終わりの一瞬
「改、烏鏡は俺の相手だ!」
「違う、俺のだ!泉麗……お前を殺しても、手に入れる!」
「……来いよ。その水で、俺の緑を防げるのか?」
「聖花を解放できるのは、俺だ。その力では護れない。セイカ……俺のセイカ……」
「改……俺が護るのは、聖花じゃない……烏鏡だ!」
「……泉麗……どちらの命が消えても、未来は一つ。」
「違う!違うんだ……未来は!!」
昔……時の秩序に手を出し、裁かれたのは誰なのか。
愛する気持ちに、間違い……なんてあるのだろうか?
人の想いは強い……すべてを変えてしまう力が在る。
その力も、どこから来てどこへ還るのか。
時は、還らない……進むのは一方方向。
それに手を出し、無事でいられる者はいない。それが秩序……
秩序には、崩れるとき均衡を保つ力が発生する。
崩れた秩序を補う犠牲だ。
一瞬の時の乱れも、補う犠牲の多いことよ……。
時間・想い・関係した者すべて……子孫……
答えを提出するように求める。
想いの正しさを、私に納得させるのだ……。
呪いとなり、長い年月をかけ……秩序を取り戻せるのか……見せてみよ。
その時、本当の解放を……与えると約束する。
行け……選べ、自分の出逢うべき相手を。
始まりの魔女:出逢い
異世界『スピニロブ』。時は、遥か昔……
少ない家系の魔女、名はセイカ。
小さな森に、自然に囲まれ生きていた。
そこへ侵入したのは、勢力の拡大したヴァンパイア。
彼らの餌は、理性の無い魔物だった。
その世界の禁忌……知能ある魔族の血は、取り入れてはならない。
病が、破滅へと導くから……
過去に、その病があったのか記憶の乏しい歴史。
時は来る……
愚かさは、秩序を乱し……大切なものを失うまで気づかない。
滅べばいい……選んだ選択を身に受ければいい。
警告を無視した報いを、味わえばいい……。
そうだね、責任の一端は私にもある。
いいだろう……試練に耐えたら、すべてから解放しよう。
君達の想いが、とても尊く……美しいから。
始まりの魔女よ。呪文を唱えよ。その知恵で、答えを提出せよ!
始まりの魔女:出逢い
森が燃え、多くの魔女が捕らえられた。その一人……セイカ。
城に、大きな扉……イスに座るのは、若い青年。
「お前が、餌か……」
スイとの初めての出会いが、その一言だった。
魔族の外れにある魔女の集落。力と、餌を求めて襲ったのだと聞いた。
檻の中のことだ……。
集落にいるのは、多少の魔力がある女性。
力の強い私は、より力を必要とする者の元へ。
皮肉なことだ……魔女の血を求めるなんて。
禁忌……病が拡がる……正常ではない思考に、殺し合い……戦争だ。
ほんの数日のこと。
牢から出、彼の元に引き出される。
「これは、どういうことだ!」
「……血の病。若い王よ……誰の決定だ?知らなかったわけでは、ないだろうな?禁忌……を。」
「知らない。知るわけが無い!閉鎖されたところから出て……」
あぁ……不幸な境遇か。しかし、承諾したのなら……罪を負う。
「解決策を出せ、でなければ命はないと思え!」
自分の命よりも……恐怖に震えるあなたを愛しいと思った私は、おかしいのかもしれない。
抱いた感情は、愛ではなく……哀れみだったのだ。
それが、愛する人と子孫……二つの世界に……多くの犠牲。
秩序より選んだもの……後悔しない。
牢よりは、環境の整った一室。
しかし、鍵の掛かった隔離状態。
「あんた、答えなんか見つかるの?」
鉄格子の隙間から、日の光の逆光にあなたがいた。
「……多分。一番答えに近いのは、私……」
あの森で、一番の魔力があった。
理性の無い魔物は増加していたが、人型で力のある者は少ない。
予言の魔女が作った国。魔力のある人間の居場所、それも。
彼女は、この時を知っていたのだろうか……。
始まりがここにあり、未来が過去を導く試練のパラレルワールド。
「俺はミドリ。お前、いい匂いがするな。くく……いつか喰ってやる。」
「……あぁ、おおかみか。ふん……その前に、王様に喰われるかもね。」
「あいつが好みなのか?」
「……さぁ、ね。心を奪うなら、奪え……どうせ、囚われの身。好きにしろ。」
数日が若い王からの猶予期間。
あなたは、毎日やってきた。愛を囁き、熱い視線を向ける。
高い窓、小さな光……そこに、あなたがいた。
その数日を、彼と過ごしていたら……未来は、変わっていたかもしれない。
でも、後悔しないわ。ね……あなたもでしょう?
「セイカ……ヴァンパイアは、もう駄目だ。俺達の一族も、襲われ……遠い地に逃げている。一緒に……」
時は来ていた。
触れられないあなたに、心が囚われ……共に逃げたいと願った。
その腕の中で死ねたら……何もいらない。
私は、王の前に立つ。
ミドリと約束した満月の日に、魔力のすべてを使っても逃げるつもりだった。
「魔女……セイカ。助けて欲しい。願いを叶えるから……自由も、約束しよう。」
その言葉に、希望を見たのが間違いだった。
今更だ……




