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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
10闇色のおおかみ

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パラレルワールド


「父さん、先に出るからね!また遅刻したら、俺が恥ずかしいんだから。て、聞いてる?」

朝は、両親のイチャイチャで始まる。

年の差15の二人。ま、仲がいいのは良い事だ。

父、草樹そうじゅ。母、麗彩れいや

二人の息子の俺、松木まつのき 泉麗せんり。私立冬北ひゆきた高等学校一年生。

「泉麗、気をつけてね。」

「うん、行って来ます!」

俺は走って、いつもの家を目指す。

そして目的地に辿り着いたと同時で叫んだ。

烏鏡うきょう~~。お迎えだようぅう~~♪」

【ガッ】

ドアが勢いよく開いた。

「うるさい!毎日毎日、何度言えばわかるんだ。泉麗……お前には、烏鏡はやらん!!」

「そうだ、言ってやれ。采景さきょう……こういうタイプは、釘を刺さないと……刺さないと……クスン。」

「あぁ、うざい。連歌れんか、いつまで泣いてんだ!仕事に行け!!」

烏鏡の父である采景さきょう君は、俺に警戒心でケンカ腰。

俺の父、草樹そうじゅと双子の連歌れんか君まで俺の邪魔をする。

娘が鬼畜の嫁に行ったから……『娘を取られるな』の会を発足したらしい??

「おはよう。」

騒がしい二人を押し退け、烏鏡が家から出て来て挨拶をする。

「おはよう。」

「……ね、その甘い匂い……私は好きじゃない。」

ふふ……君は知らない。この匂いは、俺の相手である証拠だ。そして君の相手は……。

君は、君じゃない。時は来る……

「おい、ジュニア!」

「……泉麗だよ。采景さきょうくん、何?」

引き留めておきながら複雑な表情で、言葉を探しているようだ。

「お前の相手は、……」

「……知ってる。間違えないよ、俺は。心配しないで……」

みんなが心配するけれど、俺は死なないよ。

「泉麗、行くよ?」

彼女の父、采景君はおおかみ。母、苺愛めえは魔女。

大上おおがみ 烏鏡うきょう。私立冬北ひゆきた高等学校 三年生。

そして『最後の魔女』……


学校への道程。

歩きながら烏鏡の視線を何度も感じるけど、気づかない振りをする。

最近、烏鏡は何かを感じているみたいだ。

「ね、泉麗。」

「ん?」

「私に、隠している事があるでしょう?」

言いたいことをついに尋ねた……そんな感じだ。

「うん。知りたい?チュウしてくれたら教えてあげる。」

冗談ぽく、自分の唇に人差し指を当て、意地悪に言う俺に真剣な眼。

「する。教えて……」

烏鏡は足を止め、俺の服の裾を掴む。

俺はニッコリ笑い、烏鏡の右手に触れる。

「うっそぉ~ん。……無いよ、隠し事なんか。」

泣きそうな顔で、君が俺を見つめる。

ごめん、卑怯だね……それ以上、訊けない雰囲気を作った。

解っているよ……でも、時じゃないんだ。

「烏鏡……笑って。お願い……俺はそれ以上、求めないから。」

「……嫌よ。あなたは、誰を見ているの?」

「君だよ……烏鏡。君だけを見ている。生れたときから……君だけだ。」

「……嘘つき。」

「それは、嘘じゃない。さ、行こう……遅刻しちゃうよ?」

嘘じゃない。君だけを見ている。

この手に握る君の右手には、5つの花びらのある花の形のアザ。

そう、聖花だ。あの日から君は俺の相手。間違えない……俺は、君だけ。


学年の違う烏鏡を、いつも別れる廊下で見送る。

必ず振り返る君に手を振る日課。

俺が触れるのは、その右手だけ……

セイカ。未来も過去も関係ない。

俺の父は、冬北ひゆきた高等学校の医務室に担当医師として勤務している。

そして、未来を垣間見るがいさんを警護する任務も持っている。

俺は、その役員の一人。

教室より先に医務室へ向かう。

医務室に入り、劾さんの不安そうな表情に何かを読み取った。

「……泉麗。今日、息子が転校するよ。」

「時が来たんだね。」

ただ、出た言葉はそれだけ。

両親が俺の成長を喜び、涙した理由。知ったのは、夢を見た日。

幼いながらに恐怖に震え、両親に言えず泣いた。

俺が落ち着いているように見えるのが、劾さんや両親の安心要素だった。

本当は……怖い。失うことと喪う事。

采景くんと苺愛さんの苦しみは、また違うものだっただろう。

烏鏡……君の本当の相手が現れる。

あらた……間違えないで、君の相手であってそうじゃない。

「……草樹、お前は平気か?俺は気が狂いそうだ。」

窓際にいる父が俺を見つめた後、劾さんに視線を移す。

「劾……みんな一緒だ。16年……皆が、同じ気持ちで生きてきた。」

16年前、劾さんはこの未来を観た。

そして、関係する父と采景くんに告げた。全貌の見えない未来……

「子供達を見つめ……愛しさに、喪う事を恐れて生きた。これも犠牲の宿命か……」

父さんは、おおかみの雑種として……呪いの解放に犠牲の役割を選んだ。

「父さん、改と出逢う。俺も夢を見た……過去と未来を少し。」

怖い……ただ、その言葉を呑み込む。

【コンコン】

「草樹、泉麗はここにいるかな?」

「麒麟か。いるぞ、入れよ……」

俺の上司の聖城まさき 麒麟きりん。連歌君の恨みの対象だ。

言いたい言葉を閉ざした俺に、麒麟くんは苦笑い。

「また連歌君が、いたのか?気にするな。」

「気にするよ!」

「俺の父さんは、草樹の心配をしていた。それに近いのかな?多分ね……」

麒麟くんは父に微笑む。

「あん?俺は、ヒツジに邪魔された記憶しかねぇ~ぞ?」

父は不機嫌な振りだ。

麒麟くんの父は羊二ようじ……身内は、呪いの関係者が多い。

みんなが常に、呪いや弊害と戦ってきた……そして、俺も『最後』を望んで時を迎える。

「先は見えない。分かるのは剣を交える二人の姿だけ。『最初の魔女』は……これから明らかになるのか?」

劾さんは、外を見ながら呟いた。

誰かが死ぬかもしれない未来。俺達が生れる前から、見えている出来事。

呪いの弊害が、複雑に絡む。

最近は、色々な情報で気分を紛らわす。少しでも違う未来を願って……

「呪いの伝承すら曖昧だ。雑種の管理していた資料でさえ、異世界の話なんか残っていない。予言の魔女の後世らしいが、その美衣みいでさえ知らない。」

美衣さんは、過去の異世界を救った。

「異世界にいたみやこは、その過去になるが情報はない。」

劾さんの妻の都さんは、異世界から来た人。

「泉麗……あいつは、相手を見つけるだろうか?」

「分からないよ。ただ戦うのは、事実……。烏鏡は一人……だから。」

息子を殺すかもしれない俺。そして、その父の警護を受ける。

劾さんの目に、俺はどう映る?

改は、時を巡る……役目を果たしながらここに来る。

烏鏡と出逢うため……そして、聖花を手に入れるため。

セイカの心は過去のもの。それでも出逢うべき者と巡り会い、時を繰り返す。

壊れた秩序を補うために。

セイカの心と聖花の役目は違うというのに。

俺の体を貫くのは、改の剣ではない。俺の命を奪うのは……

消える命は俺かもしれない。

この手は君を抱くことも……ない?囁く愛は過去と同じ……君に届かない?


特進一年A組。

神成かみなり あらた。海外の姉妹校にいました。この度、家族と共に住むため帰国。仲良くしてください。」

自己紹介で、黒板に名を書く改の右手に『水』の王冠が見えた。

当然、目覚めている。

俺が生れたときには、この右手に『緑』があった。何度、夢見たか……

水の矢が俺に振り注ぐ。剣が交差し、貫くのは……あの剣……

「……り、泉麗!!」

先生の声に、現実に戻された。

「はい?」

「後は頼む!」

俺に手を合わせたかと思うと、先生は改に何かを告げ、慌てて教室を出て行った。

改が俺の前に立ち、微笑む。

「……はじめまして。」

差し出される手は、アザのある右手。

俺はその手を取ろうと席を立ち、微笑む。

「宜しく。」

右手が重なると同時に、静電気のような痛みと火花。

「?!!」

視線が合う。

お互いに何かを悟った。張り詰める緊張の中……

「泉麗くぅ~~ん!!」

俺の体に衝撃。

「……暢!?」

多河たがわ のん

あらしくん・しずかさんの娘。俺の幼馴染みだ……

「へへっ……ん??誰……」

初めて見る改にノンの時が止まった。

……え?見つめる眼が今までにない反応。

「見るな!」

ノンの両目を塞ぎ、抱きしめた色気の駄々漏れる男が邪魔をした。

同じクラスの多河たがわ しん優貴ゆうきくん・りんさんの息子だ。

「進、見えないよ??離して。」

彼の色気が通用しないのは、ノンだけ。

「ノン、俺の後ろで待機!」

「ぶぅ~。進のばぁか。」

ふくれながらも、言うことを聞くのが可愛いのだろう。

改は、自分の周りに人が増えたので戸惑っている。

さっきので、俺が何者かが分かったのも関係するのだろう……

「改、会わせたい人がいるんだ。俺のことも、そこにいる人が教えてくれるよ。……まだ、時じゃないよね?」

どれくらいの時間が許されていたのだろうか?

俺には解らない。

「……あぁ。」

改は俺の不安に、どこか安心したようだ。

「ノン、医務室に案内して。」

俺は進の肩に、手を乗せた。

進は、ゆっくり下がりノンを前に出す。

「うん?草樹クンと会うの?」

「あぁ、案内したら教室に戻れよ?」

俺とノンの様子を、進と改が見守る。

「迷子にはなりません!!……えと、誰君?」

「改……宜しくね。」

改は俺を振り返って見ながら、教室を出て行く。

進は、優貴くんの子だね……俺の気持ちを理解している。

俺の逃げたいときに、力をくれるのは……

「進。ごめんな?」

「大丈夫だよ。未来のカケラは、五つ……中心は誰だ?」

「……進?」

常に、時の犠牲を動かしていたのは聖花だ。

俺達は未来のカケラとして選ばれた5人。まさか……

「来いよ。改が劾さんと会っている間に、役員衆で会議だ。泉麗……俺さ、ノンが改に惹かれるかもしれないと予測していたんだ。」

「……試されるのは、人への想いだから?」

「ふっ……俺の色気は、どこから来るのかな?」

「……家系かも……」

綾さんは、小鹿こじかさんと親類になる。

多分、魔女の血筋……流れているなら……

「泉麗、謎が多すぎる……俺は、何かを隠している奴がいると思うんだ。」

進は、走りながら言う。

「うん。必要な情報は、時が来るまで得られないものだよ。」

時は、間近に迫って来ている。

役員衆は7人。

父の草樹・俺の上司の麒麟くん・双葉ふたばくん・景彩けいやくん・海波みなみさん。そして俺と進。


任務に使用する一室。

「泉麗……これ、私と蓮美はすみからだ。」

海波さんが、俺に透明のガラス球を手渡す。

「魔女の力が、お前の『緑』にはある。『継続』の魔女と『最初』の魔女、蓮美の魔力。草樹は、おおかみの雑種……お前は、少なからず魔力のある家系だ。……これで私達の魔力は尽きた。見守ることしか出来ないだろう。」

「……ありがとう。」

空気がいつもより重い……

「泉麗。ボスから情報を得た……改が巡った時や、魔女の想いを辿ることが出来るかもしれないと。彼女達の魔力をもらったのがそれだ。おおかみと魔女の家系からは、それが限界なんだ。泉麗……」

役員衆を、俺のために続けた父さんの想い……

「まだ時じゃない。ここに帰ってくるよ……想いは、こんなに簡単には終わらないから。試されるのは記憶じゃない……」

「分かっている。だから、辛い……俺は常に多くの幸せを、観ることを願って生きてきた。それが俺の役目だ……俺が選んだ未来。お前を追い詰めたのは、俺だ……」

「草樹君、時間がない。泉麗が行く前に、伝える情報があるだろ。俺達では、不安か?」

麒麟くんが父の肩に手を置く。

「悔やまないで。父さんの選択がなくても、俺の役目はあったよ。さ、情報を頂戴。父さん……」




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