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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
10闇色のおおかみ

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未来のカケラが消える


暢side。


改君を医務室に案内する。

何だろう……ドキドキする。うん、カッコイイ……

「何?」

「……へへっ。カッコイイなって、思ったの。」

正直に言った私に彼は優しく微笑む。

「ふっ……。君も、可愛いよ。」

お世辞だと分かっているのに、顔が真っ赤になってしまった。

恥ずかしい……

「私、多河 暢。宜しくね!!あの、何でも訊いて?」

何を話していいのか分からなくて、早口で適当に言ってみた。

「……あのクラスは、男子だけなんだね。」

「あぁ、難しいことは分からないんだけどね?ウワサでは、進……私の目を塞いだ子が、ふぇろもん??が多いから、女子は別なのだとか??聞いた。クラスの人数も極端に少ないかな?気にしなくていいよ。特進の頭いいクラスだから、特別なんだね。」

進にふぇろもんって何かを訊いたが、笑うだけでいつも答えてくれない。

ただ、お前には分からないのが残念だよ……って、馬鹿にする。

酷いよ……進、嫌い。意地悪だ。

「ね、医務室は……ここ?」

私の後ろから声がした。

振り返ると、医務室の前で止まり指差している。

「あぁ!!ごめんね!?……じゃ、あの……私、教室に帰るから!!」

「ありがとう。」

改君と別れ、教室に戻る間……ずっとドキドキしていた。

進とも泉麗くんとも違う。

親類周りは、綺麗な人やカッコイイ人が多いけど……何かが違う。

これって恋?!!

わわわっ……どうしよう??!どうしたらいい??この胸のムズムズ……

へへっ……幸せだ。遅い初恋だ!!

私の隣には、進が常にいた。

進の何が怖いのか、泉麗くん以外が近づいたのを見たことが無い。意地悪な証拠だ。

私を仲間ハズレにして、よく女の子たちと仲良くしてるのも知ってる。

何の話か訊いても、答えてくれない。

お父さんに告げ口すると、爆笑だ。何故?!

優貴くんに訊くと、笑えない……と、落ち込んだ。何が?!!

私は成績がいいのに、世間からズレている。多分、それも進の意地悪だ。

くやしいぃ~~!改君を好きになったなんて、絶対に教えない!!




進side。


苺愛さんと別れ、双葉君と学園まで歩く。

「進……ノンは、幼い。お前が甘やかし過ぎた……残された時間では、想いは……」

「双葉君、泉麗を頼むね。泉麗が『最後の魔女』だと思っている人は、違うんだ。双葉君にしか分からない。心を読めるのは、その為だね。」

「……進。優貴さんは、俺達を見守ってきた。俺はお前に何が出来る?」

本当は怖い。俺の心には恐れと不安……そして心残り。

「ノンは……この手に触れられるかな?多分、心は無理……護ってきたつもり。それで嫌われる。俺さ、草樹くんが憧れなんだ。父さんは、母さんに勝てないし……嫌いじゃないけど?」

涙が出る。何に対してなのかが分からない。

「時の犠牲たちの話の中に、お前みたいな奴が居たよ。ずっとそばにいて、想いに気がついたのはギリギリだったと……。」

『希望は相応しくないと、生き方を惑わす……』

美衣さんの声が聴こえた。

「進。行け……時は短い。想いを伝えろ……」

双葉君の頬を涙が伝う。

泉麗に、もう会えない気がする。相応しくない希望を犠牲に、俺たちは何を得る?

ノン……昔は俺に微笑み、何でも話してくれたのに。

君に触れたくても、泉麗が彼女に触れないから……

泉麗の見ているものが辛くて、俺も我慢したんだ。本当は、この時を知っていたのかもしれない。

喪う事を恐れて、俺も生きてきた。

瑠璃さん、あなたの目は閉ざされた。

双葉君は……近くに気配が無い。別の路に行ったのか……これも魔女?

『最初』『最後』……どちらでも関係ないか。時ではないだけ。

俺は、自分の役目に走る。聖花に捧げる悲しみのために……

ノン……暢……君に、俺の気持ちが伝わりますように……


学園の敷地に入り、お昼の時間だと気づく。

いつもの中庭に向かうが、いない。嫌な予感がした。

学園の役員達に情報をもらう。

「……屋上で、転校生と一緒です。」

奪われたノンの心に、俺はいないかもしれない。

俺は、誰か他の人を選ぶ?呪いも弊害もない……試されるのは想い……それでも『最期まで』。

屋上に走り、ドアを開ける。

区画が3つ。ここではない。二つ目の区画に向かう。

「進くん?あの、話があるの……」

後ろから、知らない女の子の声。

「ごめん、急いでるんだ。今度に……」

「……進?」

ノンが、俺の通った道で飲み物を持って立っている。

紙コップは2つ……

「ノン……」

「どうせ、私には関係ない話だもんね?ふんっ。女の子を泣かしてるなんて、最低!……ぅ~~……ぃ……嫌い……嫌いだもん!!」

紙コップから、中身が零れ……つぶれたコップが地面に落ちる。

「……君、ごめんね。俺、ノン……暢が好きなんだ。外してくれる?」

女の子がうなずいて、走り去る。

その言葉に、暢が驚いた顔をした。

「……好き?私を??うそ……嘘だ。意地悪な進が、私を好きなはずないもん!!改君は、優しい……意地悪をしないよ?これも、意地悪なの?ひどい……」

俺の後ろから声がする。

「ノン、俺の手を取ればいい。彼から護ってあげる。おいで……」

「駄目だ、その手を取るな!!」

「進のバカぁ~~。」

暢は俺の横を通り過ぎ、改の方に走る。

改の差し出した手を取った。

「暢!!」

俺に舌を出し、改に笑顔を向ける。

「あぁ~あ。手を取っちゃった……ふふ……くすくす……今まで、誰もこの手を取ることはなかったのに……」

地面から、水の矢が現れ空中に浮かぶ。

暢は、時間が止まったように動かない。

「暢、来い!!逃げろ、離れるんだ!!」

俺の声が届かないのか、動かないまま。

水の矢は、ゆっくり……暢のほうに動く。真上に集まり、今にも降ってってきそうだ。

「改、待て……最初は俺だ!!」

そう、俺が最初に死ぬ……暢を護って。

とうとう想いは通じなかった。

心が痛む。これから死を目の当たりにするというのに、痛むのは心……

その苦しみが俺から解かれるのが、死なのか?

暢……泣いてくれる?俺のために……

その悲しみが犠牲になる?それとも、改への想い……失恋なのかな?


降り注ぐ矢……

暢を護り覆い被さる俺の背に、痛みが無数に。

俺の下で、固まったままの暢。

……これが最期……

「ごめん……」

赦さなくていい。怨んでもいい……

その心に、俺がいるなら……なんでも……


背に衝撃がなくなり、意識が遠退く。

痛みが酷過ぎてか出血の為か、何も感じていないような錯覚。

暢の口に、そっと唇を重ねる。

これぐらい、お礼にもらってもいいよね?

……俺の好きな女の子……大事な……大切な……暢。

父さん……友達の泉麗も救えないままだ。ごめんね……

ごめん、泉麗……お前は、相手を手に入れる?みんなが笑える未来はあるのかな。

暢…………




暢side。


唇に、柔らかい感触……温かさ……

目を閉じたまま、私の上にいる進。

体を覆う暖かな温もりが、冷たい液体で濡れる。体温を奪う……コレハナニ……

「重い……進?意地悪……退いて、起きて……お願い、いや……うそだ……違う……夢?重い……冷たい……」

【ヌルッ】

手についたそれは……赤い……

「進?し……ん……進!進!!進~~!!」

思い出す……

呼べば、必ず振り返る。

笑顔で私に優しく触れ、頭を撫でて後頭部にキスを落とす。

「つむじ……可愛い……」

いつも、何かが“可愛い”と言ってくれた。

進の口は閉ざされ、目も開かない……微笑むことはない。

私の名も……呼ばない……

私は、ナニをした?何を選んだ?……最期に、進に……何を言った?

サイゴ……もうない?……喪った……失った……進……


「……進!!」

聞き覚えのある声と同時、自分にかかる重みがなくなる。

「イヤァ~~!!返して、奪わないで……進!!違う……ごめんなさい……嘘だと言って、いつものように笑ってよ!!」

泉麗くんの体にもたれる進に抱きついた。

進の体は冷たい……自分の体が、赤く染まっていた。

優しい声が上から注がれる。いつも泣く私を慰める進の声ではない……

「……ノン……ごめん。抱きしめてやれない。進の大切な人に、触れられない……思い出して。俺が、進のように君に触れたことがある?」

「…………。」

ない。撫でてもくれたこともない。

「……泉麗くん、何をしていたの?進……起きるよね?また、意地悪……だよね?意地悪……じゃないの……知ってる。他の女の子には、怖い眼をするの。声も怖いの……」


「……ノン、俺はその悲しみに染まった心が欲しかったんだ。さようなら。」

改君は、私の好きな人じゃなかった……

「ノン!!」

私の体を、痛みが走ったのは一瞬だった。

どうせなら、同じ痛みを頂戴……

「進、あなたが優しいの……知ってるよ……好き……大好き……」

力を出し、進の冷たい唇にキスをする。

……遠退く意識……

懐かしい思い出がよみがえる。

幼い頃から、ずっと一緒……これからもずっと…………




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