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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
9おおかみで勝負

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いきなり別れ?!


俺と双葉は、草樹くんに連れられ病院を出た。

「……草樹。16年後……彼らに何があるの?」

双葉が、重い口を開いた。

「分からない。劾が言うには、死を覚悟して欲しいと……」

誰かが、死ぬ!?

「……烏鏡か、俺のところに生れる息子……泉麗せんり。それとも時の犠牲……彼なのか。」

「だから、俺が墨……なの?」

「偶然だ。月も、後任を捜している……」

「ね、草樹……呪いの犠牲として、答えて欲しい。弊害は、相手以外を選ぶことが……本当に容易かな?」

「蓮美か。麒麟、蓮美を信じろ。今のお前では、未来はない。何故、失った後のことを考える?……羊二の息子らしくない。その部分は、麗季だな……。蓮美は、今……別の手を取る。奪え、傷つくことを恐れるな。手に入れろ……幸せを見たい。」

「蓮美が別の手を?……どこにいるの!?」

「……捜せ。でも、もう遅い……未来は動き始めた。」


俺は双葉を残し、走った。多分、あの公園だ!

あの木が何か……?

蓮美、君は俺の相手だ。

君をどれだけ信じられるか……。

俺の優しさは、弱さにしたくない。逃げない……必ず、手に入れる。

君に勝つと決めたのだから!

公園で、蓮美が男の手を取ったのが見えた。

「待てよ!お前、その手を離せ!!蓮美も説明して……この、木……がない?!」

冷静な自分が、どこかにいる。

俺は二人に視線を移した。

「……勘がいいね。はじめまして、俺はそこにあった木だ。名は、蓮美のつけたサクラでいいか……よろしくね?」

蓮美の手をつないだ反対の手を、俺に差し出す。

それを払いのけた。

「蓮美、説明をして欲しい。」

「……さようならです。」


家。

帰ると、双葉がご飯を食べていた。

「……お帰り。」

「ただいま……」

「麒麟。あなたも、ご飯を食べなさい。」

母さんは、心配そうに俺を見る。

「座れ。双葉から、話を聞いたよ。話もあるし……」

「うん。」

父さんが、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「父さん、母さんのこと……諦めたりしなかった?」

「俺は、しなかった。大きくなるまで……待つつもりだった。」

「どれくらい?」

「……中学生?」

全然、待つ気がないような??

「ま、先は長いと……一生の相手だと言われたからね。ただ、狙う奴が多くて焦ったし。麗季が煽るから……」

「関係ないわよ。我慢が出来なかっただけでしょ?言ったら麒麟の鬼畜が全開になっても困るから、言わないけど。」

「あの、俺……この会話、聞いてていいんでしょうか?」

双葉が、目を輝かせ訊いた。

聞く気……いっぱいだね。

「どうせ、麒麟は自分のことを何も言わないんだろ?聞いとけ!」

「いいのかな……?……そうね、逃げたのは私。羊二を信じられなくて、気持ちが追いつかないで……消えることを望んだ。」

「……俺は、それでタガが外れたんだ。失うぐらいなら、年齢なんて関係ないと。あんなに積極的だったのに、逃げられたら……」

「一生の相手を手に入れたかったの!けど、あんなに真面目そうだったのに……鬼畜だなんて思わないし?」

「鬼畜じゃない!」

この二人は呪いの解放と戦った。

母さんは、父さんを信じたんだ。

「俺は、蓮美を信じることが出来るかな?……俺の前で、魔方陣を使って彼と消えた。力もない俺は、追いかけることも出来ない……情報も、手に入らない。悔しい……」

「双葉、麒麟を頼むぞ。こんな弱った息子は、鬼畜に相応しくない。」

「父さん……」

「そうよ、あなたは鬼畜の子!絶対に、手に入れなさい!」

……あまり嬉しくないな。けど、少しの力になった。

「双葉、俺の支えになって欲しい。俺が、諦めることが無いように……」

「うん♪一葉も、景彩も味方だよ!解放されても、俺たちはおおかみだ!」

“おおかみ”……か。

『さようならです』

蓮美……君が甘えたのは、この時が来るのを知っていたのかな?

ほんの短い時間……勝負にもならなかった。俺の勝った記憶がない。

勝ち逃げか?許せないね……。ふふっ。必ず、勝つまで俺は、勝負を続けるからね!!

サクラ……あの木。魔法の力で、生きているのか?

今日……聖花が、烏鏡に入った。時の役目に、選ばれた『最後の魔女』。

蓮美の手は、サクラが握っている。

君の心に、俺はいるだろうか?君は、俺を一生の相手に選んだと……俺のキスを受けた。

君からのキスは、俺の栄養を奪う為じゃないよね?

俺は、蓮美を失えば一生独り……選べる誰かは、考えない。

選んだ蓮美を手に入れる。どんなことをしても、君を必ず手に入れる。

奪う……俺のだ。さよならなんて、しない!


朝。

任務がなくなったので、普通に登校した。

通学路に女の子が立っている。誰かを待っているのかな?

顔が赤い……あぁ、誰かに告白かな?

「あの、麒麟くん。これ読んで!」

すれ違う俺の手に、無理やり押し付けた。

「え?」

俺かよ!?

「返事はいつでもいいから!」

叫んで、走り去った。

…………。

手には手紙。何故、いきなり?しかも、こんなところで??

その日……通学路にまだ3人、同じような用事で待ち伏せ。

校門では、数名の女の子が周りを囲む。

……??

理解できない。個人ロッカーの前に行くと、ポストの部分に封筒が溢れている。

…………。

何事かな??罠ですか?嫌がらせかな?

「ひゅ~~。モテモテじゃん。」

振り返ると、景彩に抱きついた海波先輩がニヤニヤ。

「なんでイジワル言うの、海波?俺は、麒麟に用事が……」

海波先輩のほうを向いた景彩は、キスをされた。

…………。

あの、ここ……皆が通ってるけど??

「もう!恥ずかしいでしょ?もうぅ~~。」

何て言いながら、嬉しそうなのはどうしてかな……景彩?

海波先輩は、満足そうにニヤリ顔。

「あの、何か用なの?」

今日は、不思議な日だ。

「ふふん。お前に告白が増えたのは、振られたからだ。」

振られた……?!!

「海波!言葉は、選んでって言ったよね?いつも、いつも……酷いよ。傷つけないで……」

「ごめん。景彩……許して?」

「て、どこを触りながら……もう!麒麟と話をするまで、ハウス!!」

……どこかで聞いた言葉だ。

海波先輩は、元気のない犬の耳としっぽが幻覚で見えるぐらい落ち込んだ。

「……はぁ。後で、ね?」

「チュウ……舌、入れてくれる?」

「……バカ。」

この二人が、男女逆に見えるのは俺だけかな??

海波先輩は軽い足取りで、階段のほうへ歩いていく。

「麒麟、蓮美が……男の子と登校してたよ。皆、それを見て……麒麟に告白してるんだ。」

「蓮美と付き合う前に、こんな経験がないよ?……俺、モテないけど??」

俺の疑問に景彩は、ため息。

「麒麟……君は、やっぱりヒツジ君の子だよ。鈍い……」

父さんと一緒で鈍い??鬼畜じゃなく??

ますます、分からない。

「君って、普段は無口。俺たち以外に、微笑まない。近寄り難くて、人気があるんだ。蓮美と仲が良くなって、女性に興味があるんだと……女の子達は、悔しそうにしてた。どうやら、俺たちと仲が良いから……男の子が好きだったりしてと、噂があった。」

俺自身の情報は、皆無。衝撃だ。

「何故、父さんと一緒??」

「ヒツジ君は、麗季さんの周りしか見えてなかった。麗季さんが誘惑に必死だったのは、彼がモテたから。」

「……知らなかった。」

よく結婚できたな~、呪いのおかげかな?何て、思っていた。

「けど、振られたなんて認めないよ。まだ勝負は、決着していないんだから!!」

「ふふ……。頑張ってね。けど、何かあるんでしょ?」

「あぁ、多分……未来にも関係する。放課後、時間が欲しい。」

「うん。頼ってくれると、嬉しいんだけど?」

「……ははっ。景彩……ありがとう。」

『きゃぁああぁ~~。笑った顔が、可愛いィ~~』

いつの間にか、遠巻きに女の子の群れ。

「……景彩。俺の偽装彼女……どう?」

「嵐君じゃないんだから。ちゃんと、蓮美を手に入れなさい!」

「そうだね。」

景彩を学年の分かれる廊下で見送る。

壁から、海波先輩が飛び出して抱きついた。

三年のクラスは、ここの廊下を使わないよね??

いいな~~。イチャイチャしたい……これから、いっぱいするつもりだったのに。

「麒麟、女の子たちが見物してるよ?」

【ズシッ】

俺の背中に飛びついたのは、双葉だ。

「……俺、モテタらしい。」

「今更だね。本気で言ってる?」

俺のとぼけた顔に、苦笑いの双葉。

「ふっ……麒麟、情報はお前の得意分野だろ?さ、恵が呼んでる。未来のためじゃなく、お前のために頑張ろうな!」

「ありがとう。双葉、大好きだ!!」

抱き返そうとした俺を避けた。

「……双葉?」

「そんなことするから、BL疑惑が生まれるんだよ!」

自分は俺に抱きついてきたくせに。

「俺には、穂波の温もりで……くふふ。くすくす……」

何かいいことがあったのかな?ご機嫌だ……

ちょっと、イラッ!!

【チュゥ~~】

油断した双葉のあごを持ち上げ、キスをしてやった。

「けっ。ざまあみろ♪」

目が点で、ワナワナ……震えだす。

「……こ、この!鬼畜がぁあ~~!!」

今度、蓮美とキスできるのはいつかな?

いや、出会ったらチュウだ!舌も入れてやる!!

畜生、失いたくない……俺のだ!


任務室。

「麒麟……一体、何をしたのですか?」

部屋へ入るなり、恵が俺の両肩に手を置いて揺する。

「何を?誰に??」

俺が分からないでいると、恵は視線を逸らし……ゆっくり手を退けた。

「……恵、まさか……俺の何を疑ったの??」

「こほん。いや、気のせいならいいのです。さ、話を……」

「め~ぐ~むぅ~~??」

「……ごめんなさい。すみません!!」

どうやら、蓮美に愛想を尽かされたのだと思ったらしい。

酷いよ!!鬼畜が原因じゃないもん!

俺の鬼畜なんか、まだ……蓮美に勝てたことないし。

いじけた俺に、双葉が俺の肩に触れる。

「……ふむ。恵……チュウ以上は無い模様です。しかも、どS に負けっぱなしだそうです。」

がぁあ~~ん。心を読まれた……

追い討ちだ!!

「二人とも……嫌い……」

「……双葉、その追い討ちは止めなさい。」

「ふん?……ほぅ~~??……くふふ……」

「な!?……何を、読んだのです?」

「ん?恵が、どうしても知られたくないこと♪……そっか、相手は中三か。恵は高一の時ね~。俺たちと変わらないよ?」

「くっ……そんなことは……」

俺を無視して、楽しそうな会話。

「……恵のエッチ……俺の方がマシだよ?」

「「それは、無い。」」

二人の声が重なる。

…………。

「鬼畜になるには、どうしたらいいのかな?父さん……俺、鬼畜への道は遠そうだよ……」

「「十分、鬼畜だよ?」」

…………。

この二人……畜生!!

「恵。呼んだ目的は何?情報があるんでしょ?」

今は、蓮美を手に入れることが優先だ。

「……恵、面白くないね。」

「そうだね。……淋しいよ。うんうん……」

面白がっていたのか??

「さて、コミュニケーションはここまで。本題に行こう!」

「はい!」

……元気だね。本題までが、きついよ。

「蓮美と一緒にいるのは、例の木だね。学園は呪いの解放に協力する決定で、彼に生徒として通う許可を出した。都は、木のあった場所に行き……入り口だと断定。閉じられた場所……発祥の地。すべての始まりだ……。」

「それを封印したまま、人の姿なの?」

「いや、閉じたのは最近だ。けど、あの木は……遠い過去の異世界。閉じた魔女が、別にいる。彼は、最後の魔女を手に入れる目的だ。」

「……烏鏡……なの?じゃぁ、蓮美は!?何のために??」

「分からない。ただ、今まで弊害が……呪いから解放された者たちを試し続ける。本当の呪いの源は、別なんだろう……。」

「蓮美に、会いに行くよ!」

「俺も行く!」

俺と双葉は、入り口に向かう。

【ガチャ】【ポヨ……ン】

ドアが勢い良く引かれ、俺は何か柔らかいものにぶつかった。

「……この、下衆が。」

俺の頭に、手が置かれ……髪がぐしゃぐしゃ。

そして、頭が後ろに押される。

「……み……海波せんぱ……」

顔が、鬼のように怖い。

「こら!海波。大人気ないよぉ?」

景彩……

助かったと思ったのは、一瞬だ。

「ふふ……ね、麒麟。その顔……ちょっと、見せて?」

俺は、後ろに飛び退き……後ろに勢い良く下がり続ける。

恵にぶつかり、その後ろに隠れた。

「……あの、景彩?その……」

今までにない殺気を身にまとった景彩から、女子力が消えた。

「……ふふ。ね、海波の胸……触れたよね?触れた……だろ。匂いも付いてる。くす……」

顔が、可愛い顔が!!?!

「恵、俺……命が無いかも!!助けて!!」

「……無理です!諦めなさい。さ、潔く。」

後ろに隠れた俺をグイグイと、前に押し出す。

どうやら、恵も怖いらしい。

「お前ら、楽しそうでいいな。」

「優貴さん!!お願い、助けて!!」

景彩の後ろから来た優貴さんが、景彩の肩に触れた。

「誰に、触ってんだ!!」

今度は、海波先輩の怒りの矛先が向く……

…………。


しばらく、お待ち下さい。


「はい、正座ですよ~~。」

恵の顔にも傷で、正座の一員にいる。

今日の、お叱りは荊さんだ。

「あのね、いい?ここは、何のためにあるの?恵。」

「……人を護る為です。」

「それが、内輪でこの騒動。」

「あの、荊さん?どうして、俺まで正座なの??」

双葉が泣き落とし。

「黙れ、この腹黒が!あなたを赦した覚えはない。」

「……ちっ。」

双葉の舌打ちに、荊さんが頭を叩いた。

「全く……いい?普通の生活も、特別なの。時間は、戻ってこない。失ったら、それで終わりなの。麒麟、あなたの相手……いえ、今すぐ行きなさい。しっかり見て、自分で立ち向かいなさい!」

「……はい。」

「じゃ、私も……」

「俺たちは……」

俺に続いて、立とうとする海波先輩と優貴さん。

「お座り!まだよ!!」

床に、恵・双葉・景彩・海波先輩・優貴さん・(巻き込まれた)草樹が正座で、荊さんに怒られている。

ドアの外に、綾さんが立って笑っていた。

「麒麟、色気に勝てるのは色気よ。ふふ……男を上げなさい。」

そう言う綾さんの色気に、クラクラする。

蓮美の……あの色気に、色気で勝つ??意味が分からない……

どうやるの??鬼畜じゃ駄目ですか??




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