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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
9おおかみで勝負

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勝負再開!!


俺は、蓮美を抱きしめる。

「麒麟、苦しいです。」

「もう、離さないからね!!」

そんな俺達の前に、ミドリと鵠華……

「蓮美、ありがとう。力は、保てた……時の試練は残酷だね、いつもギリギリだ。」

「はい。……彼が呼んでいますね。サクラ……いえ、『 緑 』彼は、役目を果たせるでしょうか?」

「分からないよ。護りきれるかどうか……」

未来のカケラの話だよね……

俺は、見守る事しか出来ないのかな。


「ミドリ、私たちが会うのは16年後。あなたは今も……私を望む?」

「どう答えたらいいのかな?……君は、君であって君じゃない。主は、君を見つける……絶対だ。」

「分かっているわ。だから、命を落とすかもしれない。」

ミドリと鵠華は、手を取りつなぐ。

そっと唇を重ね……二人の姿が消えた。


俺達の今、出来ることは終わった。

これから勝負の再開だ!!

蓮美に抱きついたままの俺に、みんなが手を振って帰っていく。

「あの、麒麟……重いです。」

「あれ?耐えれるでしょ。なんなら、俺の体力をあげようか?」

「……要りません。ただ、キスしてください。」

「うん……蓮美……」

唇を何度も重ね……幸せが深まる。満たされる……もっと……

欲が出る。止まらない……

「……っ……んっ。苦しいです、ダメ……」

【ゾクッ】

この声を聞いていたい。もっと、この顔を見たい……もっと……

【ガゴン!!】

「……この、子鬼畜がぁ!!」

…………。

連歌君、酷いよ……くすん。

「お前に蓮美はやりません!その時点で、お前の負けは決定です!!」

蓮美を抱き、家に連れて帰る連歌君の後姿。

手を振る蓮美……笑顔が可愛い。試練を乗り越えた俺に……こんな仕打ち。

この喜びは、どうしたらいい?淋しい……手に入れたのに……

連歌君め……覚えてろ?くくく……蓮美は、俺のだ。くすくすくす……

「お前、鬼畜に笑いながら歩くなよ。俺の鬼畜より酷いぞ?」

「……それはないよ。父さん、どうしたの?」

俺の頭に手を置いて、グシャグシャ……撫でる。

「迎えに来た。良く頑張ったな……さぁ、帰ろう。それから……手を出すのは、ゆっくりだぞ。」

俺の試練を、連歌君も父さんも近くで見守ってくれていたんだ。

嬉しくなる。


次の日。

蓮美の家の前。

「この鬼畜、よく堂々と来れましたね……蓮美に、手を出すのは16までダメです!!」

「……うん、約束する。」

「嘘つきです。こいつ、やっぱり……ヒツジの息子です!!今日は、蓮美に会わせません!!」

【ゴンッ】

「うるさい。近所迷惑!さ、蓮美……行きなさい。いい?勝ちなさい!彼に負けてはいけませんよ?」

勝負は、小鹿さんの教育だったのか……

「小鹿、何が不満なのですか?」

「何もかも!」

…………。

うん、結婚て……大変なんだな。

「麒麟、手をつないでください。」

俺は蓮美を抱き上げ、走って逃げた。

「こら、鬼畜!!」

遠くで、連歌君の声が響く。

「蓮美、また勝負を始めよう?」

「はい。負けません!」

「じゃぁ、最初から……契約のキスを、君に送るよ。」

「私の契約も、麒麟……あなたに……」



学園の敷地に入ると、視線を感じる。

「蓮美……何か、見られてない??」

「気にしすぎです。」

【チュッ】

視線の中、蓮美が俺にキス。

「……蓮美、みんなが見てるよ。」

「はい。私のものだと、お知らせです。もう、他の人を見ないで下さい。」

可愛い!!

俺も、周りを気にせず……蓮美の唇を味わおうとした。

【プニ】

んん??

「ダメです。みんなが見てますから。」

ニッコリ……子悪魔な微笑みで、俺の口を指で押さえた。

…………。

駄目だ、勝てない。畜生……どうしてくれようか。

【フニ……】

「ひゃっ」

抱きかかえた手を胸に滑らした。

可愛い反応。

「どうかした?」

「……ふふっ。くすくすくす……ね、麒麟?私ね……」


…………え?…………


俺は当分のおあずけに、小等部で蓮美を下ろし……別れた。

フラフラと中等部に向かい、教室に入る。

…………。

どこまでOKかな……ずっと、そんなことばかりが頭を巡る。

「……双葉、麒麟は本当にそんなことを考えてるの?」

「あぁ、間違いない。見ろ……あの真剣な顔。鬼畜の頭は、そんなことでいっぱいだ。」

…………。

教室の入り口に双葉と景彩……俺を見てニヤニヤ。

俺は席を立ち、そこへ向かう。

「逃げろ!」

二人を追いかける。

先に景彩をつかまえたが、主犯を取り逃がした。

しかも、捕まえて不利なのは俺だ。

「……はぁ……ね、赦して……」

息の荒い景彩の潤んだ瞳……あれ、何かがおかしい??

「あのさ、周りが騒いでるのは気のせいかな??」

「……っ……何?聞こえない……手、痛い……ね、離して。お願い……」

何故か、俺が悪者の様な気がする??

「この、下衆が!!」

海波先輩に首を絞められ、睨まれる。

「あの、被害者は俺……ぐふっ……」

壁で覗いて、笑っている双葉の姿。

畜生……双葉め!!


「何だ、そんなことか。押し倒せ!相手がOKなら良いんだ!!」

……??

首を絞める手が緩んだと思ったら、海波先輩がニヤニヤ。

景彩も海波先輩の隣でニヤニヤ。俺のプライバシーはどこに??

「ほら、捕まえたぞ。麒麟、遠慮なく殴れ!」

穂波が双葉を連れて来た……様に見えたのは、最初だけだ。

捕まったのは、穂波の方。

「つっかまえた♪穂波、胸……大きくなった?よね??ふかふか……むふふふ……」

「だぁ~~!!離せ!揉むな!!やめ……っ……」

…………。

俺の周りに、マトモな奴がいない。

「麒麟、一番は君だよ??」

双葉、こいつ……

「麒麟、鬼畜なお前が……あぁ、鬼畜だから線引きがいるのか。もう優貴さんに相談でいいんじゃね?」

穂波は双葉の首を絞めながら、俺に笑顔を向ける。

首の絞まる双葉が嬉しそうなのは、気のせいにしておこう。

「でもさ、あの人……くすす……ま、いいんじゃね?行って来い!」

双葉がニヤリ。腹黒……

何か、優貴さんに訊くのが怖いな。

【ガシッ】

「さぁ、おいで。すぐにでも。」

この声って優貴さん??

校内の廊下に、優貴さんが普通に登場した。

俺の意見も聞かず、引きずって行く。

「いやぁ~~、懐かしいよ。思い出すなぁ~~。ヒツジが手を出さないで、我慢していた頃を。ま、お前はアイツと違うから嬉しいよ。うんうん、お前の方が俺は、大好きだ!!俺の仲間~俺の仲間~」

やっぱり、相談相手を間違ってる!!

このままでは、仲間入りをさせられる?

「くくくっ。逃がさないよ~」

ある任務部屋に入る。

半ば強制的に押し込められるようにして。

「さ、手を出して。」

優貴さんは、ポケットをごそごそ。

……これは父さんが理由も教えず、俺に命令した何か……かな??

昔、任務に入ったとき……

『いいか、優貴さんが手を出せと言ったら……絶対に出すな!いいか、死んでもだ!そうだな、お前の相手が中二ぐらいか、お前が高校生になるまでは逃げろ!!』

……これ??

「ん?いいから、いいから~。遠慮するな!な?」

……怖い!!

この、見たことのない笑顔が俺に圧力をかける。

「あの、父が……絶対に、絶っつ対に手を出すなと……」

「ほうぅ~~。ヒツジがねぇ~~。邪魔する気か?あの野郎ぅ~~。ふふっ……さぁ、麒麟……お前のお父さんは、二回受け取ったよ?大丈夫、怖くないよぅ~~??」

怖い!不気味だ!!

【ガシッ】

俺の肩をつかんで、ニッコリ。

「ね、受け取るよね?」

「……あの、その……」

「くすくすくす……君には、必要なものだよぅ~~??」

怖いぃ~~~~!!

首を横に振って、両手を後ろに隠した。

「……いい度胸だね~押し倒そうか?」

【ガチャッ】

「恵!!」

助かったと思ったのに、俺達を見た恵は視線を逸らしてドアを閉めた。

「恵ぅ~~、タスケテェ~~!」


「……結局、受け取ったのか?」

「草樹、怖くて……この掌が開けられないんだ。」

「中身を教えてやろうか?」

俺は首をおもいっきり横に振った。

多分、保健体育で聞いたやつだ。そんな気がする。

「捨てて行ってもいい?」

「クスッ。だ~め~。だって麗彩が見たら、誤解するだろ。下手すると離婚だよ?」

笑えない……やっぱり中身はアレだ。

草樹めぇ~~

「本当は、何を相談するつもり……あぁ、手を出す時期?」

「……はぁ。もういいよ……我慢するね。父さんに出来たんだ。俺だって出来るよ!」

「ふっ。俺は、お前の方が鬼畜な気がするけどね。」

酷いや。

あんなことを聞いたら、我慢だよね?

「どこまでするつもりだったわけ?お前の手にあるものがいらないなら。」

「……いや、ただ……イチャイチャしたい。」

「すればいいだろ?何だ、何を戸惑う?」

医者の草樹に訊いたら、確かだよね。

「……誰にも、言わない?」

「あぁ、俺は言わないよ?」

ニッコリと、天使の笑顔。

「うん。今日さ……蓮美が、その……手を出そうとしたら、せ……せ……」

「せ??何だよ、はっきり言わないと聞こえないぞ?」

「アレが……まだだって言うんだ。」

「「「「ダメじゃん!!」」」」

…………。

「俺は、誰にも言ってないからね。」


盗み聞きの奴らを無視して保健室を出た俺は、移動した中庭で立ち尽くす。

手には、アレが握られたまま。

汗ばんできた。握りしめた拳を見つめるが、中身は消えない。

だよね……優貴さんの視線がずっと付きまとっていた。

逃げても逃げても……ゴミ箱の前に立つと、必ずやって来た。

……何故??何が、そうさせるの??

「麒麟、その手の中に何が入っているのですか?」

気が付けば、蓮美との待ち合わせ時間になっていた。

「……気にしないで。お願いだから、中身については触れないで。」

「ふふっ……」

蓮美は可愛く微笑んだかと思ったら、意外な行動に出た。

俺に飛びつき、手にあったものを取り上げる。

汗ばんだ手が不味かった。

滑って、あっさり……蓮美の両手の中。

…………。

…………。

「麒麟……」

「違うんだ!」

「これは何ですか、開けてもいいですか?」

「駄目だよ!俺が、連歌君に殺されるから。お願い、返して!!」

中身を知られた日には、家にも帰れません!!

「じゃぁ、キス……してくれますか?」

「……うぅ……」

負けたままの俺が、勝てる日は来るのかな??

目を閉じた蓮美の手にあったアレを取り上げ、唇を重ねる。

もうちょっと、触れてもいいかな?

「……もっと、してください。」

「うん!」

だよね?

「……んっ……」

舌……入れてもいいかな??

柔らかい唇に舌を這わすと、蓮美の口が少し開いた。

てことは、いいよね?OKだよね?

「はい、ストップ!!」

【ビクッ】

止めに入った恵の引きつった笑顔に、更なる陰りが見える。

「麒麟、それ……その落とした物は何ですか!!」

落し物?

視線を地面に向けると、取り返したはずのアレが手から離れて落ちている。

「違う……違うんだよ、恵!!」

「恵さん。麒麟は、これを秘密の物だと言っていました。」

「蓮美!!」

「……麒麟、来なさい。今日は、きちんと将来について話し合いましょう。」

「ね、恵さん?これは何ですか?教えてください。とても知りたいのです。」

…………。

アレを両手で持って、蓮美は可愛い笑顔で首を傾げた。

…………。

…………。

「麒麟、鼻血が!?少し待って……あぁ。蓮美ちゃんは、それを渡しなさい!」

「嫌です。教えてくれないなら、お父さんに訊きます。」

「「わぁああぁああ~~!!」」

勝てない……勝てる日が来るとは思えない。

そんな日常も、君と一緒にいられるなら幸せなのかな??

出来たら勝ちたいな、畜生!!

勝負は勝てないまま…………





END

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