ツインはおおかみ!!
数日の入院が決まった一葉。
瑠璃は付き添いで、何度か授業を抜けた。
瞳は、転校……薬の密売グループに係わっていた。
単なる暇つぶしだったと言う……そのターゲットになってしまったのが一葉。
男のグループは容赦なく、痛い目をみたようで。
これ以降、瑠璃の周りに男が近づくことはなかった。
優貴さんたちが、目を光らせていたから。
俺は、あまり役に立てなかったな……悔しい……
1一葉のいない生活。半身がないみたいだ……。
それぞれの道を、これから歩む。分かっているけど、こんな形で……思い知るなんて。
ボスの配慮で任務に向かうが、心は晴れない。
学校に戻っても授業どころじゃない。
緑の多い静かな裏庭を歩く。
木の下に座って空を眺め、目を閉じた。
一葉……君は、手に入れた。瞳も認めた、委員長への想い……
視線を感じる。匂いもする……穂波が近くで俺を見ているのか?
君の心に俺はいるのかな。同情?それとも、いつものように見下すのか?
いや、何かが違う気がする。
穂波、その男前な外見とは違う……内面の可愛いらしさ。
そして触れたときの反応。男に慣れていない……
当然か、中学一年。菫さんのときの雰囲気で、勝手なイメージが俺にあった……
俺はいつも置いてきぼりを感じた。
穂波の気配が近づき、俺の横に座る。
俺は、目を閉じたまま……様子をうかがっていた。
「……バカだな……」
あれ、やっぱり俺は情けない男??
俺の肩に手を乗せ、傾かせる。
ん??俺の体が、穂波の体にもたれ……頬が穂波の肩に乗った。
【ドキッ……】
動悸が……心拍数が!!
「……ふっ……起きてるのか?」
俺は、目を閉じたまま動かなかった。
「たぬきめ。……いいぞ、そのままで。覚悟しろ、高いからな?」
ふふっと、俺の髪を撫でた。
【きゅぅうぅ~~ん】
愛しい……抱きしめたい……襲いたい。
けれど、この甘えるのを逃したら……二度とない気がする。
俺は、その肩に頬をすり寄せた。
「……可愛い奴だな。」
俺の頭に、穂波も頬をすり寄せる。
幸せだ……
「双葉、私は……他の人と付き合うことにする。お前の相手には、ならない。」
どれくらいの時間を味わったのか、その言葉に体が冷たくなったように感じる。
俺は目を開け、穂波の肩から顔をあげた。
「穂波?」
「……矢城……だろ?」
そう言う穂波の表情は、悲しそうだ。
「俺ではダメなのか?」
「双葉……逃げたい。この心に、狂いそうになるんだ。」
「狂えばいい。俺を、好きになれよ。」
「……好きだ。けど、駄目だ。」
「何が駄目なんだよ!」
「分からない。理解できない。私は、普通なのか?お前には、もっと可愛い女の子がいいんじゃないのか?」
「ふふっ。穂波、十分可愛いと思うけど?」
「ふん。菫さんにも言われたよ。姉さんのような強引さは、私にはない。」
「あの時、何もなかったの?」
「くくっ……何を想像したんだ?いやらしいぃ~~。」
「黙れ!口を塞ぐよ?」
「……つき合ってもいないのに、気安く触るなよ。こら、どうして……ちょっ、顔が近い。待て!!」
俺は穂波の両肩に手を置いて、逃げられないようにした。
目を細め、顔を近づける。
「……待て待て、まて!!」
穂波の片手が、肩にのせた手を退けようとする。
顔を逸らして最後まで抵抗。カワイイな。
もう片手が、俺の顔を押し退ける。掌が、俺の唇を押さえた。
【ペロッ】
「ぎゃっ……舐めた??」
一気に顔が紅葉し、逃げ腰だ。
「そうだ、穂波?」
「矢城だ!」
ムカッ……この言葉で距離を置こうとするの、嫌い。
重みをかけて、地面に押し倒した。
「わわっ……何、何でか自然に?待て、なんだか慣れてないか?嫌だ、やめ……んっ……んんん~~!?」
キスを繰り返した。
上に覆いかぶさり、耳元に囁く。
「退いてほしい?お願いしてみようか、穂波ちゃん?」
「何を言って……ひゃぅっ!?」
耳に息を吹きかける。
「……何を!?……~~このっ、変態!!」
「違う言葉は、お仕置きです♪」
【チュウ~】
「痛っ……ぁっ」
キスマークを付け、そこを舐める。
「へへっ、俺の印♪ね、穂波?これじゃ、しばらくは誰とも付き合えないね?」
「双葉、あの……性格が……おかしいぞ!お前は、もっと……」
「もっと、何?」
「……私の間違いだ!こんな男は嫌いだ!!退け……」
「はい、残念~。」
手を胸に乗せる。
「……わぁ!?そこは、駄目だ……分かった、お願いします!退いてください!!」
ニッコリ微笑んで見下ろす俺に、ぎこちない笑顔。
「可愛くないね。もう一度、チャンスね?」
「……~~っ!!」
顔が真っ赤になり、涙ぐんでいる。
おっ、これは可愛い。
「さ、どうぞ?それとも穂波ちゃんは、この手がどうなるのか知りたいのかな?」
「お願い……やめて、くださいぃ~~。」
穂波の目から涙が零れた。
柔らかい胸が熱を伝える。
堪んない……この涙が、俺の理性も流したかな?
「……ごめんね。止まらないよ……」
「ちょ!?嘘つき、嘘つくなよ!!……んんっ!」
1唇を重ね、胸に置いた手に力が入る。
【ビクッ……】
穂波の体全体が、反応を返す。
【ゾクッ】
うぁ~~、表現が出来ない……もう、このまま……
「おい、下衆。私の妹にサカってんじゃねぇ~ぞ?」
またも制服の襟が引かれ、邪魔が入る。
「……ちっ、海波先輩?この間、邪魔せずに鍵までかけてあげたのに。」
「ばぁ~か。役員のほとんどは、開けれるんだよ。」
海波先輩が俺より不機嫌なのは、別の誰かに邪魔された八つ当たりじゃね?
1俺を投げ飛ばし、穂波を抱きしめる。
「よしよし。はい、怖かったなぁ~~。男は、狼……いや、おおかみだから合ってるのか。……言ったろ?私たちの家系は、必死になると。駄目だよ、落ち込んだ様子なんか見たら。母さんみたいに、とんでもない変態に引っかかるんだから。」
自分の父親の事なのに。言いたい放題だな……
「姉さん、どうして?」
「え、景彩が拗ねてさぁ。覗きだ。」
え、覗かれてた??
「ふっ、意地悪だね。もっと早く助けてよ。」
「それじゃ、おおかみのお仕置きにならないだろ?」
…………。
酷いよ……俺の欲求不満、どうすればいい??
「下衆め、ざまぁ~みろ!」
「まさか。あの後……誰かに見られて、景彩が怒っただけ?」
「……だけ、だと!?触るのも、しばらく禁止だぞ?」
「俺は、いいところだったんだ!」
「私だってそうだ!」
一葉side。
「ごめんね、瑠璃。」
「もう、そればっかり。一葉君、気にしないで。ね?」
薬も抜けて、大学の研究チームが開発した薬で、調子もいい。
今日、退院できる。
「瑠璃、お願いがあるんだ。」
俺のお願いに、何故か固まって俺を見る。
……?あぁ、ふふ……
「何?どうして、そんな反応なの?可愛いね……」
「あの、ここ……病院だよ??」
瑠璃は俺から一歩だけ、そっと離れた。
「ん?そうだね。」
逃げ腰の瑠璃の手をつかまえ、引き寄せる。
「きゃっ、ちょ……一葉君??もうすぐ、お父さんたちが来る時間だよ……っ」
【チュッ】
「へへっ。うんうん、そうだったよね。見せつけちゃう?」
「駄目!!」
真っ赤だった顔が、青ざめる。
「お願いを聞いてくれたら、放してあげる。」
意地悪に耳元で囁く俺に、涙目の瑠璃。
「ね、瑠璃。一葉って呼んで?」
「……い……ちよう。」
「聞こえないよ。」
「意地悪な一葉君は、嫌……っ」
【チュウ~】
「聞きたい言葉じゃないよ?ほら、もうすぐ入ってくるかなぁ~~」
抱きしめる力を強くする。
「……恥ずかしい。意地悪ぅ~~。いち……よう……一葉、離して?」
可愛い!!
「もう一回、チュウ!」
「ちょ、うそっ……ん……」
【ガチャッ】
…………。
…………。
【ピシャン】
扉は閉まった。
双葉side。
「ごめんな。父さんたち、遅れるって言うから。あはははは、ノックすればよかったね♪」
「良いよ、別に。」
一葉は、いつもと同じ笑顔。
ホッとする。
「良くないよ!これが、お父さんたちだったら……酷い。」
委員長の涙が流れる。
「あぁ~あ、可愛い子を泣かすなんて。さぁ、泣かないで。」
穂波が委員長を抱き寄せ、頭にキスを落としナデナデしている。
…………。
「矢城さん、それ……俺の。」
「モノじゃないわ!」
一葉は、委員長の機嫌を損ねたみたいだ。
「双葉、何とかしてよ。相手が女性なんて、卑怯だよ。」
「無理だな。このモードになると、手が出せない。俺の彼女になってくれないし。」
「じゃぁ何故、矢城はここに来たの?」
「俺のこと、好きだから。」
「こら、そこ。私は、双葉を選ばないと決めたの!」
可愛くない。隙もないし……
一葉も、穂波に委員長がベタベタされて面白くないみたいだ。
「なぁ、双葉。お前、瑠璃にキスしただろ?」
……したけど、今更なにを??
それで一葉に、俺は殴られたよね。
「あぁ、ごめん。」
悪いことしたとは思……う?
【チュゥ】
一葉が俺にキスをした。
あれ、何だか覚えがあると思ったら。麒麟のキスを回避した……あれか。
「よし。これで瑠璃のチュウは、無しにしてやる。」
「ほぉ~~面白い。」
委員長を抱きしめていた穂波の表情が、冷たい。
穂波が委員長のあごに手を当て、上に向かせたと同時。
【チュウ~】
?!!
き……キス……した!?
委員長は、固まったまま動かない。
その委員長から離れた穂波は一葉の前に行き、顔を両手で押さえた。
【チュウ~】
…………。
あれ、これは……どうしたらいい?
「ふんっ。双葉のチュウは、私のだ。」
ぷふっ。穂波の奴、どんだけ可愛いことするんだよ!!
「双葉、これはないよ。勘弁してくれよぅ~~。多分、草樹の呪いだぜ?」
「あぁ多分な。」
一葉は、固まった瑠璃に話しかける。瑠璃はプチパニックだ。
その瑠璃に、優しく一葉がキスをする。……羨ましい。
俺の横で、ニヤニヤと二人を見ている穂波。
「穂波?」
「何?」
「次は、俺のものになってもらうから。」
「ふん。楽しみだね。隙は見せないよ?」
瞳の事件で、組織内は慌しい。
麒麟は恵さんと話をしている。多分、蓮美のことだ。
あの後、蓮美は普通に目覚め『時が来ている』と言った。
委員長の言った5人の子供たち。
もうすぐ生れる子供たちに、何が待っているのか……
16年後の事を、俺たちはまだ知らない。
俺たちは、役員として彼らをどれだけ護れるのか。
それさえも……
「双葉、任務だ。行くぞ!!」
「あぁ!」
麒麟の相手、蓮美……君の力が、未来のカケラを目覚めさせる。
麒麟、君の支えに……俺はなれるかな?
誰かを護るのは容易ではない……。
「麒麟、俺を頼ってくれ!」
「信頼してるよ?」
「知ってる。もっと頼れ!!」
微笑んだだけの麒麟は、俺には何も言わない。
俺は、おおかみ。強くなるぞ!!穂波も覚悟しろ!
一葉side。
「ね、一葉?双葉君たちは、付き合ってるのよね?」
「ん?どうかな~?穂波は、付き合ってないと言ってるし?触れるのを許さないからね。」
「ふふっ。やっぱり、矢城さんは可愛いね。嫉妬して、好きで好きでしょうがないのに。素直じゃないのね。」
「そうだね。ふふ……瑠璃、俺は君が可愛いよ?」
「……もう、一葉君は……」
「ん?今、何て?」
「何も!!……一葉、図書室では静かにしないと……あれ?誰もいない……??」
「今、この図書室に誰もいないね。俺、この時間が好きなんだ。あぁ、そういえば……ここだっけ?」
瑠璃に双葉が襲ったところ……か。
「思い出は、塗り替えないと……ね?」
「駄目、人が来る!!絶対に、来……?!!」
瑠璃の軽い体を机に倒す。
「来ないよ。この時間は、ね。知らなかったの?覚えておいて。俺の好む静かな時間を。」
END




