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C【派生シリーズ】邪  作者: 邑 紫貴
8おおかみツイン

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45/71

子おおかみ!

一葉side。


朝起きて、気分が良いので安心する。

よしっ、気合を入れるぞ!!僕は、おおかみだ!!

相手は一人。彼女を失えば、一生独り。欲しいのは彼女の心だけ。

ただ、瞳ちゃんの涙に弱い。女性は大切にしろと……ひいおじいちゃんに教え込まれた。

小さい頃の恐怖が……【ぶるっ……】思い出すだけでも身震いがする。

弱気は駄目だ、行くぞ!!


部屋を出て、双葉と目があった。

「おはよう。」

「おはよう。」

…………。

言葉が続かない。

先に口を開いたのは、双葉。

「一葉、俺を殴れ。」

……え?何故、いきなり??

「出来ないよ……」

「……瑠璃を襲った。」

頭が真っ白になり、突然の怒りに双葉を殴った。

「はぁ、はぁ……なっ……もう一度、言ってみろ!俺の相手に、何をしたって?」

胸座を掴む。

「……あの彼女の眼に狂った。心が欲しくて、手を出した。キスをして……」

【バシッ……】

距離が近く、聞きたくない言葉に双葉の頬を平手で叩いた。

「赦さない。お前の相手は、矢城だろ?だから、あんな思いつめた……」

思いつめた、悲しそうな笑顔に覚えがある。

「一葉、俺を許さなくていい……その方が俺の心は軽くなるから……」

違う……

「ごめん、双葉……君は優しい……どうして僕に甘いの?彼女の悲しみに、君の心を惑わすきっかけを与えてしまったのは“俺”だ。俺が……」

「一葉……瑠璃は、小さな幸せで生きてきた。君の、別け隔てない笑顔に……幸せを感じていたんだ。」

「……愛しい……どうして、気がつかなかったのかな?何故……」

「多分……呪いから解放されて、時が経ったから……」

俺たちは、誤った道を戻ることは出来ない。

ここからスタートだ。出口の見えない闇の渓谷。

手探りで、正しい道に行けるかな?目指す到着地点は、見えるかな……

「双葉……俺たちは、相手を手に入れることが出来るかな?」

「きっと。ただ、自分たちの誤った道を……どう扱うか……一葉。瞳は、俺の心も求めた。よく見ろ……答えを、お前は持っている。」

『逃げれば良いのです。案外、それは追いかけてはこないかも。』

そうだね。双葉……ただ、君の答えを俺が与えてあげられない。

「……ごめんね。」

「ふっ。一葉は優しいな……だから、瞳に隙を与えたんだ。」

「くくっ。人のこと言えないよ?」

僕たちの仲って、案外簡単なのにな。女の子は難しいよ……

瞳、さよならだ。




双葉side。


俺たちは、目的のために別々で登校する。

一葉は瞳と話をするため。俺は、瑠璃と話をするためだ。

すべてを片付けて、相手を全力で追いかける。逃がさない。

穂波……君の心だけが分からないのは、どうしてかな。

いつもの時間。同じ場所で、瑠璃を見つける。綺麗な姿勢。

「……委員長、おはよう。」

ドキドキしながら、挨拶をした。

いつもと変わらない笑顔で、挨拶を返してくれる。

「おはよう。」

「……昨日は、ごめんなさい!!」

必死で頭を下げた。

「……許さない。」

【ズキッ……】

今更の胸の痛みに、情けなくなる。

一方で、痛みのあったことが嬉しかった。

「……正直に言うと、心を奪われるかと思ったわ。」

【キュン……】

あ、やべ……やっぱり可愛い。一葉は、いいな……羨ましい。

「君に狂ったのは、本気だ……。一葉が鈍くて、君の悲しみを癒したかった。けど、君のその瞳が俺を惑わす。」

「……この目……視える……まだ、時じゃないのに。」

委員長の目が、薄い色に変化していく。

透明の美しい薄い茶色。

【ドクンッ】心臓が跳ねる。

「……駄目だ、逸らせない。止めて……これ以上は、駄目だよ!!」

「双葉、見るな!」

後ろから視界が塞がれた。

目を閉じ、倒れそうになる俺を支えているこの人……さっきの声。

「……お父さん?」

「目を瞑ってろ。いいか、開けるなよ!」

うなずいた俺の顔から手が離れたのを感じる。

「君、少し……ごめんね。」

物音や気配では、何が起きているのか理解できなかった。

「双葉、目を開けなさい。行くよ、付いておいで。」

そっと開けた目に、気絶した瑠璃の姿!?

しかもお父さんは、違和感なく委員長をお姫様抱っこ。

…………。

何か、カッコイイよね。悔しいな……

「何だ?この子は、お前の相手じゃないだろ?」

走りながら、意地悪な笑顔の父さん。

委員長を肩に乗せ直し、学校の壁を軽々……越えた。

「置いていくぞ?」

壁の向こう側からの声……

畜生!!まず目指すのは、父さんなのか!?

壁を越え、高等部の保健室へ向かう道。

草樹のところかな??

「父さん、会社は?」

「うん?ふっ……子供の一大事に、会社は後回しだ。双葉、一葉は……いや、お前も……相手を手に入れるのは、難しいかもしれない。応援しているよ。……頑張れるか?」

「うん。……委員長の目は、何?人を惑わすの??大上家の呪いの緑色の目と同じなのかな?」

「さぁな。惑わす側だった俺には、分からない。ただ弊害が続くんだ。」


高等部の保健室。

ドアを開けると草樹に優貴さん、綾さんと……知らない男の人?がいた。

「君は、初めましてかな?」

「はい。神成かみなり がいです。彼女の能力は、コントロール出来ます。適任を呼んでいますので、もうすぐ来るかと……」

「劾さんも、役員なの?」

「……護られる側の人間だよ。双葉……彼女は、可愛い人だね……ふっ。」

カワイイ彼女??それって委員長の事じゃない……よね?

まさか穂波のこと??穂波が、可愛い??

「ね、優貴。劾じゃないでしょう?この間一緒にい・た・の・は!」

優貴さんの浮気疑惑は、まだ続いていたのか。

「だから、もうすぐ来るって。ね、それより触れたい……キスしたい。禁断症状だよ?」

「駄目。触るな、汚い。」

優貴さんの顔を手の平で押し退け、怖い顔。

「ね、綾……君も分かるよ。彼女に会えば……ね、許してよ。そのお腹に触れてもいい?」

「何のこと?触るなって、言ってるでしょう?」

二人のやり取りを、生暖かい眼で見守る。

優貴さんは強引に、俺たちがいるのにチュウをした。

「……いっつ!!……酷いよ、舌を噛むなんて。熱いもの食べれないよ?口を開けて、俺を誘っておいてこんな……どこまで俺を壊していくの?」

「知らないわよ!!」

俺も、こんな大人になるんだろうか……

「双葉、彼らは異色だ。そんな冷めた目で見るんじゃありません。」

「……お父さんは、お母さんとするチュウ……どんななの?」

「おっと、思わず答えるところだった。雰囲気?に流されて。駄目だな……こら優貴、いい加減にしろよ!子供の教育に良くないだろ?」

「保志、無駄ムダ。お前らの周りにマトモな奴なんかいないだろ?今更だぞ!」

確かに……

「うわぁ~~。双葉の眼が、大人になってる。こら、年齢に相応の眼をしなさい。」

「……例えば?」

…………。

沈黙。答えは返ってこない。視線を逸らしたお父さん。

「お父さん、俺が悪かったよ。優貴さんの言う通り、今更だよね♪気分を変えるよ!!」

無邪気に笑った俺を見て、お父さんの目には……薄っすら涙が。

「「無事に、到ぉ着ぁ~~く!!」」

冷え切った空気に、明るい声が二重で……ドアの開く音と共に、保健室に響いた。

「……麗彩ちゃん??と……」

知らない、女子高生。

「「デキてました!!」」

二重に、声が重なって……え?出来た??

…………。

「麗彩、嬉しいよ……おいで。触らせて?」

「うん!」

麗彩ちゃんは、草樹に甘えるように自然と膝の上に座った。

「……ほら、みやこ。」

劾さんは、あまり表情が変わらず……手を差し伸べる。

ゆっくりした動きに反して、都さんは劾さんに飛びついた。

「こら……ったく、お前には驚かされてばかりだ。」

口とは違い、優しく抱き寄せる。

……大人の世界。うん、環境が良くない。

俺は、今すぐに穂波が欲しくなる。うずうずする……。

「こら、目的を……」


『……未来のカケラ達が、観える。悲しい……』


委員長の声。目を閉じ、ベッドに寝たまま。

寝言……??

「あら、異世界の。お仲間よ、劾。」

「うん、知ってる。一葉の相手だ。」

「……ふぅん。ふふ……ね、お願いしてみて。劾……ゾクゾクするわ。」

「その前に、優貴との関係を教えてよ!」

綾さんの顔は、とても怖いのに綺麗なままだ。

「ん?……お楽しみは後ね、劾。……あなたが知りたいのは、私の事じゃないでしょう?ふふ……綺麗な顔が台無しね。」

都さんの雰囲気が大人びた感じになる。

「俺、これに騙されたんだよね。」

劾さんは、ため息まじりに言葉を吐き出した。

『可愛い……』

【ゾクゾク……】

都さんの変化した声を聞いた途端……立っていられなくて、その場に座り込む。

思考が働かない……何だ、この声。

瑠璃を襲ったとき以上の興奮。……やばい……抑えが利かない??

「……都、中坊がいるんだ。すぐに解除しろよ。」

『終わり。』

綾さんも、顔が真っ赤で……息が荒い。

優貴さんが支えている。

「……な、こいつの声を聞いてしまった不可抗力だよ。綾……許してくれる?」

「…………。」

気を失ったみたいだ。

「……これ、体に害ないよね?」

「さぁ?」

優貴さんも、綾さんをお姫様抱っこ。……体力いるよね。

あいつ……持ち上がるかな?


『……都さん……男の子。水が見えます。麗彩さん、男の子……綾さん、男の子……。男の子と女の子……5人。時の犠牲……解放されます。』


目を覚まして起き上がった委員長が、俺達をじっと見つめて淡々と告げた。

「……あら、言っちゃった。駄目ねぇ~~」

なんて、笑っているのは都さんだけだ。

彼女の目は、何を見たの??

「さぁ、お遊びは終わり。『閉じなさい。解放まで……あなたの力は、巻き込まない。目覚めるな。』」

これから生れる彼らの先、呪いの『始まり』が襲う……未来。




一葉side。


朝、いつもの道。いつもより少し遅い時間。

今日は、俺が後ろから。

「もう、うるさいな。まだだって、進展したら言うわよ。毎朝、携帯で訊くのウザい。」

携帯で、相手は“お友達”なのかな?

口調も初めて聞く。可愛くも、ドキドキもない。

「……瞳、おはよう。」

「……ひゃ……びっ……くりした。一葉君、おはよう。」

トーンの上がった声。

「さっきのは、お友達?」

「……聞いて……?!」

動揺が見えるが、すぐに持ち直す。

俺が笑顔だからかな?

「僕のこと?」

「……うぅん。それより、昨日……電話したんだよ?」

俺の腕に、腕を絡めて胸を押し付ける。

上目で首を傾げ……ニッコリ。

冷めた俺には、うんざりだ。

腕を解き、目を見て言った。

「瞳、別れて欲しいんだ。」

「……え?」

今までにない瞳の戸惑い。いつもと違う俺に何かを感じたのか、涙を浮かべた。

「一葉君、私のこと……嫌いになったの?私……一葉君のこと好きなのに。酷いよ……」

「うん、ごめんね。確かに可愛いと思ったよ……。けど、俺の心に特別な女の子がいるんだ。その子が好き。君は、好きじゃない。」

「……二股なの?」

「結論はそうだったかも。心にいるのに気がつかず……揺れた。」

「……誰?」

瞳の雰囲気は、さっきの電話の時と同じだ。

「訊いてどうするの?……その子に、酷いことしたら赦さないよ。女の子だとか、関係ないからね。先に言っておくよ。」

「……一葉君?」

「何?」

「諦めない……別れないわ!」

瞳は、俺を置いて走っていった。

……簡単にはいかないか。

「へ~……一葉、男前だな。」

いきなりの声に、周りを見る。

麒麟の声だ……

「ここ、塀の上。覗きじゃないぞ?役目が終わって、移動中……偶然だ。」

「麒麟、双葉を助けてあげて。……あいつ、相手を失うかもしれない。」

「ふっ。……お前らが羨ましい。心配しなくて大丈夫だよ、俺達は学園の保護の元。」

「それなら麒麟、蓮美は何なの?」

塀から下りた麒麟は俺の横に並び、歩き出す。

「遅刻するよ。……一葉……俺たちは、弊害の狭間だ。まだ、マシ……そう思おう。」

「無理してるよな麒麟、君の負担を吐き出して……」

「敵わないな……一葉、蓮美は…………俺は失ったら……どうすればいい?呪いから解放された。違う人を選ぶ?そんなことが出来るのか?」

「麒麟。出来てしまうんだ……心さえ、騙してしまえば。ただ、それでは未来は見えない。」

「……一葉、君の相手……草樹のところだ。君の相手は能力者。保志さんが、俺のところに相談に来たのが始まり。双葉は、その力でおかしくなった。間に合ってよかったよ。行って、保健室に。まず君は、相手をきちんと手に入れるべきだ。瞳のことは後にしていい。護る者を身近に置くんだ……時間は、戻ってこない。」

「うん。情報をありがとう……行くね!麒麟、いつでも言って。俺たちはおおかみだろ?仲間だ!!」

麒麟の笑顔。安心する……

優しい君は、きっと……俺たちに自分から言わないだろう。

何かあれば、必ず力になるからね……




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