弊害が試す?!
小等部の中庭に走る。
授業中だが、いる可能性が高い。
蓮美は不思議だ……その理解しきれない心すべてが欲しい。
手に入れたい。誰にも渡さない。俺だけのものだ。
畜生!!覚悟しろ?容赦しないから!
お気に入りの木陰。奴は、いない。
最近は、力が落ち着いたのか魔方陣が蓮美を守っている。
……触れられるかな?弾かれるだろうか?怖い……悔しい……
魔方陣の淵に座り、そっと手を伸ばすけれど、震えているのが自分で分かるほどだ。
「何、してるの?」
【ビクッ】
気配は無い。けれど背後には奴がいた。
俺は、伸ばした手を握り締める。
「……お前に、関係ない。」
俺は、背を向けたまま答えた。
手は宙で、握り締めた力が強くなる。
「……止めて。触れないで……もう、俺のものだ。」
「奪ってやる!」
掌を広げ、腕を伸ばした。
手は、魔法陣に弾かれることは無かった。嬉しい……
蓮美に手が触れ、自分の体が魔方陣に入る。
愛しさに、蓮美を抱き寄せた。
「くくっ。……ふふ……かかったね。」
……!?
蓮美の体は冷たく、俺の腕の中で消えた。
罠……
「……何を。蓮美は、どこだ!?」
「ふっ。自分の心配をしたらどう?呪いが試すとき、何故……記憶が消えるか分かる?」
まさか、俺の記憶を!?
「止めろ!……」
魔方陣が光を放ち、俺を包んでいく。
消える?ほんの少しの時間の、相手を手に入れた幸せ……
それがすべて消え去る?
「やめろぉ~~!!」
蓮美……君は、知っていたの?
あの、拭ってやれない涙……。君は、また泣いてるの?
もう俺を忘れたのかな?
……最後……君を見ることなく……
記憶のない俺は、他の誰かを選ぶだろうか?それとも俺は君を見つけられるかな……
蓮美side
「サクラ、本当に消したのですか?麒麟の中の私を……私の記憶……」
「うん。彼は、今……人気もあるね。他の誰かを選ぶかもしれない。」
知っています。
私とサクラの様子を見て、大きな声で麒麟を狙うのだと……何人も。
沢山の、綺麗な方……大人な雰囲気の人が、私に確認に来ました。
辛いです……
「サクラ……最後に、麒麟に触れてもいいですか?キスしても……」
「駄目だよ。もうすぐ草樹が来る。……行こう。未来は、こんな……辛い心で成り立つのだから。時の犠牲も……君達の呪いも……おおかみ達の呪いも。すべて、時に触れた魔女と……追い詰めた一族。触れてはいけない秩序……人の、人を想う心は何と大きいのだろう。失った秩序を保つのも、同じ……人への想い。後、少し……俺の役目……俺の相手……」
麒麟Side
高等部の保健室。
目が覚めて、起き上がる。
「……お、気がついたか。麒麟、どうだ調子は?」
草樹が、俺に笑いかける。
「何故、高等部に??俺、何で寝てるの??」
「頭を打って、気絶だ。寝てろ……たんこぶは、出来てない。痛みもないか?吐き気は?」
「……ない。」
ベッドにゆっくり横になる。
…………。
「草樹。嘘は、嫌いだよ?」
「ふっ。勘がいいね……劾、どうする?」
寝返りをうち、草樹の方に向くと劾さんが俺を見つめていた。
先見……最近、用事で会った気がする。けど、話をしていない。
記憶が曖昧だ……
忘れた誰か……何度も聞いた物語……
「草樹。俺……相手の記憶が無いの?心が、淋しい……捜さないといけない?見つかる?他の人を選ぶかな?」
不安が、俺を苦しめる。
「……寝ろ。お前は、本当に麗季に似てるね……」
睡魔が俺を何かに誘う。
もう、呪いは解放された。本当に?この弊害は、何?どうして続くの?
……俺の相手は、どこにいるの?手に入る?……
『オイデ……おいで……未来を守って……』
「あなたは、誰?俺の相手……ですか?」
『選ぶなら……これから出逢うのは、私。あなたは、私の相手?……選んでくれる?』
「君は、一体……誰なの……?」
…………。
「起きろ!麒麟……起きろ!!」
体が揺れる……
「ん……草樹?俺……どれくらい寝たの?」
「一時間だな。麒麟、夢は覚えてるか?」
草樹は急かすような早口。
「相手かも知れない、女の人の声を聞いたよ。選んで……って。俺が、選ぶの??」
草樹の背後から、劾さんが俺に近づき。悲しそうな表情で。
「麒麟……答えは、俺達が与えるわけじゃない。未来のカケラが揃う。……草樹……お前の息子を殺すのは、俺の息子かもしれない……」
「その反対も、あり得る。劾……未来を信じよう。最後の魔女が現れたんだ。」
俺達が護る……未来のカケラ。俺の選択も、その未来を左右する?
「麒麟。自信のないお前に、一つだけ言おう。心は、相手を知っている。反応するのは、相手だけだ。そして、お前の選択では未来は変わらない。必ず、心の反応する相手が現れる。自分の心を信じるんだ……」
彼らの見ている子供達の未来は、変わらない。
俺の選択は、必ず相手を見つける。俺の心に存在する……。
自分の体を抱きしめる。
空いた心が、淋しい……寒い……冷たい……
失った懐かしい温もりが記憶にあるようだ。
心は知っている。呼びたい名が、頭に浮かびそうに感じる。
確かにいる……俺の心に。君は、存在するんだ。
思考からは消えたが、感情はここに!!
「麒麟~~!!」
【ガッ】
ドアが勢いよく開いて、双葉と一葉が飛びついてくる。
「何??」
「「頭打って、おかしくなったって??」」
……このツイン!!
「おかしくなってない!!俺は、マトモだ。」
「……一葉、知ってるか?自分のことマトモだと言う奴は、マトモじゃない奴が多いの。」
「双葉、まさにそれだね。」
失礼なことを……本当に俺を心配しているのか?
二人は何故か、俺に抱きついたまま……離れようとしない。
あぁ、記憶が無いのを聞いたのかな?
「一葉、双葉……ん?景彩……お前まで??」
入り口に、泣いている景彩が見える。
慰める海波先輩が、嬉しそうなのは何故だ??
ま、いい……俺を心配してくれる奴がいるんだ。頑張ろう。
必ず、手に入れてみせる。
「みんな……ありがとう。俺、頑張るね?」
「……さて、俺は穂波のところに行かないと。」
「あぁ、瑠璃とお昼の約束が……」
「景彩、おなかすいた。」
「はいはい、行こうね~。」
「お、都との待ち合わせの時間だ。」
「草樹ぅ~~!!お弁当、食べようぅ~~♪」
…………。
俺の一言を聞いて満足したのか、呆気なく離れて行く。
みんな、大っ嫌いだ!!
俺は、保健室を出て教室に戻ることにした。
寝ていたが、お腹は空くんだよね。
はぁ……俺も相手が欲しいよ。
廊下で、女生徒に引き止められること数回。
上手くかわして、ため息。
お腹が音を出した。……へへっ。恥ずかしい……
「くすっ。お腹が空いてるの?」
「……あぁ。教室で、お弁当を食べないとね。」
「くすくす。一緒に、食べてくれませんか?昨日、急な転校で……お友達がいないの。」
……綺麗な女の子だ。リボンは、同じ一年生。
「……じゃ、ここで待ってて。」
優しさのつもり……何も、考えていなかった。
まさか、君を苦しめるなんて……俺には、恋愛は向かないのかな。
赦してくれるだろうか?俺を好きでいてくれる?
俺は、自分のお気に入りの場所に彼女と向かう。
「ね、名前を訊いてもいい?」
「あぁ、聖城 麒麟だよ。」
「麒麟くんね。私は、桜野 鵠華。みんな、コクって呼んでくれてたの。」
「コク、急な転校だね。」
「えぇ、父の仕事の関係で。寮に入ってるのよ。」
「そう。あ、ここで食べようか。」
俺は、自然に男の大判のハンカチを地面に敷いた。
…………。
あれ、慣れてる??
「ありがとう、親切なのね。」
笑顔に、何故かドキドキする。
雰囲気が、ない記憶を引き出すような気がして……。
「どうかした?」
「うぅん……」
転校生?情報にない……
自然な彼女は、もしかして……俺の相手??とか、考えてしまう。
そっと様子をうかがう。
女の子って、ゆっくり食べるんだな。
それにしても……寮に入っているのに、お弁当?
大抵は、小さな台所で作業し辛いのを理由に……学園の補助もあって、学食の子が多いはずなんだけど。
「それ、自分で作ったの?」
「うん。栄養を取るよう毎日、親が……過保護じゃないよ?」
顔を真っ赤に、視線を逸らした。
「一人なのを心配してるんだね。けど、すぐ安心するんじゃない?おいしそうなお弁当だし。」
コクは、俺を驚いた顔で見て……微笑む。
【ドキッ】
「……ふふ。女性に、そんな優しさを示すと誤解されるわよ?さ、心を奪われないうちに行くわ。麒麟君……今日は、ありがとう。明日は、友達を作って一緒に食べるね。」
「……うん。またね……」
食べてる途中なのに、お弁当を包む。
「これは、洗って返すね。」
俺のハンカチをたたみ……ポケットに入れた。
彼女の仕草に、視線が奪われたまま……後姿を見送った。
……コク。俺の相手かな??
何だろう……足りないような気がするのは、彼女を求める気持ちの所為?
何かが違うのかな?こんなに、心が反応するのに……
長い髪。静かな雰囲気。俺に、心を赦したかのような笑顔……微笑。
ドキドキ……する。
俺は、心臓の辺りに手を置く。愛しさが……俺を酔わすようだ……
「おや、最近モテモテの麒麟ではないか。」
どいつもこいつも、気配なく現れるのは何故だ?
ん?最近も、似たような事があったようなキオクが??
近くの木にもたれ、ため息の穂波。
伏せ気味の視線で何を見ているのかな……
「穂波……双葉は、どうしたんだ?」
「知らない。逃げてるんだ……訊くな。」
視線はそのまま……不機嫌な声が返ってくる。
「あいつ、調子にのりすぎだ。腹黒め……」
あはは……双葉は、腹黒に決定だね。
最近、嬉しそうにしてたからなぁ~~。
「激しいのに、ついていけないのか?」
「……ははっ。鬼畜だね……なぁ、麒麟。どうして姉さんには力があるのかな?一族も気がつく能力だ。母さんは、昔……異世界に魔力の源を置いてきた。どこから来たのかな?」
「力は、何かのために存在する。」
「そうだな。覚えておけ……」
……??
穂波は視線を合わせることなく、静かに背を向け……歩いていく。
覚えておけ??喧嘩腰じゃないよな……??それとも……
「麒麟!!穂波を見なかった??くん……くんくん……さっきまで、ここにいたね!?何をしたの?まさか、手を出したのか!?鬼畜ぅ~~!!」
うるさい……
「あっち……歩いて行った。」
穂波の歩いていった方を指差す。
「あっち??穂波ぃ~~……」
双葉も必死なんだな。
それにしても、相手の匂いなんて辿れるのか……?
……くん……くんくん……匂い??
どれくらいの距離なら、分かるのかな?
俺の相手も、匂いがするかな?
誰かは、試されたとき……匂いが本当に微かで、集中しても驚くほどだと言っていた。
見つかるのかな?試練になるの??
何かが足りなくて、ずっと淋しい。
「……麒麟?背中に、哀愁が漂って……??……いや、おおかみな……邪??」
失礼だね……優貴さんめ……
「ね、優貴さんは呪いが関係ないでしょ?綾さん以外の人に、恋心……むぐっ??」
俺の口を慌てて、両手で押さえた。
「馬鹿!……綾に聞かれたら、殺される!!最近、浮気疑惑で死にかけたんだぞ??」
そう言えば、そんなことも……
「はぁ~子おおかみ達は、大暴れだな。もう、年か……ついていけないよ。」
「話を、逸らさないで!」
「ふっ。お前は羊二に似て、不器用だね。」
「必死なんだ……呪いから解かれた俺達は相手は選べる。この試練に、意味はあるんだろうか?」
「さぁな、俺にはわからない。……相手を選ぶのは、みんな同じだ。麒麟、綾も知ってる……俺は、大人な落ち着いた女性が好きだった。ま、憧れだけどね?それでも、こんなに狂い続ける俺を想像してもいなかった。呪いに思える恋心に、異色さを感じても……これが俺達の気持ちだ。」
優貴さんは、俺の頭に手を置く。
「お前達、おおかみに助けを与えてやれないが、見守ってきた。今まで他の奴らは足掻いて、必ず相手を手に入れたよ。頑張れ……子おおかみ。」
「はい!」
「ふ~~ん。いい事、言うわね。知っていたけど、あなたの口から聞いたのは初めてだわ。奏子さんよね?ふぅう~~ん。ま、今は……私に狂ってる?本当ぅ~~?」
怖い雰囲気の綾さん。
「……やべ……」
不機嫌で去っていく綾さんを、必死で追いかける優貴さん。
…………。
うん、おおかみは関係ない。みんな必死なんだ。
その後のことは知らないけど、次の日……優貴さんは落ち込んでいた。
ま、いいか……。
俺は、中等部へ見回りのついでに匂いを捜した。
そこには該当する香りはしない。
高等部への通路を通り、そこも匂いを捜す。
……いない。これが試練ならば……多分、相手は近くに居るはずなんだ……
まさか、優貴さんのように……父さんのように、相手が小学生……とか!?
え、どこまでOKなの?
「……鬼畜だ。鬼畜なことを考えてる奴がいる。」
俺の後ろに、双葉……心を読みやがったみたいです。
「どう思う?」
読まれたのなら、答えてもらおう。
「それも、鬼畜だね。うぅ~~ん。どうして、優貴さんに訊かないの?」
あ、質問から逃げた。しょうがないかな?
「……昨日、喧嘩の原因を作っちゃったんだよねえぇ~~。」
「そりゃ、当分ダメだね。」
「ふふっ。訊きたいのかしらぁ~?」
綾さん登場。
しかも、ここで不自然に悪目立ち。色気が、駄々漏れてますし?
「お、教えてくれるんですか?」
訊いていいのかドキドキする……
「優貴はねぇ~。キスした。胸に触った。付き合っていないのに……むぐっ……」
優貴さん登場。
「綾……ごめんって。ね、赦してよ……奏子の事は、君に出逢う前の話だよ?ね……愛してる……」
…………。
あの、ここ……学園内。
基本的に、役員の出入りはOKだけど……目立つのは、どうなんですか??
「麒麟、見ちゃダメ駄目。目の毒だよ……この二人の関係は、異色だよ?」
「……うん。行こうか……双葉……」
イチャイチャ仲直り、よかったね……なのか??
双葉は俺の手を引く。
「……?双葉、教室はそっちじゃ……」
「うるさい!小等部に、確認に行け!!可能性を無駄にすんじゃねぇ!」
小等部への道に面した出入り口から、双葉に追い出された。
「……見つけるまで、戻ってくるな!」
そんなムチャクチャな……。
けど、何も言えない立場の双葉が……導いた。
多分?……相手は、小学生??なのかな??
「麒麟君?授業が始まっているのに……どうしたの?」
「……コクこそ、どうして?」
「ふふっ、迷っちゃった。お昼は、ちゃんと友達と食べたのよ?散歩してたら、つい……」
「コク……君は……」
転校生の情報は、なかった。
君なの?双葉はここに俺を連れて来ただけ??
「麒麟君?」
「……俺、用事があるんだ。コクは、教室に戻ったほうがいい……」
「授業が終わるまで、一緒にいちゃ駄目?」
……ドクッ……血がざわめく。
このお願いに、心が締め付けられそうだ。
一緒にいてあげたい……君が、俺の相手なの?
分からない……手を出したら、間違いに気がついても戻れない気がする。
一葉も、双葉も経験した。間違えるわけにはいかない。
「ごめんね。急ぎなんだ……コク……また、会ってくれるかな?」
「……うん。ハンカチも返さないとね。じゃ、私……教室に戻るわ。」
淋しそうな微笑。抱きしめたくなる。
……必死で我慢した。何故かは分からない……
抱きしめたら、何かが分かる気がするのに。
後ろ姿に、長い髪が揺れて……俺のおおかみの部分が欲情する。
君が相手なの?コク……鵠華……
求めてもいいかな?応えてくれる?
俺の対に選んだら……




