勝負再開!!
俺は、蓮美を抱きしめる。
「麒麟、苦しいです。」
「もう、離さないからね!!」
そんな俺達の前に、ミドリと鵠華……
「蓮美、ありがとう。力は、保てた……時の試練は残酷だね、いつもギリギリだ。」
「はい。……彼が呼んでいますね。サクラ……いえ、『 緑 』彼は、役目を果たせるでしょうか?」
「分からないよ。護りきれるかどうか……」
未来のカケラの話だよね……
俺は、見守る事しか出来ないのかな。
「ミドリ、私たちが会うのは16年後。あなたは今も……私を望む?」
「どう答えたらいいのかな?……君は、君であって君じゃない。主は、君を見つける……絶対だ。」
「分かっているわ。だから、命を落とすかもしれない。」
ミドリと鵠華は、手を取りつなぐ。
そっと唇を重ね……二人の姿が消えた。
俺達の今、出来ることは終わった。
これから勝負の再開だ!!
蓮美に抱きついたままの俺に、みんなが手を振って帰っていく。
「あの、麒麟……重いです。」
「あれ?耐えれるでしょ。なんなら、俺の体力をあげようか?」
「……要りません。ただ、キスしてください。」
「うん……蓮美……」
唇を何度も重ね……幸せが深まる。満たされる……もっと……
欲が出る。止まらない……
「……っ……んっ。苦しいです、ダメ……」
【ゾクッ】
この声を聞いていたい。もっと、この顔を見たい……もっと……
【ガゴン!!】
「……この、子鬼畜がぁ!!」
…………。
連歌君、酷いよ……くすん。
「お前に蓮美はやりません!その時点で、お前の負けは決定です!!」
蓮美を抱き、家に連れて帰る連歌君の後姿。
手を振る蓮美……笑顔が可愛い。試練を乗り越えた俺に……こんな仕打ち。
この喜びは、どうしたらいい?淋しい……手に入れたのに……
連歌君め……覚えてろ?くくく……蓮美は、俺のだ。くすくすくす……
「お前、鬼畜に笑いながら歩くなよ。俺の鬼畜より酷いぞ?」
「……それはないよ。父さん、どうしたの?」
俺の頭に手を置いて、グシャグシャ……撫でる。
「迎えに来た。良く頑張ったな……さぁ、帰ろう。それから……手を出すのは、ゆっくりだぞ。」
俺の試練を、連歌君も父さんも近くで見守ってくれていたんだ。
嬉しくなる。
次の日。
蓮美の家の前。
「この鬼畜、よく堂々と来れましたね……蓮美に、手を出すのは16までダメです!!」
「……うん、約束する。」
「嘘つきです。こいつ、やっぱり……ヒツジの息子です!!今日は、蓮美に会わせません!!」
【ゴンッ】
「うるさい。近所迷惑!さ、蓮美……行きなさい。いい?勝ちなさい!彼に負けてはいけませんよ?」
勝負は、小鹿さんの教育だったのか……
「小鹿、何が不満なのですか?」
「何もかも!」
…………。
うん、結婚て……大変なんだな。
「麒麟、手をつないでください。」
俺は蓮美を抱き上げ、走って逃げた。
「こら、鬼畜!!」
遠くで、連歌君の声が響く。
「蓮美、また勝負を始めよう?」
「はい。負けません!」
「じゃぁ、最初から……契約のキスを、君に送るよ。」
「私の契約も、麒麟……あなたに……」
学園の敷地に入ると、視線を感じる。
「蓮美……何か、見られてない??」
「気にしすぎです。」
【チュッ】
視線の中、蓮美が俺にキス。
「……蓮美、みんなが見てるよ。」
「はい。私のものだと、お知らせです。もう、他の人を見ないで下さい。」
可愛い!!
俺も、周りを気にせず……蓮美の唇を味わおうとした。
【プニ】
んん??
「ダメです。みんなが見てますから。」
ニッコリ……子悪魔な微笑みで、俺の口を指で押さえた。
…………。
駄目だ、勝てない。畜生……どうしてくれようか。
【フニ……】
「ひゃっ」
抱きかかえた手を胸に滑らした。
可愛い反応。
「どうかした?」
「……ふふっ。くすくすくす……ね、麒麟?私ね……」
…………え?…………
俺は当分のおあずけに、小等部で蓮美を下ろし……別れた。
フラフラと中等部に向かい、教室に入る。
…………。
どこまでOKかな……ずっと、そんなことばかりが頭を巡る。
「……双葉、麒麟は本当にそんなことを考えてるの?」
「あぁ、間違いない。見ろ……あの真剣な顔。鬼畜の頭は、そんなことでいっぱいだ。」
…………。
教室の入り口に双葉と景彩……俺を見てニヤニヤ。
俺は席を立ち、そこへ向かう。
「逃げろ!」
二人を追いかける。
先に景彩をつかまえたが、主犯を取り逃がした。
しかも、捕まえて不利なのは俺だ。
「……はぁ……ね、赦して……」
息の荒い景彩の潤んだ瞳……あれ、何かがおかしい??
「あのさ、周りが騒いでるのは気のせいかな??」
「……っ……何?聞こえない……手、痛い……ね、離して。お願い……」
何故か、俺が悪者の様な気がする??
「この、下衆が!!」
海波先輩に首を絞められ、睨まれる。
「あの、被害者は俺……ぐふっ……」
壁で覗いて、笑っている双葉の姿。
畜生……双葉め!!
「何だ、そんなことか。押し倒せ!相手がOKなら良いんだ!!」
……??
首を絞める手が緩んだと思ったら、海波先輩がニヤニヤ。
景彩も海波先輩の隣でニヤニヤ。俺のプライバシーはどこに??
「ほら、捕まえたぞ。麒麟、遠慮なく殴れ!」
穂波が双葉を連れて来た……様に見えたのは、最初だけだ。
捕まったのは、穂波の方。
「つっかまえた♪穂波、胸……大きくなった?よね??ふかふか……むふふふ……」
「だぁ~~!!離せ!揉むな!!やめ……っ……」
…………。
俺の周りに、マトモな奴がいない。
「麒麟、一番は君だよ??」
双葉、こいつ……
「麒麟、鬼畜なお前が……あぁ、鬼畜だから線引きがいるのか。もう優貴さんに相談でいいんじゃね?」
穂波は双葉の首を絞めながら、俺に笑顔を向ける。
首の絞まる双葉が嬉しそうなのは、気のせいにしておこう。
「でもさ、あの人……くすす……ま、いいんじゃね?行って来い!」
双葉がニヤリ。腹黒……
何か、優貴さんに訊くのが怖いな。
【ガシッ】
「さぁ、おいで。すぐにでも。」
この声って優貴さん??
校内の廊下に、優貴さんが普通に登場した。
俺の意見も聞かず、引きずって行く。
「いやぁ~~、懐かしいよ。思い出すなぁ~~。ヒツジが手を出さないで、我慢していた頃を。ま、お前はアイツと違うから嬉しいよ。うんうん、お前の方が俺は、大好きだ!!俺の仲間~俺の仲間~」
やっぱり、相談相手を間違ってる!!
このままでは、仲間入りをさせられる?
「くくくっ。逃がさないよ~」
ある任務部屋に入る。
半ば強制的に押し込められるようにして。
「さ、手を出して。」
優貴さんは、ポケットをごそごそ。
……これは父さんが理由も教えず、俺に命令した何か……かな??
昔、任務に入ったとき……
『いいか、優貴さんが手を出せと言ったら……絶対に出すな!いいか、死んでもだ!そうだな、お前の相手が中二ぐらいか、お前が高校生になるまでは逃げろ!!』
……これ??
「ん?いいから、いいから~。遠慮するな!な?」
……怖い!!
この、見たことのない笑顔が俺に圧力をかける。
「あの、父が……絶対に、絶っつ対に手を出すなと……」
「ほうぅ~~。ヒツジがねぇ~~。邪魔する気か?あの野郎ぅ~~。ふふっ……さぁ、麒麟……お前のお父さんは、二回受け取ったよ?大丈夫、怖くないよぅ~~??」
怖い!不気味だ!!
【ガシッ】
俺の肩をつかんで、ニッコリ。
「ね、受け取るよね?」
「……あの、その……」
「くすくすくす……君には、必要なものだよぅ~~??」
怖いぃ~~~~!!
首を横に振って、両手を後ろに隠した。
「……いい度胸だね~押し倒そうか?」
【ガチャッ】
「恵!!」
助かったと思ったのに、俺達を見た恵は視線を逸らしてドアを閉めた。
「恵ぅ~~、タスケテェ~~!」
「……結局、受け取ったのか?」
「草樹、怖くて……この掌が開けられないんだ。」
「中身を教えてやろうか?」
俺は首をおもいっきり横に振った。
多分、保健体育で聞いたやつだ。そんな気がする。
「捨てて行ってもいい?」
「クスッ。だ~め~。だって麗彩が見たら、誤解するだろ。下手すると離婚だよ?」
笑えない……やっぱり中身はアレだ。
草樹めぇ~~
「本当は、何を相談するつもり……あぁ、手を出す時期?」
「……はぁ。もういいよ……我慢するね。父さんに出来たんだ。俺だって出来るよ!」
「ふっ。俺は、お前の方が鬼畜な気がするけどね。」
酷いや。
あんなことを聞いたら、我慢だよね?
「どこまでするつもりだったわけ?お前の手にあるものがいらないなら。」
「……いや、ただ……イチャイチャしたい。」
「すればいいだろ?何だ、何を戸惑う?」
医者の草樹に訊いたら、確かだよね。
「……誰にも、言わない?」
「あぁ、俺は言わないよ?」
ニッコリと、天使の笑顔。
「うん。今日さ……蓮美が、その……手を出そうとしたら、せ……せ……」
「せ??何だよ、はっきり言わないと聞こえないぞ?」
「アレが……まだだって言うんだ。」
「「「「ダメじゃん!!」」」」
…………。
「俺は、誰にも言ってないからね。」
盗み聞きの奴らを無視して保健室を出た俺は、移動した中庭で立ち尽くす。
手には、アレが握られたまま。
汗ばんできた。握りしめた拳を見つめるが、中身は消えない。
だよね……優貴さんの視線がずっと付きまとっていた。
逃げても逃げても……ゴミ箱の前に立つと、必ずやって来た。
……何故??何が、そうさせるの??
「麒麟、その手の中に何が入っているのですか?」
気が付けば、蓮美との待ち合わせ時間になっていた。
「……気にしないで。お願いだから、中身については触れないで。」
「ふふっ……」
蓮美は可愛く微笑んだかと思ったら、意外な行動に出た。
俺に飛びつき、手にあったものを取り上げる。
汗ばんだ手が不味かった。
滑って、あっさり……蓮美の両手の中。
…………。
…………。
「麒麟……」
「違うんだ!」
「これは何ですか、開けてもいいですか?」
「駄目だよ!俺が、連歌君に殺されるから。お願い、返して!!」
中身を知られた日には、家にも帰れません!!
「じゃぁ、キス……してくれますか?」
「……うぅ……」
負けたままの俺が、勝てる日は来るのかな??
目を閉じた蓮美の手にあったアレを取り上げ、唇を重ねる。
もうちょっと、触れてもいいかな?
「……もっと、してください。」
「うん!」
だよね?
「……んっ……」
舌……入れてもいいかな??
柔らかい唇に舌を這わすと、蓮美の口が少し開いた。
てことは、いいよね?OKだよね?
「はい、ストップ!!」
【ビクッ】
止めに入った恵の引きつった笑顔に、更なる陰りが見える。
「麒麟、それ……その落とした物は何ですか!!」
落し物?
視線を地面に向けると、取り返したはずのアレが手から離れて落ちている。
「違う……違うんだよ、恵!!」
「恵さん。麒麟は、これを秘密の物だと言っていました。」
「蓮美!!」
「……麒麟、来なさい。今日は、きちんと将来について話し合いましょう。」
「ね、恵さん?これは何ですか?教えてください。とても知りたいのです。」
…………。
アレを両手で持って、蓮美は可愛い笑顔で首を傾げた。
…………。
…………。
「麒麟、鼻血が!?少し待って……あぁ。蓮美ちゃんは、それを渡しなさい!」
「嫌です。教えてくれないなら、お父さんに訊きます。」
「「わぁああぁああ~~!!」」
勝てない……勝てる日が来るとは思えない。
そんな日常も、君と一緒にいられるなら幸せなのかな??
出来たら勝ちたいな、畜生!!
勝負は勝てないまま…………
END




