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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
10闇色のおおかみ

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役目への旅立ち


「失礼するよ。」

ドアが開いて、見知らぬ男に全員が警戒を示した。

「ふっ……はじめまして。全学園の理事長、小能おの 励治れいじです。」

穏やかに笑うが、威厳や圧力に皆が納得した。

めぐむの奴、俺のことを言い忘れているのか?」

不機嫌に緊張感が走る。

「いえ、すみません。情報を預かったのは俺です。」

麒麟くんが励治さんに近づく。

「緊急事態で……」

「学園の隠してきたものを伝えにきた。本日、理事長に就任し……ようやっと彼らを……君達を解放できる。呪いを利用してきた麻生学園の罪は大きい。償えるだろうか……」

「励治さん。時は、必要なときに巡ってくる……」

俺の言葉に、励治さんが微笑む。

「麒麟、恵は……。いや、今は訊く時じゃないな。『緑』の役目を持つ者、泉麗!受け取れ……」

手にしたのは小さな箱。

「中は入っていないが、パンドラの箱だ。一番、時の犠牲たちの想いに近いだろう。ここから、想いを巡れば……異世界に行ける。入り口の閉ざされた異世界。君に、すべての荷が降りかかるだろう……」

「励治さん。ありがとう……多分これが、最後の情報を持っている人達を教えてくれる。」

「俺が出来るのはここまでだ。言えない言葉が……」

「……うん。」

俺の『緑』が発動した。

他の情報も……今、手に入れるべきではないのかな?

「進、後を頼む……」

「あぁ!」

俺は巡る……『緑』が導くのか、この『パンドラの箱』が導くのか。

ただ、流れる時に身を任せる。

父さん達の過去の物語は、役に立たないだろう。きっと『予言の魔女』美衣さんの情報も……

すべては『最初の魔女』が導いた未来。




進side。


「励治さん、言えない言葉は……俺たちにも同じなの?」

「あぁ、試練だ……発しても聞こえないだろうね。認識できないだろう。」

魔女の魔法……

「草樹くん。泉麗は戻ってくる!さぁ、あなたの情報は俺に頂戴!!俺も未来のカケラだ。泉麗を救うのは、俺かもしれない。」

草樹くんの悲しみは理解できる。

劾さんは未来を、俺や暢の両親には告げなかった。

勘がいい父は、草樹くんから訊き出し……俺を育てるとき、誰かを護れる強さを教えた。

昔、親友を喪った悲しみを……俺が後悔しないように、事あるごとに。

出来るなら、阻止したい。

自分に出来ることをするんだ……常に、泉麗の味方でい続ける!

「……進。本当に、優貴さんに似てるね。救われるよ……」

草樹くんは、遠い目をする。

何を見ているのだろうか……

「俺の記憶は、『緑の目』の始まり……椋。今更、疑問に思うことがある。何故……いや、これも『最初の魔女』なのか?定行の呪いだ……彼は、ある年齢がきたら狼になり相手のキスで元の姿に戻った。同様の旅の風習は、最近まであった。遠矢さんの両親が近くにいないのは、それだよ。」

「おじいちゃんは、学生結婚したって……。」

景彩が反応した。

「あぁ、彼は16で希東の寮に入っている。学園が彼の経営能力に目を付け、取り込んだ。高校の入学時期に、旅に出る風習だと……。」

つまり、呪いで狼になるのは……『最初の魔女』の魔法。

「……美衣は、知っていたかもね。」

「草樹。母さんは、まだ何かを隠しているかな?」

不安そうな海波さん。

「海波。美衣は力を、俺達のために使った。味方だよ。」

景彩くんが、いつも強気な海波さんの落ち込みにキスを落とす。

「海波、結局は……泉麗が答えを見つけないと呪いは終わらない。希望を見て、彼らを護る約束をしたよね?」

「俺さ、時が来たら……行かなきゃいけないんだ。」

ずっと黙っていた双葉くんが、そう言った。

みんなの視線が集まる。

「どう言うことだ?」

「草樹。落ち着け……美衣さんだよ。」

「母さんが!?」

海波さんが過敏に反応する。

「海波、お前が言ったんだぜ?美衣さんが、穂波の心を読めないようにしたって♪」

「え?」

混乱する海波さんに、双葉くんが明るく微笑んで説明を始めた。

「穂波の心を読めない魔法をかけたときに、仕掛けたのかな?ふっ……今日だよ。改の名を聞いて、その呪文が俺の記憶にある。その中に、一人の名前が……」

時はなんと残酷に動くのだろう?

『最初の魔女』の目的も見えない。多くの犠牲に納得できない。

「……それは、今……言っても大丈夫なのか?」

「草樹、だから記憶にあるんだろう。彼女も魔女……未来のカケラを犠牲にする。彼女は『代案の魔女』、七匹目の犠牲。一族が異世界に送り、そこで下した決定に後悔をしている。大上おおがみ 苺愛めえさんだ。」




泉麗Side


苺愛さんの想いを巡る。

異世界に送った聖花せいか・光にイリス……

時役使の体の中で、悲しみを蓄えながら、命と共に時を刻む。

それを『代案の魔女』は、秩序として飴に変えた。

優しい声が聞こえる……


さぁ、物語の時間よ。昔、昔……この世界とは違う世界……『スピニロブ』。

そこには、ヴァンパイア一族の治める国がありました。

魔女・おおかみ・魔物……たくさんの種族。

秩序が壊れたのは、いつだったのか……その世界は、この世界と区切られていたのに。

『入り口』を作ったのは、『始まりの魔女』。

この世界に、ヴァンパイア達が餌を求めて行き交い、秩序を乱す。

収拾がつかなくなるのは当然の事。

ヴァンパイアの急激な増加が争を引き起こし、その反動で激減するヴァンパイア……

そんなある日。

餌として異世界から連れてこられた少女が、ヴァンパイアの世界を救う。

その少女は、『スピニロブ』にいた魔女の子孫。

どちらの世界にも希少な魔力のある女。

一人のヴァンパイアが、彼女を愛するようになる。その愛に彼女の魔女の血が記憶を呼び起こす。

しかしそれは、想いに応えるものではなかった。

『入り口』を閉じ……血の代わりの『苺飴』を一族に提供した。

この世界の餌となる人々の解放。

秩序を取り戻した世界。しかし弊害は続く。

『苺飴』に満足できない者……愛する者を得るのではなく、餌を求めるものが秩序を壊す。

『苺飴』も、秩序を守るには限界があった。

繰り返される儀式。時の犠牲。

結局は代案で、解放にはならなかった。

何故なら彼女が選んだのも、おおかみ。まだ出逢っていない相手への想いに必死だった…………




苺愛side。


あれは、采景さきょうと出逢う前。

まだ中学1年。魔女の一族に隔離されて生活していた時期……ヴァンパイアの一族が来た。

七匹目の犠牲の意味も知らずに、異世界『スピニロブ』へ連れて行った。

そして、私の力だけを求めるその偏った愛に、『最初の魔女』が応えた。

激しい憎しみと、嫌悪……だから解放ではなく、代案なのだ。

私の前に現れたのは、彼だった。

未来で出逢う彼は言った。必ず、幸せになるから……と。

選択を後悔したのは、聖花と再会した時だった。

私の子供に降り懸かる運命……後悔する。采景が悲しい顔で、苦しそうに笑う。

こんなことなら、出逢わなければ良かった?

違う人を選べたかもしれないのに……娘を犠牲にするぐらいなら、自分がなる。

改……あなたは、本当に……

そして、アナタは誰?『最初の魔女』なの?


泉麗……次は、『予言の魔女』――が教えてくれる。

聖花について、あなたには見えないままかもしれない。

本当の聖花の持ち主は、彼女だから。

ね?娘は……あなたは幸せになる?

願うわ……お願い。最後に間違わないで……

泉麗……見えない未来に、私も苦しい。

時が近い。

『スピニロブ』へ行きなさい……




進side。


双葉君と、苺愛さんのもとに向かう。

近くの公園で彼女を見つけた。

「待っていたわ。これで私の魔力は尽きる……それでも、この血がおおかみ達の心に反応するのよ。聖花の話をしましょう。そして、そのときの改の話も……進、覚悟はある?」

「はい。ただ、心残りが一つ。」

「正直ね。……双葉、あなたの受け継いだ能力はどこから来たの?きっと意味がある……」

苺愛さんは話し始める。

「最後の魔力。さぁ、泉麗の見なかった聖花と改を見て。ほんの少し……魔力の限界。あなた達に与えることの出来る情報のギリギリ。本当に必要なものは、もう少し先のこと……双葉……あなたの見た光景を思い出して。それが結末に影響する。ただ、今は異世界のことを……《 ★★☆☆% 》」

呪文と共に、魔方陣が広がる。

夢の中にいるように錯覚する空間。映像が3Dフォログラムのように動き出した。

窓際に外を見つめ、呟く苺愛さん。

『……この世界が私の何になる?滅べばいい。判る……あいつじゃない。私が求めるのは……他の人。あいつが求めるのは私の力。』

そこに現れたのは改。

『こんにちは、苺愛さん。』

『……何者なの?ここは鍵が……』

『あなたは、【最後の魔女】か【代案の魔女】を選べます。俺の手を取ってくれる?』

微笑む改に、苺愛さんが呪文で攻撃を仕掛けた。

多分、もう……この世界から逃げるつもりだったんだ。

攻撃は、改の体を守る水に吸い込まれて消えた。

『無駄です。あなたたち魔女が呪いをかけた。楽には死ねません。』

悲しい微笑み。

『……あなたの手は取らないわ。』

『それでいい。あなたの相手が、元の世界で待っている。幸せになるよ……信じて。明日、あなたの前に聖花が出される。それを代案の物に変えるんだ。そして、【入り口】を隠して。元の世界に戻ればいい。』

『……私は幸せになる?』

『はい、約束しましょう。あなたには本当に出逢うべき相手が待っている。』

そこで映像が切れた。

不思議な空間が溶けるように崩れ、通常の情景へと変わっていく。公園……

苺愛さんの目に涙。

「悲しみを、大好きな苺の味の飴に換えた。聖花の貯めた悲しみ……恐怖は今もこの記憶にある。それを、未来のカケラが経験する。烏鏡・泉麗・改・進・暢…………こんなことになるなら、私が改の手を取るべきだった。」

改は、最初から苺愛さんを『代案の魔女』だと知っていた。

『最初の魔女』の魔法なのかな?

「双葉、あなたは『最後の魔女』を見つける。進……心残りを……最期まで愛せる?」

「……俺が最初なんだね。泉麗は大丈夫かな。きっと大丈夫だと信じよう……苺愛さん、ありがとう。最期まで彼女だけを見つめる。たとえ心が通じなくても……」




泉麗Side


美衣さんの想いを巡る。

異世界に来た。ここが、始まりの世界『スピニロブ』。

「はじめまして。」

女性の声に振り返る。

違和感……苺愛さんの時とは違う。想いを巡っている感覚ではない?

この人は若いときの美衣さん……ではない?

「私は、バラ。美衣様の精神のカケラです。『最初の魔女』の魔法が、私を導きました。美衣様の知らないこの時代……」

「バラ?」

「時間がありません。私の魔力は、大事な役目のために残さなければいけません。泉麗様、過去に夢を見ましたね?美衣様は、その国を導きました。力がどこから来てどこに還るのか……これはパラレルワールド。改様の時の流れも理解が出来ません。私の案内が許されているのは、それぞれの一族のルーツ。行きましょう、悲しみが迫っている。」

俺の手を引いて、何処を移動しているのか……景色が早いスピードで過ぎ去っていく。

着いたところは、大きな城。

王様と、その前に立つ若い男女の姿。

「おぉ。白雪……本当に美しい。」

「偉大な魔女、美衣様の言葉はたがいませんか?」

「違わない。ランス……白雪の国と、この国を護ってくれるか?」

「……王よ。黙っていたことがあるのです。」

「何だ?」

「私は、ヴァンパイア一族の王子です。」

「その国を継ぐのか?では、美衣の予言は……」

「その国には別の継ぐ者がいるため、私は旅に出ました。ですが、違う種族……この王国を継ぐには、不適格かと。」

「教養はある。何が違う?白雪の血を吸うのか?」

「……血は、知能のない下級の魔族の血を吸います。昔から決まった基準です。」

「食べるものは一緒だった。」

「はい、体力が落ちたときに血を取り入れます。」

…………。


暗闇が俺を包み、バラの姿を見ることが出来なくなった。

バラの小さな声が聴こえる。

「彼らの息子には魔力がありました。息子は予言通り、美衣様の魔力の源を継承した他の国の姫と旅先で出逢います。その魔力を持った少数の子孫が、ひっそり……確実な居場所で、平和に暮らしました。魔力を持った者の願いです。美衣様が救ったのはその願い。その秩序を壊したのが、ランス様の生れた国……ヴァンパイアの一族でした。知能があるだけではなく、同族の血を取り入れるなど……禁忌です。血の病が拡がりました。取り入れた数日で、狂気が一族を滅びへ導くことになったのです。……泉麗様、時が来ました。元の世界に一度、戻ってください。試練の始まりです。未来を信じて……」

一瞬の光に、目を閉じた…………




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