も、注意力も散漫。まだまだですね……」

隠れた三つ目の区画から……

「「「恵?!」」」

恵さんて、以前の麒麟の上司の?励治さんが言っていた人?

「さ、情報料は高いですよ?」

微笑むこの人から、安心を感じるのは何故だろう?

「泉麗、草樹に会いに行きなさい。服を着替え、匂いを落として。顔を見せておいで……心配している。二人のことは、劾が伝えています。烏鏡にも、会って行きなさい。」




双葉side。


泉麗は、振り返らない……未来を見ている。

「恵、荊はいないだろうね?」

「あぁ、彼女を慰めている。暢を自分の子のように思ってきたからね……。励治さんも気にしてくれたよ。さぁ、劾の隠している魔女……継続の魔女達の話をしよう。これから泉麗は、彼女に会う……そして試練を迎える。君達は、どこまで見守れるのかな?」

「恵……」

「景彩、相変わらず勘がいい。俺が伝えなくても、君なら見つけたかもね。ただ、麒麟は正座です。結婚して気が緩みすぎです。長い間、赦してくれなかったのは……ま、今は言いませんが。コホン……鬼畜ばかりが成長して。」

「あぁ~、それは不味いよ。麒麟……どんだけ鬼畜??」

「え、双葉ずるい。俺にも教えてよ!」

「ぁ~~!!知らなくていいよ。景彩、海波が腹を空かせてるぞ!」




泉麗side。


【コンコン……】

「入りなさい。」

父さんの声……ほんの少しの時間しか経っていなのに懐かしい。

ドアを開け中に入って、ドアを閉めてから鍵をかける。

「……泉麗。おいで……抱きしめたい。母さんに、会う時間はあるのか?」

「無いよ。改が、烏鏡と会っている。俺は、烏鏡にお別れを述べて巡る。戻った時、サイゴだ……」

「泉麗。お前の……泉麗の命は残るのか?」

1「残らない。俺の体を突き通す剣は、聖花だ。烏鏡の心が、俺を殺す……彼女は、改の相手。ただ、その時に改の命を奪っているかもしれない。分からない……未来は、『最後の魔女』と『最初の魔女』が知っている。」

「劾は、改と共に過ごした時間が短い。それでも、自分の子だ……夢を観て……一葉、そうだ瑠璃がいる!どうして、気が……」

「父さん……」

俺の目が緑色に変わる。

「忘れて……まだ時じゃない。」

そう、俺の魔力……

雑種にした魔女の力。おおかみの心を必死で求めた……呪いのように。

「……何、今……何か……」

「父さん、行くね。もうすぐ、双葉君が教えてくれる。」

そう、俺は知っていたんだ。

『最後の魔女』は、烏鏡じゃない……彼女は、聖花の中心。

進……ごめんね。君に逢えるかな……


匂いがする。甘い匂い……

呪いは解かれた。残る弊害が、相手を知らせる。

烏鏡……君の名を呼ぶことはない。これからの短い時間……囁く愛は、君だけだ。

『継続の魔女』が公園で待っている。

『入り口』のあった場所……この『緑』のあった場所だ。

確実に迫る時間……触れるその右手……俺の想いは伝わるだろうか?

改と会っても、心は動かないだろう……

まだ、時じゃない。16年……ギリギリなのかな?

暢は間に合わなかった。俺も、無理なのだろう。それが今回の犠牲。

改……君も相手を間違える。手を差し伸べ、惑わした手が……惑わされた手を取ろうとする。

カケラは5つ。

本当の持ち主でないと、願いと引き換えに……命を喪う。

烏鏡……君の願いは、叶わない。そして『最初の魔女』の物語は終わる……




烏鏡side。


お昼に泉麗が来なかった……多分、役員の仕事が忙しいのだろう。

最近、特に悲しい眼をする。

私を見ているのに、見ていない……そんな気がする。

触れるのは、この右手……気がついているの……本当は、このアザを見ている。

このアザ……生れたときは無かった。

記憶にあるような……18年……泉麗が生れて、16年……ずっと、一緒……


予鈴のチャイムに立ち上がる。

今日は、泉麗から隠れた……時々するけど、必ず見つけるの。

多分、おおかみの血?それなら、相手は私でいいのよね?

どうして不安になるのかしら……泉麗……私たちは、付き合っているのかな?

キスも抱擁もない。触れる右手……手に触れ、握り締め……撫でてキスをする。

あなたは、私を見ているの?それとも……

「烏鏡?見つけた……逢いたかった……」

私を抱きしめるのは、見知らぬ人。

泉麗ではない……なのに心が反応する。嘘だ……相手は、一人。

魔女の血も、おおかみの血も……相手はいつも一人だ。

それが弊害……選べるとしても!

「放して!!あなたは誰?いきなり、こんな……」

見つめる眼が優しくて……

【ドキッ……】

体内の血が熱い……何かが、呼んでいる……

「烏鏡……俺の名前は、改。君の相手だ。俺は、時役使。俺の相手も一人……君だけだ。どれだけの時を巡り、たくさんの手を取ろうとしても……君との出逢いを知っていた。セイカ……『最初の魔女』……君の聖花が、俺を呼んだ。君の心は、手に入るだろうか?」

……意味が分からない。

両親は、何かを私に隠している。おおかみの呪いじゃないこと……?

「烏鏡?どうしたの?君は、記憶が無いの?」

記憶?何の……

「改……私の相手は、泉麗。一人……あなたの相手は、別の人……」

自然と出た言葉が、私を安心させた。

「本当に?いいよ……時間をあげる。君の心に不安がある。揺れている……手を取るのは、俺のだ。泉麗を殺しても、俺は君を手に入れるから……」

コロス……?泉麗……を?

「……改?」

改は私に背を向けた。この人の心にも、私がいないみたいだ。

求めるのは……セイカ……私の心じゃない?

淋しい……あなたの心が欲しいのに……


「烏鏡、君の匂いが変わった……君は、誰?……」

泉麗……??

何を言っているの?私は、私だ……私は……今、誰の心が欲しいと?!

「……あぁ、ふふ……君だ。よかった……サイゴに、愛を伝えられるね。」

サイゴ??

「せん……り……」

泉麗は私に近づいた。

いつもの距離で私の右手に手を伸ばした泉麗の手を振り払う。

何かが怖い。

「……――……お願い。時間が無いんだ。触れたい……キスをしたい。ね、手を出して?」

泉麗の目に涙が見える。

「いやだ!どこに行くの?置いて行くの?……行く、一緒に行くわ。約束して……でないと、一生触らせない!」

「酷いよ、一生?……約束する。帰ったら、告白するよ……抱きしめて、唇にキスもしたい。イチャイチャ……ふふ……恥ずかしいこともネ♪」

「……バカ……」

私は右手を出す。

その右手を、泉麗は優しく両手で包む。

「泉麗、どうして帰ってからなの?今じゃ駄目?」

「……駄目。大切な任務なんだ。時間に追われた告白は、イヤだよ。」

嘘だ……涙が出る。

右手のアザにキスをする泉麗。

くすぐったくて手を引こうとしたが、上目で私を見る泉麗の眼に、時が止まる。

私のアザに近い親指に、彼は舌を這わせた。

「……んっ……」

「可愛い。ずっと聞きたいけど、その声じゃないんだ。どうしたら、君の心に入れる?もっと、深く感じたい。もどかしい……足りない。もっと欲しい。もっと……手に入るかな…………」

「泉麗?手に入っているわ。どうして疑うの?」

「ごめん。違う……行かなきゃ。帰ったら……君の名を呼びたい。触れたい……俺のものだ。誰にも渡さない。」

「泉麗、約束は守ってね?」

「うん。覚悟して、約束をしたのは君だよ?今まで触れなかった……触れられなかっただけだ。我慢したんだから!」

笑顔の泉麗は、遠くを見ているように笑う……




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