いきなり別れ?!
俺と双葉は、草樹くんに連れられ病院を出た。
「……草樹。16年後……彼らに何があるの?」
双葉が、重い口を開いた。
「分からない。劾が言うには、死を覚悟して欲しいと……」
誰かが、死ぬ!?
「……烏鏡か、俺のところに生れる息子……泉麗。それとも時の犠牲……彼なのか。」
「だから、俺が墨……なの?」
「偶然だ。月も、後任を捜している……」
「ね、草樹……呪いの犠牲として、答えて欲しい。弊害は、相手以外を選ぶことが……本当に容易かな?」
「蓮美か。麒麟、蓮美を信じろ。今のお前では、未来はない。何故、失った後のことを考える?……羊二の息子らしくない。その部分は、麗季だな……。蓮美は、今……別の手を取る。奪え、傷つくことを恐れるな。手に入れろ……幸せを見たい。」
「蓮美が別の手を?……どこにいるの!?」
「……捜せ。でも、もう遅い……未来は動き始めた。」
俺は双葉を残し、走った。多分、あの公園だ!
あの木が何か……?
蓮美、君は俺の相手だ。
君をどれだけ信じられるか……。
俺の優しさは、弱さにしたくない。逃げない……必ず、手に入れる。
君に勝つと決めたのだから!
公園で、蓮美が男の手を取ったのが見えた。
「待てよ!お前、その手を離せ!!蓮美も説明して……この、木……がない?!」
冷静な自分が、どこかにいる。
俺は二人に視線を移した。
「……勘がいいね。はじめまして、俺はそこにあった木だ。名は、蓮美のつけたサクラでいいか……よろしくね?」
蓮美の手をつないだ反対の手を、俺に差し出す。
それを払いのけた。
「蓮美、説明をして欲しい。」
「……さようならです。」
家。
帰ると、双葉がご飯を食べていた。
「……お帰り。」
「ただいま……」
「麒麟。あなたも、ご飯を食べなさい。」
母さんは、心配そうに俺を見る。
「座れ。双葉から、話を聞いたよ。話もあるし……」
「うん。」
父さんが、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。
「父さん、母さんのこと……諦めたりしなかった?」
「俺は、しなかった。大きくなるまで……待つつもりだった。」
「どれくらい?」
「……中学生?」
全然、待つ気がないような??
「ま、先は長いと……一生の相手だと言われたからね。ただ、狙う奴が多くて焦ったし。麗季が煽るから……」
「関係ないわよ。我慢が出来なかっただけでしょ?言ったら麒麟の鬼畜が全開になっても困るから、言わないけど。」
「あの、俺……この会話、聞いてていいんでしょうか?」
双葉が、目を輝かせ訊いた。
聞く気……いっぱいだね。
「どうせ、麒麟は自分のことを何も言わないんだろ?聞いとけ!」
「いいのかな……?……そうね、逃げたのは私。羊二を信じられなくて、気持ちが追いつかないで……消えることを望んだ。」
「……俺は、それでタガが外れたんだ。失うぐらいなら、年齢なんて関係ないと。あんなに積極的だったのに、逃げられたら……」
「一生の相手を手に入れたかったの!けど、あんなに真面目そうだったのに……鬼畜だなんて思わないし?」
「鬼畜じゃない!」
この二人は呪いの解放と戦った。
母さんは、父さんを信じたんだ。
「俺は、蓮美を信じることが出来るかな?……俺の前で、魔方陣を使って彼と消えた。力もない俺は、追いかけることも出来ない……情報も、手に入らない。悔しい……」
「双葉、麒麟を頼むぞ。こんな弱った息子は、鬼畜に相応しくない。」
「父さん……」
「そうよ、あなたは鬼畜の子!絶対に、手に入れなさい!」
……あまり嬉しくないな。けど、少しの力になった。
「双葉、俺の支えになって欲しい。俺が、諦めることが無いように……」
「うん♪一葉も、景彩も味方だよ!解放されても、俺たちはおおかみだ!」
“おおかみ”……か。
『さようならです』
蓮美……君が甘えたのは、この時が来るのを知っていたのかな?
ほんの短い時間……勝負にもならなかった。俺の勝った記憶がない。
勝ち逃げか?許せないね……。ふふっ。必ず、勝つまで俺は、勝負を続けるからね!!
サクラ……あの木。魔法の力で、生きているのか?
今日……聖花が、烏鏡に入った。時の役目に、選ばれた『最後の魔女』。
蓮美の手は、サクラが握っている。
君の心に、俺はいるだろうか?君は、俺を一生の相手に選んだと……俺のキスを受けた。
君からのキスは、俺の栄養を奪う為じゃないよね?
俺は、蓮美を失えば一生独り……選べる誰かは、考えない。
選んだ蓮美を手に入れる。どんなことをしても、君を必ず手に入れる。
奪う……俺のだ。さよならなんて、しない!
朝。
任務がなくなったので、普通に登校した。
通学路に女の子が立っている。誰かを待っているのかな?
顔が赤い……あぁ、誰かに告白かな?
「あの、麒麟くん。これ読んで!」
すれ違う俺の手に、無理やり押し付けた。
「え?」
俺かよ!?
「返事はいつでもいいから!」
叫んで、走り去った。
…………。
手には手紙。何故、いきなり?しかも、こんなところで??
その日……通学路にまだ3人、同じような用事で待ち伏せ。
校門では、数名の女の子が周りを囲む。
……??
理解できない。個人ロッカーの前に行くと、ポストの部分に封筒が溢れている。
…………。
何事かな??罠ですか?嫌がらせかな?
「ひゅ~~。モテモテじゃん。」
振り返ると、景彩に抱きついた海波先輩がニヤニヤ。
「なんでイジワル言うの、海波?俺は、麒麟に用事が……」
海波先輩のほうを向いた景彩は、キスをされた。
…………。
あの、ここ……皆が通ってるけど??
「もう!恥ずかしいでしょ?もうぅ~~。」
何て言いながら、嬉しそうなのはどうしてかな……景彩?
海波先輩は、満足そうにニヤリ顔。
「あの、何か用なの?」
今日は、不思議な日だ。
「ふふん。お前に告白が増えたのは、振られたからだ。」
振られた……?!!
「海波!言葉は、選んでって言ったよね?いつも、いつも……酷いよ。傷つけないで……」
「ごめん。景彩……許して?」
「て、どこを触りながら……もう!麒麟と話をするまで、ハウス!!」
……どこかで聞いた言葉だ。
海波先輩は、元気のない犬の耳としっぽが幻覚で見えるぐらい落ち込んだ。
「……はぁ。後で、ね?」
「チュウ……舌、入れてくれる?」
「……バカ。」
この二人が、男女逆に見えるのは俺だけかな??
海波先輩は軽い足取りで、階段のほうへ歩いていく。
「麒麟、蓮美が……男の子と登校してたよ。皆、それを見て……麒麟に告白してるんだ。」
「蓮美と付き合う前に、こんな経験がないよ?……俺、モテないけど??」
俺の疑問に景彩は、ため息。
「麒麟……君は、やっぱりヒツジ君の子だよ。鈍い……」
父さんと一緒で鈍い??鬼畜じゃなく??
ますます、分からない。
「君って、普段は無口。俺たち以外に、微笑まない。近寄り難くて、人気があるんだ。蓮美と仲が良くなって、女性に興味があるんだと……女の子達は、悔しそうにしてた。どうやら、俺たちと仲が良いから……男の子が好きだったりしてと、噂があった。」
俺自身の情報は、皆無。衝撃だ。
「何故、父さんと一緒??」
「ヒツジ君は、麗季さんの周りしか見えてなかった。麗季さんが誘惑に必死だったのは、彼がモテたから。」
「……知らなかった。」
よく結婚できたな~、呪いのおかげかな?何て、思っていた。
「けど、振られたなんて認めないよ。まだ勝負は、決着していないんだから!!」
「ふふ……。頑張ってね。けど、何かあるんでしょ?」
「あぁ、多分……未来にも関係する。放課後、時間が欲しい。」
「うん。頼ってくれると、嬉しいんだけど?」
「……ははっ。景彩……ありがとう。」
『きゃぁああぁ~~。笑った顔が、可愛いィ~~』
いつの間にか、遠巻きに女の子の群れ。
「……景彩。俺の偽装彼女……どう?」
「嵐君じゃないんだから。ちゃんと、蓮美を手に入れなさい!」
「そうだね。」
景彩を学年の分かれる廊下で見送る。
壁から、海波先輩が飛び出して抱きついた。
三年のクラスは、ここの廊下を使わないよね??
いいな~~。イチャイチャしたい……これから、いっぱいするつもりだったのに。
「麒麟、女の子たちが見物してるよ?」
【ズシッ】
俺の背中に飛びついたのは、双葉だ。
「……俺、モテタらしい。」
「今更だね。本気で言ってる?」
俺のとぼけた顔に、苦笑いの双葉。
「ふっ……麒麟、情報はお前の得意分野だろ?さ、恵が呼んでる。未来のためじゃなく、お前のために頑張ろうな!」
「ありがとう。双葉、大好きだ!!」
抱き返そうとした俺を避けた。
「……双葉?」
「そんなことするから、BL疑惑が生まれるんだよ!」
自分は俺に抱きついてきたくせに。
「俺には、穂波の温もりで……くふふ。くすくす……」
何かいいことがあったのかな?ご機嫌だ……
ちょっと、イラッ!!
【チュゥ~~】
油断した双葉のあごを持ち上げ、キスをしてやった。
「けっ。ざまあみろ♪」
目が点で、ワナワナ……震えだす。
「……こ、この!鬼畜がぁあ~~!!」
今度、蓮美とキスできるのはいつかな?
いや、出会ったらチュウだ!舌も入れてやる!!
畜生、失いたくない……俺のだ!
任務室。
「麒麟……一体、何をしたのですか?」
部屋へ入るなり、恵が俺の両肩に手を置いて揺する。
「何を?誰に??」
俺が分からないでいると、恵は視線を逸らし……ゆっくり手を退けた。
「……恵、まさか……俺の何を疑ったの??」
「こほん。いや、気のせいならいいのです。さ、話を……」
「め~ぐ~むぅ~~??」
「……ごめんなさい。すみません!!」
どうやら、蓮美に愛想を尽かされたのだと思ったらしい。
酷いよ!!鬼畜が原因じゃないもん!
俺の鬼畜なんか、まだ……蓮美に勝てたことないし。
いじけた俺に、双葉が俺の肩に触れる。
「……ふむ。恵……チュウ以上は無い模様です。しかも、どS に負けっぱなしだそうです。」
がぁあ~~ん。心を読まれた……
追い討ちだ!!
「二人とも……嫌い……」
「……双葉、その追い討ちは止めなさい。」
「ふん?……ほぅ~~??……くふふ……」
「な!?……何を、読んだのです?」
「ん?恵が、どうしても知られたくないこと♪……そっか、相手は中三か。恵は高一の時ね~。俺たちと変わらないよ?」
「くっ……そんなことは……」
俺を無視して、楽しそうな会話。
「……恵のエッチ……俺の方がマシだよ?」
「「それは、無い。」」
二人の声が重なる。
…………。
「鬼畜になるには、どうしたらいいのかな?父さん……俺、鬼畜への道は遠そうだよ……」
「「十分、鬼畜だよ?」」
…………。
この二人……畜生!!
「恵。呼んだ目的は何?情報があるんでしょ?」
今は、蓮美を手に入れることが優先だ。
「……恵、面白くないね。」
「そうだね。……淋しいよ。うんうん……」
面白がっていたのか??
「さて、コミュニケーションはここまで。本題に行こう!」
「はい!」
……元気だね。本題までが、きついよ。
「蓮美と一緒にいるのは、例の木だね。学園は呪いの解放に協力する決定で、彼に生徒として通う許可を出した。都は、木のあった場所に行き……入り口だと断定。閉じられた場所……発祥の地。すべての始まりだ……。」
「それを封印したまま、人の姿なの?」
「いや、閉じたのは最近だ。けど、あの木は……遠い過去の異世界。閉じた魔女が、別にいる。彼は、最後の魔女を手に入れる目的だ。」
「……烏鏡……なの?じゃぁ、蓮美は!?何のために??」
「分からない。ただ、今まで弊害が……呪いから解放された者たちを試し続ける。本当の呪いの源は、別なんだろう……。」
「蓮美に、会いに行くよ!」
「俺も行く!」
俺と双葉は、入り口に向かう。
【ガチャ】【ポヨ……ン】
ドアが勢い良く引かれ、俺は何か柔らかいものにぶつかった。
「……この、下衆が。」
俺の頭に、手が置かれ……髪がぐしゃぐしゃ。
そして、頭が後ろに押される。
「……み……海波せんぱ……」
顔が、鬼のように怖い。
「こら!海波。大人気ないよぉ?」
景彩……
助かったと思ったのは、一瞬だ。
「ふふ……ね、麒麟。その顔……ちょっと、見せて?」
俺は、後ろに飛び退き……後ろに勢い良く下がり続ける。
恵にぶつかり、その後ろに隠れた。
「……あの、景彩?その……」
今までにない殺気を身にまとった景彩から、女子力が消えた。
「……ふふ。ね、海波の胸……触れたよね?触れた……だろ。匂いも付いてる。くす……」
顔が、可愛い顔が!!?!
「恵、俺……命が無いかも!!助けて!!」
「……無理です!諦めなさい。さ、潔く。」
後ろに隠れた俺をグイグイと、前に押し出す。
どうやら、恵も怖いらしい。
「お前ら、楽しそうでいいな。」
「優貴さん!!お願い、助けて!!」
景彩の後ろから来た優貴さんが、景彩の肩に触れた。
「誰に、触ってんだ!!」
今度は、海波先輩の怒りの矛先が向く……
…………。
しばらく、お待ち下さい。
「はい、正座ですよ~~。」
恵の顔にも傷で、正座の一員にいる。
今日の、お叱りは荊さんだ。
「あのね、いい?ここは、何のためにあるの?恵。」
「……人を護る為です。」
「それが、内輪でこの騒動。」
「あの、荊さん?どうして、俺まで正座なの??」
双葉が泣き落とし。
「黙れ、この腹黒が!あなたを赦した覚えはない。」
「……ちっ。」
双葉の舌打ちに、荊さんが頭を叩いた。
「全く……いい?普通の生活も、特別なの。時間は、戻ってこない。失ったら、それで終わりなの。麒麟、あなたの相手……いえ、今すぐ行きなさい。しっかり見て、自分で立ち向かいなさい!」
「……はい。」
「じゃ、私も……」
「俺たちは……」
俺に続いて、立とうとする海波先輩と優貴さん。
「お座り!まだよ!!」
床に、恵・双葉・景彩・海波先輩・優貴さん・(巻き込まれた)草樹が正座で、荊さんに怒られている。
ドアの外に、綾さんが立って笑っていた。
「麒麟、色気に勝てるのは色気よ。ふふ……男を上げなさい。」
そう言う綾さんの色気に、クラクラする。
蓮美の……あの色気に、色気で勝つ??意味が分からない……
どうやるの??鬼畜じゃ駄目ですか??




