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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
9おおかみで勝負

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手が出せない?


他の役員に呼ばれた恵は、俺に何度も手を出すなと念押しして部屋を出た。

…………。

俺、そんなに……鬼畜ですか??

離れた所から、寝ている蓮美を起す。

「お~い。蓮美、帰るぞ?起きろ!……襲うぞ?」

最後の一言は、小さな声で言ってみた。

「くすっ……いいですよ?」

蓮美は起きていたのか、長いすに寝返りをうち、可愛い笑顔を向ける。

やばい!!このままでは、まずい……

「嘘だよ。さ、起きたのなら帰るよ?」

俺は席から離れ、入り口に向かい背を向けた。

「……起して?」

お誘いの甘えた声。

背中に、遠くの色気を感じるのは……どうしてなんだ!?

「駄目です。ここまで来たら、手をつないで帰ってあげる。」

手をつなぐので、止めるのだ!

「意地悪です、麒麟。私は歩けません、抱っこしてください!」

可愛いお願いに、背を向けたまま顔が緩む。

「蓮美、とりあえず……この部屋は駄目なの。さ、行くよ?」

「……ぐすっ……うっ…………」

泣いてる??

思わず、振り返ってしまった。

「……ね、抱っこ……大人しく帰るから。ねぇ?お願いです。」

涙目に、首をかしげ……

動いたからなのか、わざとなのか……イスに足を乗せ、スカートが……

あぁ!!もう!!

俺は蓮美を抱きかかえて、その部屋を出た。

そう、俺の負け!

蓮美は嬉しそうに抱きついて、頬を俺の肩にすり寄せる。

その度に髪が揺れて……俺の頬をくすぐり、いい匂いに我を忘れそうになる。

「蓮美……卑怯だよ。勝負にならない……俺が不利だよ。」

「はい、だから甘えます。麒麟……ごめんね……」

ごめん……??

蓮美の表情は見えない。

「蓮美……」

「この、子鬼畜が!!」

……?

低い声に、足が止まる。

「お父さん、お帰りなさい。」

振り返ると、仕事帰りの連歌くん。

「あ、こんにちは。ほら、蓮美……下りて?」

「嫌です。お父さん、麒麟は温かいですよ?熱いときは、ドキドキします。」

?!!

「違……蓮美、またそんな誤解のある言い方して!?連歌く……違うよ!!」

「黙れ!この鬼畜め!!」

連歌くんは、俺の腕から蓮美を奪う。

確かに、温もりが……消えて淋しくなる。

「蓮美、いいですか?鬼畜は、容赦がありません。体力のない蓮美は……」

「お父さん、お母さんはいつも泣いています。」

「……こほん。じゃ、麒麟。またな!」

…………。

そそくさと、連歌くんは逃げた。

少し動揺しているのかな??

蓮美は、連歌くんの肩にのり……笑顔で手を振っている。

片手を挙げ、笑顔を返すが……勝てない現実に、風が冷たく感じる。

「あぁ~あ、連歌くん。墓穴掘ったね♪」

「……双葉、いつからいたの?」

「さっき。恵が、とぉ~~っても心配してから?来てみたんだ。ふぅ~~ん。くすっ。」

……何、そのくすっは??

「読むなよ?」

「面白くないな♪警戒しすぎ……ん?あぁ!勝てないのは、今だけだよ。」

「ちょっと、何を読んだのかな??てか、今だけって……本当に??」

希望を見たようで、双葉に詰め寄った。

「近い、近いよ!麒麟……必死なの??」

「うっ。必死にもなるよ!手が出せない……あぁ、大きくなったら出し放題か!」

「……麒麟、そこが……鬼畜なんだよ。」

テンションを上げて、突き落とすのが双葉だ。

「双葉は、S だね。」

「あぁ、父さんの本来の部分だね。ひいおじいちゃんのトラウマがなければ……」

「何、それ……」

「うん?いや、一葉も不器用だからね。ひいおじいちゃんに怖い目に遭わされたのさ。俺は、この性格で交わしたけどね♪」

「……優しさは、もともとじゃないのか?」

「うん!女性には、優しく……って、ね♪」

学園への道を戻りながら、そんな会話をした。

おおかみ達は相手を手に入れるのに必死だ。相手の気持ちさえ、無視しても……

その道中、役員の一人が伝言を伝えた。

俺たち役員は任務に携帯電話を使わない。

特殊な装置もあるが、基本は優秀な信頼できる人で、やり取りをする。

記憶には残すが、紙や残る形は避ける。盗聴や盗難の可能性を防ぐのだ。

「月から。麻生学園の附属病院へ向かって欲しいとのこと。」

「ありがとう。」

嫌な予感がする。

双葉と二人で、病院に走った。




蓮美side。


お父さんと、家に着きました。

「あら、蓮美……怪我でもしたの?」

抱きかかえられた私を見て、お母さんが訊きました。

「麒麟の鬼畜に、抱っこなんて危険です!」

「……ね、連歌。知ってる?遊んできた男には、娘が生れるんですって。」

「俺は、遊んでなんかいないでしょう?」

「……私で、十分……遊んでいるわよ?」

「楽しそうです。私も仲間に入れてください。」

「小鹿、娘の前で!!また、恥をかきます。やめてください。」

「珍しい……ふふっ。その鬼畜な麒麟君に、何か気まずいことでも?」

「……別に、何もありません。」

「くすくす……。娘のことで、悩めば良いわ。護るのに、必死になってね?可愛い姿は、いつ以来かしら?」

「ん?小鹿……慰めてくれるのですか?」

「いいわよ。頭を撫でなでしてあげようか?」

父は、私を抱えたままお母さんに近づきました。

後ろ向きなので分かりませんが、多分……チュウです。

…………。

長いですね。

「お父さん、下ろしてください。」

「……はぁ……あぁ、忘れてた。……蓮美、麒麟には気をつけるのですよ?」

「嫌です♪」

【チクッ……】

ん?頭が痛い……??

【ズキズキ……】

痛みます……ヨンデ……いるのでしょう。

「お父さん、お母さん。私は少し外に出ます。」

「蓮美?……すぐに帰りなさいよ。」

「はい……」

呼んでいます。サクラ……公園です。

時です……時が、来ました。

采景くん……苺愛さん……16年……悲しい。辛い……

犠牲の人たち……私には見えない。ただ、サクラを解放するだけ……

サクラ……あなたは、本当に自由をくれる?

あなたの手を取ったら、麒麟と……さようなら……なの?

もう少し、時間を……あなたの欲しいのは、私の手ではないのですから。

麒麟……勝負に、ならないのです。

今、あなたの心を手に入れたように思いたい。必死で、あなたを求める。

もう少し早く出逢っていれば……いいえ、弊害がこの時期を選んだなら……

麒麟、大好きです。私を忘れてください。

一緒にいた短い時間に、幸せを感じても良いでしょうか?

本当は、もっと甘えたかったです……


公園。

桜が、満開になり目の前で一気に散った。

「……サクラ?」

「蓮美……『緑』……と、唱えてください。」

解放の時ですね……。

夢に観たのは、ほんの少しです。

ここから、私の役目が……“始まる”のです。

「 『緑』 」

魔方陣が広がり、サクラを包む。

木は、新芽が出て一気に緑色の葉が青々と茂る。

「巻き込んだ犠牲たち。彼らと、私たちの償いは出来ただろうか?」

生れる草樹くんの息子に、答えが問われる。

……草樹くん。どうして、あなたにすべてが臨むのか。

「時まで、魔女のあなたを試す。犠牲の半身の家系。さぁ、蓮美。手を取って……」

呪いの犠牲です。

「はい。サクラ、私の手に希望を見出せるなら。ただ、心は……あげません。」

「残念だ。でも彼が、君を信じられないときは心をもらうね?」

「……麒麟……」




麒麟side。


麻生学園の附属病院。

病院に入ると、采景君がいた。

「……采景君、どこか悪いの?」

穏やかに笑う采景君は、綺麗な男の人。

「いや、苺愛の定期健診だ。」

それにしては、元気が無い。

「お、麒麟に双葉。お前たち、任務はどうした?」

草樹くんが、子供を抱いて登場した。

「……隠し子……?双葉、俺はどうすればいいんだ。」

「隠し子……そうだね、麒麟。これは麗彩ちゃんに、報告だ!!」

「お前ら、質問に答えろ!」

大人気ない草樹くんからゲンコツを受けた俺たちは、恵からの指示だと答える。

「采景……抱いて行くか?」

「あぁ、烏鏡うきょうおいで。お母さんのところに、行こうな。」

「あい!」

とても綺麗な顔だ。どちらに似ても綺麗系だね。

烏鏡は、采景君に手を伸ばした。

「パパ、あかちゃ……元気?」

「……確かめような……」

草樹は、俺たちに小さな声で言う。

「ついて来い。」

ある個室のドアの前。采景君がノックする。

部屋から出てきた苺愛さんも、元気が無い。お腹に居るのは、未来のカケラ……

「烏鏡……おいで、お腹に触って。赤ちゃんと、お話ししましょうね。皆、入って。この部屋、学園が準備してくれたの……」

部屋は、皆が入っても十分広かった。

苺愛さんは、イスに座り……烏鏡の手をお腹に当てる。

「時が来た……」

床に魔方陣が広がる。

「……七匹目の犠牲。呪いの犠牲。時の犠牲。すべての解放を、願う……『最後の魔女』16年の眠りに……時を犠牲にして、『緑』を待つ。その名――……」

苺愛さんのお腹の中から、赤い花の形をした宝石が現れた。

「聖花よ。願いは叶うだろうか……」

『目的を逸しなければ』

その声は宝石から聞こえるのか……不思議な光景に戸惑う。

空中に浮かんでいた宝石が、烏鏡の右手に触れる。

「……あつい!いたいぃ~~うぅ~~あぁあああ~~ん」

痛みに、暴れる体を苺愛さんが、押さえる。

力尽きた烏鏡が、意識を失ったと同時……魔方陣が消えた。

……これは、一体……これから、何が起こるのだろうか。

俺たちは、この未来を護れるのだろうか……いや、見守ることが出来るのか?

使命……




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